今回は「カラオケで自由に高音を歌いたい」「とりあえず高音を出せるようにしたい」などの娯楽派向けの高音開発がテーマです。
逆に、「プロのように魅力的に高音を歌いたい」というような本格派の人は”丁寧にゆっくりとコツコツ進む必要がある”と考えられるので、そういう人にはこちらの記事の方がおすすめです↓
-
-
地声の高音域を広げる方法【結局、地道なトレーニングが一番いい】
続きを見る
もちろん、本格派の人にとっても何の役に立たないということはないとは思いますが、あくまでもそういう人向けではないことはあらかじめ述べておきます。
目次
目指す高音発声を3種類の方向性に区分する
高音発声の方向性を大きく区分すると、
- 太い、広がりのある高音発声
- 強い、尖った高音発声
- 綺麗、柔らかい高音発声
という3種類くらいの方向性に区分でき、それに合ったトレーニング方法があると考えられます。
ただし、それぞれ全く違う発声方法というわけでもないということは大前提のお話です。
また個人個人持っている声帯によって得意・不得意、できる・できないというものもあると思いますし、自然とそうなるという発声もあるのでその点を考慮に入れながら自分に合うトレーニングをしてみてください。
①『太い高音発声』のトレーニング
太い高音発声の概要
その名の通り太い声質、喉を開いた高音発声。
太い高音発声は
- 喉の空間をしっかりと保ったまま高音にする
というのが鍵です。
この「喉の空間をしっかりと保つ」というのは「咽頭共鳴をしっかりと保つ」=「喉仏を下げる」と同じ意味になります。
太い高音発声の出し方・練習方法
太い高音発声はグッグトレーニングで練習していくのが最もオススメです。
まずは自分の地声の苦しい音域を見つけます。
「苦しい音域」を理解する
- 鍵盤で地声を発声しながら一音づつ上げていきます
- 地声で出すのが苦しい音域を探ります。この「苦しい」は「苦しすぎて限界」と「ほんのり苦しいけどまぁ出せるかな」の中間くらい、『普通に苦しい』くらいの音階を目安に。
- 明確にココと一音で決めなくてもいいです。「この音あたりかな?」くらいのニュアンスで大丈夫です。
およその苦しい音域が理解できたら、練習に入ります。
トレーニングの基本
- グッグトレーニングで「ほんのり苦しいけどまぁ出せるかな」くらいの音域から「苦しい音域」をひたすら発声していきます。
- 「グッグッグッ」の発音で繰り返し発声します。
おそらく高音が苦手な人は潰れたような聴きづらい音色になるでしょう。
「グ」の発音を維持するのも難しいはずです。「グェ」「グァ」になったり。
しかし、必ず「グ」にするように頑張りましょう。
ここで「グッ」の発音が活きてくる。
開発意識
- 先ほどの苦しい音程で「グッ」の発音をしっかりと維持します。
- 「グッグッグッ」と連続で繰り返しながら、二つの感覚を意識しましょう。
- 一つは喉の奥を使っているような感覚(舌の奥を使っている感覚)
- もう一つは喉仏が下がる感覚
- この二つを意識して「グッ」と繰り返す。
おそらくかなり苦しいはずですが、これを繰り返すことで高音が開発されます。
声帯のコントロールがうまくない人が高音を無理に出そうとすると、喉全体が締まります。
喉が締まるということは喉仏もかなり上がっている状態になっているはずですが、この時「グッ」の発音を利用することで喉仏を下げる力を働かせます(つまり太い声質を作る。喉が広がる)。
もちろん最初はうまくできないでしょうが、この「グッグッグ」の発音はどんな人でも瞬間的には喉仏を下げる方向へ力が働いていますし、舌の脱力も促します。
そういう動きを高音域で強制的に繰り返していくうちに、喉や声帯の動きが開発されていくというのがこのトレーニングのアプローチです。
練習方法まとめ
グッグトレーニングできつい高音域を発声し喉を開けるように開拓していく。喉仏を下げる動きや舌根の動きによってだんだんと太く高音を発声できるようになっていく。
『鳴りの強い高音発声』のトレーニング
鳴りの強い高音発声の概要
とにかく鳴りに特化、硬く強い音が鳴る高音です。
先ほどの太い高音発声に比べると、太さや広がりは重視せずに鋭く強く、より高音が出せるような発声と言えるでしょう。
ハードロックやメタルのイメージです。
鳴りの強い高音発声は
- いかに声帯を強く鳴らした高音をコントロールするか
というところが鍵です。
声帯をある程度硬く使いつつも、コントロールするというトレーニングになります。
鳴りの強い高音発声の出し方・練習方法
エッジボイス・「ネイ」「ヤイ」トレーニングで練習するのがいいでしょう。
まずは先ほどのトレーニング同様「普通に苦しい音域」を見つけます。
これは先ほどの太い高音のトレーニングで書いているので省略します。
まずは「ベチャッ」とした高音を作る
- エッジボイスで「苦しい音域」を出します。「あ”あ”あ”あ”」。普通の発声では苦しい音階もエッジボイスでならおそらく出せるはず。
- 現在は声帯で息を止めているような状態ですからそこから息の量を増やしてなんとか「声」にします
- 「あ」か「え」の発音でいきましょう(最初は「え」の方がやりやすいかも)
- さぁ、べチャッとした高音の完成です。笑
おそらく、べちゃっとした変な声になったと思います。
これは『鳴りは強いが喉が締まっている高音』ですね。
あとはその声で喉の不必要な締まりだけをほどいていくようなアプローチになります。
開発
- 先ほどのベチャッとした声で「ネイ」もしくは「ヤイ」の発音を連続で繰り返します。どちらでもいいですが、最終的にはどっちもやるのがおすすめ。
- ベチャッとした声のまま「ネイネイ」や「ヤイヤイ」の発音をする。この時、「エ→イ」「ア→イ」の母音の動きをしっかりと意識することで、不必要な喉の緊張・アゴの緊張をほぐしていきます。
- また舌の動きもしっかりと意識することで舌根もほぐします。
このトレーニングを続けているとベチャッとした声がベチャッとならないくらいまで喉が開けられるようになってくると思います。
厳密には喉が開けられるというよりは余計な力がほぐれてくるというニュアンスの方がしっくりくるかもしれません。
つまり、締めた状態の喉をほぐしていくトレーニングです。
練習方法のまとめ
出したい高音をベチャ声(=鳴りだけは強い声)で出す。
その声のまま「ネイ」や「ヤイ」の発音をすることで不必要な締まりを取り除く。
「ネイ」「ヤイ」の脱力効果を借りてその部分を開発していく。
『綺麗・柔らかい高音発声』のトレーニング
『綺麗・柔らかい高音発声』の概要
綺麗な印象の声・柔らかい声が鳴るような高音発声です。
若干ですがファルセット(裏声)に近い音色の綺麗な高音発声というイメージで、
- 高音域で声帯をやや薄く・柔らかく使う
というのが鍵です。
綺麗・柔らかい高音発声の出し方・練習方法
綺麗・柔らかい高音発声はリップロールで練習するのがオススメです。
この練習はかなりシンプルです。
トレーニングの基本
- リップロールで少し苦しい音階〜苦しい音階くらいをひたすら繰り返し発声します。「プルルルル」。基本はこれだけです。
最初は苦しい感じになるでしょうが、リップロールは声帯への脱力作用が強いので繰り返すうちにだんだんと楽になっていくはず。
喉が締まった硬い高音発声がリップロールによってだんだんとほぐれて柔らかくなっていくようなイメージです。
ある程度即効性も感じられるでしょうが、体に染み込ませるには一定の期間が必要でしょう。
少し別のアプローチで開発もできる。
別のアプローチ
- 苦しい音程でリップロールを一定時間維持します
- その音程のまま楽な状態(裏声)にします
- この「苦しい地声」と「楽な裏声」を交互に繰り返しながら地声のままやや薄く声帯が使えるような状態を探っていきます
- イメージとしては地声から薄皮一枚はぐようなイメージです
ここで高音が苦手な人はゴロっと・ガラッとファルセットに戻ってしまったりすると思います。
滑らかには切り替えられなかったでしょう。
苦しい音を出している状態なので、裏声にいきたくていきたくて仕方のない状態から裏声へと移行するということになり、ガラッと声区が変わっても仕方のないことです。
最初はそれで問題なし。
ゴロッと変わってしまうのは声帯のその動きは未開発部分だから「もう無理!!耐えられない!!」って声帯がファルセットに移行してしまうのですね。
突然に出せたりするものでもなく何度も練習していくうちに開発されていくようなものなので、反復練習が必要です。
練習方法のまとめ
リップロールの状態で、苦しい地声の高音域をひたすらに繰り返す。もしくは、苦しい音階の地声から同じ音程で裏声にゆっくり切り替える練習をすることで綺麗・柔らかい高音発声を身につける
それぞれ無理をしすぎないように
上記3つのトレーニングはトレーニングのタイプとしては『ゴリ押し』型です。
ゴリ押し型のトレーニングの良いところは
- やることがシンプル
- 即効性が高い(*もちろん、それなりの期間が必要ではあるが他のトレーニングと比較すれば)
などでしょう。
しかし、気をつけなければいけないのは無理をしすぎないようにすることです。
比較的高めの負荷(苦しい高音)を「発音特性」などでほぐしながらゴリゴリと開発するというものなので、脱力を促すとは言え無理をしすぎると喉を壊す可能性があるのでその点に注意です。
「苦しすぎて限界」ではなく「普通に苦しい」というところを攻めていればそこまで大きなダメージはないとは思いますが、声帯は人それぞれ違うので自分に合った調節を心がけてください。