今回は、ボイトレにおける栄養面への配慮についての内容です。
筋トレやスポーツをしている人は、その体の成長力を高めるために栄養に気を配っている、というのは多くの人が理解していることでしょう。食事を大切にするのはもちろん、サプリメントなどを活用し栄養をたくさん摂っています。
この理由は、同じ練習量でも、栄養がしっかりと満たされている状態とそうではない状態では、その成長に大きな差が出てしまうから。
一概には言えませんが、例えば、
- 練習量はすごく多いが、栄養状態が悪い人
- 練習量は普通だが、栄養状態が良好な人
であれば、後者の方が大きく成長する場合がほとんどでしょう。
それだけ栄養面は、人間の体の成長に関わっているということです。
そして、歌も体を使うものである以上は、同じように栄養がとても重要だと言えます。
つまり、筋トレやスポーツをやっている人が栄養に気を配るのと同じように、歌を歌う人も歌のための栄養を考えた方がいいのですね。
今回は、そんな『歌のための栄養素』について。
歌に必要な栄養素
歌の成長とは、
- 発声能力:声に関わる能力。『体の能力』とも言える。
- 音楽的感性:音楽に関わる能力。『脳(耳)の能力』とも言える。
この二つの能力を成長させることです。
これら二つについて、詳しくはこちらにまとめているので、ここでは省略します。
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歌に必要な能力を紐解く【音楽的感性×発声能力】
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つまり、この二つの能力を上手く成長させるための栄養素が必要になります。
また、歌の場合は『喉の状態』を良い状態に保つという視点も必要です。
ということは、大きく分けると、
- 喉の粘膜を回復させる栄養素
- 筋肉や神経を成長させる栄養素
- 脳を成長させる栄養素
という3つの軸で考えることができます。
①喉の粘膜を回復させる栄養素
喉の粘膜は、声の状態と密接に関わる部分です。
つまり、この部分を良好な状態に保つ栄養素を多く取ることで、日々の声のパフォーマンスを高めることができますし、発声による喉へのダメージの回復に役立ちます。
さらに、日々の喉の状態やダメージの回復は、練習の質にも関わってくる部分なので、間接的には成長にも関わるものと言えます。
喉の粘膜を回復させる栄養素は、
- ビタミンC:免疫機能をサポートし、抗酸化作用がある。喉の粘膜の修復や健康維持に役立つ。柑橘類、イチゴ、ピーマンなどに多く含まれている。
- ビタミンA:粘膜の健康維持に必要な栄養素。喉の粘膜の再生を促進し、感染から守る役割。にんじん、かぼちゃ、ほうれん草などの野菜に多く含まれている。
- 亜鉛:免疫機能を強化し、喉の粘膜の修復に関係している。特に喉の炎症や傷つきを和らげる効果がある。貝類、肉、豆類、種子などに含まれている。
- ビタミンE:抗酸化作用があり、喉の粘膜を保護し、修復を助ける。ナッツ、種子、植物油、葉野菜などに含まれている。
喉の粘膜に関して最も有名なのは、『ビタミンC』ですね。
プロのシンガーなど声を仕事にしている人が「喉のためにビタミンCを摂る」と語るのはよく聞きますし、のど飴にもビタミンC入りは多いですね。
そういう点では、喉の粘膜に最も良いものだと言えるでしょう。
とりえず、喉の調子を整えるという点では、まずはビタミンC。
②筋肉や神経を成長させる栄養素
『発声能力』のための栄養素ということです。
「声を出す」という行動は、体を使った運動で、
- 『息』に関連する呼吸の運動
- 『声帯』の動きを調整する運動
- 『共鳴』を調整する運動
- 『発音』を調整する運動
という4つを主な軸としたものです。
スポーツのようにムキムキマッチョな筋肉をつけるわけではないのですが、発声運動に必要な筋肉や神経を鍛えるという点では、同じように栄養素は必要になります。
筋肉や神経を成長させる栄養素は、
- タンパク質:筋肉や神経の成長と修復に欠かせない栄養素。良質なタンパク質源を摂取することで、筋肉や神経組織の再生や発達を促進できる。 肉類、魚介類、卵、乳製品、豆類、ナッツ類などに多く含まれる。
- ビタミンB群: 特にビタミンB1、B6、B12は神経の健康維持に重要。これらのビタミンは神経伝達物質の合成や神経組織の保護に関与。豚肉、鶏肉、魚介類、豆類、緑黄色野菜などに多く含まれる。
- ビタミンD:カルシウムの吸収や骨の形成だけでなく、筋肉の機能もサポートする。適切なビタミンDの摂取は、筋肉の成長や神経伝達の正常な機能に不可欠。 魚類、キノコ、卵黄などに多く含まれる。太陽の光を浴びることで体内で合成できる。
- カルシウム:筋肉の収縮や神経伝達に必要なミネラル。カルシウムは骨の健康を維持するだけでなく、筋肉や神経の正常な機能にも重要。 乳製品、小魚、海藻などに多く含まれる。
- 亜鉛:筋肉の成長に必要なタンパク質合成を促進し、運動による筋肉の損傷を修復するのを助ける。
- マグネシウム:エネルギー代謝や筋肉の収縮に必要なミネラルであり、神経伝達にも関与。マグネシウムは神経細胞の正常な機能を維持するために重要。
筋肉や神経などの運動面に関して最も有名なのは、やはりタンパク質。
食事でしっかりと摂取できればそれに越したことはないでしょうが、スポーツや筋トレをしている多くの人は、プロテインを摂取していますので、食事だけでしっかりと摂るのはなかなか難しいものだと言えるでしょう。
しかし、歌は筋トレなどのように大きな筋肥大は必要ないので、プロテインを飲んでまでタンパク質をたくさん摂る必要があるかと言うと、微妙なところです。
ただ、体の成長のためには『ないよりはあった方がいい』のもまた間違いないので、ここをどう判断するかは個々の栄養状態や考え方次第になります。
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ボイストレーニングにプロテインは効果があるのか?
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③脳を成長させる栄養素
『音楽的感性』のための栄養素ということです。
歌は「体の能力」以外にも、
- 音程を判別する
- リズムを判別する
- 音色を判別する
などのように、脳(耳)を使う能力が必要になります。
他にも音楽的な知識などを理解する必要があり、勉強のような一面もあるので、脳の面も考えなければいけません。
脳を成長させる栄養素は、
1. DHA・EPA:オメガ3脂肪酸と呼ばれる必須脂肪酸。脳の細胞膜を構成する重要な成分であり、記憶力や学習能力を向上させる。青魚(サケ、イワシ、サバ、アジなど)に多く含まれる。
2. ビタミンB群:エネルギー代謝に関与し、脳の機能を維持するために重要です。特に、ビタミンB1、B6、B12は、神経細胞の修復や神経伝達物質の合成に関与し、記憶力や学習能力を向上させる。
3. ビタミンC:抗酸化作用があり、脳細胞を酸化ストレスから守る。また、神経伝達物質の働きをサポートする効果も持っている。十分に摂ることで、脳が機敏になり、知能指数が上がると言われている。
4. ビタミンE:抗酸化作用があり、脳細胞を酸化ストレスから守る。また、認知機能の低下を防ぐ効果も持っている。
5. 亜鉛:神経伝達物質の合成に関与し、記憶力や学習能力を向上させる。
脳に関して、一番有名なのはDHA・EPAと言われるオメガ3脂肪酸ですね。「魚を食べると頭が良くなる」と言われるように、脳に良い影響があるとされています。
ただ、DHA・EPA以外の栄養素は、これまでの『喉の粘膜を回復させる栄養素』『筋肉や神経を成長させる栄養素』の中に出てきた栄養素でもあります。
体のことをしっかりと考えていれば、脳にもある程度良い影響があるということ。そして、能力の優先順位は、『発声能力』>『音楽的感性』であることを考えると、個人的には、「音楽的感性を向上させるためにDHA・EPAを意識的に摂取する」ということまではしなくていいと思っています。
もちろん、やって損をすることはないので、これも個々の考え方次第ですね。
まとめ
- タンパク質:発声能力
- ビタミンA:喉の状態
- ビタミンB群:発声能力、音楽的感性
- ビタミンC:喉の状態、音楽的感性
- ビタミンD:発声能力
- ビタミンE:喉の状態、音楽的感性
- 亜鉛:喉の状態、発声能力、音楽的感性
- カルシウム:発声能力
- マグネシウム:発声能力
- DHA・EPA:音楽的感性
基本的には、バランスの良い食事をしっかりと摂っていれば問題ないとは言えるでしょう。
しかし、しっかりと摂ることが難しいからこそ、筋トレやスポーツをやっている人はプロテインやサプリメントを摂っているわけで。
この辺りは、各自がどう考えるかですね。
上記の栄養素の中で、日本人に不足しがちな栄養素は、
- たんぱく質
- ビタミンB群
- ビタミンD
- カルシウム
- 亜鉛
だと言われています。
この辺りの栄養素に不安がある場合は、マルチビタミンのサプリメントだけでも摂っておくと良いではないかと個人的には思っています。
大抵のマルチビタミンのサプリメントには、以下の赤字の栄養素が含まれています。
- タンパク質:発声能力
- ビタミンA:喉の状態
- ビタミンB群:発声能力、音楽的感性
- ビタミンC:喉の状態、音楽的感性
- ビタミンD:発声能力
- ビタミンE:喉の状態、音楽的感性
- 亜鉛:喉の状態、発声能力、音楽的感性
- カルシウム:発声能力
- マグネシウム:発声能力
- DHA・EPA:音楽的感性
ほとんど網羅できていますし、先ほどの日本人に不足しがちな栄養素もタンパク質以外は押さえています。
『喉の状態』『発声能力』『音楽的感性』それぞれに役立つという点でも、マルチビタミンだけでも摂っておけばひとまず安心かと。
とにかく、栄養面に気を配ることは歌のパフォーマンスにも、日々の成長にもつながる大事なことなので、しっかりと意識しておきましょう。