今回はディマシュ・クダイベルゲン(Dimash Kudaibergen)さん の歌声について書いていきたいと思います。
ディマシュさんと言えば、カザフスタン出身の歌手で6オクターブ(C2〜D8)という驚異的な音域を駆使して世界中を驚嘆させているシンガーですね。
その歌唱力には言葉を無くしてしまいます。
心掴まれている方も多いのではないでしょうか。
どういう声質・声の出し方か
地声・話し声はやや低め〜普通くらいの音域で、バランスのいい軽やかな声質
地声・話し声の音域はやや低め〜普通くらいの音域ですね。やや低め〜普通くらいの音域帯の声帯を持っていると考えられます。
声質は息と声帯の鳴りのバランスのいい声質と言えるでしょう。
息も綺麗に流れ、それに合わせてバランスよく声帯が鳴るような軽やかな声を持っていますね。
話し声の共鳴はどちらかと言えば鼻腔や軟口蓋など上方向へ響かせることが多いですね。
言語的特性でしょうか。
歌声はオールラウンドかつ多彩に声区を使いこなす発声
歌声は3種類(4種類)の声区を使っています。
主な声区
- 地声(チェスト)
- ミドル(≒ミックスボイス)
- ファルセット(ヘッド)
- ホイッスルボイス(フラジオレット)
基本的には地声・ミドル・ファルセットの3声区を自在に使いこなす歌唱スタイルです。ホイッスルボイス(D8:hihihihiD)まで使用しています。
普通に88鍵のピアノをはみ出しています。笑
チェストボイス
低中音域は地声。
基本的には息が綺麗に流れるさらりとした澄んだ音色の発声を使うことが多いです。とは言え、声帯をしっかりと鳴らすような発声も使いますし、オールラウンドな表現を持っていますね。
低中音から発声の美しさは際立っているのですが、地声域で印象に残るのはやはり低音域の広さでしょう。
かなり低い音まで綺麗に発声しています。低音は咽頭共鳴(下方向への響き)をしっかりと保つことで深い太い音色の低音を鳴らしています。
こういう発声法(喉仏を下げる発声)はもともとクラシック出身なので得意とするところでしょうね。
基本的には綺麗な息の流れ・倍音があり、フレーズに合わせて声帯の鳴りをコントロールするような美しい地声域です。
かなり低い音域の発声などは後でまとめて紹介します。
ミドルレンジ
中高音域(≒ミックスボイス)。
美しくもくっきりと芯のある力強い高音域を発声しています。特徴的なのはかなり高音域まで自在に発声してしまうことですね。
高音にいけばいくほど、高音を出すための閉鎖感は生まれるものの、喉全体は開放的で広がりのあるバランスの良いミックスボイスです。
圧倒的過ぎてただただびっくりするしかないレベルですね。
声帯伸展・声帯収縮などの声帯のコントロール能力や柔軟性に超絶長けていないと難しいレベルの発声でしょう。
中音域
ざっと確認する限り、hihiA#(A#5)くらいまではミックスで出せているかと思います(hiの数は間違ってません。笑)hihiBはちょっと線引きが微妙ですが、普通にミックスにも取れますね。音域が高すぎると声区の線引きがしにくくなります。
ミックスの例も後ほどまとめて紹介します。
hiFくらいまで当たりが良さそう(無理なく楽に鳴らしていそう)です。どういうこと?笑
ファルセット
高音域はファルセット(裏声)での発声です。
息の倍音が多い澄んだ音色のファルセットから、くっきりとした芯を持つ鳴りの強いファルセットまで自在に使いこなしています。
このファルセットの質の素晴らしさも圧巻です。
特に特徴的なのが、くっきりとした鳴りを持つ美しいファルセットですね。女性のクラシックのファルセット発声のような発声を超高音まで自在に使いこなしています。
ファルセット
hihiF(F6)くらいまでは綺麗に出していますね。完全に女性の高音ファルセットの音域です。後ほどまとめて紹介します。
ホイッスルボイス
さらに超音域はホイッスルボイスを使っています。
声帯の超閉鎖(超緊張)により生み出す超高音ですね。ファルセットの延長線上で声帯を超閉鎖し、さらにそこに強い息の圧力をかけることでまさに笛の音色のようなホイッスルボイスを実現させています。
とても良い動画があるので、先ほどから言っている地声の低音・ミックスボイス・ファルセット・ホイッスルボイスとまとめて確認しましょう。
まとめて確認
- 0:00〜0:50くらいまで地声域(低音)
- 0:52〜3:24くらいまでミックス【Mixed/Belted】
- 3:24〜6:17くらいまでファルセット【Head Voice/Falsetto】
- 6:17〜 ホイッスルボイス【whistle Register】
どういう歌い方か
共鳴や音色
- 上方向への共鳴(鼻腔や軟口蓋*明るい音色、澄んだ音色)
- 下方向への共鳴(咽頭腔*深い音色、太い音色)
という上下の共鳴を自在に使いこなしています。この共鳴コントロールも多彩な表現力を生み出しているポイントですね。
特別偏りがあるわけでもなく、オールラウンドに自在に音色をコントロールしているとしか言えません。やはりクラシック出身の人は共鳴コントロールに長けているのでしょう。
ビブラート
フレーズによるのはもちろんですが、基本的にビブラートはしっかりと滑らかにかけるタイプです。
ピッチの安定感や美しさを生み出す要因の一つになっていますね。
フレージング・歌い回し・歌唱力
3声区(4声区)を圧倒的クオリティで使いこなすスーパーオールラウンダーです。
フレージングや歌い回しに大きな癖はないのですが、あえて言えばクラシックらしい音楽的美しさを綺麗にポップスにも取り入れている、その上で低音域から超高音域まで自在に歌いこなすというタイプですね。
素晴らしい歌唱力はピッチ感の圧倒的良さも一つの要因ですね。
それもそのはず、なんと『絶対音感』の持ち主、、、、。Oh, My God、、、、。
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