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歌の雑学・研究・考察

絶対音感・相対音感と歌の上手さの関係性について

更新日:

今回の記事は

  1. 絶対音感
  2. 相対音感

と歌唱力の関係性についての研究です。

「絶対音感」と「相対音感」の違い

絶対音感と相対音感

  1. 絶対音感・・・ある音階を完璧に識別できる能力。英語で言う「Perfect pitch」。
  2. 相対音感・・・ある基準の音に対して相対的に音階を認識できる能力。英語で言う「Relative pitch」。

 

絶対音感

絶対音感は、簡単に言えば「人間チューナー」みたいなもので、その音の高さを完璧に瞬時に識別します。

 

こちらを見るとわかりやすいです(女の子は絶対音感、男の子は相対音感)↓

女の子は絶対音感なので、音を瞬時に識別しますが、男の子は基本の音を鳴らしてもらってから、音の距離感を考えて答えています。

 

また、女の子はコード構成音も完全に識別しますが、男の子は基準のコードトーン(キー)を鳴らして、あるコードがスケール上の何番目のコードか、ということしか判別できません。

 

このように「絶対音感」は”瞬間的かつ絶対的”に音を判別できる能力です。

 

実は、

  • 赤ちゃんの時は、誰もが持っていると言われている
  • 6歳くらいまでに訓練しないと消えていく
  • 持っている人も50歳〜60歳くらいで失ったり、ズレたりすることがある

というような謎が多い能力でもあります。

 

相対音感

基準の音に対する距離を判別できる能力です。

 

基準の音(音や音楽など)に対して、

  • 音程を合わせる
  • 調和する・ハモる
  • あえて音を外す(これもある意味相対音感)

などの能力です。

 

再生位置の女の子は「相対音感」↓

ちなみに、前半の男の子は高度な絶対音感の持ち主で、調律をあえて若干ズラした音階やコードも完全に言い当てていますね。

 

ここで大事になるのが、

  1. 絶対音感は「音そのものの判別能力」
  2. 相対音感は「基準の音との距離を感じる能力」

という風に能力の意味合いが若干違います。

 

つまり、絶対音感の人も相対音感を持っているということになります。

 

相対音感も限りなく絶対音感に近づけることは可能

ちなみにですが、相対音感は鍛えれば限りなく絶対音感に近づけます(*再生位置)↓

 

この方は絶対音感を持っていないのですが、このように訓練次第で限りなく絶対音感的な能力に近づけることはできるのですね。

 

ここまでくると「これは、もはや絶対音感なんじゃないか?」と思いますが、やはり厳密にはそうは言えないようです。

 

絶対音感とは、”絶対的な音の記憶・間違えることのない正確な判別能力”(*もちろん、絶対音感の人の中にもその能力に度合いがある)。

つまり、瞬間的かつ正確に判別できますし、半音以下のズレも正確に認識しますし、自分をチューニングする必要が一切ない。

 

対してこの方の訓練は、基準の音に対してどれくらいの距離感の音かという相対的感覚を鍛え抜いて判別している。つまり、ある程度の期間ごとに自分の感覚をチューニング(メンテナンス)しなければいけないということです。

 

歌の上手さに必要なのは基本的に『相対音感』

基本的に、歌唱力に必要な能力は「相対音感」です。

そもそも日本はもちろん世界的にみても、絶対音感を持つ人は楽器奏者には多いが、シンガーにはかなり少ない

 

そういう点からも、「歌において絶対音感は必要なものではない」と言えると思います。

 

歌唱力に必要な「相対音感」は、簡単に言えば『音程を合わせる能力』『音程が合っているのか・外れているのかがわかる能力』です。

 

これは言い換えると、

  • 楽曲のキー・スケール・コード進行に調和する
  • 楽器の音と調和する

という能力だと考えられます。

 

シンプルに「音程を合わせる能力」と考えてもいいのですが、歌において必要なものは「調和する能力と言うべきでしょう。

 

例えば、優れた相対音感(調和能力)は、こういうことが可能になる(*一見普通に歌っているだけですが、これは即興のピアノ演奏に即興で歌をつけている)↓

相対音感に優れているということは、音楽と調和する能力が高いということなので、音楽に即興でメロディをつけていくこと(調和すること)などは、お手の物ということでしょう。

 

こういう楽曲のスケールやコード進行に乗る(調和する)能力を『コード感』と言ったりします。

関連
歌に必要な「相対音感」の鍛え方【『コード感』の重要性について】

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絶対音感を使いこなすシンガーもいる

絶対音感は本質的には「いらないもの」と言えるでしょうが、どんな能力も使い方次第とも言えます。

 

シンガーにおける絶対音感の大きなメリットは、

  • チューナーが必要ないこと
  • 究極の時短ツールである

という面でしょう。

 

例えば、楽曲のキーも瞬時に判別できますし、チューナーも必要ありません↓

脳にチューナーが入っていて、そのチューナーが自分の感覚とリンクしているようなものでしょう。羨ましいですね。

 

また、即興で弾き語りができる↓

 

このように、他人の曲をすぐに弾き語りができるなどは、絶対音感らしいところですね。

厳密には絶対音感がなくてもできないことはないのですが、瞬時に的確に曲(音)を再現できるのは、ほぼほぼ絶対音感の持ち主であることが多いでしょう。

 

音の判別やキーの判別、耳コピでの弾き語りなどはすごく時間さえかければ、初心者でもいつかは正解にたどり着けることではあると思います。

要は時間の差。

レベルの高いミュージシャンならその速度がどんどん速くなってくるのでしょうが、絶対音感の人は常にそれの最速タイム(一瞬)を出します。

 

つまり、『音楽における最強の時短ツール』と言えるものでしょう。

 

自分がチューナーであり、正確かつ瞬時に音を再現できるからこそできることもあるのですね↓

 

絶対音感のシンガーが少ない理由?

確かにすごくお得な面があるのですが、マイナス面もあるのではないかと考えられます。

 

そのマイナス面は、

  • そもそも歌があまり好きになれない可能性がある

ということです(*もちろん人によるとは思いますが、よく語られますね)。

 

これが『絶対音感のシンガーが少ない理由なのではないか』とも考えられます。

 

「歌・声」というものは、楽器という括りの中では”かなり音程が不安定な楽器”です。

絶対音感を持つ人は、「声という楽器の不安定さが気になって気になって仕方がない」というような人もいると思います。

 

つまり、正確な音感を持ちすぎるがゆえに、絶対的な調律を持つ音の方が心地よく感じてしまうのではないかと考えられます。

ピアノの調律ですら、「440ヘルツの調律」と「442ヘルツの調律」の差が気になるという人もいますし。

 

なので結果的に、

  • 声という楽器の不安定さが気になるから、そもそも歌うのが好きになれない。歌うくらいなら楽器を弾いていたい。→絶対音感のシンガーが少ない要因の一つでは?

とも考えられます。

 

絶対音感を持つ人って、大抵ピアニストとかヴァイオリニストなどの楽器演奏者が多いですから(まぁ、楽器を幼少期からやっているからこそ絶対音感を身につけられる、とも言えるのですが)。

 

頭でどれだけ理解していようが、実際にその通りに喉(声帯)が動くかどうかは全く別の話ということです。

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