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歌の雑学・研究・考察

ボイトレの難しさについて

投稿日:2021年3月31日 更新日:

今回は『ボイトレの難しさ』について掘り下げる内容です。

 

よく「ボイトレしても意味がない」「上手くならない」などのようなことは語られますが、意味はあるし上手くもなるものだと思います。

しかし、そういうものが語られる理由はすごくわかります。

 

というのも、ボイトレには難しい部分がいくつもあるからです。歌のトレーニングは『体』を使うものなので、基本的にスポーツのトレーニングとかなり近い考え方になりますが、歌のトレーニング特有の厄介な部分もいくつかあります。

 

そういう難しい部分を把握しておくことで、ボイトレを上手く進められるようになるでしょう。

ボイストレーニングの難しいポイント

ボイストレーニングが難しいポイントは、

  1. 目に見える変化や筋肉痛などがない
  2. 練習の段階を飛ばしてしまいやすい
  3. 長期的な時間がかかる
  4. 目的をしっかりと認識しておかなければいけない
  5. 個体差を考慮しなければいけない
  6. バランスを考えなければいけない

という点にあると思います。

それぞれ掘り下げます。

 

①目に見える変化や、筋肉痛などがない

ボイトレはスポーツや筋トレなどのように、体に分かりやすく現れる変化がありません。

 

スポーツや筋トレなどでは、継続すれば必ず『体』の成長が目に見えます。筋肉が太くなったり、硬くなったり、関節が柔らかくなったりと、トレーニングに対するわかりやすい成長実感があります。

 

目に見えて変化があるということは、達成感を感じる上で非常に大事ですね。

 

ところが、ボイトレでは見た目の変化はありません。発声に関わる部分は全て体の内部にあるので、外側からその能力の成長を見ることはできません。

 

なので、成長しているのかどうかが分かりにくく、達成感を感じにくいです。達成感を感じにくいと、モチベーションが低下してしまいます。

 

さらに、筋肉痛などの疲労が感じにくいのも、ボイトレの厄介なところです。

筋トレやスポーツでは、筋肉痛というわかりやすい痛みがあり、それが「成長の証」として感じられます。筋肉痛は痛くて嫌なものですが、どこか充実感や気持ちよさを感じる人も多いはずです。

 

しかし、ボイトレはこういう筋肉痛のようなものがほぼありません。喉の疲労のようなものを感じることはあるでしょうが、筋肉痛のようなわかりやすい「成長の証」がないのですね。

なので、トレーニングが効いているのか、効いていないのかがわかりにくくなります。

 

もちろん、

ボイトレにおける成長は、「音程」や「リズム」や「音色の質」などのような『音』で判断することになります。後ほど触れますが、これらは短期的に成長を実感できないものなので厄介です。

 

このように、筋肉などの変化や痛みがないことによって、達成感や成長実感を感じにくいというのが、ボイトレを難しくしている要因の一つです。

 

②練習の段階を飛ばしてしまいやすい

これは先ほどの「目に見える変化のなさ」から生まれる問題ですが、ボイトレは基礎・基本などの順序を飛ばしてしまいやすいという点が厄介です。

 

例えば、筋トレで、すごくマッチョな人が重いベンチプレスを上げているのを見たとき、多くの人は「筋肉量が多いから、あんなに重たいものを上げられるのだろう。今の自分には無理だ。」と思うはずです。

 

そして、そこにたどり着くまでには、「段階を踏んで成長していかなければいけない」と思うはずです。これは、ある意味当たり前ですよね。

 

ところが、歌はどうでしょう?

 

見た目だけでは、歌が上手い人も歌が苦手な人も見分けはつきません。つまり、歌が上手い人がどれくらい「歌のマッチョ」なのかを判断することができないですよね。

 

なので、筋トレのようにわかりやすい『能力の段階』を感じにくいのです。そして、『能力の段階』を感じにくいと、結果的に練習の順序(段階)を飛ばしてしまいやすくなります。

 

例えば、まともに出せない高音域がある曲に挑戦する、などは、いきなり重たいベンチプレスに挑戦しているようなものです。

 

何事にも基礎・基本があり、一歩づつ進むからこそ上手く成長できるわけであって、段階を飛ばしてもあまり良いことはありません(*絶対にダメとは言えないが)。

 

この『能力の段階が目に見えない』という部分が、ボイトレの厄介なところです。

 

③長期的な時間がかかる

これは、スポーツなどでも同じことが言えるでしょうが、『トレーニングによる変化には時間がかかる』という点。

 

体の成長には時間がかかるものです。例えば、筋トレは「まずは3ヶ月」と言われますが、ボイトレも同じようなものだと考えた方がいいでしょう。

 

当然、3ヶ月で完了するわけではなく、「ようやく変化を実感し始める」くらいなので、スポーツなどと同じように長期的に考えなければいけないものです(*もちろん、個人差があるものなので一概に言えないこともありますが、体の細胞が大まかに入れ替わるスパンが、大体3ヶ月と言われています)。

 

時間がかかる上に、先ほどの「①目に見える変化や、筋肉痛がない」という点も絡んでくるので、スポーツなどと比較して、ボイトレは「効果があるのかわからない」「これをやって意味あるの?」と不安になりやすいのですね。

 

必ず効果が出るとは言えませんが、『長い目で見れば効果が出るのに、途中でトレーニングをやめてしまう』ということが起こりやすいのもボイトレの特徴ですね。

 

④目的をしっかりと認識しておかなければいけない

これは、「何のためにトレーニングしているか?」を明確にしておかなければいけないということです。

 

スポーツなどでもよく起こることでしょうが、目的を忘れて『トレーニングのためのトレーニング』になってしまうと、ボイトレは上手くいかなくなります。

 

ボイトレのためのボイトレを続けると、歌にはあまり活かされずボイトレだけが上手くなってしまうということが起こる可能性があるのですね。

スポーツで言えば、「筋肉ムキムキなのに実際の試合には活かされていない」みたいな感じです。

 

もちろん、何一つ意味がないということはないでしょうが、歌に活かされるようにトレーニングしなければ効果的ではないです。

目的(歌うこと)に活かされないボイトレをするくらいなら、ひたすらに歌っていた方が良いトレーニングになることもあるかもしれません。

 

そういうことを避けるためには、しっかりと目的を意識してトレーニングすることが大事になるでしょう。

 

もし、上手くできないと感じたら、実際に「ひたすらに歌う」という選択肢は普通にアリです。

実際、「ボイトレらしいボイトレはしたことがない」というプロのシンガーもいますし、これでも特に問題はないのですね。

 

⑤個体差を考慮しなければいけない

人それぞれ顔や体の形が違うように、声(喉や声帯)も人それぞれに違います。

つまり、誰しも『個体差』があるということですね。ボイトレもこの個体差を考慮してしなければいけません。

 

例えば、体においては、腕が長い人・短い人、足が長い人・短い人、などのような骨格の違いがあります。スポーツではこういう骨格の違いなどが、「最適なフォームの違い」「最適な練習方法の違い」などを生み出します。

 

歌においても同じように、声が高い人・低い人、息っぽい声の人・鳴りやすい声の人・ハスキーボイスの人、などのように『声の個人差』を考慮してトレーニングしなければいけません。

この個人差を考慮してトレーニングしなければいけないという点も、ボイトレの難しいところです。

 

⑥バランスを考えなければいけない

これは、スポーツなどで目的に合わせて体のバランスを考えながら鍛えていくように、ボイトレも喉を体に見立ててバランスよく鍛えなければいけないということです。

 

例えば、スポーツなどで「上半身と下半身のバランス」「左右の筋肉のバランス」などが語られますね。「筋肉をつけすぎて、動きが悪くなった」などのように、色々なトレーニングをすればするほどに良いとは限りません。

 

ボイトレもこれと同じで、トレーニングをすればするほどに良いとは限りません。偏ったトレーニングを続けたり、過度なトレーニングをしたりするとバランスが崩れ、歌のパフォーマンスを落としてしまうこともあります。

しかし、ボイトレの『目に見える変化がない』というポイントが、さらに邪魔をします。

見た目での変化がわからないので、バランスの崩れを認識できないのですね。

 

「声帯をバランスよく鍛えましょう」と言われても、「どうやって?」と思うはずです。

 

体なら「右足が太すぎる」「上半身がデカすぎる」などのように、バランスの崩れを認識しやすいのですが、喉はそれができないのでバランスを整えることも難しいのです。

 

この喉や声帯のバランスの問題は、ボイトレの最も難しいところなのかもしれませんね。

これは割とどうしようもないことなので、一つ言えるとしたら『偏ったトレーニングをしないこと』になるでしょう。

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