ボイストレーニング

【リップロール】のやり方・効果・練習方法・理屈について

投稿日:2017年10月1日 更新日:

今回はリップロールについて書いていきたいと思います。ボイストレーニング界では有名なものなのですが、歌がうまくなるための近道とも言えるトレーニングです。もちろん歌だけでなく、声の仕事でも役立ちますし、単純に声をよくしたいという人にも役立つトレーニングですね。ボイストレーニングにおいては歌が上手くなり、ミックスボイスなどの習得にも役立つトレーニングです。

リップロールの効果

  • 息と声のバランスを整える
  • ウォーミングアップ効果がある
  • ピッチ感を鍛えるのに役立つ
  • 脱力を身につけ高音発声しやすくなる
  • ミックスボイスの習得に役立つ

今回はそんなリップロールについて書いていきたいと思います。

 『リップロール』とは?

簡単に言うと唇をブルブルと震わせながら発声することです。口を閉じた状態で軽く唇を『ウ』の形にして、そこに息を通して「ぶるるるるるるる」と唇だけを震わせるものです。よく小さい子がやったりしますね。

この唇をブルブルさせた状態で、発声練習をすることが「リップロール」です。

リップロールのやり方

口閉じたままを「ウ」と少し唇を尖らせます

そのまま(口を閉じた状態を意識)唇に息を吐きます

このとき唇の「ウ」の意識はそのままです

息を吐き続けていれば自然と「ブルルルルル」となるはずです

おそらくこれでできるはずですが、できない人もいるでしょう。

できない場合

唇の両端を親指と人差し指でつまみます

唇の口角を少しだけ押し上げるようにします

そのまま息を吐きます

「ブルルルル」となるはずです

コツを掴めば手を使わないでできます。その唇をブルブルさせた状態のまま声を発してみてください。それがボイストレーニングの「リップロール」なのです。

わからない方はこちらの動画を参考にしてみてください。わかりやすいです。

「リップロール」の効果

リップロールの効果

息と声のバランスを整える

ウォーミングアップ効果がある

ピッチ感を鍛えるのにもいい

脱力を身につけ高音発声しやすくなる

ミックスボイスの習得に役立つ

ではそれぞれについて詳しく書いていきます。

息と声のバランスを整える

「呼気(息)を流さないとリップロールができない」という点でリップロールはとてもいい練習と言えます。

リップロールの状態を続けるには当然ながら息を流し続けなければ(吐き続けなければ)いけません。そして息のスピードを一定にしないと綺麗なリップロールを続けることはできません。(*ただし、リップロール の熟練度がある程度上がるとどんな息でも対応できるようになります。良くも悪くも。その場合でも息が必要なことには変わりありませんが。)

リップロールをしている状態というのが、息を流すことを強制するのですね。もちろん声を出すこと自体息が必要なものですが、リップロールは連続的な息の流れを強制する力があります。息のコントロールができていない人にとってはとてもいい練習になるのですね。

つまり、「呼気を流しながら声を出すことで、呼吸のコントロールが上手くなる」と言えます。言い換えると、「リップロールができれば、呼吸のコントロールが上手くなる」と言えます。

ココがポイント

リップロールというのは唇を震わせるために息を吐き続けないとできません。息を止めてしまうと当然できないし、息が流れない発声をしていてもうまくできないのです。逆に息を吐きすぎると、それもリップロールは解けてしまいます。リップロールができている状態の発声は息を一定量吐き続けている発声なのです。

ただし、先ほども書いたようにリップロールに慣れすぎると割とどんな息にでも対応できるようになってしまいます。良くも悪くも。

リップロールを練習し続けることは「リップロールができている状態」体に定着させることになります。ここでは息と声のコントロールを定着させることになります。

ポイント

リップロールは声と息のバランスを整えます。

『ウォーミングアップ効果』がある

リップロールはウォーミングアップにも最適です。これは後半に記述するリップロールの脱力の理屈と大きな関係がありそれによりウォーミングアップ効果を生み出します。(ここでは理屈は置いておいて後半で説明します。唇のブルブルの振動が喉に伝わって脱力、、、とかではないですよ!そんなわけはない。もちろん口周りのマッサージにはなりますが。)

例えば、朝起きてすぐの状態ではほとんどの人が声出ませんよね?これは声帯や声帯周りの筋肉が眠っていた(動いていなかった)ので、いきなり動けないという状態です。これはどんなスポーツでも同じですね。

こういう状態の時にリップロールをすると脱力の効果により声帯など必要な部分にのみに重点的に負荷がかかり(動かす)ウォーミングアップ効果を生み出すのです。息も流さないとできないので、息を発射する部分(肺や横隔膜)の運動にもなります。これがウォーミングアップ効果を生み出すのですね。

もちろん普通に声を出すことでもウォーミングアップになりますが、リップロールの方が効果的に効率よくウォーミングアップできるはずです。歌う前に15分やるだけで全然違います。

当然ですが、唇や唇周りがかなり動くので表情筋をほぐしたりストレッチする効果もあります。表情と一つで声が変わるとまでは言いませんが、表情筋も声をよくするためには必要なファクターです。また、ほうれい線予防に効くなど言われていますが効果の程は定かではありません。ただ、リップロール筋(口輪筋)が発達する気がします。これはこれでどうなんでしょうか?美容的にはマイナス? 人によるでしょうが。

ポイント

ウォーミングアップ効果や表情筋ストレッチ効果あり

ピッチ感を鍛えるのにもいい

リップロールはピッチ感を鍛えるのにもとてもいいトレーニングになります。これには二つの理由があります。

リップロールがピッチ感を鍛えやすい理由

  • 音程がわかりやすい音に変化するから
  • 音の発射地点が耳により近くなるから

という理由です。詳しく解説していきます。

自分の出している声の音程を聞き取りやすいとピッチ感が良くなる

これは言うまでもないですね。だから「バケツやダンボールをかぶれ」「お風呂で練習しろ」と言われるのですね。

ココがポイント

自分の出している音程が聞き取りやすいと言うことは外耳(耳の外から聞こえてくる音)で聞く音の比率が多くなっていると言うことです。

自分の出している音がわかりやすければ、音程も合わせやすいと言うことです。

当然、演奏も外から聞こえてくる音なので、自分の出している音を外耳で聴けるようになることで、ピッチが合わせやすいのです。

なぜリップロールは聞き取りやすい?

これは先ほど書いた二つの理由です。ひとつは、

音の出発点が外側に出ている(耳に近い)練習法だから

だと考えます。

ココがポイント

声は普通声帯で作られ、そこから口を経由して外へ出ていきます。この場合音程が作られている音の出発点は声帯なので位置としては喉の奥ですね。

これがリップロールだと一度唇にぶつかって再度音となるので、唇から出てくる音のように感じられます。音の出発点が外側に近ければ外耳に近いわけですから、聞き取りやすいということです。僅かな誤差ですが、口の前に手をおくだけでも自分に聞こえる音は随分と変わってくるものです。音楽は若干の違いが大きな違いになることが多いですね。

もう一つは

唇の振動による倍音がピッチを感じやすい

という点です。

ココがポイント

リップロールは特有の「ぶるるるるる」という倍音が生まれます。(正確には「るるるる」。声と合わさり「るるる」に聴こえます)

唇の「ぷるるるる」という倍音に音の性質が変化するので、音程を感じ取りやすいのです。普通に声を発するよりも倍音が単純化すると考えています。声には様々な倍音が乗っており、それを唇でシンプルな倍音に変換するのです。

つまり、リップロールによって音程が聞き取りやすい状態に変化しているということです。

ちなみに倍音が多いと音程が聞き取りにくいのはシンバルなんかがそうですね。シンバルの「シャーーーン」という音は倍音が多すぎて「何の音(音階)?」と訊かれると判別できないですね。逆に倍音の少ない音、例えばサイレンの音などは音階が非常にわかりやすいです。

このように倍音は少ない方が音階を認識しやすいのです。そしてリップロールはその音階がわかりやすい音に変化させていると考えています。

リップロールをすることで

音の出発点が外耳に近づく

音程が聞き取りやすい音に変化する

この二つの点で自分のピッチを感じやすいと言えるのです。

ポイント

リップロールはピッチ感を鍛えるにも大きな効果あり

脱力を身につけ高音発声しやすくなる

リップロールはその特性上、喉の脱力に非常に効果があります。そしてこの脱力の理屈こそ、リップロールに中でも非常に重要なポイントで効率よく喉のコントロール能力を向上させるのに大きく役立っているものなのです。まぁでもリップロールをしっかりとできていれば理屈なんてあまり深く考えないでも効果はあります。なので、あまり難しく考えたくない人は「リップロールは脱力に良くて、高音の練習になる」とシンプルに考えても大丈夫だと思います。わからなくても良いトレーニングになるのがリップロールの良いところです。

ココがポイント

ただし、この脱力の理屈を深く考えることでわからないよりは練習の成果が出やすいでしょうし、何よりリップロールのデメリットについても考えることができます。そうなのです。リップロールはものすごくいいトレーニングなのですが、「デメリット」が存在すると考えています。全てにおいて万能なトレーニングなどないのですね。

脱力の理屈についてこれから述べていくのですが、非常に長くなるのでお付き合いください。

リップロールがなぜ『脱力に最適』で『高音発声の練習に最適』なのか?

この章では、「なぜリップロールが脱力・高音発声にいい練習なのか」について述べていきます。この脱力の理屈について先に答えを述べておきます。それは『リップロール(唇)が呼気圧を支えるもう一つの声帯(弁)の役割をすることで脱力できる』ということです。重要なので囲っておきましょう。

『リップロール(唇)が呼気圧を支えるもう一つの声帯(弁)の役割をすることで脱力できる』

「何を言っているの?」と思うでしょうが、それで大丈夫です。これからその理屈を詳しく書いていきます。ただ、その前にこのリップロールの脱力の理屈について考えるには、まず高音域の発声と声帯について考える必要があります。なのでステップを踏んで説明していきたいと思います。

この章でのステップ

1、高音発声について考える

2、リップロールが呼気圧を支えるもう一つの弁になる

3、支えるとどうなる?

という感じで順番に考えていく必要があります。では順に説明していきます。

高音発声について考える

基本的に音の高さというのは二つの力によって決まります。つまりこの二つの力の調整で『高音発声』になっているのです。

二つの力

1.声帯の閉鎖する力

2.呼気圧の強さ

この二つが音程をコントロールする大きな要素です。まずはこの二つと高音発声の関係性について見ていきましょう。

注意

ここからは画像や図や絵を使った解説などもありますが、実際の構造とは大きく異なるのでご了承ください。あくまでわかりやすく解説するためのイメージ画像です。また、画力の無さには圧倒的自信があるのでそこは許してください。すみません。

高音発声と『声帯』について

一つ目は声帯の閉鎖する力声帯の閉鎖度合いを高める(閉鎖を強める)力と高音についてです。

高音発声が苦手な人というのは基本的に声帯のコントロールが上手く出来ていないのです。それは地声やファルセットやミックスボイスなど基本的には全てにおいて言えるのですが、特にミックスボイスのような強い高音発声はそのコントロール能力が問われる発声です。理想的な高音発声は声帯を上手くコントロールしている状態です。

ここから図解をつけて「声帯の閉鎖」について記述していきますが、注意すべきことがあります。閉鎖というとどうしても開閉の動き、左右(もしくは上下)の動き、つまり直線的な力のイメージになると思います。それでもいいのですが、実際には声帯は上下左右に力が働いて音程を動かしています

声帯は上記図のような動きで音程の高低を決めています。つまり縦に伸びる力を使って声帯を締めています。これだけ頭に入れてしておきましょう。でないと今から説明する図は縦の動きが見えないので勘違ったイメージを持ってしまう人もいるかもしれないので。

では、ここからは声帯の動きだけに注目して(縦に伸びる力は考えないものとして)図解していきます。

理想的な低音発声時高音発声時の声帯の状態は下記の図のような状態です。

声帯のみが動いている状態です。

しかし、声帯が上手くコントロールできない状態で高音発声するとどうなるのか?その声帯を無理やりコントロールしようとして、首や喉の不必要な筋肉を使ってしまうのです。なので詰まった声や苦しい声、要は「喉が締まる」という現象が起こるのです。

高音発声と『呼気圧』について

二つ目は、「呼気圧の強さ」と高音についてです。

ここでの呼気圧というのは厳密には「声帯にかかる息の圧力」として考えていますが、シンプルに「息が肺から押し出される量や力」もしくは「息を吐く量」と考えてもいいと思います。(正式な言葉の意味よりも理解が大事)

息の強さと音程は基本的に比例関係にあります。「息が強ければ強いほど音は高くなる」ということです。(理屈の上では。そうシンプルなものでもないのですが、ここではシンプルに考えてみましょう)

試しに空手の正拳突きをするときのように、思いっきり息を吐きながら「はっ!!!」と声を出してみましょう。どうでしょう?自分の声の中では結構な高い音になったはずです。それと同じ音程で弱い声(弱い息)で出してみると「結構高い音だったんだ」と感じるはずです。

例えば、風の強い日や台風の日に窓が「ピーー」と鳴りますが、それも風が強ければ強いほど高い音が鳴りますね。窓の隙間に通る風に強さが強くなるので音が高くなるのですね。人間の体(声帯や喉)はそう単純なものではないのですが、窓の隙間を声帯と考えると、息(風)が強ければ高い音が出るというのは当然なのです。

「高音発声」と「声帯」と「呼気圧」について

高音発声について考えるときに先ほどの二つを複合的に考えないといけないということが少し話を難しくさせるのですね。つまり声帯の閉鎖と呼気圧の関係性の両面から考えていかなければいけないということです

声帯と呼気圧の関係性を体感してみましょう。

体感その1

まずは息を吐いてみましょう。できるだけ長く。声を出さずに「はーーーーー」と。次は同じ力で声を出しましょう。「あーーーーーーー」と。おそらく、声を出した方が息は長く持つでしょう。

これは声帯が息の通り道に蓋(弁)をしているからですね。その弁(声帯)に息が通ることで音が鳴っているのですね。なぜ声を出した方が息が長持ちするのか?それは息の出口が狭くなれば(声帯が閉鎖すれば)、外に出る息の量が少ない分、息は長持ちします。

これは考え方として声帯(弁)が息の圧力(呼気圧)を支えていると言えます。肺から押し出された空気が声帯(弁)にぶつかり、その弁が振動して声が出るのですね。

体感その2

では次は思いっきり声を出してみましょう。大きな声が出せない人は枕を顔に当ててなど工夫してみてください。音程はなんでもいいので、自分の限界に近いできる限りの音量を出してみましょう。

「あ”ーーー!!!!!」

さて、ものすごい息を使ったと思います。そしておそらく声は割れたのではないでしょうか。叫び声のようなシャウトのようなそんな声になったと思います。これは声帯(弁)が息の圧力に耐えきれずに、崩壊している状態です。つまり、声帯(弁)が息の力で押し負けている状態ですね。

(あまり弁という言葉にしっくりこない方もいるかもしれませんね。簡単に言うと、流れをせき止めたり調節したりするものを指す言葉です。あまり深く考えず、蓋のようなイメージでも扉のようなイメージでもなんでもいいです。ここでは声帯のことです。)

息が強すぎて綺麗に音を鳴らせない状態となっているのです。これが声が割れるということです。

このように声帯と呼気圧は密接な関係性があるのですね。そして高音が苦手な人が強い高音を出す時についても同じように考えることができます。

まず、高い声を出そうと呼気圧を高めます(息をたくさん吐く)。呼気圧を高めた方が高い声は当然出ますが、声帯を締めるコントロールができてないので、息だけが高まって声が割れてしまいます。もしくは割れないように声帯をできるだけ締めようと喉全体が締まって苦しい声になります。

つまり高音発声に重要なのは、呼気圧に耐えられる声帯閉鎖(声帯コントロール)を身につけるその声帯コントロールは喉周りの余計な力を使わずにできるようになる。ということです。

要するに「喉の周りは脱力した状態で声帯を締める力」が必要になるのです。これを頭に入れておきましょう。

最初に述べたように高音を発声するためには

1.声帯の閉鎖する力

2.呼気圧の強さ

が必要です。しかし、高音が苦手な人は声帯コントロールが上手くできないために以下のような状態になるというのがここでのまとめです。

高音が苦手な人

  • 声帯を一緒に喉が締まってしまう→声帯のみを締めれる能力がない、その神経・筋肉が発達していない
  • 息で押し出そうとして声が割れる→声帯が締めきれないから声帯が息の圧力(呼気圧)に負けて声が割れる

以上で「高音発声について考える」の章は終了です。

リップロールが呼気圧を支えるもう一つの声帯(弁)になる

さて、ようやくリップロールの出番です。ようやく本題という感じです。リップロールがなぜ脱力や高音発声に最適なのかということについて踏み込んでいきます。

ここで先ほど述べていた、リップロールは「呼気圧を支えるもう一つの声帯(弁)になる」ということが重要になってくるのです。先ほど声帯は弁でありその呼気圧を支えているというお話をしました。その弁が息の圧力を支えていて、支えられなければ決壊(割れる)してしまうというお話ですね。

リップロールはその弁を唇で疑似的に作っているのです。リップロールの動きは「唇を閉じてそこに息の圧力をかけることで振動する」ことで「ブルルルルル」と鳴るのです。この動きが「閉じた弁に息を通して震わせる」という点で声帯の動きと同じような動きをしているのですね。つまり疑似的に第二の声帯を作り出しているのです。そうすることで、呼気圧を支える第二の弁の効果を果たすのです。

これがリップロールの練習法における最大の鍵です。「ん?第二の声帯(弁)になることでどうなるの?」と感じるかもしれませんね。もしかしたらカンのいい人ならなんとなく、その効果が見えてくるかもしれませんが。

ちなみに「声帯以外で呼気圧を支えるためなら、口を閉じてハミングにすればいいのでは?」みたいな疑問もありそうですね。でもそれだと息の圧力の出口が鼻に抜けるだけです(口が出口の時よりは出口が狭いですから、僅かながら声帯にかかる圧力軽減になるかもですしれません。それもハミング練習の効果と言えば効果ですね)。当然鼻を塞げば、息の出口はありません。

リップロールが最適なのです。

では呼気圧を支える第二の弁になることでどうなるのかについて書いていきます。

リップロールが呼気圧を支える第二の弁になることでどうなる?

リップロールが呼気圧を支えてくれることによって声帯にかかる呼気圧が軽減されます。

イメージではこういうイメージです。(数字もあくまで例です。)

声帯にかかる呼気圧が軽減されるということは強い呼気圧をかけたときに声帯が割れにくくなるということです。唇が呼気圧を支えてくれているので、声帯が普通の状態よりも息の圧力に耐えられる(負けない・音にできる)のです。耐えられるということは割れないということですね。

高音発声の部分で語りましたが、高音が苦手な人は声帯が割れないように声帯を閉鎖させよう(音をしっかりと鳴らそう)として余計な喉の締まりを生み出すという話をしました。声帯を呼気圧に耐えられるように支えようとして。その圧力が軽減されるということは支えようとする力(余計な締まり)が弱くなるということですね。

つまり、リップロールをすることで声帯が割れにくくなる→余計な締まりが少なくなると考えることができます。同じ意味として声帯が呼気圧に耐えられる→余計な締まりが少なくなるとも言えます。

例えば声帯が70の呼気圧までしか耐えられないもの(声帯のみを閉鎖できるのは70まで)と仮定すると、下の図のように30の喉全体を締める力(余計な力)を使って、100の呼気圧を支えられるように声を出そうとします。

そんな喉を持つ人がリップロールをしている状態だと、

このように30の力を脱力することができるのです。これがリップロールの脱力の理屈だと考えられます。

もちろんこの数字はあくまで例としてあげているものなので、実際の度合いは人それぞれですし、本来はこんな数字では測れないものです。あくまで単純化して説明するための図解です。

この脱力を利用して声帯のコントロール能力を向上させる

リップロールをしている状態では呼気圧の関係で喉の締まりを軽減することがわかりました。さて声帯の状態はどうでしょう?声帯の状態はそのピッチを維持する声帯の形を取っています。いつもなら余計な力に頼らないと声帯を支えられない(閉鎖できない)けれど、リップロールしている状態は余計な力を軽減した上でその音を鳴らせる声帯の状態を維持できているのです。

おそらくリップロールを解くと、何秒間かは持ちますが、だんだん時間が経つにつれて声帯が維持できなくなってきて喉が締まってきたりすると思われます。無理な高音ほどリップロールを解くとわかりやすいです。これはリップロールの力を借りているということですね。

つまり、この脱力状態でトレーニングすることで、余計な力に邪魔されずに必要な声帯のコントロール部分を鍛えることができると考えられます。

喉に力が入った状態でのトレーニングは喉が締まる余計な力が入った状態なので、余分な力の影響で鍛えたいところへの大きな成果が得られないということです。つまり、リップロールにより声帯を直接コントロールしている部分のみを集中的に鍛えやすくなる(動かせるようになる)と言うことです。

もちろん脱力状態を維持することで、その状態が癖づいてくるという面でも効果があると考えられますね。

リップロールがなぜ脱力に最適で高音発声の練習に最適なのか?のまとめ

ここでのまとめは以下のようになります。

脱力の理屈まとめ

1、リップロールで練習する

2、呼気圧が唇で支えられる

3、余計な力が普段よりもいらなくなる(脱力)

4、声帯周りが在るべき形に近づく

5、本来使うべき部分(声帯をコントロールする部分)に負荷がかかりやすくなる

6、その部分が鍛えられて声帯をコントロールしやすくなる

7、余計な力が入らずに鍛えた部分を動かして高音が出せる

このように考えられます。なので、大事なのはリップロールをやったからといってすぐに高音が出せるようにはならないということです(一時的には普通に比べると少しは出せるでしょうが、急激な成長という点では難しいでしょう)。リップロールをすることでより効果的に訓練できるということが重要です。

この脱力がリップロールがミックスボイスを身につけやすいということに繋がります。

ポイント

リップロールは脱力につながる

リップロールの注意点やデメリットについて

とても脱力や高音発声の練習に最適なリップロールですが、デメリットが存在します。(ただし、これをデメリットととるかは個人次第で、メリットと感じる人もいるかもしれません。

それは「リップロールのやりすぎ・慣れすぎによって、声帯閉鎖が弱いのが癖になる」ということです。もっとわかりやすく直接的に言うと、「弱々しい声になる」ということです。この「慣れすぎて」と言うところも結構重要なのですが、それをどの程度と線引きすることはできません。個人的な感覚ですが、「不自由なく低音域から高音域まで綺麗にリップロールできるようになる」くらいが慣れてきた頃だと思います。

この状態でリップロールの練習をやりすぎると、弊害が出てくるだろうと考えています。特に高音域帯、もっと言うとミックスボイスに大きな影響を与えるかもしれません。何事もやりすぎはよくないということですね。

なぜデメリットが生まれるのか?

『ミックスボイスまである程度の脱力状態でコントロールできるような人』は、余計な力をフルに使って喉がすごく締まってしまう状態からは解放されていると思われます。そういうある程度の能力がある状態(リップロールのような疑似的な脱力を必要としない状態)でミックスボイスの音域帯のリップロールを集中的に繰り返すと脱力状態が癖になり声帯を強く締める(強く鳴らす)ことが難しくなってくる可能性があります。

リップロールは声帯にかかる呼気圧を軽減させ喉を脱力させますが、不必要な圧力の軽減は声帯閉鎖自体を弱めます(喉の余計な力ではなく。その結果息が流れやすい状態を生み出します。その息を流す状態が癖になって過度な脱力(鳴りが弱い・閉鎖が弱い)状態を生み出します。つまり『薄い声帯閉鎖のミックスボイス』になりやすいということです。

これはリップロールに最適化した状態の練習を繰り返すとそうなると考えています。つまり、『ミックスボイスまである程度の脱力状態でコントロールできるような人』がリップロールで高音のミックスボイスの練習をしたいときは、ある程度りの強さを意識して練習した方がいいと考えています。そうやって鳴りの強さや声帯自体の閉鎖感を意識して練習できればいいのですが、ここで『問題』が出てくるのです。

問題点

声帯がある程度コントロールできる人にとって鳴りの強い声での高音リップロールはやっていてある程度苦しいのです。この苦しさは喉が締まる苦しさではなく、呼気の負荷的な面で苦しいのです。なぜなら、ある程度の呼気圧を声帯が受け止めきれているので(声帯を綺麗に閉鎖できている)、唇の弁はただ息を止めている弁でしかない状態になっているのです。つまり脱力の余地が喉周りにはないということです。

この脱力の余地が喉周りにはないが問題なのです。

「その呼吸面で苦しいリップロールを最適化しよう(楽をしよう)と声帯の閉鎖自体を緩めるような脱力状態が癖になる」懸念があるのです。その結果「薄い声帯閉鎖が癖になる」のです。

このように余計な力がない場合は、不必要なところ(声帯の閉鎖)まで脱力するのが癖づいてくるのです。つまり、喉が脱力できてある程度声帯コントロールがある人でかつ強く高音を鳴らしたい人にとってはデメリットになる恐れがあるということです。

ちなみに、ミックスボイス以外でも当然その懸念はあります。しかし、ミックスボイスのような中高音発声に比べるとそういう弊害は現れにくいかもしれません。なぜなら地声やファルセットはある程度の特殊な声帯閉鎖(地声やファルセットに比べて)を必要としないので、リップロールを繰り返しても変な癖がつきにくい(地声などは普段使いますし)と考えています。というより地声やファルセットの音域帯は薄く声帯を使うほうが好ましい音域帯です。(これは完全に個人の音楽観によるでしょうが、ミュージカルやオペラのようなジャンルでなければ、そういう傾向が強い。)理屈的には地声でもファルセットでも同様のことが起こります。

デメリットのまとめ

ある程度の声帯コントロールを持った人が練習をしすぎると上記のような状態が癖となり、癖が度を越して弊害となってしまうという内容でした。ただしデメリットと感じるかどうかは個人次第です。薄く柔らかく高音域帯を歌いたい人にとっては嬉しい限りなのかもしれません。それでも薄々・弱々な声にはなりたくないでしょうから、注意した方がいいでしょう。まぁこの点を頭に入れておくだけで違うと思います。

何度も書いていますが、これはあくまで『ある程度のミックスボイスのコントロールを身につけ脱力の余地があまりない人』のお話です。なので、そうではない人にとっては非常にいい脱力効果を生み出すはずです。

なので、「なんかやり過ぎて声が薄くなってきたな」とか「あれ?声帯をしっかり鳴らせなくなってきたな」という感じが出てきてそれが嫌だと感じる人は注意です。そういう方は地声やファルセットの練習やウォーミングアップ程度に抑えたほうがいいかもしれません。

【リップロールの向き不向き】

呼気圧を受け止めてくれる→声帯部分の息が流れやすくなる(薄い閉鎖)→やりすぎる→声帯閉鎖が弱いのが癖になる→閉鎖の強いパワーボイスに向いていない→『綺麗系のミックスボイス』の練習に向いている

こういう点で綺麗系のミックスボイスに向いている練習だと考えています。

【綺麗系ミックスボイス】の出し方・練習方法

今回は柔らかいミックスボイスや薄い閉鎖のミックスボイスといった綺麗系のミックスボイスの出し方・練習方法について書いていきたいと思います。ミックスボイスも色々な種類に分けられ、人によって様々です。それぞ ...

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ポイント

綺麗系ミックスボイスを習得するのにとても良い練習方法

タングトリルとの合わせ技について

ここで触れておきたいのが、タングトリルとの合わせ技との効果についてです。タングトリルとの合わせ技はボイトレ界では結構有名だったりするのですが、ここではその効果についての考察です。

リップロールとタングトリルの合わせ技?

合わせ技というのはその名の通りリップロールとタングトリルを同時にするということです。この合わせ技はボイストレーニングに結構詳しくなってきた方や、いろいろな練習法をやっていると考えつく方法かもしれません。

そのリップロールとタングトリルの合わせ技、ここでは「リップトリル」と呼ぶことにしますね。(正式名称ではありませんのでご注意ください。長いとめんどくさいので省略するだけです。そもそもリップロールのことを別名リップトリルと言ったり言わなかったり・・・・。ここでは置いておきましょう。)

リップトリルのやり方

さて肝心のリップトリルのやり方ですが、

  1. まずはリップロールを出しやすい音域で出す
  2. その口の中の空間でタングトリルをする

これだけです。もしくはタングトリル→リップロールの順番がやりやすい人もいると思われます。

同時にすることは可能ですが、結構難しいですね。簡単にできたという人も果たしてそれは正しく完璧にできているでしょうか?この正しく完璧にというのも結構重要だったりします。

合わせ技の効果

大きな結論では「ある一点においてはより一層効果を発揮するが、それ以外はそうでもない」と考えられます。そのある一点というのが「息を流す力が強くなる」です。

この「息を流す力が強くなる」という点について説明していきます。リップロールとタングトリルを同時にするとどういうことが起こるか?舌を回転させながらリップロールをしなければいけないので強い息の流れが必要になります。二つを同時に行えるだけの息の量と圧力が必要になるわけです。

つまり普通のリップロールをしている状態よりも『強い息を必要とするリップロールになる』ということです。この合わせ技をしている状態からタングトリルだけを抜いたら息の強いリップロールになるでしょう。そういうことですね。つまりリップロールにタングトリルという重りを使うことでより一層息の流れや息の圧力のあるリップロールを自然にできるということです。

ということは前の段落で書いたデメリットのことを考慮に入れると、息が強まるぶん薄い閉鎖の声の練習になると考えることができます。「息の圧力を普通のリップロールよりも高められるという点ではより一層の効果がある」と考えられます。

ただし、正しいタングトリルの状態を維持してリップロールを綺麗にできた場合の話です。やってみるとわかるのですが、実際はリップロール(唇)が息の圧力に負けて崩れそうになります。つまり両方を綺麗に上手くやるのが非常に難しいということです。

また勘違いしてはいけないのが、「脱力の相乗効果を発揮する訳ではない」と考えられます。

リップロールは「第二の声帯」が脱力を促す。

タングトリルは「舌根の邪魔を取り払う」ことが脱力を促す。

脱力のアプローチが違いますね。同時にしたからって効果の足し算にはならないだろうということですね。特にタングトリルは舌根へのアプローチが主な目的なのでそれ以外は普通の状態の方が練習効果が高いように思えます。(余計なことはせずに目的に集中した方がいいということです。)

なので「効果は足して2で割った」ようなものになるでしょう。ただ、息が多く必要な分呼気圧の強いリップロール と考えるとこちらの方が脱力面で効果があるように考えられるかもしれません。ただし、これも理屈の上ではそうだと言えるだけで実際に混ぜるとお互いのいいところを潰し合う場合がほとんどでしょう。(タングトリルの弁の効果で息の流れが不安定な状態になっているその息がリップロール(唇)にぶつかるためにどちらかが上手くできなくなる。息が強過ぎて唇の圧力弁が崩壊気味になる。)

なので『完璧に綺麗にできた場合のみ』脱力面でより効果があると言えるでしょう。

つまり最初に言っているように「息の圧力を高められる・息の量が多く必要という点においてはより一層の効果がある」と考られますし、やる価値もあるかもしれません。ただ、それ以上でもそれ以下でもないように思います。

よってこの合わせ技を活かすならリップロールに重り(息の負荷)をつける感覚でなら活かす道もあるかもしれません。ただ、それなら呼吸系に負荷を与える別のトレーニングをしますね。わざわざリップロールでする必要性はあまりないです。

【結論】

呼吸面(息のコントロールなど)を鍛える点では効果がある。脱力は完全に両方きっちりできた場合のみより効果があるかも?(理屈上は、ただ難しい)

リップロールを使った基本的な練習法

リップロールは様々なトレーニングができるでしょうが、基本的には2つのトレーニング方法で十分でしょう。

step
1
ピアノなどのスケールを使って音階に合わせてリップロール

step
2
曲を全てリップロールのみで歌ってみる

というような練習方法がいいでしょう。単純に音階をゆっくりと上下させる練習もよし。一つの音でロングトーンをする練習もよし。様々な練習方法が考えられます。

【リップロール練習法】

練習その1

1、基本的には音階に合わせて無理をせずに地声からファルセットまで綺麗にリップロール(これだけでも十分です。)

練習その2

2、綺麗に繋げられるようになったら地声の上の音域(換声点より上の音域)を地声の意識でファルセットに移行しないように少し頑張ってみる。高音域の地声を開拓していく意識で。リップロールしているので少しくらい無理するくらいが丁度いいです(が無理し過ぎないように。厳しい時はファルセットへ)。 すぐにはミックスボイス系の高音発声が出るようにはならないですが、リップロールの脱力の効果はあります。半音づつ開拓する気持ちで反復練習しましょう。

1・2の練習を繰り返していくことがミックスボイスを開発しやすい道だと考えます。綺麗系ミックスボイスの出し方・練習方法にも書いていますが、この地声とファルセットの間の声帯を使い方を開拓していくことが重要です。

様々な意識でリップロールの効果を変化させる

単純にリップロールと言っても意識次第で効果も微妙に変わってきます。リップロールに慣れてくると簡単にリップロールができてしまうので、同じリップロールでもやり方を工夫できます。リップロールをやる上で意識すべき点・工夫できる点は2つです。もちろん自分なりに工夫できる点を開発・研究していくことも素晴らしいことだと思います。

リップロールの練習で意識すべきポイント

リップロールは比較的トレーニング方法の中では意識すべき点は少ない(できているだけでそれなりの効果があるから)のですが、その効果を高めるためには意識すべきポイントがあります。

リップロールの練習で意識すべきポイントは二つです。

意識すべきポイント

唇の振動の速度(速い・遅い)

口の中の空間(広い・狭い)

です。

『唇の振動の速度(速い・遅い)について』

唇の振動速度は、息の量と比例します。速ければ多いですし、遅ければ少ないでしょう。ブレスコントロールの面でトレーニングになるということですね。声の大小に応じた声帯コントロールを鍛えます。どちらがいいとかではなく、どちらも使い分けてトレーニングするのが理想です。

■緩やかなリップロールは繊細なボイスコントロールのトレーニングになる

■強いリップロールは声量ある声のボイスコントロールのトレーニングになる

『口の中の空間(広い・狭い)について』

口の中の空間は広ければ太い音色になるでしょう。リップロールが持続できる範囲内で口の中にピンポン球が入っているような状態をイメージしましょう。その状態でリップロールを解くと「オ」の発音に近い「ウ」になっているはずです。

逆に狭ければ浅い明るい音色のリップロールになるでしょう。口の中の空間を作らないでするリップロールですね。こちらの方がやりやすいと思います。リップロールを解くと「イ」の発音に近い「ウ」になっているでしょう。

これもできれば使い分けて練習した方がいいですし、面倒くさい方は自分が理想とする歌い方や音色に近い方で練習した方が効率がいいです。

■喉の空間をしっかりと作った状態でのボイスコントロールのトレーニングになる

■喉の空間をあまり作らない状態でのボイスコントロールのトレーニングになる

まとめ

この記事についてのまとめです。

リップロールのまとめ

■リップロールには多くの効果がある

■リップロールには注意点やデメリットが考えられる

■タングトリルとの合わせ技も使い道はあるかも

■リップロールは意識で練習方法を工夫できる

ということです。かなり長くなってしまいました。最後まで読んでいただきありがとうございます。

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