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歌の雑学・研究・考察

定義が曖昧なボイトレ用語とどう向き合うか

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今回は「定義が曖昧なボイトレ用語」「人によって言ってることが違うボイトレ用語」とどう向き合うかという内容です。

 

ボイトレをやっていると、

  • 人によって言っていることがバラバラで、定義が定まっていない言葉。もしくは、歌の流派によって意味が違う言葉があり、何が正しいのかわからない。
  • 人によって「正しい〇〇」「間違った〇〇」で、真逆のことを言っていて、何が正しいのかわからない。

などのようなことがあります。

 

こういう状況に陥った時に、どう対処するのがベストなのか。

 

個人的には、最善策は、

  • 一切気にせず、それについて何も考えない
  • 徹底的に調べ尽くす

のどちらか一方の選択肢を取るのが正解だと思います。

 

つまり、0か100かに振り切った方が良いということです。

 

そして、一番ダメな選択は『中途半端に学んで、フラフラと影響されること』です。詳しく掘り下げていきます。

曖昧なボイトレ用語を中途半端に追いかけてはいけない

例えば、

  • 〇〇ボイスについて(ミックスボイス・ヘッドボイスなど)
  • 正しい〇〇のやり方、間違った〇〇について(腹式呼吸・発声など)

などは、人によって言っていることが様々なことが多いです。なので、結果的に『何が正解なのかわからない』という状態に陥りやすくなります。

 

ここでは、「ミックスボイス」という言葉を例にしてみましょう。

 

ミックスボイスは、多くの人が色々な意味やニュアンスで使ってしまっている言葉であり、その曖昧さによって、「よくわからない」と困ってしまう人も多いです。

 

そして、ミックスボイスの

  • 正しい出し方は?
  • コツは?
  • 感覚は?
  • 自分が正しく段階を踏めているかわからない
  • 自分が上手くできているかわからない

と色々な情報を探し求めてしまいます。

 

しかし、探し求める度に多くの種類の答えを目にすることになっていまい、最終的には、

  • なんとかして自分が納得できるような(都合のいい)解釈をして、自分なりの答えを作り上げる

ことになります。

 

この自分なりの答えが正しい方向性へと向かっていれば何も問題ないのですが、間違った方向性に向かってしまうことも多々あります。例えば、「変な発声を身につけてしまった」「間違った発声の癖がついてしまった」などは良くあるパターンです。

 

もちろん、必ず間違った方向性に進むわけではないですが、はっきりしないもの・よくわからないものを中途半端に理解して、追い求めることで、かえって失敗するリスクが高くなるのですね。

 

生兵法は大怪我のもと』ということわざがありますが、ボイトレもまさにそれが当てはまります。

*『生兵法は大怪我のもと』:中途半端な知識や技術に頼って行動を起こすと、何も知らないよりもかえって失敗することがあるということわざ。

 

例えば、

  1. ミックスボイスについて何も考えたことがない人
  2. ミックスボイスについてあれこれと中途半端に振り回されてしまった

では、上手く成長できる可能性が高いのは前者になります(*もちろん、あくまでも傾向)。

 

なぜそう言えるのかという点については、こちらの記事↓

ミックスボイスの悩みや問題点について

続きを見る

に詳しくまとめているのでここでは省略しますが、要は中途半端に理解するくらいなら、何も気にしない方がいいことも多いということです。

 

調べるのなら徹底的にやる

問題は中途半端に追い求めることであって、曖昧なボイトレ用語を追い求めてはいけないということではありません。

 

つまり、調べるのなら徹底的にやればいいということになります。

  • 語源や由来を調べる
  • 定義のパターンがいくつあるかを調べる
  • 一つ一つの言葉の定義を明確にする
  • なぜ定義が複数あるのかを考察する
  • 論文を調べる
  • 『正しい・間違い』のジャンルによる方向性の違いを精査する

などなど書いていくとキリがないですが、とにかく曖昧な言葉ほど徹底的に取り組む必要があります。

 

例えば、よくあるパターンとして『発声方法における正しい〇〇・間違った〇〇』が人によって言っていることが違うという問題がありますが、これは多くの場合『音楽ジャンルの特性の違い』が原因であることが多いです。

 

同じ『歌』でもジャンルによって方向性は様々で、『ロックの発声』と『クラシックの発声』のように方向性が全く違う歌唱方法があります。つまり、それによって「正しい〇〇」「間違った〇〇」という概念は変わるということですね。

 

どんなことでも色々と突き詰めていくと、

  1. はっきりとした正しい答えを見つける
  2. 気にする価値のない言葉だと理解する

というどちらかの結論にたどり着きます。

 

どちらにたどり着いても、その言葉に迷うことはなくなり、成長を害することはないでしょう。

 

ただ、結局のところ調べ尽くした結果として、『気にしない』という選択肢になることもあるという点で、曖昧な言葉ほど最初から何も気にしない方が得をすることが多いのかもしれません。

『定義が曖昧な用語』は定義が曖昧たる理由があるということですね。

 

シンガーの言葉から学ぶ場合は、言葉一つ一つの定義を明確にする

シンガーやボイストレーナーの発言から何かを学ぶこともあるでしょう。

こういう時は、『言葉一つ一つの意味や定義を明確にする』ということを心がけなければいけません。

 

特にシンガーの発言は、詳しく説明してくれることがないため、受け手が勝手な解釈をしてしまいやすいです。

 

例えば、あるシンガーが「ミックスボイスは、地声と裏声を混ぜるようにして出している」と発言したとします。

この時、勉強熱心で素直な受け手は、「なるほど、地声と裏声を混ぜればいいのか」と納得して、「どうやって混ぜるんだろう?」と考えてしまいますが、これはダメ。

 

何がダメなのかと言うと、言葉を自分なりに解釈してしまっていることです。

 

シンガーでもボイストレーナーの言葉でもそうですが、ボイトレ用語は全ての言葉の定義を正確に擦り合わせないと、誤解が生じます

 

つまり、この場合は少なくとも、

  • 地声=?
  • 裏声=?
  • ミックスボイス=?
  • 混ぜる=?

という部分の解釈を完璧に一致させないと、その言葉を間に受けてはいけないのです。

 

そんなことまで?と思うかもしれませんが、「地声」「裏声」というありふれた用語ですら、人によって解釈が微妙に違うことがありますし、「混ぜる」という言葉も、人によって捉え方が違います。

 

なので結果的に、色々な誤解をしてしまう可能性があるのです。

 

さらに、シンガーの発言は信用度が高いという点も問題です。

 

「あのシンガーが言っていることなんだから、間違いないだろう」と考えが固まってしまい、その考え方から抜け出せなくなります。一度誤解してしまうと、それを正すのにも時間がかかります。

 

これもあくまでも可能性の話なので、全てがそうなるわけではないのですが、こういう危険性があるので発言から学ぶ場合には、その言葉一つ一つの意味を明確にする必要があるということです。

 

なぜ曖昧なボイトレ用語が生まれるのか?

最後になぜ曖昧なボイトレ用語や、人によって言っていることがバラバラな言葉が生まれるのかというところに触れておきます。

 

これは簡単に言えば、人間は伝言ゲームが苦手だということ。

 

人間は基本的に自分の主観で物事を判断し、自分の言葉でその概念を作り上げます

 

なので、人から人へ言葉が伝達される際に、人それぞれの『自分の解釈』が混ざっていき、複数の意味が生み出されてしまうのでしょう。

 

もちろん、わかりやすいはっきりとした概念の言葉であればそうなりにくいと言えるのですが、曖昧な言葉ほど伝言ゲームに失敗しやすいということです。

 

技術の言語化は難しい

曖昧な言葉を生み出すもう一つの要因が、『技術の言語化は難しい』という問題。

 

これは『意識と無意識の問題』とも言えます。

 

例えば、ある技術を人に伝える時、人は感覚やコツなどを伝えますが、これは『意識していること』だけを語っているわけです。つまり、『無意識にできていること』は語れないのです。

しかし、その技術は無意識にできていることも含めて完成しているものなので、この人は正解を伝えきれていないことになります。

 

無意識にできていることを、意識的に認識するのは非常に難しいので、これは仕方のないことです。

 

しかし、これが原因でその技術の伝言ゲームに失敗しやすくなるのですね。

人から人へと、自分が意識していることしか語れない上に、人によって『意識していること』『無意識にできていること』は違うので、この解釈のズレを人から人へと何度も繰り返すことで、曖昧な定義の言葉がたくさん生まれるのでしょう。

 

まとめ

  • 曖昧な用語は無視するか徹底的に調べる
    • 中途半端に理解すると、失敗の原因になる
    • 調べるなら、語源や論文などを徹底的に調べる
  • シンガー(もしくはトレーナー)の発言は鵜呑みにしない
    • 発言している言葉の意味を明確にして、自分なりに解釈しない
  • 曖昧な用語が生まれる理由は2つ
    • 人間は伝言ゲームが苦手で、解釈がズレてしまう
    • 技術の言語化は難しく、意識と無意識のギャップが生じる

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