歌唱力アップ

声の『倍音』の出し方において意識するべきは「息」と「声帯の鳴り」

投稿日:2018年12月27日 更新日:

今回は声の倍音について。

この記事は

  • 「基音」と「倍音」について
  • 声における2種類の倍音「息」と「鳴り」について
  • 倍音の出し方・鍛え方について
  • 整数次倍音と非整数次倍音について

という内容です。

『倍音とは』

倍音とは、

倍音とは、楽音の音高とされる周波数に対し、2以上の整数倍の周波数を持つ音の成分。1倍の音、すなわち楽音の音高とされる成分を基音と呼ぶ。

引用元:Wikipedia『倍音』

とあります。

 

なんだかよくわからないと思いますが、

  • 普段耳にするほとんどの音は『色々な音の集合体』であり、それらを分解すると『基音』と『倍音』に分けられる

ということです。

 

ここで覚えておかなければいけないのは基音と倍音の関係性です。

簡単に言うと

  • 『基音』は音の音程を決めている音の柱
  • 『倍音』はその音の音色を決めている柱の周りの飾りの音

というイメージ。

 

一番下の太い部分が「基音」、それ以外が「倍音」ということになります↓

 

ちなみに

どの音も色が濃い部分が一定の間隔で連なっていますが、この一定の間隔で連なる倍音が『整数次倍音』。それ以外の成分は基本的に『非整数次倍音』となります。後半で掘り下げます。

 

とにかく、この基音と倍音が様々な音色を決めているのですね。

基音と倍音

例えば、ギターとピアノで同じ音階を鳴らしても音色が判別できるのは倍音が違うからです。

 

基本的に世の中にあるほとんどの音には倍音が含まれているのですが、もし倍音を削っていったのなら救急車のサイレンのような音や固定電話の電話番号を押す音のようなものになっていきます。

つまり基音だけになっていくのです(完全な基音ではないですが、基音に近い。)

 

逆に倍音が多い代表的な楽器がシンバルですね。

色々な倍音が多すぎて、「シャーーン」と鳴らしたときに「音階はなんでしょう?」と言われても全然わからないはず。

 

このようにどんな音にもこの基音と倍音というものがあり、それが音色を作り上げているのですね。

当然話し声であろうと、歌声であろうと同じです。

『声』の倍音は大枠で2種類ある

声の倍音には多くの成分が含まれますし、人によって成分は違いますが、基本的にこの二つで考えると上手く整理できるはず。

息の倍音(非整数次倍音)

声帯の鳴りの倍音(整数次倍音)

この二つが声質というものの大半を作っていると言えるでしょう。

 

倍音というと堅苦しいと感じる人は「成分」と考えても問題ないと思います。

声の中に含まれる

  1. 息の成分
  2. 声帯の鳴りの成分

のように。

 

この二つの倍音成分について考えることで「声の倍音」をコントロールできるでしょう。

倍音の出し方

息の倍音(非整数次倍音)

息の倍音の多い声

 

主に『息の流れ』により生まれる倍音です。

厳密には息が声帯を通るときに生まれる音です。

息の倍音の出し方

声を出さず(声帯を鳴らさず)に「はーーー」と息を吐いてみましょう。その音に耳をよく傾けると「スーーー」という声帯付近を息が通る音が鳴っていますね。これが息の音(倍音)の本体です。

そこから少しだけ囁くくらいのニュアンスで声帯の鳴りの音を加えて声にしてみましょう「はぁーーー」。

すると、声帯の鳴りと一緒に先ほどの息の倍音「スーーー」という音も鳴っているはずです。

これが息の倍音の乗った声。

 

この「スーー」という成分を声に多く乗せる状態を維持した発声を使いこなすことで「透き通る声」「綺麗な空気感を持った声」になります。

声の中に含まれる「スーー」という成分に着目↓

このように美しい発声は「スーーー」という音が声の中に含まれている(*CD音源などの場合、ミキシングなどである程度コントロールできることもあるが、やはり元の声についている倍音が一番重要)。

 

声帯は全く鳴らさないわけではないのですが、息が流れるぶんだけ鳴りの成分が控えめになります。

 

なので、鳴りをかなり抑えて息の倍音に特化することで「透明感」のある歌声になります。

息の倍音に特化した発声をマイクを通すとこんな音色になる(*ものすごい「スーー」と鳴ってます)↓

 

これが”透明感”を生み出す鍵ですね。

 

つまり、『息に声を乗せること』『息をたくさん流すこと』で息の倍音を多く含んだ発声ができるとも言えます。

 

ただし、声帯の柔軟性がない人が息をたくさん吐いても上手くコントロールできずに「ただ息が漏れる声」になってしまうでしょう。

息の倍音をしっかりと乗せるにはある程度、息と声帯との連動性』が必要になると考えられますし、そのための訓練も必要でしょう。

 

 

声帯の鳴りの倍音(整数次倍音)

鳴りの倍音の強い声

 

主に『声帯の鳴り』による倍音です。

声帯の振動そのものであり、声の芯のようなものです。

声は肺から送られてきた息によって声帯を振動させることで生まれます。

その際声帯をある程度閉鎖させることで息の力をせき止めています。そのせき止めた圧力で声帯を振動させているのですね。

つまり声帯の鳴りとは息が声帯を通る出口を小さくすることで声帯の振動音に変換しているということ

 

声帯の鳴りとは母音(aiueo)でもあるの、母音そのものとも言えるでしょう。

 

鳴りの倍音の出し方

まずはエッジボイスを出してみましょう。「あ”あ”あ”あ”あ”」と。

持っている声帯によって音色は違うでしょうが、ビリビリ・ジリジリ・ガラガラ・カラカラとした音の鳴りになるでしょう。

その鳴りが声帯の鳴りの倍音の本体です。

このエッジボイスの状態の意識のまま少し息の出力を高めてしっかりとした声にするとくっきりとした「あ”ーーー」という発声になるはず。

 

鳴りの倍音が多い声はわかりやすく言うと「芯がある声」です。

声の中に含まれる「ジリジリ」「ビリビリ」「カリカリ」した成分に着目↓

声の中にくっきりとした芯のようなものを感じますね。

これが鳴りの倍音(成分)。

 

鳴りやすいタイプ声質を持つシンガーはマイクにも「ジリジリ」「カリカリ」とした成分が乗ります↓

 

ここで大事なのが、ポップスにおける鳴りの倍音はあくまでも「息の流れ」をベースに「鳴り」を乗せるようなものだということ。

つまりベースが「息」の発声。

 

これは”マイクを使う歌唱方法”だから。

 

これがクラシックのような”マイクを使わないことを前提とした歌唱方法”になると、その身一つで会場に声を届けるために「鳴りの倍音」に特化します。

 

つまり、ベースが「鳴り」の発声↓

 

このように

  • ポップスにおける鳴りの倍音(マイクに乗せることを前提とした鳴りの倍音)
  • 「クラシックにおける鳴りの倍音(マイクに乗せないことを前提とした鳴りの倍音)」

は考え方が少し違うので、この倍音の声質の差をしっかりと理解しておき自分の目的に合った「鳴りの倍音」を求めることが重要でしょう。

ちなみにお坊さんのお経も鳴りの倍音に特化しています↓

整数次倍音がたくさん集まると不思議な雰囲気を作り出しますね。

こういう発声方法もクラシック同様「鳴りベースの発声」です。

 

ハスキーボイスの倍音【息と鳴りの複合】

気付いた方もいると思いますが、基本的には

  • 「息の倍音」と「鳴りの倍音」は天秤にかけられた関係性である
  • どちらかが増えるとどちらかが減る関係性

と言えるでしょう(*あくまで”基本的には”)。

声帯の構造を考えるとある意味当たり前ですが、「スーー」っとした息の成分を増やそうとすれば、「ジリジリ・ビリビリ」とした鳴りの成分は消えていき、逆に鳴りの成分を増やそうとすれば息の成分が消えていきます。

 

ところが、

この両方のいいとこ取りをして特殊な倍音を生み出すのが『ハスキーボイス』です。

「スーー」とした息の成分と若干不完全な鳴りの成分が合わさって「シャリシャリ」した倍音成分を生み出します↓

 

ハスキーボイスはなんらかの不完全な声門閉鎖によって息が漏れるような特殊な倍音(息+ノイズ)が鳴るというものです。

 

度合いは人によって様々ですが、「カサカサ」「シャリシャリ」「ガサガサ」「ガラガラ」と声帯の不完全な閉鎖の度合いによって倍音が変化します。

 

普通の声質の人の「息っぽい発声」「鳴りの強い発声」はこのように「息」と「鳴り」の成分が増減するのですが↓

 

ハスキーボイスの人は声帯が綺麗に閉じないため、しっかりと閉じようとしても息が漏れるのですね↓

これによって特殊な倍音(息と鳴りのノイズが混じったような音)が生み出されます。

 

このハスキーな倍音成分は普通の声質の人は特に憧れるでしょうが、基本的に「どうやって出すか」と考えてはいけないものです。

なぜなら『生まれ持った声帯の特性』だから。

 

ハスキーボイスの人は勝手にこの倍音が生み出されますし、そうではない人は努力しても完全に同じような倍音を生み出すのはかなり難しいでしょう。

整数次倍音・非整数次倍音とは?

先ほどからやたらと気になる人もいるでしょうが、正直あまり気にしない方がいいです。笑

 

「じゃあ書くなよ!」って話ですが、まぁそういう言い方もあるので少しだけ書いておきます。

  1. 整数次倍音はある音に対して整数(1、2、3、4・・・)の倍音
  2. 非整数時倍音とはある音に対して整数ではない倍音

のことです。

 

整数次倍音

整数次倍音とは基音に対して整数の倍音です。

その基音の音階上の倍音(2倍、3倍、4倍と続く・・・)なので『整数』です。

と言われても「え?」ですよね。

 

”簡単に”言うと◯オクターブ上の音です(○に数字が入る)。

例えば、C3のドを発声した場合、『C4のド・C5のド・C6のド・・・』などが整数次倍音です。

*ただし、厳密にはオクターブ上だけとは言えない。例えば、『C3』の2倍は『C4』ですが、3倍は『G4』。これがさらに整数次倍音の中の『偶数倍音(温かみ・厚み)』『奇数倍音(明瞭度・歪み)』という分類を生み出すのですが、ボーカリストがコントロールできる領域ではないのでこの辺で。

ミックスエンジニアが考える領域です。

 

非整数次倍音

非整数次倍音とは基音に対して非整数(=整数じゃない・0.5倍などなど無限にある)の倍音です。

つまり、整数次倍音以外の全ての倍音が非整数次倍音です。

 

簡単に考えるとその音階を捉えていない倍音です。

例えば「ド」の音を発しているのなら「ド」の音以外の全ての倍音。ただ、先ほども言いましたが、整数倍音にも違う音高があるのであくまで簡単に考えた場合のお話。

 

考え方としては、その音階を捉えていない「息の音」やある種の雑音・ノイズのようなものと考えてもいいかもしれません。なのでハスキーなノイズや息の倍音などが当てはまります。

 

シンプルに

  1. 整数次倍音=声帯の鳴り
  2. 非整数次倍音=息、ハスキーな成分

という風に考えればいいと思います。

特にそれで損をすることもないかと。

 

問題はその先、「倍音をどう使うか」というのがジャンルやボーカルスタイルによって違います。

先ほど述べたようにポップスとクラシックは大きく違います。

この整数と非整数で考えると、

  • ポップスは非整数次倍音をベースに整数次倍音を乗せるような発声
  • クラシックは整数次倍音に特化し非整数次倍音をなるべく消すような発声

と言えるでしょう。

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