今回は咽頭共鳴(咽頭腔共鳴・胸腔共鳴)について。
咽頭共鳴は下方向への響きのことで、歌においては重要な要素の1つであり、特にクラシック系の発声には必須とも言えるでしょう。
ポップスにおいては必須とは言えませんが、理解しておいて損はないでしょうし、特に太く深い声を鍛えたい方にとっては役立つものになると思います。
『咽頭共鳴』とは
咽頭共鳴(または咽頭腔共鳴)とは、咽頭腔の空間が発する響きのことを指します。
また、「胸腔共鳴」という用語は、胸に響く感覚を指していますが、実際の共鳴空間は「咽頭腔」ということになります。
歌の流派によって呼び方が異なりますが、ここでは「咽頭共鳴」としておきます。
この共鳴は簡単に言えば「下方向への響き」です。
下方向への響きをしっかりと感じるためには、喉仏を下げたような発声をする必要があります↓
クラシックはこの共鳴を最大化させることで、マイクなしでも響き渡る声量を身につける発声方法です。
喉を開くイメージです↓
一般的に、クラシック音楽のジャンルでは、咽頭共鳴・下方向への響きを積極的に活用することが多いです。
一方、ポップスなどの他のジャンルでも使われることはありますが、クラシックほど必須ではない場合も多いですね。
咽頭共鳴を体感してみる
咽頭共鳴を体感することは、意外と簡単にできます。
まず、自分ができる限りの低い声を出してみてください。大きな声を出す必要はありませんが、小さくならないように注意しましょう。すると、自然に喉仏が下がり、深くて太い声で響くようになるはずです。この状態が、咽頭共鳴が強く作用している状態です。
このとき、声の方向性は下方向(胸の方向)へ向かっていると感じられます。これが、「下方向の響き」です。
もし咽頭共鳴が上手くできない場合は、喉仏を下げることに意識を集中すると良いでしょう。
コツは、「喉仏を下げる」ということです。
咽頭共鳴の理屈や原理
咽頭共鳴は、体感的には下方向への響きが感じられますが、実際には下方向の共鳴空間が広がっているわけではありません。
喉頭(喉仏)の位置を下げることで、声の発信源である声帯から口までの距離を遠くすることができます。これにより、共鳴空間が多く作り出される仕組みになっています。
どういうことか?
喉仏と声帯は基本的にセットであることを覚えておくと、喉頭共鳴の原理が理解しやすいです。
喉仏を下げることで、声帯の位置も下がるため、音が口から出るまでの距離が長くなります。その結果、共鳴する空間が増えることになるということです。
つまり、声帯で鳴らした音が口から出るまでの距離が共鳴空間になるわけです。トンネルのようなイメージを持つとわかりやすいでしょう。
喉頭の位置を下げることで(つまり、声帯の位置を下げることで)、口までの距離が長くなり、その分だけ共鳴空間が増えます。これが咽頭共鳴を作るということです。
実際にどんな感じか知りたい場合はこちらをみればわかると思います↓
咽頭共鳴によって感じる胸に響く感覚や下方向への響きは、声帯の位置が胸の方向に近づいた結果として現れるものと言えるでしょう。
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喉仏の上下と発声の関係性について
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咽頭共鳴の効果
咽頭共鳴を身につけると、声に深みや太さが出てきます。また低音域を発声する際の鳴りが綺麗になるでしょう。
咽頭共鳴の効果
- 太い声質を印象付ける
- 深い声になる
- かっこいい印象になる
- パワフルな印象になる
- 体に響く声になる
などなど様々な効果が考えられます。
咽頭共鳴のトレーニング方法
共鳴のトレーニングをする際に一つ頭に入れておかなければいけないのは、「共鳴』は体型・骨格・体の作りによる空間に響かせるものなので、
- 鍛えれば鍛えるほど響く空間が大きくはならない
ということです。
つまり、持っているものを最大限活かすようにすることが共鳴を鍛えるということになります。持って生まれた体の空間は基本的に変えられませんから。
咽頭共鳴のトレーニング
咽頭共鳴のトレーニングは基本的に『喉仏の位置=喉頭の位置』が鍵を握っていますが、まずは声を当てる方向性をしっかりとイメージすることが大切です。
”意識”で音色を変えるイメージ↓
このように「下」をイメージするだけでも声は変化します。
こういうイメージをもとに練習方法は二つ、
- 喉仏を手で触りながらトレーニング
- 「ボイ」トレーニング
というものです。
それぞれ掘り下げます。
①喉仏を手で触りながらトレーニング
喉仏を下げる練習は、手で喉仏を触りながら発声するというものです。手を喉仏にそっと添えるだけです。
「そんなの意味あるの?」という感じでしょうが、この練習方法の良いところは、手で喉仏を触ることで「意識」を持つことができる点です。喉仏は普段自分の目で確認することができず、あまり意識もないため、意識を向けることが重要です。
手で触ることで喉仏に意識を向け、感覚を確認することができます。
練習を続けることで、喉仏のコントロールが上手くできるようになってくるはずです。
また、このトレーニングは手で触ればいいので、他のトレーニングをしながら、普通に歌いながらでもできるという点が良いところですね。
②「ボイ」トレーニング
その名の通り「ボイ」「boy」と発音するトレーニングです。
練習方法
練習方法はそのまま「ボイ」の発音で
- ドレミファソファミレド
などのスケールに合わせて
- ボイボイボイボイボイボイボイボイボイ
と歌っていく練習方法です。
音階はお好みでいいと思いますが、このトレーニングの効果を考えると下に下がっていく音階がおすすめです。
もちろん、音階なしでただひたすらに好きな音程でやっても効果があります。ただ、音階があったほうがピッチ感もつきますからそういう点で音があったほうがお得でしょう。
音源に困っている方は『「ボイ」トレーニング用音源ページ』を活用してみてください。
注意点
曖昧な発音にならずに、しっかりと「ボイ」の発音をすることを心がけましょう。
また、喉仏が下方向へ作用しているのを感じながらトレーニングすると良いと思います。
効果
「ボイ」という単語を発音する際に、喉仏が下がる作用があります。連続して「ボイボイボイボイ」と発音することで、喉仏がかなり動くことになります。これにより、咽頭共鳴を身につけることができます。
実は、このトレーニングにおいては、「オイオイオイ」の母音であれは子音はなんでもいいのですが、「ボ」はかなり喉仏を落としやすい発音なのでオススメしているだけです(*例えば、「ヨイ」でやってみると響きが上方向寄りになったりします)
トレーニングの際には、喉仏を触りながら行うことで、より効果が倍増するかもしれません。
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発声における3種類の共鳴について
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