今回は「ホイッスルボイス」についてです。
この記事は
- ホイッスルボイスとは
- 2種類の発声傾向がある
- 声帯の状態
- 出し方・練習方法
- 必要性
についての内容です。
『ホイッスルボイス』とは
ホイッスルボイスの定義
ホイッスルボイスとは『ファルセット・ヘッドボイスの上の音域帯に存在する超高音発声』のことです。
フレジオレットボイスという呼ばれ方をする場合もあります。
どの音階からホイッスルボイスとかいう明確な線引きはなく、”感覚的な言葉”で使われることが多いです。
というのも超高音をなんでもホイッスルと言ってしまう人もいますし、限られた綺麗な音色をホイッスルボイスと言う人もいます。
個人的には美しいホイッスルボイスは本当に笛のような音色で声帯を超閉鎖させただけの状態とは別物だと思っています。
しかし、超高音発声全般を「ホイッスルボイス」と言ってしまうのであればそれはそれでいいとも思っています。
ここでは大きく綺麗な音色のホイッスルボイスとそうでもないホイッスルボイスの二つに分けて考えます。
2種類のホイッスルボイス
大枠ホイッスルボイスと定義される超高音発声にも2種類あると考えられます。
- 笛のような音色のホイッスルボイス
- 金属的な音色のホイッスルボイス
世間的にはこの二つの発声をまとめてホイッスルボイスと呼んでいるような気がします。
この二つをここでは
- 笛ホイッスル
- 金属ホイッスル
とでも呼んでおきます。
「笛ホイッスル」は「笛笛」ってことになりますが、気にしない。笑
この二つは同じくらいの音域の発声ですが、発声の質が違います。
- 笛ホイッスルは「息の倍音」を多く含みます。
- 金属ホイッスルは「鳴りの倍音」を多く含みます。
個人的には笛のような音色のホイッスルボイスこそ「真のホイッスルボイス」と言えるものだと考えています。
言い換えると『歌の中で使える美しいホイッスルボイス』。
笛ホイッスル
フルートやピッコロ、リコーダーのような管楽器の音色のようなホイッスルボイスです。
笛ホイッスルの特徴
- 息の「スー」っとした倍音を多く含む
- 音色が綺麗
- どこか開放的で心地よい
- おそらくほぼ力はいらず楽な発声
- 裏声・ファルセットの延長線上にあると考えられる
金属ホイッスル
鉄琴・グロッケンを叩いたような金属的音色のホイッスルボイスです。
金属ホイッスルの特徴
- 鳴りの「キーン」とした倍音を多く含む
- 音色がキツイ
- どこか詰まっていてツンとする
- 出していて何かしら力がいる
- ミックスボイスの延長線上、エッジボイスの延長線上にあると考えられる。
このような違いがあります。
しかし、何度も言うように、この2種類の発声をまとめてホイッスルボイスと呼んでも間違いではないでしょう。
呼び方はどうでもいいんです。
ただ、発声の音色自体にはある程度線を引くべきです。
なぜなら、
- 「笛ホイッスル」は習得が難しい超人的発声
- 「金属ホイッスル」は練習を頑張ればできそうな発声
だと考えれるからです。
もちろん全くもって別物と切り離すわけではないのですが、成分的に「笛」の要素を持っている方がいいと考えられます。
おそらくですが、「笛ホイッスル」を出せる人は世界を探しても少ないと思います。
「金属ホイッスル」を出せる人は割といます(出すだけなら。歌に使えるかはまた別。)
ホイッスルボイスの例
マライア・キャリーさん【笛ホイッスル】
まさに『笛ホイッスル』。
ホイッスルボイスの理想形だと思います。
音色的にはファルセットに近く、かなり美しい音色のホイッスルボイスだと思っています。ホイッスルボイスの完成形でありお手本であると言っても過言ではないはず。
息の倍音が乗っているホイッスルボイスはマライア特有の素晴らしい声です。
アダム・ロペスさん【笛ホイッスル】
ギネスに認定されたほどの超高音域です(現在は中国の人に抜かれているとかいないとか)。
個人的には『笛ホイッスル』は基本的に男性は出せないものと思っています。男性の場合どうしても超高音の音色は芯を持ってしまい金属的にならざるを得ないのがほとんどでしょう。
しかし、出せていますね。びっくりです。笑
1:55〜です。
息の倍音がしっかりと感じられるまさに笛のような音色。すごいの一言です。
ヴィタス【金属ホイッスル】
例として金属ホイッスルの例にするには美しい部類なのですが、あくまで音色の比較として紹介します。
なので、笛ホイッスルの発声要素(裏声的要素)を全く含んでいないわけではないです。じゃないとここまで綺麗な音色にはならない。
ただ、音色としては金属的です。
男性の場合ホイッスルを極めてもこういう音色になることがほとんどでしょう。
2分7秒あたりから超高音域に入っています。
笛のような音色というよりも金属的というか、電子音のような声ですよね。
音域自体は超高音ですが、「笛ホイッスル」とは発声の質が違いますが、わかりますでしょうか?
普通の人だともっと音楽的な音色にならないでしょう。
ホイッスルボイスの声帯の状態
地声の声帯の状態は
裏声の声帯の状態は
ミックスボイスの声帯の状態
金属ホイッスルの声帯の状態は
基本的にこのような状態であると考えられます。
声帯周りや声帯全体を収縮させてガチガチに固めた声帯の隙間から音を出すような発声が金属ホイッスルです。
笛ホイッスルを出している声帯の中身の映像は見たことがないので(あるのでしょうか?ぜひマライアの声帯を映して欲しいですね。)、
予想でしかないのですが、
このように金属ホイッスルに比べると、ファルセット的な発声状態を維持して超高音を発声していると考えられます。
まぁこの笛ホイッスルの状態はあくまで予想でしかないのですが、笛ホイッスルは『締めるより伸ばす』のが重要だと考えられます。
声帯の超伸展が生み出す発声と予想します。
「締めるのか」「伸ばすのか」の要素の割合の違いです。
ホイッスルボイスの出し方・練習方法
先に言っておきますが、金属ホイッスルは出すだけなら簡単ですが、おそらく喉にいいものではないでしょう。
やり続けると何が起こるかわかりません。細心の注意を払ったほうがいいのかもしれません。
逆に笛ホイッスルは出すのが超難しいでしょうが、喉にそこまで悪くないと考えられます。
金属ホイッスルボイス
このホイッスルボイスは意外と簡単です。
とにかくイルカの鳴き声を真似しましょう。笑
声帯のみの閉鎖だけでなく、外喉頭筋群を使って喉を締めた状態を作ります。つまり喉の空間自体もある程度締めるのです。
普通は「喉を締めるな」とボイトレでは言いますが、このホイッスルボイスではひたすらに閉鎖させる意識が重要でしょう。
エッジボイスでのアプローチ
- 高音のエッジボイスを出します
- この状態からさらに喉を締めることを意識します
- 音になるか、ならないかくらいの範囲まで締めます
- 口を思いっきり「あ」の形に開けます
- この状態から息を声帯の閉鎖で止める意識をします
- 思いっきり高い音を出す意識を持ちます
- 声帯でせき止められた息を押しのけるように息を押し出して声にします
- 「キュ」っと言う音の性質になると思います
- ここに強い息を通すことがきればで声として操れます
これをコントロールできるようになった声が金属ホイッスルボイスですね。
出せましたか?
できない人は吸気発声からのアプローチがいいかもしれません。
吸気発声でのアプローチ
- エッジボイスの状態を保ったまま逆に息を吸います
- 息を吸い込むことで音を鳴らします
- 「キュッ」としたような声になると思います。(明石家さんまさんの引き笑いのように)
- この吸い込んで鳴らす状態を覚えて、それを息を吐く状態でできるようにします。つまり息の方向を逆転させればいいのです。
- 最初は慣れないでしょうが、繰り返すとできるはずです。
声帯の小さな隙間に息を通すのです。
声帯をガチガチに固めてその隙間に息を通すようなイメージでの発声です。
まぁあんまり歌には使えないですが、使えるまでに昇華させる人もいます。
笛ホイッスルボイス
これに関しては先ほどのような『出し方』というものは厳密にはないと考えられます。
普通の人がいかに工夫して「笛ホイッスル」を出そうとしても、結果的に『金属ホイッスル』になると思います。
笛ホイッスルは正しいファルセットの高音域を極めた先にあるような発声方法だと考えられます。
つまり『ものすごくファルセットを鍛えた先にある発声・ファルセットを極めし者達ができる技』でしょう。
笛ホイッスルを出すには
ある意味単純明快。
「正しいファルセットの高音域をひたすらに鍛える」ということだと思います。
裏声の発声状態を維持したまま超高音に突入するのです。
単純かつ最も難しいと思います。
普通の人が裏声で超高音を出そうとすると、ものすごく声量が出てしまったり叫ぶ感じになっていくと思います。それを防ごうとすると、声帯全体が閉鎖し始めて『金属ホイッスル』になってしまいます。
あくまでファルセットの発声を維持したまま超高音に突入するには圧倒的な声帯伸展能力が必要になると考えられます。
ファルセットの発声状態のまま超高音域に入ると、頭の後ろとかにガンガン響くと感じるくらいに声帯を伸展させなければいけないでしょう。
メタル系で使うホイッスルシャウトやホイッスルスクリームを言われるような声量ある発声ならまだやりやすいでしょうが(それでも超難しいはず)、美しい音色の超高音ファルセットを声帯コントロール=声帯伸展だけで出すのがどれほど難しいか、、、、、、。
これができたらマライアキャリーになれます。
僕にはできません。頑張ってください。笑
ホイッスルボイスはなくてもいい?
高音大好きな人は極めたいところでしょうが、プロのシンガーでホイッスルボイスを出せる人が何人いるでしょうか?
そう多くはないですね。まぁもしかしたら出せる人はたくさんいるのかもしれませんが、使っている人は少ないです。
シンガーの数に対してのホイッスルボイスを出せる人の割合は1%以下ではないでしょうか。
これは限られた人しかできないものという理由だけでなく、「必要ないもの」だからではないでしょうか?
ココがポイント
ホイッスルボイスが真に魅力的なものであるならば、その声をみんな練習するでしょうし、そういう方向へ音楽は進化していくはずです。
プロのシンガー(同じ人間)ですから、ひたすら練習すればそのうちできるでしょう。
ですが、そうしないのはホイッスルボイスではない普通の声の方が人にとって魅力的に聞こえるからではないでしょうか。
基本的に人が魅力的に感じる音域をホイッスルボイスは突き抜けてしまっているように感じます。
一歩間違えれば耳障りなほどの高音ですもんね。
もちろん「すごい!」と思わせたりする力はありますが、その超高音に果たして音楽的感動があるでしょうか?
「すごい!」のと「良い!」のは全然違うような気がします。
例えるなら
サッカー選手がバク転できるみたいなものです。
サッカーには必要ないけどゴールパフォーマンスには使える。みたいな。少し違うか・・。
要はバク転なんてできなくてもサッカーの試合には何も影響しない『どうでもいいもの』ということです。
バク転の練習に時間をかけるくらいならシュートの練習した方が断然良いってことです。
マライア・キャリーさんとかのクラスはドリブルしながらボールを足で挟んでバク転して相手を抜き去るみたいな技を完成させてしまったようなものです(多分ファール?笑)。
バク転をサッカーに使えるものまで昇華させたようなすごい人なのです。
さらに、マライア・キャリーさんはホイッスル以外が尋常じゃない上手さだからこそ、ホイッスルも聴かせられるのですよね。
何が言いたいかというと、ホイッスルボイスは基本的にいらないということです。
歌が上手くなりたい理由は人それぞれでしょうが、
- カラオケで上手く歌いたい
- モテたい
- 楽しく歌いたい
- プロシンガーになりたい
など色々あるでしょうが、そのどの項目においても『ホイッスルは必要ではない』ですね。
ただ、
- びっくりさせたい・驚かせたい
という人にはいいかもしれませんね。
歌における曲芸みたいなものです。
確かに憧れるものでもあります。が、出せるようになった時に気がつくでしょう。
「あれ、これほとんど使えないかも」って(まぁ出せない僕が言っても説得力に欠けますが)。
ただ「ないよりはあった方がいいもの」であることは間違いないです。
でも「確実になくてもいい」。
なかなか使えない技を磨くために膨大な時間を使うのは悩ましいですね。