今回は『肺活量と発声の関係性』についてです。
この記事は
- 肺活量とは
- 肺活量と発声の関係
についてです。
目次
肺活量とは
肺活量とは
息を最大限吸い込んだ後に肺から吐き出せる空気量のこと(単位はmL)。
つまり、『肺から出せる空気の総量』のことですね。
正しくはこういう意味なのですが、世間一般に使われる言葉としては『吐く力・勢い、吸う力も含めた言葉』『心肺機能の高さを表す言葉』などとしても使われていることもあるでしょう。
そういうニュアンスで捉えても特に問題はないと思います。
ここではまず正式なニュアンスである「肺から出せる空気量」という意味合いで使いたいと思います。
後半は「息を吐く力」の観点での肺活量について考察します。
肺活量と発声の関係
発声の種類と肺活量(息の総量)の必要性
肺活量と発声は密接な関係があります。
しかし、”肺活量(使える息の総量)”の必要性は発声の種類に応じて変化します。
意外に感じる人もいるかもしれませんが、パワフルな発声ほど”肺活量自体”の必要性は少なく、ウィスパーボイスのような静かなフレーズほど肺活量が必要になります。
その理由は
- ”声帯にかかる呼気圧”と”口から出る息の量”は基本的に反比例するから
です。
*呼気圧とは声帯にかかる息の圧力。
どういうことか?
例えば、
- 「あ”ーーーーー」と声帯を強く鳴らして声を出す
- 「はぁーーーー」とため息っぽく声を出す
どちらが”息が長持ちするか”を試してみるとすぐにわかるでしょう。
強く声帯を鳴らした方が長い時間声を鳴らし続けることができると思います。
これは
- 声帯が受ける呼気圧が高い発声(鳴らす発声)
- 声帯が受ける呼気圧が低い発声(息っぽい発声)
の違いです。
このように、
- 声帯が息の消費量を決める
ので、それに応じて肺活量の必要性は変化するということですね。
よく鳴りの強い迫力ある発声に対して「すごい肺活量!」と言ったりしますが、実際は迫力ある発声ほど息を消費してないのですね(まぁこの場合の「肺活量」は”息の勢い”などのニュアンスなのでしょうが。)
迫力ある発声や強い高音発声はかなり長いロングトーンができたりするのもこれが理由です。
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なので、『息をたくさん消費する発声ほど肺活量が必要』ということにはなりますが、
- 歌にはブレス(息継ぎ)がある
ので、極論『”一度に息を吐ける量”という意味合いでの肺活量はほぼ必要ない』とも言えると思います。
「息の総量」というよりも「息のコントロール」「息の力・勢い」という捉え方の肺活量が重要だと考えられます。
ここからは『息の力のコントロールや勢い』という意味合いでの肺活量について考えます。
肺活量(息の力)と声量の関係
声量は『呼気圧』と大きな関係があります。
で、呼気圧は
- 息の強さ
- 声帯の閉じ具合
で決まります。
当然両方が強ければ強いほど呼気圧が高くなります。
ただ極端に考えれば、「声帯」と「息」はある程度片方が強いだけでも声量は出ます。
- 【声帯『強い』×息『弱い』】
例えば、『赤ちゃんの泣き声の声量が大きい』ということを考えるとわかりやすいかもしれません。
赤ちゃんの肺はすごく小さいです。到底「肺活量がある・息の力が強い」とは言えません。
しかし、声量自体は大きく響き渡ります。
これはしっかりと声帯を閉鎖して強く鳴らしているから大きく聞こえるのですね。
赤ちゃんは自分で動いたり意思表示できないので、親が認識しやすいように泣く声が大きく鳴る喉になっているとかいないとか。人間って不思議ですね。
- 【声帯『弱い』×息『強い』】
例えば、思いっきり強く息を吐いて「はっ!!!!!!」と発するとかなり声量が出ると思います。
くしゃみや咳でも大きな声量が出ますよね。
これは息側メインの呼気圧の高まりによる大きな声量ですね。
*まぁこれは実質的には「声帯が弱い」というよりは息の勢いを支えようとしてある程度強く鳴ってしまっているのですが。
このようなことから、
- 『声量=肺活量(息の力)×声帯の鳴らし方』
だと言えるでしょう。
ただし、この場合の肺活量とは「吐く息の総量」というよりも「吐く息の力の強さの度合い」という意味合いが強くなります。
声帯と息は”どっちかだけ”ではなく、両方重要と考えるべきかと。
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肺活量と歌唱力の関係
肺活量は
- 『歌唱力を構成する重要な要素の一つ』
と考えるべきでしょう。
例えば、肺活量が歌の上手さを決める全ての要因になっているなら、毎日過酷なトレーニングをしているスポーツ選手は肺活量・呼吸筋群が発達しているでしょうから、みんな歌が上手いという理屈になりますが、そうでもないでしょう。
他にも、体が小さな(肺が小さい=肺活量が少ない)子供には歌が上手い人はいないという理屈になりますが、これもそうではない。
小学生くらいの子でも、ものすごく歌が上手い子はいますよね。
なので、肺活量と歌に上手さに強い相関関係はないが重要な一要素ではあると考えるのが正確でしょう。
連動が鍵
これは先ほどの内容とも関係するのですが、
- 「息」と「声帯」の連動
という部分がこの問題の鍵だと思います。
つまり、
- 歌が上手い人は息と声帯が連動している
- スポーツ選手などは息と声帯が連動していない
と考えられます。
肺活量は「息」という声に必要な力の原動力の部分ではあるが、それを活かせる「声帯」があってこそ歌唱力につながると考えるのが普通でしょう。
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では、肺活量を鍛えることは意味がない?
「じゃあ、肺活量を鍛えることはあまり意味がないのか」と考えてしまう人もいるでしょうが、そうでもないと考えられます。
鍛えるべき一つのピースでしょう。
ここまでの内容をまとめると、
- ”肺活量そのもの(息の総量)”は必要性が薄い
のですが、
- ”息の力・勢い”という意味では声量を決める鍵の一つである
ということ。
また、
- 歌唱力においても息という重要なファクターの一つである
ということ。
さらに、これは先ほどの「息と声帯の連動について」のリンク先にも書いているのですが、声帯はある程度息の力に合わせて鍛えられます。
つまり、息を吐く力が強い人はそれに見合った声帯の動きが自然とついてくると考えられるということです。
こういう点からも肺活量を鍛えるメリットがある。
肺活量を鍛えるとは「横隔膜を鍛える」とほぼ同じ意味
歌においての「肺活量を鍛える」とは『息を吸う力・吐く力を鍛える』ということがメインでしょう。
そもそも「肺は体の成長以外では基本的に大きくならない」はずです。
つまり、息の総量は劇的に増えない。
なので、歌においての肺活量トレーニングとは
- 『その持っている肺を最大限使えるように鍛える』
ということになるかと。
そして肺は横隔膜や胸郭の動きに影響を受けます。
ということは
- 横隔膜
- 胸郭
などの呼吸筋群を鍛えることで『吸う力・吐く力』そして『そのコントロール能力』を鍛えられると考えられます。
実はこの「横隔膜」は息の主役であることは間違いないのですが、息以外にも多少影響する(喉周りに影響する)と考えられています。
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