今回は「タングトリル・タントリル・巻き舌トレーニング」と呼ばれるボイストレーニングについて。
このトレーニングは、
- 舌根をほぐして発声時の力みを取り除く
- 舌の柔軟性を高めて滑舌を改善する
- 息の流れと声帯の連動性を高める
などの効果が期待できます。
個人的には、このトレーニングはウォーミングアップにも使える、地味に良いトレーニングなのではないかと思っています。
目次
『タングトリル』とは
「タングトリル(タントリル)」とは、巻き舌の状態を連続的に作りながら声を出すトレーニング方法です。
「タンロール」「巻き舌トレーニング」とも呼ばれています。
具体的にはこんなイメージ↓
このようにウォーミングアップとして活用しているシンガーもいます。
語源・由来
タングトリルは英語で「tongue-trill」です。
tongueは「舌」、trillは「震える・振動」などを意味します。
この「tongue」の発音記号は「tʌ́ŋ」で、この「ŋ」は舌の奥を使って「ン」と発音するものです。「グ」と言いかけるギリギリのところで止めるイメージですね。
牛タンなどは「タン」なので、本来「タントリル」と呼ぶべきなのでしょうが、「タングトリル」として広まってしまっているところもあるので、ここでは「タングトリル」として話を進めます。
タングトリルの効果・メリット
タングトリルは、以下のような効果が期待できます。
- 舌根をほぐし、発声の力みを取る
- 発音や滑舌が良くなる
- 息と声帯のバランスを整える
①舌根をほぐし発声の力みを取る
タングトリルは、発声時における舌や舌根の力みをほぐす効果があります。
特に、高音発声時などに現れる舌の硬直や喉を締め付けるような発声において、タングトリルを行うことで、喉が締まる方向とは逆方向に引っ張り上げることができるため、舌根が固まって喉が締まっていくのを防ぐことができます。
舌を起点にして喉に余計な力が入らず締まっていくのを防いでいるという感じです。これは、厳密には舌根を「ほぐしている」というよりも、舌根を固定して「声帯と舌根を切り離している」と言えます。
ただ難しく考えたくない場合は、ほぐしていると考えても問題はないと思います。
舌を出して発声するトレーニングも似たような効果があると考えられます。
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舌根を柔らかくするトレーニング方法について
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②発音・滑舌が良くなる
タングトリルは、発音や滑舌を向上させる効果が期待できます。
滑「舌」というくらいなので、舌の動きは発音や滑舌に大きく関わっています。
つまり、舌の動きが柔軟になることで、滑舌・発音が良くなる、言葉のつながりがスムーズになる、などの効果が生まれ、それが歌にも活かされます。
③息の流れと声帯の連動性を高める
タングトリルは、息の流れと声帯の連動性を高める効果が期待できます。
というのも、タングトリルを行うには、息を綺麗に流し続ける必要があります。例えば、息を急激に強くしたり、弱くしたりすると、タングトリルが崩れると思います。
つまり、タングトリルが上手くできている状態というのは、息がバランスよく流れた発声状態になっていると言えるのですね。
こういう点で、息の流れと声帯のバランスを整えたり、息と声帯の連動を身につけるために役立つと考えられます。
デメリット
タングトリルをやり続けたからといって、大きなデメリットはないでしょう。発声が悪くなってしまったり、変な癖を身につけてしまうなどのリスクの低いトレーニングです。
一つデメリットがあるとすれば、長時間やり続けると、舌がダメージを受ける可能性があります。舌を回転させるときに側面が歯と擦れることがあるので、長時間続けると舌が痛くなったりします。
これは対策しようがないので、舌が痛くなったら少し時間を置きましょう。
タングトリルのやり方・練習方法
やり方
「ル」の発音をする直前の口の形を作ります。強めの「ル」をイメージし、舌の裏を上の顎につけるような意識で、口の中で舌を丸めます。 この口と舌の形を保ったまま、声を出してみてください(最初は息だけでもOKです)。 すると、息の力で舌が振動し、「ルルルル」と続けて音が出ます。 舌を口の中で転がすイメージを持つと良いでしょう。
注意点
過度に力を入れないように気を付けましょう。タングトリルを必死に行おうとして、喉や舌に無理な力が加わえないように。最初はうまくできなくても、無理のない力感で行うことが大切です。
徐々にコツを掴んでいけば、力を入れずにスムーズにタングトリルができるようになるでしょう。
どうしてもできない人
タングトリルは、舌の大きさや長さによって、何をどうしてもできない人もいます。これはどうしようもないことなので、練習しても「できそうにない」「全くできない」という場合は、潔くあきらめましょう。
タングトリルができなければ歌が歌えないというわけではないですし、舌を出しながらの発声練習など似たような効果が期待できる練習方法はありますから。
タングトリルでの練習方法
基本のトレーニング方法としては、
- ピアノや音源に合わせてタングトリルを行うトレーニング
- タングトリルだけで歌を歌うトレーニング
という二つが考えられます。
歌う前のウォーミングアップに取り入れるのもいいかもしれません。
関連
タングトリルの練習用音源ページもあります。練習音源に困っている方はぜひ活用してみてください。
まとめ
「タングトリル・タントリル・巻き舌トレーニング」は、舌の動きを中心に行われるボイストレーニング。
【効果】
- 舌根をほぐし、発声時の力みを取り除く
- 舌の柔軟性を高めて滑舌を改善する
- 息と声帯の連動性を高める
【メリット】
- デメリットが考えにくい
- ウォーミングアップにも使える
- 地味に効果的なトレーニング
【注意点】
- 過度に力を入れない
- どうしてもできない場合は無理しない(舌を出しながらの発声練習などでも似たような効果が期待できる)
どんなトレーニングにも言えますが、すぐに劇的な効果が出るわけではありません。ある程度の継続が必要になるので、長期的にコツコツと取り組みましょう。