今回は裏声についての概要と裏声の出し方や開発方法など裏声の導入部分です。
目次
裏声(ファルセット)とは
裏声(ファルセット)とは主に
- 地声ではない声のこと
- 地声から裏返った声・声区のこと
- 声帯筋(内側甲状披裂筋)が働かずに声帯靭帯・声帯粘膜のみで鳴らす声のこと
を指します。
「頭声」と言うこともあります。
まぁ、「言われずともわかる」ということから、「それ日本語?」という内容もあったと思いますが、難しいことは一旦さておき、これが裏声です↓
この声がひっくり返った先の音が「裏声」「ファルセット」です。
裏声は地声と比較して、
- 高い音
- 薄い音
- 息っぽい音
- 澄んだ音
になるのが特徴です。
なぜ高い音になるのか?
簡単に言えば、
- 声帯が分厚い状態(地声)から薄い状態(裏声)へと変化するので、声帯の振動数が高速になり高音となる
ということです。
声帯を断面から見ると、地声は声帯が分厚く使われる↓
裏声は声帯が薄く使われる↓
このように声帯が薄くなることで声帯の振動数が上がって高音になるということです。
で、上から見た図では
このように声帯筋というものが働かなくなる発声が裏声と定義できる。
これはかなりマニアックな内容になるので、ここではこの辺にしておきます。
-
-
声が裏返る仕組みや原因について
続きを見る
裏声の種類
その分類様式は人それぞれですが一般的には
- ファルセット(息が漏れる裏声)
- ヘッドボイス(芯のある裏声)
- ホイッスルボイス/フラジオレット(裏声の超高音)
の3種類に区分されることが多いです。
ただし、これはそこまで細かいことは気にせず「裏声は裏声」とざっくり考えるスタンスでいる方がいいと思われます。
というのも、音程で名称を区別するのはそこまで問題ないのですが、「息漏れ」と「芯」で名称を分けるのはあまりいいものではないと考えられるからです。
「息漏れ」と「芯」で何かが特別大きく切り替わるわけでもないですし、そもそも地声はそんな区分の仕方しないですよね。
どうやら最近の「ヘッドボイス」という言葉は海外では意味合い自体が整理されてきているようですし。
-
-
ファルセットとヘッドボイスの違いについて【日本と海外で考え方が違う?】
続きを見る
「息漏れ」とか「芯」で区分するのではなくレンジ(音域)で考えた方が実用的だろうと考えられます。
ざっくり、
- 低音〜中音の裏声(地声でもいける範囲)
- 高音の裏声(地声では厳しい範囲)
- 超高音の裏声(ホイッスルボイス)
という3つくらいで考えるといいと思われます。
これらも何かが特別切り替わるわけではなく、低いか高いかくらいの差です。
①低音〜中音の裏声
地声でも出せるくらいの範囲の音域帯の裏声↓
地声でも出せる範囲の裏声は勢いも必要ないので、そこまで強い発声ではなく優しく澄んだ綺麗な音色を作り出す傾向にあります。
ちなみに、現状地声と裏声がこんな感じの人でも↓
鍛えればこんな感じで地声と裏声の音域は重なります↓
この全体の音域帯が大抵の場合2〜3オクターブくらいの範囲になります。
音域については詳しくはこちらで↓
-
-
『声帯のタイプ』と『魅力的な音域』の関係性について
続きを見る
裏声の低中音はこの辺りになるでしょう↓
②高音の裏声
地声で出すには厳しい音域帯くらいの裏声。
切り替えがものすごく上手いですが、高音の部分は裏声です↓
高音の裏声を発しようとすると必然的に「勢いのある裏声・強い鳴りの裏声」になります。
これをヘッドボイスと認識しても特に問題ないと思いますが、先ほど言ったように特に名称を区切る必要性もないでしょう。
とにかく裏声で高音を出せばいいのです。
③超高音の裏声(ホイッスルボイス)
さらに超高音の裏声はホイッスルボイスと呼ばれます↓
ホイッスルボイスも結局は感覚的な言葉であり、厳密にどこからどこまでがホイッスルと決まっているわけではないものです。
しかも「特別な発声方法」というよりは実はシンプルに『とんでもなく高い裏声』という感じです。
まぁイルカの鳴き声のように出す特別な出し方もあるのですが、歌に使える綺麗なホイッスルはあくまで裏声の延長線上に存在していると考えられます。
-
-
ホイッスルボイスの出し方についての研究【ホイッスルは2種類ある】
続きを見る
『正しい裏声・ファルセット』を認識する
実はそもそも多くの人が認識している
- ”裏声”という発声状態そのものが2種類に分類できるのではないか
と考えられます。
つまり、
- ある人は「正しい裏声」を裏声と思っている→これはOK
- ある人は「正しくない裏声」を裏声と思い込んでいる→これはNO
ということがあります。
そして、多くの人がそのどちらかに一方に属していたり、どちらか一方の発声を裏声と認識している可能性があると考えられます。
これは僕の中で
- 「犬ファルセット(正しい)」
- 「猫ファルセット(正しくない)」
と呼んでいます(*僕の造語なので世間では通用しません。)
「いやいや、何言ってんの?」と思う方もいるでしょう。でも、確かにあるんです。
この正しいファルセットと正しくないファルセットは
- 音色や発声原理が微妙に違う
と考えられます。
ただこれを聴き分けるのは慣れないうちはとても難しいですし、同じものと認識している人も非常に多いように思います。
犬ファルセットと猫ファルセットの違いを簡単に説明しますと、
犬ファルセット
- 綺麗に裏返る
- 響き渡る
- 透き通る美しい音色
- 開放感のある音色
- スポッと抜けるような音色
猫ファルセット
- 綺麗に裏返らない
- 響かない
- 金属的な音色
- 締まったような音色
- 詰まったような音色
このようになります。
猫に思い当たる節がある人は要注意です。
これについては別ページにて詳しく解説しているので深掘りしたい方はぜひこちらへ。
-
-
正しい裏声について【犬ファルセットと猫ファルセット】
続きを見る
これから身につけるのは『犬ファルセット(正しい裏声)』がいいでしょう。
ファルセットが全く出せない人
- 「そもそも裏返らないし、全く出せないよ!犬とか猫とか何言ってんだ。」
という方はある意味ラッキーかもしれません。
変な癖がつかずにすみます。が、すでに裏返らない時点でおそらく猫ファルセット予備軍の可能性が高いかもしれません。
正しい裏声(ファルセット)の出し方・練習方法
具体的なファルセットの出し方を紹介します。
- 基本的なアプローチ
- 全くできない人のアプローチ
の二つです。
基本的なアプローチ
イメージだけで出せる人もいるので、まずはイメージしてみましょう。
- 狼の遠吠えのように「アオーーーーン」
- フクロウの鳴き声のように「ホー ホー ホー」
- マイケルジャクソンのように「フォオオウ!」
- ハミングした状態で全く力を入れずに「フン」と高い音を出してみる
まぁこんなイメージだけで出せたら苦労はしませんが、練習の前にイメージを持つことは大事です。
大事なのは最初のヨーデルの動画のようにスポッと抜けて周りに響き渡るようなイメージ。
具体的なやり方
地声からほとんど力を入れずにだんだんと音域を上げていきます。
低音域ではほどよく声帯をしっかりと鳴らすようにしましょう。ある点で地声の限界地点(換声点)が来るはずです。
楽な状態でそれ以上の音域を出そうとするとスポッと抜けて息っぽい声になるはずです。
これが裏声です。
『力を入れずに・楽な状態で』という部分は非常に重要です。こういう「程度を表す言葉」は受け取り方に個人差が生まれるので気をつけてください。個々の感覚が違うので、気をつけてとしか言えません。
少なくとも「喉」にはほぼ力を入れてはいけない(どうしても力が入るとかほんのり締まる人は猫ファルセットかも)。
地声域で声帯をしっかりと鳴らすのは、裏声になったときに息系の声質になるはずなのでそれを確かめやすくするためです。
できましたか?
猫の鳴き声っぽくなくて犬の鳴き声っぽいなら大丈夫です。
まぁこれでできた人はもともとできる人でこんなの読まなくてもほぼできた人かもしれません。
「今までできなかったけどできた」という人は少ないでしょう。
「じゃあ、書くなよ!」って話ですが、こういう説明以外でファルセットを説明するのはかなり難しいのです。
自転車に乗れない人に乗り方を言葉で説明するような難しさ。
乗れる人は乗れるし、乗れない人はとにかく乗る練習をするしかないですよね。それと同じです。
ほんの少しでもできた人
綺麗ではなかったけど、狼っぽかった。汚い声だけどフクロウだった。
ちゃんと響く感じがしたし、裏返っているし、力もあまりいらずに高い音が出たという人はOKです。
おそらくまだ使えないファルセットで、ガラッとしたり綺麗に鳴らなかったりするかもしれないですが、おそらくちゃんとしたファルセットでしょう。
この場合はその声をたくさん出していくしかないのです。
1音しか出せないのならその音をしっかり鳴るようにたくさん出す。そこから低音・高音に少しづつ押し広げていきます。
全くできなかった人のアプローチ
ファルセットが出せなかったり金属的な声になってしまう場合。
おそらくあなたは猫ファルセットか猫ファルセット予備軍です。
ファルセットを使う神経や機能が衰退している状態(高音を出そうとすると喉が締まる力が優位に働いてしまう喉)でしょう。
この場合かなりの練習量を必要とするでしょうが、諦めずに頑張りましょう。
練習方法・開発方法
- 一切の力を入れずに「あー」と声を出す。低めの地声になったはずです。
- ここから一切の力を入れずに音をあげていきます。一切の力が入ってなければあまり音階上げることはできないはずです。
- すぐに地声の限界点にきます。
- その上の音を絶対に脱力状態を維持したまま上げてみましょう(ほんの少しの締まるような感覚もあってはダメです。)
- ここでファルセットが出せる人だと「スポッ」て空気が抜けるようにすぐにファルセットに切り替わります。
- ここで猫になった方はその先に綺麗なファルセットはないのでやり直し
- ここで「ひっくり返るという感覚=今まで使っていた部分を使わなくなる感覚」を感じればある程度成功
- おそらくデスボイスのようなもの・ガラガラと鳴る・カサカサと鳴る・とても声と言えないような「スー」とした声などになると思われます。でも「なんとなく楽に声や息は出てるし、高音になりそうだな」という感覚もあると思います。
これが正しいファルセットの『源』です。
裏声が出せない人、猫喉を持つ人が犬ファルセットを見つけるための『種』と言えると考えられます。
この種ファルセットを出し続けて正しいファルセットを開発することが重要です。
それはもう聞けたもんじゃない声だったり、出している自分が不愉快になるような声かもしれませんが、これを出し続けないとファルセットが開拓されません。
神経を1から開拓するようなものなのです。
最初のうちは全くファルセットになる気がしないと思いますが、続けていくうちに少しづつファルセットが出るようになってきます。ただ、根気よく練習しないと全然育ちませんし、これでいいのかと自問自答するような道のりになるかと思われます。
-
-
裏声が出ない原因とかすれる原因について
続きを見る