歌の雑学・研究・考察

歌うときの正しい姿勢について【人それぞれ違うので自分に合うものを見つける】

投稿日:2019年12月5日 更新日:

今回は『歌うときの姿勢』についての内容です。

 

歌うときの「正しい姿勢」というものは厳密には『人それぞれ違う』というのが答えになると考えられます。

これは

  1. ポップスなどのマイクを使う歌唱方法か、クラシックなどのマイクなしを前提として歌唱方法か
  2. 自分にとって声が出しやすい姿勢を探す

という部分を考えていけばいいでしょう。

歌うときの姿勢について

まず、歌うときの姿勢は

  • クラシック(マイクなしが前提)の発声であれば『姿勢にこだわるのも重要
  • ポップス(マイクありが前提)の発声であれば『姿勢はそんなに気にしなくてもよい

というスタンスを取るといいかと。

 

これは

  • なぜ「姿勢を良くしなさい」という教えがあるのか
  • 姿勢を良くする目的は何なのか?

という部分にその答えがあると考えられます。

姿勢をよくする目的は「アゴ」と「胸」にある

歌における「姿勢を良くする」という言葉は

  1. 『アゴを引く』
  2. 『胸を張る』

という二つの動作に目的が集約されていると考えられます。

もっと言うと、アゴを引こうとすれば勝手に胸が張りますし、胸を張ろうとすれば自然とアゴが引きますから、二つの動作はつながっているものと言えるのかもしれません。

 

特にクラシックでは多くのシンガーがアゴを引いたような姿勢をとっているのがわかると思います。

なぜクラシックではこの姿勢をとるのか?

それは

  1. 喉仏を下げるため
  2. 腹圧(支え)を保つため

という二つの目的が考えられます。

⑴喉仏を下げるため

これは試してみるとわかりやすいのですが「アゴを突き出して声を出す」のと、「アゴを引いて声を出す」と、引いた方が喉仏が下がると思います。

 

喉仏が下がるということは、咽頭(腔)共鳴が広がることになります。

つまりこの共鳴が広がると太い音色、下方向へ響くような音色の声になります。

 

オペラなどのクラシックはマイクがない時代からの発声方法です。

その体だけで会場に声を届けるには大きな声量が必要になります。そして、大きな声量を生み出すには共鳴を最大限に活用しなければいけないので『喉仏を下げる(咽頭共鳴を最大化させる)』という行動を取っているのですね。

 

つまり、

  • 喉仏を下げやすい姿勢を取るために「アゴを引く」

というのが正解になるのですね。

 

逆から考えると『喉仏を下げようとすると自然とアゴを引く動きになる』とも言えると思います。

 

⑵腹圧(支え)を保つため

「腹圧を保つ・支え・アッポッジョ」などと言われるものですが、どれも意味がわかりにくい言葉ですよね。

 

すごく簡単に言えば「お腹をなるべく膨らませたまま発声する」ということです。つまり、吸うときも吐くとくもお腹が膨らんでいるのですね。ほぼクラシックでしか使われない技法でしょう。

 

つまり、お腹をなるべく膨らませたままにしやすくするために「胸を張る」のですね。

もちろん胸を張ることでアゴが引けるので喉仏が下がりやすくなるというメリットもあります。

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他の動作も結局「アゴ」と「胸」につながることが多い

姿勢を良くするとは「アゴを引くこと」「胸を張ること」でその目的について述べましたが、歌う姿勢で語られることはそれ以外にもありますよね。

 

例えば、

  • 足は肩幅
  • 手は『横or後ろ』

などなど。

 

これらも結局は「アゴ」と「胸」に目的があると考えられます。というのもこれらの動作だけでは声は変化しません。

実際に試してみるとわかると思うのですが、足を肩幅に広げようが閉じようが、手をどこに置いていようが声はほとんど変化しないですよね。

 

しかし、手を前で組むとアゴが前に出やすく胸が引っ込みやすくなる可能性がある。なので、手は横か後ろにおいて置くことで悪い方へ行くことを防ぐ。

足を完全に閉じていたり、足を大きく広げすぎたりしていると体がフラフラしてしまうので、結果的にアゴが動きやすくなる。だから足は肩幅くらいがちょうどよくなる。

 

というように結局は「アゴを引く」と「胸を張る」という部分に目的があると考えられるのですね。

 

ただし、「アゴを引きすぎる」「胸を張りすぎる」のように何事もやり過ぎはよくないのでその点は各自の調節が必要です。

ポップスは姿勢にこだわらなくてもいい

上記の二つの目的「⑴喉仏を下げて咽頭共鳴を最大化させる」「⑵腹圧を保つ」という部分が必要な人は姿勢にある程度こだわるべきですし、必要でない人はそこまでこだわらなくていいとも言えるでしょう。

 

おそらくこれらが必要な人は基本的に「クラシックの人」で「ポップスの人」には必要ないことが多いので、ポップスはそこまで姿勢にこだわらなくてもいいという結論が導けますね。

 

まぁ色々なポップスのシンガーのライブを見ていれば姿勢なんてこだわっていない人が多いのは一目瞭然だと思います(*一概には言えませんが)。

声から姿勢を考える【最適な姿勢は人それぞれ】

とは言え、変な姿勢をとれば誰でも声が出しにくくなるのは当然なので、あくまでも「発声しやすい姿勢」である必要はあります。

 

ここで「発声しやすい姿勢の条件とは?」と考えてしまいますが、クラシックのように「共鳴を最大化させなければいけない」などの条件がないので、ポップスには明確な答えがありません

 

ポップスの場合は

  • 「姿勢から発声」を考えるのではなく、「発声から姿勢」を考える方がいい

と考えられます。

 

つまり、『姿勢によって声を出しやすくするのではなく、声が出しやすい姿勢が正解』という風に考えるべきでしょう。

『この姿勢を取ることで、この声を出そう』と考えるのではなく、『この声を出そうとしたら、この姿勢になった』くらいの意識で考えるといいのかもしれません。

 

出しやすければそれはすごく猫背でも、ブリッジ気味に反り返るような姿勢を取っても何も問題ないでしょう。

 

ポップスにおいて大事なのは最初に型にはめてしまわないことでしょう。

例えば、「猫背が発声に良くないから歌が上手くならない」などのような一見すると正しそうですが、実は本質を捉えていない考え方に自分を当てはめてしまうのが一番良くないことだと思います。

何よりギターやピアノを弾き語りする人は猫背の状態になっている人が多いですが、特に問題なく歌えていますよね。

 

さらに言えば、人は体の作り・骨格などがそれぞれ微妙に違うので、人それぞれ最適な姿勢は違うということになります。

自分に合ったものであればどんなものでもいいでしょうし、結局のところそれを見つけることが大事と言えるでしょう。

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