今回は「上を向いて声を出す」というボイストレーニングについて。
名前の通り、単に上を向いて声を出すというトレーニングですが、
- 喉のストレッチになる
- 喉締めなどの余計な力に頼らない発声を身につけるのに役立つ=良い発声を測る定規にできる
- ボイストレーニングの効果を上げる
などの効果が考えられます。
効果としてはそこまで劇的なものではないですが、人によっては大きく刺さることがあるので、一度試してみてください。
上を向いて声を出すトレーニング
トレーニング方法は、基本的に『上を向いて声を出す』というだけなので、特別な解説はないです。
- 上を向いて歌う
- 上を向いて苦手な発声を練習する
- 上を向いて特殊な発音のボイトレ(例えばリップロール、ハミングなど)をする
など、「上を向く+何かの発声練習」というものです。
どれくらい上を向けばいいのか?というのは、個々の体や喉の違い、トレーニング内容の違いや目的の違いにによって変わってくるかもしれませんが、基本は『無理なく上を向く』というくらいでいいかと思います。
考えられる効果を掘り下げます。
①喉のストレッチになる
これは、声を出さずともできることなのですが、一応考えられる効果なので入れておきます。
上を向くことで、喉の前面が伸びるので、喉周辺の筋肉のストレッチになります。
このストレッチによって何か声が劇的に改善するようなことはないでしょうが、喉周辺の筋肉も発声とは関連しているので、ストレッチは些細なプラスにはなっていくでしょう。少なくとも損をすることはないです。
②喉締めなどの余計な力に頼らない発声を身につけるのに役立つ=良い発声を測る定規にできる
これは、喉締め発声などの悪い発声の改善に役立つということです。
例えば、「高い声を出そうとすると喉が締まる」などのような、余計な力が入ってしまっている発声状態の時は、あまり上を向くことができません、
もちろん、全く向けないということはないのですが、かなり向きづらくなるでしょう。これは、上を向くと首の全面が伸びて、喉周り・首回りに力が入れにくくなるからですね。
ということは、これを利用すれば、喉締め発声になるのを防ぐことができます。当然、喉が締められないぶんだけ高音が出せなくなる、などのような『喉締めのおかげでできていたもの』はできなくなるでしょう。
しかし、それが本来の声帯の能力とも言えます。
そもそも、良い発声ができる(声帯の能力が高い)状態であれば、ある程度上を向いても発声にほとんど影響せず、普通に歌えます。
極端に上を向くなどすると歌いにくくなることもありますが、ある程度ならほとんど問題はありません。
つまり、喉締め発声などで上が向けなくなることを考えると、
- 上が向ける発声=良い発声ができている
- 上が向けない発声=悪い発声ができていない
という風に考えることができます。
*もちろん、様々な要素が絡み合うことなので一概には言えないこともあります。あくまでも、ざっくりと考えた場合のお話です。
ということは、『上を向く』という行動によって、良い発声なのか、悪い発声なのかを測る定規にできるということです。
そして、上を向いて発声練習すれば、悪い発声になりにくいので、良い発声の感覚を身につけやすくなると考えられます。
③ボイストレーニングの効果を上げる
上を向いて声を出すことで、トレーニングそのものの効果を上げることもあります。
例えば、裏声が上手くコントロールできない状態の人が、上を向いて裏声を出すと、さらにコントロールが難しくなります。
このコントロールが難しくなるのを利用して、あえて難しい方でトレーニングするということです。
つまり、
- まっすぐ向いたまま裏声のトレーニングを継続する
- 上を向いて裏声のトレーニングを継続する
であれば、②の方が長期的には、効率よく裏声の能力を高められる可能性が高いということです。
あえて制限を加えることで、負荷を高くしてトレーニング効果を上げるのですね。
野球で言えば、重り付きのバットで素振りする、みたいな感じです。
注意点
上記の裏声の例は、あくまでも例であり、他にも色々と当てはめることはできると思います。
ただ、注意点として、上を向くことでトレーニング効果が上がることもあるのですが、必ずそうなるとは限らないということを頭に入れておくべきでしょう。
「上を向く」ことが、ある能力に対して『良い負荷』になるのなら良いのですが、『意味のない負荷』になるのなら、あまり効果的ではないかもしれません。それどころか『悪い負荷』になるのなら、やらない方がいいこともあります。
そもそも、歌うときは基本的にまっすぐ向いているので、まっすぐ向いた状態で練習するのが一番良いという考え方もできるわけです。
なので、上を向くことが絶対に良いとは言えません。
つまり、
- 上を向いて練習すると効果が出やるものもあれば、そうならないものもあるので、効果が出るものだけ取り組む
というスタンスで練習するといいと思います。
どういう練習には良くて、どういう練習には悪いかというのも基準はないので、やってみてから判断するしかないでしょう。
とは言え、どんなトレーニングでもすぐに効果を確かめることはできないので、効果があるのか・ないのかを確かめることも難しいのが難点です。
ただ、刺さるときはすごく刺さるトレーニング方法だと思います。