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歌のスキル・テクニック

声の「支え」について【”腹圧”と横隔膜の動きが重要】

更新日:

今回は、「声の支え」についてです。

ボイストレーニングや歌において、「声の支え」というワードが出てきます。何だかわかるような、よくわからないようなそんな言葉ですよね。

 

実はこの言葉、非常に曖昧な言葉で、『ボイストレーナーや本によって言ってることが様々な言葉ランキング上位の言葉』だと思います。

 

なので、迷ってしまいやすいのですが、正確な意味は、

「支え」とは『腹圧を高めること』

になるでしょう。

声楽界では「アッポッジョ(appoggio)」と言われるもので常識なのかもしれませんが、一般的にはそれとは違う使われ方をすることも多いですし、それはそれでもいいと思います。

今回は、正確な意味を中心に、色々な「支え」について触れたいと思います。

 

「声の支え」とは

声の支えの定義

ここに全てが集約されているような気がするので、少し長いですが、以下の引用文をさらりと読んでみてください。真剣に読むとわけわからなくなるかもしれないので、ぜひさらりと流してください。

 

声楽では呼吸に関連して「支え」という言葉が用いられ、時代によって意味の変遷もあるが、現在では、呼気時にも横隔膜の吸気傾向(横隔膜の収縮)を保つことで呼気の流れをコントロールしつつ[2][3]内臓と横隔膜の上昇を防いで重心を安定させ(結果的に腹圧が高まる)、また、この時の横隔膜の緊張または横隔膜と呼気筋群との拮抗状態により発生する自然な生理的反応を利用することで喉に無駄な力を加えることなく声門閉鎖を強め[4]、さらにこれら一連の働きを通して喉頭懸垂筋群の(適切な)働きを呼び起こす、といった技術を指して用いられることが多く、より具体的には、吸気によって拡張した腹部(下腹部、側腹部、上腹部など流儀によって様々であるが)などの胴回りを、呼気の際にも拡張したまま保つ事によってこれらの働きは導き出される[2][3][4](但し、これを実際の歌声に反映させ、歌唱に活用できるようになるには、もともと非常に恵まれた才能を持った人以外はそれ相応の年月の訓練が必要である)。この場合、呼気の排出は結果的に腹部が凹むことではなく、胸郭の下部が狭まることによって行われる[5]。

引用元: Wikipedia『腹式呼吸』より

 

「何語が書かれているんだ」と思う方もいるでしょうが、これが『声の支え』の正体でしょう。

すごく簡単に説明します。

 

通常、息を吐いたり声を出したりするとお腹がへこみます。

横隔膜の動き

これは自然な反応ですね。これに合わせて横隔膜が上がったり下がったりします。

 

声の「支え」を入れると、

支えのお腹の状態

このように、息を吐くときにもお腹を膨らませた状態(横隔膜を下げた状態)をなるべく保つのです(*厳密には息を吐いているので、膨らむわけではなくあくまで”なるべく保つ”)。

 

この息を吐く時の動きと対抗するようにお腹を膨らませようとすることを、”「支え」を入れる”などと言うのですね。

 

つまり、

  • 『声の支え』とは息を吐く・声を出すときに、お腹を意図的に膨らませること(膨らみをなるべく保つこと)

と言えます。

 

お腹を膨らませることを「腹圧を保つ・腹圧を高める」などと言い、このテクニックのことを声楽では「アッポッジョ」と言います。

 

語源

『Appoggio』の語源はイタリア語の『Appoggiare(支え、支持、サポート)』から来ており、日本語訳すると、「支え」になりますから、それで「声の支え」という言葉が生まれたのでしょう。

 

「支え」が入るとどうなる?

まず、横隔膜が上がる(お腹が凹む)と、喉の周辺というのは力みやすくなります。

横隔膜が上がることで喉周辺に力が入りやすくなる

「力み」というより、厳密には『喉頭位置(喉仏)が上がりやすくなる(下げにくくなる)』と言えるでしょう。

 

試してみるとわかると思いますが、お腹を思いっきり凹ませると喉仏を下げにくくなると思います(*もちろん意識すればできるがやりにくいはず)。

 

なので、横隔膜を下げたままにすることで喉周辺の力みを取り除き、より一層声を出しやすくするのです。

支えによって喉の力みが緩和する

こちらも厳密には『喉頭位置が下がりやすくなる』と言えますね。

 

試してみるとわかると思いますが、お腹を思いっきり膨らませると喉仏が自然と下がりやすくなると思います。

それと同時に、胸郭が張る(「肺・胸回り・肋骨上部」が上がる)ような感覚があると思います。この『胸郭の張り』も支えの重要なポイントでしょうし、直接的に喉頭周りに影響しているのはこの胸郭部分でしょう。

喉周りとお腹は間接的につながっている

横隔膜の動き→胸郭部分(呼吸筋郡)の動き→喉回り』という感じでつながってくるのですね。

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ここで、

  • 「喉仏が上がったら力みなの?」
  • 「喉仏は下がったら力みじゃないの?」

などと疑問に思った方もいると思います。

 

そうなんです。これは結局クラシックにおいては「力み」と考えるべきでしょうが、ポップスは実はどっちでもいいとも考えられます。

 

クラシックは”マイクのない前提の歌唱方法”なので、

  • 喉仏を下げること=咽頭腔を広げることで共鳴を最大化させる=絶対的正解

です↓

 

お三方とも”喉仏をものすごく下げる”ようにして発声しているのがわかると思いますし、”胸を張っている”ように見えると思います。

 

「支え」はクラシックにおいては重要視されるが、ポップスにおいては重要視されないのですね。

もちろん、ポップスでも使えないことはないと思いますが、正直必要ないかと思います。

 

支えは、この「力み」以外にも「息の省エネ化」「呼吸のコントロール」など色々とメリットはあるでしょうが、これらもまた長いフレーズを滑らかに歌わなければならないクラシックだからこそ必要、という部分はあるでしょう。

 

「支え」の感覚

感覚は人それぞれなのでなんとも言えませんが、

  • お腹にボールが入っている感覚
  • お腹に円柱が入っていてそれを保つ感覚
  • 下腹が膨らんでいく感覚
  • お腹が膨らむと同時にお尻が締まる感覚

など色々な表現がされています。

 

体の感覚は人それぞれでしょうが、大事なのは発声に引っ張られて横隔膜を上昇させないことなので、『声は上、お腹は下』と言うような上下のイメージを持つことが大事だと思います。

 

「支え」の概念は、人それぞれ

上記で書いてきたような「支え」が個人的にも「支え」の正式な正体だと思っているのですが、人によっては全く違う概念・正反対の概念を持っている人もいます。

 

しかし、この言葉にも統一された明確な定義が確立されている訳ではなく、これとは全く異なる方法、例えば呼気時に逆に横隔膜の上昇を意図的に助力し(腹を引く、胴回りを絞る、など)、この際の腹筋群や背筋群のコントロール[6]を指して「支え」と呼んだり、さらには呼吸法とは全く関係のない心理的(時には神秘主義的)イメージを「支え」とするなど、各指導者や声楽家が各人の理解でこの言葉を用いる為、声楽を学ぶ者を混乱させる原因ともなっている。いずれにせよ、「支え」とは声と歌唱を安定させるための意識的な身体操作技術一般を指すことが多いが、声帯や喉頭の状態、あるいは声の共鳴の問題とも深く関連しており、必ずしも呼吸法のみに関連する問題ではない。

引用元: Wikipedia『腹式呼吸』より

 

つまり、

  • お腹を凹ませることを保つ「支え」
  • 気持ちの面での「支え」
  • 声帯がしっかりと息を受け止め鳴らしているという「支え」←(結構多い)

など人によって様々な概念があります。

 

ちなみに、こういう色々な概念は海外でも同様のようですね(*英語ですが、翻訳字幕でだいたい理解できます)↓

「支え」は人それぞれ概念が違う

特に、右側の『声帯が呼気圧を支えている』というのは多く語られているような気もします。

 

これはもうそういうものなのだと、割り切っておくことが大切です。

言葉が一人歩きしてしまった結果でしょう。

 

そもそも「支え」って言葉が短すぎますし、漠然としてますから、誤解されたり変な言葉の意味として広がっても仕方ないことだと思います。

言葉の意味は時代によって変遷しますから、使いたいように使えばいいとも思います。

 

一般的に多い「支え」=声帯が呼気圧を支えている状態

一般的に語られる「支え」の簡単なやり方や感じ方について。

  1. まず、「スーーーー」と発声してください
  2. 次に「ズーーーー」と発声してください

「ズーーー」になった時に「支え」が入ったのがわかると思います。これが、声帯が呼気圧を支えている状態

厳密には、「ズ」という呼気圧が漏れにくい発音の力を借りている状態ですが、「ズーーー」の後発音を解いて「ズーーーあーーー」などにすると、声帯はしっかりと呼気圧を支えられると思います。

結構簡単ですね。

 

結論

「声の支え」とは

声の支え

『腹圧を高める』こと。

それによって『横隔膜を下に保ち、喉周りの緊張を防ぐ』こと

ですね。

ただし、様々な捉え方がされている定義が一定ではない言葉。

 

同じように『腹式呼吸』も腹圧を高めたままのものを、正しい腹式呼吸と言う場合もあるのでしょう。

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