歌唱力アップ

歌に必要な”2つの能力”を紐解く【歌唱力=発声能力×音楽的感性】

投稿日:2018年5月25日 更新日:

今回は『歌に必要な2つの能力』を徹底的に分解するという内容です。

 

歌の能力、つまり「歌唱力」は以下の公式が成り立つと考えられます。

  • 『歌唱力』=『①発声能力』×『②音楽的感性』

なので『①発声能力』『②音楽的感性』という二つの要素をそれぞれ細かく分解していくと「自分にあるもの・足りないもの」が見えてくるのかもしれません。

歌唱力に必要な2つの能力

歌の上手さを決める2大要素は「①発声能力」と「②音楽的感性・感覚」という二つの柱です。

 

スポーツに例えるのなら「運動神経」と「頭脳」みたいな感じですね。

 

【なぜこの二つが柱になるのか?】

それは”歌”を構成する要素が

  1. 音程
  2. リズム
  3. 音色の質(どんな声質の音なのか?言葉・発音なども含む)

だからです。

 

つまり、

  • ”発声能力”は『音程・リズム・音色の質を調整するための能力
  • ”音楽的感性”は『音程・リズム・音色の質を調整するための感覚

という風に考えることができます。

 

なので、

  • 『歌の上手さ』=『発声能力』×『音楽的感性』

と言えるでしょう。

①発声能力

声はまず4つの要素に分解できる。

それが「①息」「②声帯」「③共鳴」「④発音」でそれぞれ音色の「原動力」「調節」「増幅」「性質」という役割を持っている。

  1. 肺が空気を送り出す
  2. その空気によって声帯が振動する
  3. 振動によって生まれた音が空間(咽頭腔・鼻腔・口腔)によって響く
  4. その音色に発音(顎・歯・舌の動き)が加わる

というのが声が出る仕組みです。

 

こちらの動画がイメージしやすいです↓

この4つの要素を順番に掘り下げます。

①「息」の能力について

息をコントロールしているものは『』ですね。

 

そして、その肺を動かす主役は

  1. 横隔膜
  2. 胸郭

の二つです。

この『どちらを主体として呼吸するか』というのが「腹式呼吸」や「胸式呼吸」と言われますが、基本的には両方動くものです。

 

横隔膜は意識で動かせる自由度が高いのでその点で腹式呼吸に焦点が当たることも多い。

 

歌においては「呼吸方法そのもの」が大事というよりは、

  • 横隔膜を自由にコントロールできる=息のコントロール能力が高い

という点が重要だと考えられます。

横隔膜と発声の関係性について

続きを見る

 

発声能力において、この『息の力』の能力だけが高ければいいわけではないが、

  • 息の力が強くても損はない
  • どんな歌唱方法であれ、基本お得になる
  • 多くの偉大なシンガーたちが”最も重要なもの”として挙げることが多いもの

です。

 

それくらい重要な要素の一つでしょう。

息に声を乗せる【”息の重要性”と声帯との連動性について】

続きを見る

②声帯の能力

声帯の基本的な動き

基本的に、声帯は

  1. 伸縮(伸びる・縮む)の動き
  2. 開閉(開く・閉じる)の動き

の2つの動きがメインです。

 

こちらを見れば大体理解できると思います(*再生位置から〜声帯の開閉・声帯の伸縮。微妙に音もついてますのでイメージしやすいです。)

 

【伸縮の能力】

声帯が伸びたり縮んだりして音程を調節しています。伸びたら音は高くなり、縮んだら音は低くなる。

声の音程を調節する仕組みについて【声帯伸展と声帯収縮】

続きを見る

 

【開閉の能力】

声帯が開いたり閉じたりして、鳴り具合を調節しています。

 

閉じ具合が強ければ強いほどくっきりと鳴る。開くにつれて弱くなっていき、完全に開くと息だけになる。

芯のある声を作るのは「声門閉鎖」

続きを見る

声区(声帯のモード切り替え)

簡単に言えば『声区』とは声帯の使い方・鳴らし方を区切るもの

声帯の構造上、基本的な声区は

  1. 地声
  2. 裏声

の二つ。

よくわからない人は断面でみると分かり易い(*再生位置・Chest Voiceは濃い赤部分(声帯筋)が打ち合う(動く)が、Falsettoの時は打ち合わない)↓

このように人間は大枠、

  1. 地声
  2. 裏声

という2種類の声帯のモードを切り替えることができます。

 

ということは、先ほどの”声帯の基本的な動き”と掛け合わせると、

こんな感じになります。つまりこの分だけ音色の表現があるということになります。

 

これでほぼほぼ大枠の声帯の状態を捉えられるのですが、もう一つ声の出し方にちょこちょこ関わってくるのが『仮声帯』。

 

仮声帯は声帯とは別の器官で、

  • がなり声・怒鳴り声
  • シャウト
  • デスボイス

などで使う部分です↓

主に咳や咳払いをする時とかに鳴る(動く)部分で、ガラガラ・ゴロゴロ鳴ります。

 

発声時にこれを使う度合いで音色が変わります。

  • 仮声帯を”使わない”→【普通の発声】
  • 仮声帯を”弱めに使う”→【がなり声・唸り声・怒鳴り声】
  • 仮声帯を”強めに使う”→【デスボイス】

という感じです。

がなり声の出し方【仮声帯発声についての考察】

続きを見る

 

基本的にはそこまで使うこともないのですが、最終的に発声能力とは仮声帯の使い方も含まれる。

③共鳴について

発声における共鳴腔

 

具体的な構造はこちらで↓

 

【鼻腔】

軟口蓋(動画*1:07〜)の開き具合などで決まる。開きっぱなしがいわゆる「開鼻声」

上方向への声の抜け感や丸みを作る。

 

【口腔】

上アゴ(軟口蓋〜硬口蓋)と舌・下アゴの開きで作る。

これと口に開きで音色の印象を決める(明るい〜暗い)。

 

【咽頭腔】

共鳴としては一番コントロールできる部分。

喉頭(喉仏や声帯がある部分)位置〜口腔あたりまでの空間で作る。

クラシックの発声ではこれを最大化させる(マイクがないので)。

 

共鳴の能力

実は共鳴の能力は「劇的に鍛えられるものでもない」。

どちらかと言えば、「持って生まれてものを最大限生かす」という要素が強いですし、言い換えれば「生まれながらに決まっている能力」とも言えるでしょう。

 

「共鳴の能力」を最大化させるためには”共鳴以前の段階(息+声帯)”が重要になるという風に考えるべきかと考えられます。

発声における3種類の共鳴について

続きを見る

④発音について

「発音」は

  • 息の使い方
  • 舌の使い方
  • 歯の使い方
  • 口・あごの開き具合

などによって決まります。

 

また、別の視点で考えると

  • 声帯の鳴りと口やあごの形で決まるのが『母音』
  • 息・舌・歯などによって決まるのが『子音』

という見方も出来ます。

 

この発音において最も重要な能力は『舌』の力だと考えられます。

というのも「歯」や「あご」などは骨格によって決まっていて訓練で帰られるようなものでもないからです。

 

よって「発音を鍛える」時は舌にアプローチするといいと考えられます。

発声能力は「息」「声帯」「共鳴」「発音」4つの総合力が大事

ここまで分解してきた4つの要素は全部繋がっています。

それぞれが密接な関係性にあると言えるでしょう。

 

つまり、考え方次第では

  1. 「息」と「声帯」をつなぐ能力
  2. 「声帯」と「共鳴」をつなぐ能力
  3. 「共鳴」と「発音」をつなぐ能力

があるということ。

この連動する力そのもの』も重要だと考えられます。

 

つまり、発声能力というものは3つの能力でもあるが、6つの能力でもあると考えることができる。

 

【⑤「息」と「声帯」をつなぐ能力】

これは『息と声帯の連動する能力』。かなり重要度の高い能力で、息だけをひたすらに鍛えても声帯の連動を意識しないとその息を活かせないという問題はこの部分にあるでしょう。

 

【⑥「声帯」と「共鳴」をつなぐ能力】

これはピンとこない人もいるかもしれませんが、「声帯の動き」と「共鳴腔」も連動しているということです。

 

わかりやすい例で言えば『喉締め発声』。

声帯だけの力で高音を出すことができないので、喉周りを締めて高音を発声する。

これを”共鳴の視点”で考えると、喉締めで咽頭腔が狭くなりすぎることによって音色に魅力がなくなったという風に考えることができます。

 

つまり、

  • 『喉締め=魅力がない』ではなく、『喉締め=共鳴空間が狭くなりすぎる=魅力がない』が正確

ですね。

 

逆を言うと、

  • 共鳴腔さえ作ることができれば、喉締めでも魅力的になる可能性がある

と考えることができるわけです(*基本的に難しいですが、そういう人もいますね)。

 

このように声帯と共鳴は間接的に繋がっていますし、動きが連動するのでその間をつなぐ能力があるとも考えられます。

 

【⑦「共鳴」と「発音」をつなぐ能力】

この二つも密接に繋がっています。

 

例えば、ものすごく喉仏を下げる(咽頭共鳴を広げる)と「オ」の母音が一番発音しやすくなるはずです。

もちろん他の母音も発音できますが、全て「オ」に引っ張られるはず。

 

逆に喉仏をものすごく上げると「エ」の母音が発音しやすくなり、全ての音が「エ」に引っ張られるでしょう。

 

このように共鳴そのものが発音と密接に関係しているとも言えます。

②音楽的感性・感覚

音楽的感性・感覚は簡単に言えば「脳」「耳」の能力です。

これは『経験・知識・理解』とも繋がってくる部分でしょう。

 

この能力は大きく分けると

  1. 音感
  2. リズム感
  3. 音の質を測る能力

の3つに分かれるでしょう。

①音感

歌において必要な音感は

  1. ピッチ感
  2. コード感

の二つに分けられる。

 

いわゆる『相対音感』と言われるものが必要になります(*ちなみに『絶対音感』はあってもいいが、なくてもいい)。

絶対音感・相対音感と歌の上手さの関係性について

続きを見る

 

①ピッチ感

音程を合わせる能力」です。

『自分が発している声の音程が合っているか・外れているかが理解できる能力』とも言えます。

 

実際にピッチを合わせるという行動は「発声能力」も関係してくるのですが、この脳における段階ではあくまで『音程が合っているか・外れているかがわかる』という能力とも言えるでしょう。

歌のピッチを鍛える方法について【4つの区分で考える】

続きを見る

 

②コード感

ピッチを合わせる能力の上位互換のような能力で、歌において非常に重要な能力です。

コード感とは厳密な意味があるわけではないのですが、ギターなどでよく使われる言葉。ギターソロのフレーズなどで「しっかりとコード進行に乗った感じが出せているかどうか」という時に使われる言葉です。

 

ここでの「歌におけるコード感」は、

  • 適当な伴奏に合わせて即興で歌うことができる
  • 適当なコード進行に合わせてメロディーをつけて歌うことができる

などのような能力(感覚)です。

 

基本的に音楽はキー(調)・コード進行(和音の組み合わせ)によって作られているので、歌はそれに調和する能力が必要です。

「調和する」とは「音程を合わせる」ということなのですが、結局それは「コード進行に乗っている」と言い換えることができるのですね。

 

コード感があると作曲やアドリブ、一人でアカペラで歌うなどができるようになると考えられます。

 

この能力は楽器が弾ける人は身につきやすいのですが、一般的には身につきにくい能力でもあります(*身につきにくいだけで、身につかないわけではない)。

歌に必要な「相対音感」の鍛え方【『コード感』の重要性について】

続きを見る

②リズム感

歌のリズム感は

  • 「グルーヴ感」・・・楽曲や演奏に歌のリズムを合わせる力
  • 「タイム感」・・・テンポ感。自分だけで一定のリズム・BPMを刻む力

この2つで考えるといいでしょう。

 

「グルーヴ感」は簡単に言えば、楽曲や演奏のリズムに合わせる能力です。

音楽は大抵の場合、ドラムがリズムのメインの柱、ベースがサブの柱となります。

 

歌も含むその他楽器はそのリズムに合わせる側です。

 

「タイム感」は少し聴きなれないかもしれませんが、簡単に言えば『自分だけでリズムを刻む能力』『自分でリズムを作り出す能力』のことです。

例えば、ドラムもベースもない場面では自分の頭の中でリズムを刻む必要がありますし、弾き語りなどをする場合にもこの能力は必須です。

歌のリズム感を鍛えるトレーニング方法について

続きを見る

 

この「タイム感」も一般的には身につきにくく、楽器演奏者が身につきやすいという能力でしょう。

つまり、「リズム感」や「音感」を丸ごと含めて「音楽的感性」を全て高めるためには楽器を弾くのが一番いいと考えることもできます。

楽器が弾けると歌が上手い?|歌が上手くなりたい人が始めるべき楽器

続きを見る

③音の質を測る能力

音の質を測る能力は主に

  1. 音の良し悪しの判別
  2. 音の性質の判別

という見方ができると考えられます。

 

例えば、簡単に言うと「安いギターと高級ギターの音の違い」がわかる能力が”音の良し悪しの判別”。

「そのギターがエレキギターなのか、アコギなのか」がわかる能力が”音の性質の判別”。

 

この能力が歌においては

  • プロシンガーの発声を正確に把握することができる
  • 自分の歌声を正確に把握することができる
  • よって、比較修正が正しくできる→上手くなる

という点で役立ちます。

音程がわかる耳の良さ・リズムがわかる耳の良さというのも重要なのですが、『音の質がわかる・発声の質がわかる耳の良さ』も同じくらいに重要ということが言えます。

耳の良さと歌唱力の関係性【耳をよくする方法】

続きを見る

二つの能力の優位性の差

ここまでの内容では

  • 『発声能力』
  • 『音楽的感性・感覚』

は完全に同列のような扱いをしましたし、両方大事だからこそ「歌唱力=発声能力×音楽的感性」という公式が成り立つのは間違いない。

 

ですが、「歌が上手い」ということに関しては『発声能力の方が圧倒的に重要で優位性があると考えられます。

 

つまり、どちらの能力があった方がいいかと問われれば『発声能力・声をコントロールする能力』が高い方が歌が上手い可能性が高い、もしくは上手くなりやすいと考えられます。

 

その理由は

『発声能力』の方が鍛えるのが大変だからです。

 

音楽的感性・感覚は結局「脳による『知識・経験・理解』」です。

つまり、脳だけで完結するので成長が早く一度理解・習得すればすぐに使えます。さらに基本的には失わない能力かつ蓄積する能力です。

 

ところが発声能力は鍛えるのが難しい。というより成長が遅い

 

人間の体の能力の成長というものは脳と比較すれば非常に遅く、地道な努力を積み重ねなければいけないものなのですぐには成長しません。

 

当然、喉・声帯も同じです。

声優やモノマネ芸人が歌が上手い理由もこれ

この

  1. 音楽的感性の鍛えやすさ
  2. 発声能力の鍛えにくさ

という二つの点から「歌の能力」というのはある意味大半は『発声能力』によって決まるとも言えるかもしれませんね。

 

例えば、声優やモノマネ芸人のような”発声能力に長けた人たち”は歌が上手い人が非常に多いです(*もちろん全てではない)。

こういう方々は「声を操ることに長けている」=「発声能力が高い」ので歌が上手いと言えます。

 

逆に、ピアニストやヴァイオリニスト(=優れた音楽的感性・感覚の持ち主たち)は歌が上手いでしょうか?

もちろん基本歌わないのでわかりませんし、実際は音楽的感性の能力に引っ張られて”ある程度”上手く歌えるはずですが、「歌は上手くないです」と発言する一流音楽家は多いですね。

 

つまり、

いかに音楽的感性・感覚に優れていようが喉を上手く動かすのは難しいですし、逆に喉のコントロールに優れてさえいれば感性や感覚を鍛えるとすぐに上手く歌える可能性が高いということが言えます。

 

このように「脳」と「体」では『体側の方が重要度が高いと言えます。

もちろんピアニストやヴァイオリニストは音楽的感性だけがあるわけではなく、「体」=「指の能力」です。でも、喉の能力はない。

スポーツで言えば、

  1. 運動能力が抜群だが、そのスポーツのルールや知識が全くない人
  2. そのスポーツのルールや知識はすごいが、運動能力の低い人

が同時に同じスポーツを練習してどちらが上手くなるのが早いか?を考えるとわかりやすいと思います。

 

つまり、

  1. 音楽的感性は全く無いが声帯が柔軟な人
  2. 音楽的感性は抜群だが声帯がガチガチな人

この両極端な二人がヨーイドンで歌の練習を始めてどちらが上手くなるのが早いかというと前者である確率が圧倒的に高いということです。

 

つまり、歌の上手さは「音楽的感性」が必要なことは間違いないが「発声能力」の方が重要性が高いと考えることができます。

-歌唱力アップ

Copyright© 【ミュートレグ】 , 2022 All Rights Reserved.