今回は、『犬ファルセットと猫ファルセット』について。
この記事は
- 『犬ファルセット』とは
- 『猫ファルセット』とは
という内容です。
『犬ファルセット』と『猫ファルセット』
裏声の種類や区分は、一般的に大きく3つに区分されることが多いです。
- ファルセット
- ヘッドボイス
- ホイッスルボイス(フラジオレット)
などに区分されることが多いでしょう(*流派による)。
しかし、今回はそういう区分のお話ではなく、
- もっと根本でファルセットは区分するべきではないか?
というお話です。
その区分が
- 犬ファルセット(正しい裏声・美しい裏声)
- 猫ファルセット(良くない裏声・美しくない裏声)
という二つの区分(*「犬ファルセット」「猫ファルセット」は一般的な言葉ではなく、その音色の特徴をわかりやすくするために私が作った造語です。世間では使えないので、注意してください。)
多くの人の「裏声」はこの2種類に分類でき、それぞれの人がそれぞれにその発声を裏声だと思い込んでいると考えられます。
つまり、
- 正しい裏声が出せる人
- あまり良くない(正しくない)裏声が出せる人
という2種類のタイプの人がいる。
何もせずとも犬ファルセットを出せる人もいますし、逆に猫ファルセットの人もいます。
もしくは二つ持っていたり、中間的・中途半端な人もいたりと、人によって色々です。
おそらくほとんどの人が「お前、何言ってんだ」と思っていることでしょう。笑
でも、本当にあるんです。
自分自身で「裏声を出せる」と認識されている方の中には、声帯を伸展させず、緊張させることで振動を停止させ、間違った裏声を発している人が多く存在します。貴方は、正しい裏声を発せていますか?
ボイストレーニング実施時も、当然最初に裏声を発声していただくのですが、実にその9割の人が「力み」でもって裏声を発しています。どんなに「力を抜いてください」と指摘しても、最初の練習で力みを完全排除できる人はほとんどいません。それぐらい、裏声発声時の「力み」が無意識の中でセットになってしまっていることが多いようです。「力み」でもって裏声発声する人は、本来機能すべき輪状甲状筋の代わりに甲状披裂筋を硬化させ「裏声らしき声」を発声していることが多いようです。
こちらのサイト(すごく参考になる)で言っていることと全く同じかどうかはわかりませんが、個人的には同意しかないです。
犬と猫の『何が』違うのか?
後ほど音色の特徴などの具体的な特徴などを述べるのですが、何が違うのかという”明確なもの”は未解明です(*特に猫ファルセットの動き)
裏声の基本的な声帯の動きは解明されています。
通常裏声はこういう動きをしている(*図は断面図。簡略化しています)。
このように声帯が薄くなり振動パターンが変化します。これに関しては詳しくは『声が裏返る仕組みについて』の記事にまとめていますので省略します。
そして、正しくない裏声(猫ファルセット)がどういう状態かはわかりませんが、声帯筋という部分が力んで器用に裏声っぽい音色を鳴らしている状態だと考えられます。
こんな風に、地声に近い声帯の使い方で擬似的な裏声(不完全な裏声)を起用に鳴らしていると考えられます。
注意点
一つ注意点として、考え方としては人は必ずどちらかに分類されると考えることができるのですが、白黒はっきりつかないグレーなラインの人も存在すると考えられます。
ちなみに、先ほどの引用では「9割」の人がダメだそうです。
言い過ぎではないのかもしれません。
『犬ファルセット』とは
簡単に言うと、
『犬や狼の声のようによく響くファルセット』です。
- 綺麗に裏返る
- 響き渡る
- 透き通る美しい音色
- 開放感のある音色
- スポッと抜けるような音色
良い音色になるので「正しい裏声」とします。
犬や狼の鳴き声のように広がりのある音色です。綺麗に響くような音色のファルセットで、息の倍音が乗りやすく美しい音色になります。
こんなイメージ↓
裏声部分↓
犬ファルセットは綺麗な美しい音色を奏でます。
「普通の裏声じゃん。」と感じる人もいると思いますが、それはそれで問題ありません。
「正しい裏声」と言い切れる一番の特徴は、地声から裏声に移行するときに「スポッ」と抜けるような鳴りが作れることです。
ボトルのコルクを「ポンっ」と抜くように、ヨーデルのように声を裏返すことができる人は確実に犬ファルセットと言えます↓
このように綺麗な「スポッと抜ける感じの音色」は、猫ファルセットの人にはおそらくできないでしょう。
ただ、これができないからと言って『猫ファルセットである』とは完全には言い切れないのが、厄介なところではあります。
しかし、これができる人は間違いなく『犬ファルセットだ』と言えるでしょう(*冒頭「へ〜い」)↓
『猫ファルセット』とは
簡単に言うと
『猫の鳴き声のように響きのないファルセット』です。
- 綺麗に裏返らない
- 響かない
- 金属的な音色
- 締まったような音色
- 詰まったような音色
になるのが特徴です。
あまり良いものではないので、ここでは「正しくない裏声」とします。
名前の通り「猫の鳴き声」のような音色です。
まぁ良く言えば「ヘッドボイス(日本では”芯のある裏声”と言われる)」と言う人もいるかもしれませんが、それは都合よく当てはめたという感じなのかも。
この猫ファルセットは、綺麗に響く抜けるような音色にならないです。
- 「綺麗に裏返らない・スポッと抜けない」
という現象が起こります。
「地声と裏声の違いがわからない」「”裏返る感覚”がわからない」と感じる人も猫ファルセットの可能性大です。
猫ファルセットの特徴
犬ファルセットは解放的な音がするのに対し、猫ファルセットはどこかほんのり締まったような閉鎖的な音色、もしくは地声から「薄皮一枚剥いだような薄い芯のある声」「弱々しい裏声」になります。
犬ファルセットは楽に綺麗に澄んだ音色で、「すぽっ」と抜けるように響くのに対し、猫ファルセットはほんのり締めたようなどこか閉塞感のあるやや芯のある音色で響かないのです。
また、犬ファルセットと猫ファルセットはおそらく微妙な感覚の違いもあると思われます。
犬の感覚
- 「犬ファルセット」は全く力がいらない
です。
むしろバランスを取っている感覚の方が強いはずです。
息の勢いに応じて音色がどんどん大きくなるのも特徴です。息を強く吐けば、周りに響き渡る音色になります。
猫の感覚
- 「猫ファルセット」はかすかに締まったような感覚
なのかもしれません。
力自体はいらないでしょうが、若干ほんのりと喉が締まるはず。
この『ほんのり』のせいで「力は入っていない」と勘違いしやすい。先ほどの引用にもそういう記述がありましたね。
息を強く吐いてもある一定の位置で音量に限界がきて、周りに響き渡らせるのは難しい。息の圧力をかければかけるほどに音色に芯を持ったりします。
おそらく、猫ファルセットの人たちはライブ会場とかで「フォオオーーー!!」とか「フウゥゥーー!!」とか叫ぶのが苦手なはずです。
あの声って会場に響き渡りますよね。正しいファルセットなので開放的に響く。ジェットコースターに乗った時の「フォーー!!」も同じです。
ところが、猫ファルセットの人がそんな感じで叫んでも、声量のないどこか閉塞感のある響かない音色になってしまうのです。
『ニャー』の音色なので、声量が出たとしても詰まったような音色です。
つまり
『猫の声(喉)なのです。犬の声(喉)のように響かない』。
例えば、リラックスしながらあくびをすると「ふぁあぁー」と高い声で発しますよね?
これすら裏返る人は犬ファルセットになるし、裏返らない人は猫ファルセットになるのです。そういう声帯になっているのですね。
こういう喉の人は少なからずいます。というか、結構いるでしょう。
残念ながら「猫ファルセットは良くないもの」と言っているので、その例を紹介することはできませんが、思い当たる節がある人もいるでしょうしあなたの周りにも普通にいるはずなので、ぜひ探してみてください。
輪状甲状関節の亜脱臼!?
猫ファルセットを持っている人は、「輪状甲状関節の亜脱臼」というものも関係していることもあるだろうと考えられます。あくまでも一因ですが。
*亜脱臼とは”脱臼”ほどはひどくない、”若干の脱臼”という意味です。
すごく簡単に言えば、『喉が綺麗に動かなくなってしまっている』ということ。これにより裏声なども猫っぽくなると考えられます。
しかも、これの怖いところは「日常会話などには特に支障はない」というところ。
これは怪我のようなもので医学的になってしまうので、詳しくは”輪状甲状関節の亜脱臼”で検索してみてください。
2つは同じようで、まるで違う
実は猫ファルセットの中でも
- 息の多い声質
- 芯のある声質
- 低音・高音
という変化をつけられると考えられます。
当然、犬ファルセットの人も同様です。
これが非常に厄介。
このように「犬と猫」それぞれのファルセットに対して『息が漏れる声質・芯のある声質』などが作れてしまうので、どちらに属していようとも『自分は裏声を出している』と思い込んでしまいます。
これが非常に厄介なところですね。
-
裏声(ファルセット)とは?基礎知識と出し方について
続きを見る