今回は『正しい発声』についての研究です。
”正しい発声”というものがよく語られますが、これって『存在するようで存在しないもの』であると思います。
あえて言えば、
- 正しい発声とは『聴く人にとって魅力的な発声』
であるとしか言えないような気もします。
今回はこんな内容。
「正しい発声」を考える前に
「正しい発声」というのは『あるようでないようなもの』でしょう。
というのも「正しい発声」という概念は
- 音楽のジャンル
- 個人差
によって条件が常に変化すると考えられるから。
この二つの条件を考えて『正しい発声』というものを考えなければいけないでしょう。
ジャンルによる「正しさ」
ジャンルによっては”正反対の正解”みたいなものもあるので、
- ジャンルによる正しさ
を考慮に入れるべきだと思います。
あくまで一例でもっとジャンルはたくさんありますが、それぞれの音楽において「正しい発声」は変化しますので、それは各自目指すジャンルについて考えておく必要があります。
例えば、ハードロック・メタル系の音楽では叫ぶようなシャウトは当たり前で「正しい発声」ですが、クラシックでシャウトすると「正しくない発声」でしょう。
このようにジャンルによる『正しさの傾向』があるので、これは考慮に入れておくべきでしょう。
しかもこれもあくまで傾向のお話で、多くのジャンルで「あえての逆張り」が刺さることも普通にありますよね。
音楽って割となんでもありだから面白いんですね。
そう考えると、正しい発声なんてあるようでないようにも感じます。
個人差のある「正しさ」
【体の違い*〇〇に響く、正しい舌の位置、正しい口の開け方など。】
よく「正しい発声は〇〇に響く」とか表現されますね。
例えば、『鼻腔に響く』だったり。
そうなのかもしれませんし、それを否定することはないのですが、
- 正しい発声=鼻腔に響くとは限らない
ですよね。こういうのは『人による』でしょう。
持った生まれた骨格的に鼻腔には響きにくい人もいるでしょう。
当てはまる人もいるかもしれないし、当てはまらない人もいるかもしれないポイントだと思います。
同じように舌の位置や口の開け方も、「骨格・舌の大きさ・口の大きさ・歯並びなどなど」その全てが人によって異なるので一概にこうだと言えるものは少ない。
他にも色々あるでしょう。
【感覚の違い*楽だ、力みがないなど】
よく正しい発声は『楽だ』『力みがない』などという風に言われると思います。
これも否定しているわけではないのですが。
この『楽だ・力みがない』とはどれほどの感覚や意識なのか?
結局それは個人個人違いますよね。
- 5キロのダンベルを「軽い」と感じる人もいれば、「重い」と感じる人もいる。
- 1キロのランニングを「余裕」と感じる人もいれば、「きつい」と感じる人もいる。
同じように発声の『楽さ・力まなさ』も個人個人の感覚が違うので、
- 『正しい発声=楽な力みのない発声』
と一概に言い切ることはできないように思います。
そう言ったところで、個々がそれぞれの『力みのない』という感覚を探してしまうので、全く同じ”力みのない”という共通感覚は存在しないのですね。
他にも『一概には言えない』『個人の違いによる』例は無数にあると思います。
では、正しい発声とは
上記にある
- ジャンルによる正しさ
- 個人差のある正しさ
という要素を排除すると、あまり具体的な「正しい発声の条件」ってほとんど存在しないですよね。
でも実はそれこそがある意味で正解で、「正しい発声」というものは具体的なものでなくもっと広い視点で考えるものでしょう。
個人的には
- 「正しい発声」=「聴く人にとって魅力的な発声」であり、それ以上でもそれ以下でもない。
というものだと思います。
魅力的な発声とは
もし、
- 正しい発声=質の良い発声
- 質の良い発声=聴く人にとって魅力的な発声
と考えるのならば、
- 正しい発声=聴く人にとって魅力的な発声
と考えられます。
では、「魅力的な発声」とはどんな発声か?
それは歌の要素を分解すればある程度は見えてきますね。
歌は
- 音程
- リズム
- 言葉
で作られています(音程+リズム=メロディー)。
ということは
- 音程がいい
- リズムがいい
- 言葉がいい?
発声が魅力的な発声ということになりますね。
音程がいい、リズムがいい、はわかりますが、「言葉がいい」とは少し変ですね。
これは
- 『倍音・声質がいい』
に言い換えてしまった方がいいと思います。
つまり、
- 『その発声そのものの音色の良し悪し・音質』
のことです。
ということで、
魅力的な発声とは
- 音程がいい
- リズムがいい
- 倍音・声質がいい
という3つを押さえた発声のことと考えられます。
よって
- 正しい発声=聴く人にとって魅力的な発声
であるなら、
- 正しい発声=音程・リズム・倍音がいい発声
と言えると思います。
そして、
- 『答えはここまで』
ですね。
先ほども書いたようにこれ以上先へは進めないというか、「ジャンル」や「個人差」によって変動するものでしょう。
『それ以上は自分で探さなければいけない』『自分で探すのがベスト』とも言えるのかもしれません。
この左側は自分で探さなければいけない。
正しい発声を身につける
音楽的な魅力が「音程・リズム・倍音」にあるのならば、
- 音程がいい発声をするためにどうすればいいのか?
- リズムがいい発声をするためにどうすればいいのか?
- 倍音がいい発声(倍音が多い発声)をするためにどうすればいいのか?
という3点を考慮して、それを突き詰めた発声こそ
- 『自分にとっての正しい発声』
になるのでしょう。
「えー、ざっくり!」とは思うでしょうが、結局自分の体ですから、自分で考えて自分で試して失敗と成功を重ねないと本当の意味での結果は出ないのだと思います。
プロのシンガーに「ボイトレなんて受けたことないよ」という人が多いのもこういうことでしょう。
その代わりに自分で試行錯誤してきたのだと思います。
重要な核は大体倍音だったりしますね。
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魅力的な歌声になるには【重要なのは「倍音」】
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