歌の雑学・研究・考察

年齢による歌声の衰えについての考察【老化と歌唱力】

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今回は”年齢による歌声の衰え”というテーマです。

別に専門の研究者ではありませんが、個人的にいろいろなシンガーの歌声を研究して思う内容ということで、「ふーん」くらいで読んでいただければ。

80歳くらいまで上手い人はずっと上手い?

まず一番最初に述べておきたいのは

  • 上手い人はずっと上手く、”歌唱力”そのものにほぼ衰えはない

と考えられるということです。

 

こういう問題は基本的に「衰えてしまった人」「衰えがわかりやすい人」に焦点が当たりやすいので、

結果的に

  • 年齢によって歌唱力は衰える

と考えてしまいがちですが、衰えていない人に焦点を当てることも必要だと思います。

 

日本でも世界でも大体70〜80歳くらいまではずっと上手く歌い続けている人がいるので、

・「歌唱力そのもの」は大きくは衰えない

という一面はあると考えてもいいと思います。

 

おそらく当時79歳↓

 

おそらく当時69歳↓

 

73歳↓

 

このように、歳をとってもずっと衰えない上手いシンガーも数多くいるんですよね。

 

確かに過去の歌声とは違うのはもちろんです。

年齢で”声質”は変わります。時に”音域”も変わるかもしれません。

 

でも”歌唱力”は変わらない。

 

しかし、”歌唱力”そのものが衰えてしまうようなシンガーもいるということは悲しいですが事実でしょう。

 

つまり、

  • 年齢を重ねて”歌唱力が衰えない人”もいるし、”歌唱力が衰える人”もいる

というのが真実でしょう。

 

そうすると、衰えないシンガーたちを「天才だ」「化け物だ」と言ってしまってもいいのかもしれませんが、衰えないシンガーと衰えるシンガーの差は何か?と考えるべきだと思います。

 

その差を掴めれば

  • 長く歌うことができる=歌を楽しむことができる

とも言えると思います。

 

これは肌感覚でしかないのですが、個人的な研究で

  • 歳をとって衰えるシンガーは「頑張った発声」や「偏った発声」を多くするシンガーに多い
  • 衰えないシンガーは「無理のない発声」「バランスのいい発声」を多くするシンガーに多い

と考えています。

*『”その人にとっての”〇〇な発声』という意味です。

 

僕は特に

  • 偏り』こそ歌唱力の衰えと密接に関係している

と考えています。

その前にそもそも年齢で声の何が変わるのか?というところを見ていこうと思います。

年齢と声の変化

年齢と声の変化で最も重要な要素は

  • 『ホルモン』

でしょう。

 

男性ホルモンと女性ホルモンが声帯と密接に関わっているからこそ、歳を取ると声が変わるのですね。

年齢によって必ずホルモン量やホルモンバランスは変化するので、それによって声が変わっていく。

 

基本的に

  • 男性は歳を取ると「声がかすれる」
  • 女性は歳を取ると「声が低くなる」

と言われています。

もちろん個人差はあるでしょうが、これは人間である限りほぼ避けられないことでしょう。

 

簡単に考えると、これらは

  • 男性ホルモンが声帯を長くするもの(声を低くするもの)

という一つの点で考えれば筋が通ります。

LGBTの方やそれに詳しい方などはご存知と思いますが、

  • 女性の体(声)に男性ホルモンを注射すると、男性のように低くなる。一度低くなったら基本的に戻らない。
  • 男性の体(声)に女性ホルモンを注射しても、女性の声のようにはならない。なりたい場合は手術が必要。

ということがあります。

 

このことから

  • 男性ホルモンは声帯を長くする(声を低くする)作用がある
  • 一度伸びた声帯は元には戻らない(短くならない)

ということがわかると思います。

 

これを考えると年齢を重ねるにつれて

  • 男性は男性ホルモンが減少するために声帯のハリを保てないため声がかすれていく
  • 女性は女性ホルモンが急激に減少し、男性ホルモンが優位になるため声帯が伸びて声が低くなる

と考えられるわけです。

 

だから基本的に

  • おじいちゃんの声はカサカサ・ガサガサ
  • おばあちゃんの声は低くジリジリ・ビリビリ

となっていきますね。

 

これはシンガーも同様

歳を重ねると

  • 男性シンガーは声のカサカサ・ガサガサした成分が増える
  • 女性シンガーは魅力的に歌える音域が変化する(ズレる)

ということになります。

 

「男性も低くなるんじゃないの?」と思うでしょうが、これはケースバイケースのお話だと思います。

男性の場合カサカサして若干高くなるというパターンがよくある話でしょうし、その方が理にかなっています。

低くなったように感じる人、もしくは実質的に低くなった人は『喉頭位置が深くなった』の方が正確なような気もしますが、まあこれは本当にケースバイケース。

 

歳を取ると高音が出なくなる?

歌唱力の衰えを感じる1番の要因はやはり「高音」でしょう。

 

【女性】

女性の場合は先ほどの理由で説明がつきますね。

歳を重ねれば必ず誰もが同じようにホルモンの変化を起こします。

 

結果的に、持っている声帯そのものが低くなるのであれば、高音が出なくなるのは自然です。

ただ、

  • 「音域が狭くなった」わけではなく、実際は「最適な音域がズレた」だけなので、キーを下げればいいだけ

のお話です。

 

なので、年齢を重ねた女性シンガーの多くはキーを下げることが多いですよね。

これを「高音が出なくなった」と言ってしまうのは、音楽における大事な本質を見落としているような気がします。

 

人は最高音に感動するのではなく、音程の幅が生み出すダイナミクスに感動するはず。

「高音が出なくなった」ではなく、「声帯が変わった」が正解でしょう。

 

【男性】

男性の場合、

  • 声帯自体が低くならないこともあるのに高音が出なくなるのはなぜか?

これがいろいろな観点から考えなければいけないので難しい問題です。

 

声帯のハリがなくなるということは

  • 「力押しができなくなる」

ということが考えられます(女性でも同じことが言える場合もある。男性ほどではないでしょうが)。

 

力押しができなくなるということは

  • 力で押していた発声(頑張っていた発声)ほどできなくなる

ということです。

 

なので、高音が出なくなる人もいると考えられます。

力で押す発声ほどその傾向にあると思います。

 

そして、

  • 力で押していないバランスのいい発声をしていた人は力で押さなくてもいいので高音がいつまでも出る

とも考えられます。

 

これが最初の方で述べた

  • 歳をとって衰えるシンガーは「頑張った発声」や「偏った発声」を多くするシンガーに多い
  • 衰えないシンガーは「無理のない発声」「バランスのいい発声」を多くするシンガーに多い

というところとリンクしてくると考えています。

 

つまり、”一概には言えない”のは大前提ですが、

  • 「ロックな発声、力押しな発声、過剰な強い高音発声」をする人ほど衰える
  • 「ロックじゃない発声、バランスのいい発声、無理しない高音発声」をする人ほど衰えない

ということですね。

 

まぁ、

「そんなこと言われなくても無茶してれば喉に悪いことくらいなんとなくわかるよ。」

「ロックシンガーは声の寿命が短いなんて昔から言われていることじゃん。」

と言う人も多くいるでしょう。

 

確かにその通りなんですけど、ここでさらにもう一段階フィルターをかけないといけないと思います。

 

それは、

ロックな発声をする人の中にも

  • 衰える人
  • 衰えない人

がいるという面です。

 

これが個人的には

  • 『偏り』の問題

だと思っています。

偏る人ほど衰える可能性がある。

 

「偏り」の問題

  • 「ガーーー!」と強い声を使いすぎると声帯がダメージを受け、それが蓄積し、喉が壊れてしまう

と考えるのが普通ですね。

 

まぁ確かにそういう面もあるとは思いますが、

  • ”ダメージだけ”が原因であるなら回復すれば元どおりになるはず

とも考えられますし、

  • 一流のシンガー達がケアを怠るわけはない

とも考えられます。

 

年齢によって回復力が落ちるとも考えられますが、怪我はいつか治ります。

しかし、いつまでたっても治らない場合は別の面にも問題があると考えられます。

 

それが「かたより」の問題。

 

簡単に言えば、

  • 過度な発声を長く使い続けることで、それに必要な筋肉や神経が”必要以上”に鍛えられすぎてしまい、その力が主導権を握るために他の重要な部分が衰退し、結果的に必要な筋肉全体のバランスが大きく崩れる

ということです。

 

壊れるのではなく、「鍛えられすぎる」んですね。

テニス選手の左右の腕の太さが全然違うみたいなものです。

たくさん使うから偏るんです。

 

テニスなら偏りがあっても特に問題ないのでしょうが、

声帯の場合、

  • 『過剰な偏りが蓄積することでどんどん発声のバランスが崩れて上手く歌えなくなってくる』

のですね。

 

これがこの衰えの問題に大きく関係していると推察しています。

そして、これは年齢を重ねること(発声を積み重ねること)でしか成立しないことなので、「年齢で歌声が衰えたように思える」のですね。

 

つまり、実際は

  • 『衰えたわけではなく”偏りすぎた”』

ということでしょう。

 

この問題はかなり重要で、若いシンガーであっても年数を重ねると起こりうる問題だと考えられます。

 

喉を壊したシンガーの中には

  1. 休んで元どおりに回復したシンガー
  2. 休んでも全然元の歌声に戻らないシンガー

の2パターンがありますよね。

 

これは、

  1. 酷使で喉を壊したから休んで回復した
  2. 偏りが蓄積して喉を壊したような症状(思うように声が出ない)になったが、休んでもバランスが崩れたままだから元の状態に治らない

という違いがあるのだと推察します。

 

何よりこの「偏り」が厄介なのは本人ですら「偏っている」という意識を持てないことだと思います。

 

それはそうですよね。

 

目に見える体の筋肉ですら偏っているとかわからないのに、目に見えない体の中の小さな部分の偏りなんてわかるはずないんです。

 

おそらく医者ですら「偏り」はわからない。もはや、わかってもどうしようもないんです。

そもそも診察に来る前の筋肉の状態はわからないのですから、現状が以前と比べて偏ったかどうかなんてわからない。

 

この「偏り」の問題が歌唱力の衰えと密接に関係していると思います。

 

これはあくまで僕の個人的な考察です。

まとめ

話を本筋に戻しますと、

  • 『年齢だけの要因では歌唱力はほぼ衰えない』と考えられるのですが、『衰える要素』や『衰えたように感じるポイント』は年齢によって顕著に出てくる

ということです。

つまり、年齢と歌唱力の衰えに相関関係は”ある”とも言えます。

しかし、衰えない人もいるし、そこには一定の法則があるのではないかということです。

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