今回は、歌のテクニック『ヒーカップ唱法』についてです。
この記事は
- ヒーカップとは
- 効果や印象
- やり方や練習方法
という内容です。
目次
ヒーカップ唱法とは
ヒーカップ・ヒーカップ唱法とは
- 歌のフレーズの語尾の音程を跳ね上げるようにして収束させるテクニック
です。
簡単に図で示すと、こんな感じです↓
歌のニュアンスを作るテクニックです。
もともとの意味は、地声から裏声に跳ね上げるテクニックを指す言葉だったのですが、現在では声区に関係なく、音程を跳ね上げることを「ヒーカップ 」と呼びます。
日本では、裏声に入れるヒーカップよりも、地声のままの、もしくは裏返る寸前で止めるようなヒーカップ が多いです。
語源・由来
『ヒーカップ唱法』は1950年代のロカビリー(音楽ジャンル*エルビス・プレスリーなど)で広まった歌唱テクニック。
名前通り英語の『hiccup(意味*しゃっくり)』からきており、しゃっくりをするようにして音を跳ね上げるからそう呼ばれるようになったみたいですね。
ちなみに、日本の『しゃくり』とは違いますよ。
『しゃっくり』です。
偶然同じような言葉になってしまっているのがややこしいですね。
- 『しゃくり』はフレーズの頭で下から入るテクニック
- 『ヒーカップ (しゃっくり)』はフレーズの語尾で跳ね上げるテクニック
という風に似ているけど違います。
ヒーカップの効果
ヒーカップの音楽的効果を考えると結構難しく、
- 人によって
- 音楽性によって
- 国によって
その印象は変わってくるのかもしれません。
あくまでニュアンスを作る部分なので、ヒーカップがあると上手く聴こえるとかそういうものではなく、
- 感情表現・音色表現として効果があるもの
だと考えられます。
主に、3つくらいの印象に分けられるかと
- ロックな印象
- 可愛い印象
- セクシーな印象
それぞれ紐解きます。
①ロックな印象
もともと『ロック』のご先祖である『ロカビリー』で生み出された発声表現なので、当然と言えば当然ですね。
語尾を跳ね上げることでその上昇感が、
- 力強さ
- パワフルさ
みたいなものを生み出すのでしょう。
例えば、B’zの稲葉さんがよく使うイメージです。
ロックなヒーカップ
②可愛い印象
これは80年代、特に日本のアイドルで流行した歌唱スタイルですね。
現在でもアイドル系やアニソン系で使われることが多いように思います。
おそらく、語尾を跳ね上げるようなニュアンスが「可愛い」と感じるなんらかの要素を含んでいると思います。
言語的なものや文化的なものもあるのかもしれません。例えば、日本もしくはアジア的なものなのかも。
これは、やはり松田聖子さんが真っ先に思い浮かびます。
可愛いヒーカップ
ヒーカップをフレーズ途中(音と音が移行する間)に織り交ぜるのは、松田聖子さんの特徴ですね。
③セクシーな印象
ヒーカップは、どこかセクシーな印象を生み出します。
おそらく、
- 声を跳ね上げて「キュッ」と止まるようなニュアンスの音が『声が漏れ出た』みたいなニュアンスを生み出し、結果的にセクシーな印象を生み出す
のだと思います。
例えば、L'Arc-en-Cielのhydeさん。
セクシーなヒーカップ
語尾が「キュッ・ヒュッ」と跳ねます。
④特殊なヒーカップ【おまけ】
最後に、一つ特殊なヒーカップを紹介。
そもそもヒーカップと呼んでいいのかわかりませんが、まぁ「しゃっくり」というニュアンスでは間違いなくヒーカップ。
日本では、椎名林檎さんがよく使うテクニックです。
個人的には『分離型のヒーカップ』という考え方がしっくりくるですが、
- 語尾を跳ね上げるのではなく、語尾が終わったくらいで跳ね上げるようなニュアンスを作るもの
です。
分離型ヒーカップ
語尾の残り香のように音を入れるテクニック。ヒーカップと呼べるのかはわかりません。
ヒーカップのやり方
大枠2種類あり、
- ロカビリー音源のような裏声に返すヒーカップ
- J-POPに多い完全に裏返さないヒーカップ
があると思います。
裏声に返すヒーカップ
これは正直、語尾を裏声にして跳ね上げてください。終わり、、、です。笑
先ほどのロカビリー時代の音源からもわかるように、語尾を裏声に返しながら歌えば「ヒーカップ唱法」と言えるでしょうから。
これ以上はやり方も何もありません。
跳ね上がる意識で、語尾を裏声にすれば自動的にヒーカップ になると思います。
裏声が出せればできますね。
裏返さないヒーカップ
これまで紹介してきた音源は、ロカビリー以外は全て完全な裏声に入れてないです。手前でキュッと止まります。
これは結構テクニックというか、声帯の動きの練習がいるかもしれませんね。
この裏返さないヒーカップは
音程を跳ね上げながら声帯が「キュっ」と鳴るように収束させることが重要。
だと考えます。
つまり、
- 鳴らした後、瞬間的に解放
- 声帯が急に「パン!」と解けるようなニュアンス
- 「キュッ」と収束していく
みたいなイメージを持つことが大事です。
このヒーカップの練習は、大体4段階の練習で多くの人はできるようになると考えます。
- 第一段階【声を止めてそっと息】
- 第二段階【声を止める瞬間に小さく声を出してそっと息】
- 第三段階【音程も動かす】
- 第四段階【滑らかに】
順番に説明します。
第一段階【声を止めてそっと息】
「あーーーーーー(止める→すぐ息)」
まずは、なんでもいいので声を出します。
その際に途中で声(息)を止めます。止めたすぐ後で『そっと』息を吐きます。
このすぐにほんのりと息を出すということが、結果的に声帯を解放しています。
このニュアンスが『キュッ』と鳴らすのにかなり大事(*一度完全に息を止めるのを試してみるとわかります)。
声を止めたら、できる限り早くふわっと息を吐きます。
まずは、これを練習。
第二段階【声を止める瞬間に小さく声を出してそっと息】
「あーーーーーーぁっ(止める→すぐ息)
先ほどの息を止める部分に、小さく短い声を入れます。
「ぁっ」と瞬間的に入れたあとは、先ほどと同じように止めてすぐ息です。
この時点で「ヒーカップっぽい感じ」はもう出ていると思います。
できない場合は、繰り返し練習。
第三段階【音程も動かす】
「あーーーーーーぁっ↑↑(止める→すぐ息)」
小さな「ぁっ」の部分で音程を上に跳ね上げます。
上げる音程は好きなようにしてください。
もうほとんどヒーカップだと思います。
第四段階【滑かに】
「あーーーーーー()↑↑(止める→すぐ息)」
先ほどの感覚を持ったまま、最後の「ぁっ」を消すように滑らかにします。
ヒーカップの完成です。
あとはこれを歌の中に入れるだけです
-
歌唱テクニック『フォール』について【音程を下げるテクニック】
続きを見る