今回は洋楽を聴くことと歌唱力の関係性についての研究考察です。
結論から言えば、
- 「邦楽だけを聴く場合」と「洋楽も聴く場合」を比較すると、洋楽も聴く人の方が歌が上手くなる確率が上がる
と考えられます。
もちろん、あくまでも確率論。
洋楽を聴かなくたって歌が上手くなることは可能です。邦楽だけ聴いてきたけど歌が上手い、という人もいることでしょう。
しかし、日本のプロのシンガーでもインタビューなどで「どんな音楽を聴いてきたのですか?」と問われると海外のシンガーを答えていることが多いですし、ボイトレ教室に通っても「洋楽を聴きなさい」という教えられることは多いでしょう。
つまり、歌が上手くなるためには洋楽はとても良いと考えられるということ。
ではどういう面でメリットが考えられるのか?という部分を掘り下げていきます。
目次
洋楽を聴くと歌が上手くなる理由
①レベルの差、母数の差、幅の広さを学べる
「レベルの差」と言うと批判を受けそうな内容ですが、日本人シンガーを悪く言っているわけではないことだけご理解ください(邦楽大好きです)。
日本人シンガーにも素晴らしいシンガー、偉大なシンガーは多くいます。
ただ、やはり洋楽のシンガーは総合的にレベルが高いと思われます。
その理由は色々と議論の尽きないところでもあるのでしょうが、
- 人口の違い(英語人口は世界で約15億人)
- 市場規模の違い
は大きいでしょう。
日本の人口は約1億人ですから、単純に考えてもその15倍の人口を持つ洋楽が邦楽よりもレベルが高くなってしまうのは仕方のないことなのかもしれません。
さらに英語圏だけではなく、世界中の音楽が入り込んでくる市場でもありますね(*最近はスペイン語の音楽やK-POPなどが活躍しています。当然日本の音楽が入ったりもします。)
母数が多いということは、単純にそれだけ歌が上手い人が多いということになります。
もちろん”歌の上手さ”という概念も「視点の違い」で変化してしまうので、一概に語るのは難しいものなのですが。
しかし、逆を言えばその様々な『視点の違い』を感じるためにも洋楽を聴くことはとてもいいことだと思うのです。
例えば、
海外にはすごく上手い”低音シンガー”が男女ともたくさんいます。結構すぐに見つかりますし、バリエーションも豊富です。
他にも「ラップの歌唱力」「ジャズの歌唱力」「ソウルの歌唱力」などのような軸の違う考え方に触れる機会もかなり増えます。
こういう音楽の視点の広さは日本だけだと”身につけにくい”のでは?
この歌唱力というものを考える視点が広がることが歌唱力向上につながるだろうと思われます。
②母国語じゃないからこそ、「声」という楽器が浮き彫りになる
多くの人は洋楽を聴くとき、「歌詞の意味がわからない」人がほとんどでしょう。
洋楽が苦手な人の中にはそれが理由という人もいるでしょうが、逆にそれがいいのです。
感覚は人それぞれ違うとは思いますが、「歌声そのものを楽器(音)として聴く」というような聴き方ができるようになってくると思います。
そもそも
- 「邦楽は歌詞を聴く」
- 「洋楽は音(リズム)を聴く」
みたいな傾向が強いとよく言われます。
もちろん、あくまで傾向であって聴き方は人それぞれ違うとは思いますが、「音楽全体を音として捉える聴き方」「ボーカルをただの音として捉える聴き方」に慣れていない人にとっては洋楽を聴くことはとてもいいと思います。
勘違いして欲しくないのですが「歌詞を聴くのが悪い」と言っているのではなく、「色々な聴き方ができた方がいい」ということです。
③”生々しい歌”を学べる
邦楽と洋楽の違いの一つに
- 生々しい歌に触れられる量の差
があると考えられます。
CDやライブDVDなど綺麗に整えられた音楽ももちろん最高なのですが、それはそれ。
「生々しさ」「リアルな現実・リアルな音楽」というものはプレイヤー側にはとても重要な情報です。
例えば、こういうのって日本じゃなかなか見られない↓
こういう生々しい歌に触れられる機会が邦楽と比較してすごく多いのも洋楽のいいところだと思います。
もちろん、邦楽にもこういう生々しいものはあるのですが、接触頻度の差は大きい。
なぜ「生々しい音楽がいいのか?」
それはやはり『歌に必要な情報がたくさん手に入るから』。
これはこちらの記事↓
-
-
歌の上手さと遺伝の関係性【重要なのはやはり”経験値”】
続きを見る
にも書いていますが、歌の技術の向上に重要なのは”良い経験値”です。
この記事内では「上手い人の生歌を目の前で聴くと、歌が上手くなる」と書いていますが、つまり良い経験値とは『何がどうなっているかを正確に理解・把握できること』です。
しかし、ほとんどの人がプロのシンガーの歌を目の前で聴けるなんてことはないでしょう。
なので、一般人はなるべく生々しい音楽を聴くことで”いい経験値”を得ようとするしかないのです。
生々しい音楽は
- 圧倒的に磨き上げられた『歌の技能の素晴らしさ』
- どんな天才シンガーにもある『人間味』
という二つの面をしっかりと学べると思います。
「本当に同じ人間か?」と衝撃を受ける一方で「やっぱり同じ人間なんだな」と安心することもあるという。笑
この両方共が音楽のリアルでだと思います。
そしてそのリアルを的確に掴むことが歌が上手くなるためには重要なのですね。
そういう点で生々しい音楽がたくさん聴ける機会が多い洋楽はおすすめということです。
こういうのが歌の最高の教材だったりします↓
このチャンネル、個人的には世界で一番歌の勉強にもってこいのチャンネルだと思っています。
④言語の特性の差で耳が良くなる
言語的な特性で耳が良くなるというとこもあります。
日本語は基本的に1母音に対して1子音です。ところが英語は1母音に対して複数子音を入れることもありますし、母音のない子音だけの発声も多いです。
例えば
「Just」という英単語、日本語にすると「じゃすと」ですね。
日本語は1母音1子音なので、あえて日本人らしく発音すればこのジャストのすべての母音「アウオ」をしっかり発音するはずです。
ところが英語の発音の場合、母音は「ジャ」の部分の「a」だけで「スト」部分は子音だけで発音するはずです。
つまり、『舌・歯・唇・息』などの子音の使い方が上手くなる言語です。
こういう点で英語は日本語と比較して”音として”多彩な表現ができるのですね。
もちろん、日本語でも同じようなことはできますが、そうすると「日本語として伝わりにくくなる」というジレンマがある。
しかも、
- 英語は母音は26個(*細かく分類すれば)
- 日本語は5個
です。
それを聞き取れるようになるということ(聞こうとすること)はつまり耳が良くなるということでしょう。
この英語の言語特性についてはnote『外国人の歌が上手い理由について』にて詳しく書いています(*なぜかnoteの方に書いてしまっています。行ったり来たりすみません)。
⑤リズム感が良くなる
日本と比較すると洋楽は裏拍にアクセントがくる楽曲も多いです。
というより、そもそもリズム重視の楽曲が非常に多いです。
邦楽はメロディー重視なことが多い。もちろんメロディも大事なのですが、同じくらいリズムも大事。
例えば、洋楽シンガーのライブ映像などの観客の動きを見ると、日本人とは随分違うと感じると思います。
音楽に合わせて体を揺らすような人や踊っているような人も多くいますね。
欧米圏は踊る文化なので、そういう踊れるグルーヴ感を重視したような音楽が多いです。
つまり、そういう音楽に触れるとリズム感を成長させるでしょう。
ただし、この
- メロディー重視
- リズム重視
の差によって曲の作り方がまるで違います。
邦楽ばかり聴き慣れている僕ら日本人は「洋楽全然盛り上がらないんだけど」「サビどこ?」などのように洋楽を好きになれないこともあるかもしれません。
同じ音楽ではありますが、どんどん作り方が違右方向へ向かっているのでこうなるのも仕方のないことでしょう。
これはBTSなどの日本事務所「Big Hit Entertainment Japan」のプロデューサー募集要項(*終了しています)を抜粋したものです↓
ii) R&B、ヒップホップ、EDM、ポップ・ロックなどアメリカンポップスタイルのリズムが際立つ、トレンドを先導する洗練されたサウンドの音楽デモを推奨いたします。
iii) メロディが鮮明でダイナミックな流れの、起承転結がはっきりとした定型化された曲の構造(A: Verse - B: Pre-Chorus - C: Chorus)の音楽デモはご遠慮ください。
ii)が洋楽、iii) が邦楽のことを指していますね。なんかすごく丁寧に書かれていますが、「ご遠慮ください」ですし「定型化された」と何やらトゲがある。笑
まぁそれくらい音楽の作り方が違ってきている。
少し話が逸れましたが、「メロディーを聴くのが悪い」と言っているわけではなく、「リズムを聴く聴き方もできた方がいい」ということですね。
とにかく歌が上手くなりたいなら洋楽を聴いて損はない
以上のような理由で洋楽を聞くべきだと考えます。
もちろんこれ以外にも多くの理由が挙げられそうですが。
「洋楽が邦楽より役立つのかもしれないけど、それでも日本の歌が好きだし、日本のシンガーが好き」という方はもちろんそれはそれで問題ないのです。
ただ洋楽も聴いた方がお得でしょう。
もしあなたがこれから1年間、
- 『洋楽も邦楽も聴く』
- 『邦楽だけをひたすら聴き続ける』
という未来があるとします。
1年後どちらの方が歌が上手くなっているかというと、まず間違いなく洋楽も聴き続いたあなたの方が上手くなっていると思われます。
同じ人間の二つの世界線を比較することはできないので、これを証明することはできないのですが、洋楽を聴く人が歌が上手くなりやすいという傾向は確かに存在するでしょう。