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ボイストレーニング

歌の息継ぎの仕方とブレストレーニングについて

更新日:

この記事は

  • 歌におけるベストな呼吸の仕方について
  • おすすめのブレストレーニングの方法

という内容です。

歌における「呼吸の循環」はたくさんの息の出し入れが必要

まずは歌の「呼吸の循環」を整理しておきます。

 

歌は

  1. 息を吸う
  2. 歌声を出す(=息を吐く)

という二つで呼吸を循環させています。

歌うときの呼吸の循環のイメージ

普通の呼吸では「息を吸う」「息を吐く」ことによって呼吸を循環させますが、歌の場合は基本的に「息を吐く」の部分が「歌う」に変わりますね。

 

当たり前と言えば当たり前のことではありますが、この二つの動作によって歌の呼吸は循環している。

 

そして、歌は普段の会話などと比べるとこの呼吸を『循環させる総量』が多い。

普段と歌うときの呼吸の差

歌声はたくさんの息を使うからですね。

 

なので、「何のためにブレスコントロールを鍛えるのか?」という問いに対しての答えは”歌に必要な息の総量を上手く循環させるため”と言えるのかもしれません。

 

①息の吸い方

息は「鼻から」でも「口から」でも吸いやすい方でいい

まず息は「鼻から吸うのが正しいのか」「口から吸うのが正しいのか」という問題について。

 

この問題は色々な議論がありますが、個人的な結論から言うと、

  • 息を吸えるのであれば「吸い方」は何でもいいが、しっかりと息を吸おうとすると必然的に口から吸うことが多くなるだろう

と考えられます。

 

これは鼻の穴と比較して口の方が入り口が大きく、”時間あたりに取り込める空気の総量”が多くなるので「口から吸った方がいい」という結論になるということです。

呼吸の入り口は口の方が大きい

 

例えば、

マラソンでも短距離走でもいいのですが全力で走った後、人間は自然と口を開いて「はぁ。はぁ。」と口で呼吸しますね。そういうとき無理に口を閉じて鼻呼吸をすると苦しいはず。

これは短時間でたくさんの空気が取り込める呼吸方法をするために本能的に口を開けて呼吸していると言えるのでしょう。

 

そして、歌においても短時間でたくさんの空気を使うので、必然的に口呼吸になっていくことが多いだろうと言えます。

 

もちろん、口よりも鼻の方が一度に多くの空気を吸い込める人は鼻でも問題ないということになります。

 

また、そうではない人も「歌の入り」「間奏後の入り」など呼吸が忙しくない時は鼻で吸っても特に問題ないでしょう。

というのも、鼻呼吸は短い時間で多くの息を取り込むのには向いていないが、『長く深く吸える』というメリットはあります。つまり、ゆったりと深く呼吸を整えるタイミングでは鼻呼吸の方が有効な時があります。

 

『腹式呼吸』は”そこまで”気にしなくてもいい

歌においては「呼吸方法が大事で、”腹式呼吸”を身につけなさい」とよく言われると思いますが、個人的には

  • ”呼吸方法自体”はそこまでこだわらなくてもいい(*クラシックは別)
  • 自然に呼吸すればいい

と考えています。

 

詳しくは別記事にまとめているのでここでは簡単に述べますが、

  • ポップスにおいて腹式呼吸が大事だと言われる理由は『”腹式呼吸自体”が大事なのではなく、腹式呼吸を意識することで”息の能力が高まる”こと』だろう

と考えられます。

 

つまり、歌においては呼吸方法という『型・フォーム』が大事なのではなく、息という『結果・能力』が大事なのですね。

これはポップスのプロのシンガーたちをよく観察すればなんとなく感じることだと思います。

 

なので、呼吸方法の『型』に捉われ”過ぎなくて”いい。

 

ベストな息の吸い方は”自然に吸う”

多くの人は普段話すときにはそこまで『呼吸方法』を意識することはないと思います。

無意識に息を吸って無意識に話しているはず。

大きな声でも小さな声でも、長いフレーズでも短いフレーズでも特に呼吸を意識することはないでしょう。

 

同じように、歌も特に意識のない自然な呼吸を心がけるのが一番いいと考えられます。

 

もちろん、歌は普段の会話よりも息をたくさん消費しますからそのぶん息の量が必要になります。

ただ、人間はある程度自然に必要な分の息を取り込むようにできています

 

例えば、

広いグラウンドなどで100メートル先にいる人間に向かって「おーーい!」と呼びかけるイメージをしてみてください。

この「おーーい!」と呼びかけようとした瞬間の呼吸は、誰もが普段の会話ではしないくらいしっかりと息を吸い込むと思います。

 

このように、人間は「出したい声」に対して、「適切な呼吸量」を体が勝手に取ってくれる生き物です

ある程度はこの本能の部分に任せても問題ないでしょう。

 

つまり、

  • 「これから出す声」に合わせて自然に呼吸する
  • 「出した声」に対して自然に呼吸する

という二つを心がけておけばいいかと。

 

呼吸に害があってはいけない

「自然に呼吸すればいい」とは言っても、呼吸に害がある状態はよくない

 

例えば、

喉に力が入りすぎている状態の場合、息を吸うときに音が鳴りやすいです。

「キュッ」と鳴ったり、「ゼーー」と鳴ったり。こういう吸う時に声帯から鳴る音を「吸気音」と言います。

これは声帯に力が入りすぎているので、呼吸時にも声帯の力みが完全に解除されず、声帯が閉じ気味になってしまうことで起こります。

 

吸気音が鳴るイメージ図

このような状態は自然な呼吸が邪魔されてしまい、普通に息が吸えずに少しづつ苦しくなってしまいます。

 

全く息が吸えないわけではないのですが、

  • 「喉に力が入る」→「自然に吸えない」→「息の力不足でまた喉に力が入る」・・・

という悪循環を生み出しどんどん苦しくなっていく可能性があります。

 

こういう状態は『呼吸に害を与えている状態』と言えるので、この状態にはならないようにするべきでしょう。

 

「吸気音が鳴らない呼吸」というのは『自然な呼吸』の一つの目安になると考えられます(*ただし、吸気音が鳴るからといって必ずしも悪いとは言えないです。あくまで目安。)

関連
歌うとき喉に力が入る原因【”2つの状況”と”2つの状態”が考えられる】

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ブレスのタイミングは臨機応変に

ブレスのタイミングもよく問題になりますが、タイミングは『コレ!』と決めないことが大事かと。

つまり『臨機応変に対応すべきもの・タイミングに決まりのないもの』と言えるでしょう。

 

例えば、

  • いちにのさん、はい『あ〜〜♪』

という歌い出しであれば、「はい」のタイミングで息を吸うというのが一般的な教え(基本形)ではあります。

 

つまり、歌い出しの一拍前で吸うということ。

 

ただし、ゆったりとした長いフレーズがあるバラードなどは「さん、はい」と2拍かけてゆったりと吸った方がいいこともあるでしょう(*人によって違う)。

 

なので、呼吸のタイミングのベストはその時々で変わる

よって、「これから出す声」に合った呼吸のタイミングを心がけることが大事でしょう。

 

もちろん「出した声」によっても呼吸のタイミングは変化します。

 

呼吸のタイミングは固定せずに「これから出す声」と「出した声」に合わせて”自分に最適なタイミング”を見つけ臨機応変に対応することが大事かと。

(*『固定する』のが自分にとってベストという場合はそれはそれでありでしょう。)

 

②息の吐き方(歌う)

歌声にしっかりと息を流すのが大事

歌においては「歌う」を「息を吐く」がリンクしているので、基本的には特別な『息の吐き方』というものは存在しないと言えるでしょう。

 

ある意味「息の吐き方」=「歌声の出し方・発声方法」とも言えます。

 

呼吸の循環において大事なのは『歌声の中に息をしっかりと流すこと』。

これは循環においてのみならず、歌声の音色自体に大きな影響を与え『声の楽器化(良い歌声)』における最重要項目だと考えられます。

 

「声の楽器化」についてはここではテーマ外なので詳しくは触れませんが、

  • しっかりと息を吐いた良い歌声があるからこそ、しっかりと息を吸うことができる(自然とたくさんの息を吸うことができる)

そして、

  • しっかりと息を吸ったからこそ、次のしっかりと息を吐く良い歌声を作ることができる

という好循環ループになるのですね。

 

もちろん悪循環のループはその逆です。

 

ココがポイント

歌と呼吸の関係性は「良い呼吸がいい発声を生み出し、いい発声が良い呼吸を生み出すと言えるでしょう。

「鶏が先か、卵が先か」みたいですが、こういう因果性のジレンマは「どちらが大事か」で考えるよりも「両方が大事」と考えておけばいいはず。

 

ブレストレーニング

歌の息継ぎ・ブレスを鍛えるトレーニングは

  1. 基礎トレーニング
  2. 持続力トレーニング
  3. 瞬発力トレーニング

という3つのトレーニングをコツコツと継続すると効果的だと考えられます。

 

①基礎トレーニング

ブレスの基礎トレーニングは「ス」という発音を利用すると効果的にやりやすい。

声は出さずに(声帯は鳴らさずに)息だけを歯に通す「スーー」という発音です。

 

基本

  • 「スーーーー」と無理せず綺麗に吐き切れるまで伸ばす、「自然にしっかり吸う」
  • これを繰り返し基本の循環を体に身につける

「スー」は若干の負荷もかかるので吐く力も鍛えられます。

 

応用

この息の「スーー」だけで実際の歌に合わせて歌ってみるという練習方法です。

歌う部分では「スーー」、呼吸の部分では「自然にしっかり吸う」だけです。

 

例えば、カエルの歌(「かえるのうたが〜 きこえてくるよ〜」)なら

  • スースースースースースース〜 (自然に吸う) スースースースースースース〜 (自然に吸う)

という感じです。

 

これを実際に歌いたい歌のシンガーに合わせてやってみたり、自分だけでやってみたりすると歌の中での呼吸の感覚が掴めます。

 

ココがポイント

まずは「歌う」と「呼吸」を分離して『呼吸だけの感覚』を身につける。

その感覚を「歌う」の中で実行していく。

 

この「ス」という発音は声帯のようにちょうどよく呼気圧を支えてくれますし、息をしっかりと流さないとできない発音なので息の循環の基礎を身につけるのにも最適なトレーニングです。

 

②持続力トレーニング

息の持続力を鍛えるトレーニングですが、これは

  • 秒数を息が切れる限界まで数えるトレーニング

がおすすめです。

 

具体的なやり方

まずは思いっきり息を吸って、自分が出しやすい音程を一音伸ばしながら秒数を数えます。

「いちにさんしごろくしちはちきゅうじゅうじゅういち・・・・・・」

と一音を”普通くらいの発声で”綺麗に伸ばしながら数え続けます。

 

普通くらいの発声

単に秒数を長持ちさせるのが目的ではなく『しっかりと息を吐く状態の持続力を上げる』のが目的なので、省エネをし過ぎた発声にならないようにしましょう。

大声ではなくてもいいので、普通の音量を心がけましょう(*もちろん最後の方は音量も小さくなります)。

 

そうすると人それぞれ違うでしょうが、30〜50秒あたりに息が吐き切れる限界がくるでしょう。

その限界ギリギリまで数え続けます。

 

息が限界を迎えたら思いっきり吸いたい状態になるので、思いっきり吸います。

おそらく少し「はぁはぁ」するくらいキツイかと。

 

一回やるとかなり疲れますから連続ではできませんが、限界まで吐き切った後の呼吸はほとんどの人が「いい呼吸」ができているはず。

このいい呼吸の感覚を覚えるのも役立ちます。

 

1日に何回もするというよりは毎日1〜2回やるくらいでコツコツと継続すると、秒数も伸びてくるでしょう。

 

もちろん人間なので劇的には伸びませんし誰しもその体に見合った限界はありますが、数秒伸びるだけでも息の持続力・ブレスコントロール能力は大きく向上していることでしょう。

 

③瞬発力トレーニング

息の瞬発力を鍛える、いいブレスを身につけるためにオススメなのが、

  • 「はっ!はっ!はっ!はっ!」と息の勢いをつけて声を出すトレーニング

です。

 

いわゆる「ドッグブレス 」「ドギーブレス」と言われるトレーニングです。

このトレーニングは息の乗った発声のトレーニングにもなりますし、ブレスコントロールも鍛えられます。

 

具体的やり方

息の勢いをある程度しっかりとつけて「はっ!」という発声を連続します。

これは息だけでなく声帯も鳴らして声を出します。

 

「はっ!はっ!はっ!はっ!」

 

ブレストレーニングを目的とした時に大事なのが、一つ一つの間で素早く息を吸うこと。

 

「はっ(吸う)はっ(吸う)はっ(吸う)はっ(吸う)」

 

最初はゆっくりでもいいので、『勢いよく息を吐く』『素早く息を吸う』という息の循環を意識しましょう

 

息の瞬発力・ブレスコントロールの向上はもちろん、息の乗った声(息と声帯の連動した声)を身につけるのにもいいトレーニングです。

 

まとめ

【歌における呼吸の循環の特徴】

  • 必要な息の総量が多い
  • 短時間でたくさんの息を循環させる必要がある

【息の吸い方】

  • 鼻からでも口からでも、しっかり吸える方でいい
  • 普段の会話と同じように自然に吸う
  • 喉に力が入らないように注意する

【息の吐き方】

  • 歌声にしっかりと息を流す

【ブレストレーニング】

  • 基礎トレーニング:「スー」
  • 持続力トレーニング:秒数を数える
  • 瞬発力トレーニング:ドッグブレス

 

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