今回は、ボイストレーニングは「どれくらいの期間で効果が出るのか」というテーマです。
これは、
- 練習量
- 練習効率・成長速度
- 現状の能力
- 目標
という4つのポイントによって変わってしまうので、一概には言えませんが、一般的にはまっさらな状態から、
- 効果を実感し始める:まずは3ヶ月
- 中級者まで:3ヶ月〜1年
- 上級者まで:1〜3年
- 超上級者まで:3〜5年
くらいが目安になるでしょう。
目次
何らかの効果を実感し始めるまで、まずは3ヶ月
ボイトレの効果をしっかりと実感し始めるまでには「まずは3ヶ月」と考えましょう。
ボイトレの成長の仕方は、筋トレやストレッチなどとほとんど同じです。コツコツと継続することでだんだんと変化していきます。
例えば、腹筋を1ヶ月やった程度では多くの人は「何か変わったかな…?」くらいの実感しか得られませんが、3ヶ月くらいすれば「明らかに変わってきた」という実感を得られるでしょう。ダイエットでランニングを1ヶ月やってもそう変わりませんが、3ヶ月くらい継続すると変化を実感し始めます。
ボイトレもこれと同じような成長になります。
実際に体の細胞が入れ替わる周期は、一部を除いて大体「3ヶ月」になるとのこと。なので、理論的にも3ヶ月というのは正しいのですね。
中級者になるには3ヶ月〜1年くらい
初心者を脱却して、中級者になるまではおおよそ3ヶ月〜1年くらいが一般的だと考えられます。
ここで一つ問題になるのが、「初心者」と「中級者」の違いは何か?という点です。
これは厳密な定義がないので、人それぞれの価値観によって違うのですが、個人的には『歌に慣れている状態』になれば中級者だと考えています。
歌に慣れている状態とは、強い意識を必要とせずに歌を歌えるということです。
歌は頭の中で歌詞を追いかけなければいけませんし、音程・リズム・音色の質・発音など色々なことに気を配る必要があります。当然、上手くいかないことも多いので、初心者のうちは頭がフル回転しているような状態で、歌うという動作がぎこちなくなってしまいます。
しかし、歌うことに慣れてくると、無意識にできることも増えていって、歌うという動作がサマになってきます。
これは、自転車に例えると分かりやすいです。
補助輪を外して、最初はフラフラで自転車に乗るたびに緊張していたが、いつの間にか何も意識せずにスイスイ自転車に乗れるようになりますね。
自転車と同じように、歌に乗れるようになったら(無意識レベルでできることが増えて、サマになってきたら)中級者ということです。
これは歌が上手いかどうかはあまり関係なく、歌に慣れているかどうかで考えましょう。
上級者になるまで1〜3年くらい
しっかりとしたクオリティで歌えるようになるまでには、1〜3年くらいかかるでしょう。
上級者にも厳密な定義がないので表現が難しいのですが、ここでは『普通に歌が上手い』とでもしておきます。
例えば、『カラオケに行くと褒められる』『周りから上手いと言われる』という状態になれば、この領域に入ったと考えてもいいでしょう。
ハイクオリティとは言えないが、自分がしたい表現や技術をある程度実現できるという状態になるということですね。
飛び級もある
1〜3年と言っていますが、このレベルまでは「最初からこのレベルだった」ということがあります。
例えば、「特別意識して歌の練習をしたことはなかったが、カラオケに行ったら上手いと褒められた」などのことは時々あります。人はこれを才能と呼ぶでしょうが、どんな人でも生まれた時から歌が上手いわけではありません。
こういう人は、それまでの日常生活によって、特に意識せずに歌の能力が鍛えられていたということ。
「毎日外で遊んでいたので、気がついたら運動神経が良かった」の歌バージョンみたいなものです。
歌は声を使うもので、声は日常生活でも使うものなので、気付かずに歌が上手くなっていたということはあるのですね。
超上級者になるまで3〜5年くらい
ハイクオリティで歌えるようになるまで3〜5年くらいかかるでしょう。
ここでの超上級者とは『かなり上手い』状態です。具体的な定義は示しにくいのですが、例えば人前でライブをしても全く問題ないような段階だと考えましょう。
このレベルは、「最初からこのレベルだった」という人はほぼいないはずです。
例えば、ものすごい運動神経を持っていても、野球の練習をしなければ140〜150キロ投げられるようにはなりません。圧倒的な身体能力を持っていたハンマー投げの室伏広治さんでさえ、野球の始球式で131キロだったそうです。素人のような投げ方でそれだけ出るのはとんでもないことなのですが、やはりその道を進んだ人には敵いません。
同じように歌にも真剣に取り組まなければたどり着けない領域があるので、いくら才能があろうと歌のトレーニングなしでかなり上手い状態まではいけないでしょう。
最後に成長速度の一つの例を見てみましょう。
4歳の女の子の歌声↓
7歳の状態(歌歴3年)↓
9歳の状態(歌歴5年)↓
これをどう感じるかは人によって違うでしょうが、多くの人はこれくらいの成長速度になるのではないかと思います。
個々の条件の違いによって差が出る
冒頭でも述べましたが、一般的な目安はあくまでも一般的な目安でしかありません。
ボイストレーニングの成果が出るまでの期間は、
- 練習量
- 練習効率・成長速度
- 現状の実力
- 目標
の4つの違いによって変動します。
①練習量
歌の練習を、
- 『週に五回している人』
- 『週に一回している人』
- 『月に一回している人』
では、それぞれ成長の仕方が変わります。
基本的に練習量が多ければ多いほどに、成長は早くなります。
もちろん、やり過ぎは逆によくないですが、やり過ぎではない範囲であればやればやるだけいいということになります。
ちなみに、ボイトレの頻度と時間に関しては、一般的には、
- 一回、15〜30分
- 週に3〜6日
が目安になるでしょう(*個人差がある)。
この練習頻度について詳しくは別記事にまとめているので、ここでは省略して話を進めます。
-
ボイトレの時間と頻度はどれくらいがいいのか?についての考察
続きを見る
②練習効率・成長速度
『ある練習量に対して、どれだけ成長するか』というお話ですね。
例えば、同じ100時間の練習でも、
- 5の成長をする人
- 10の成長をする人
などのように成長の速度は人それぞれ違いが出てきます。
この差が生まれる理由は、
- 練習のやり方・選択の差
- 食事や睡眠などの栄養面と回復力の差
- 生まれ持った能力の差
などが考えられます。
①練習のやり方・選択の差
同じ練習時間でも、練習のやり方・選択・手順の差によって、成長速度は変わります。
いわゆる『正しい練習』『間違った練習』などのように語られますが、『正しい練習』を選択できている人の方が当然成長は早くなりますし、上手く成長できます。
逆に『間違った練習』を選択し続ければ、なかなか成長できませんし、最悪全く伸びないということもあるでしょう。
特に問題になるのは『手順』です。
実は、練習のやり方や内容自体などは人によってそこまで差がつかないです。仮に失敗したとしてもすぐに取り返せるので、大きな問題にはなりにくいはず。
しかし、『手順』の違いは成長速度に大きな差をつける可能性がありますし、失敗を取り返すのにたくさんの時間を必要とするかもしれません。
『手順』の違いとは、例えば、
- 今の自分の音域では歌えない音域の歌からたくさん歌い込む
- 今の自分の音域で最も歌いやすい歌からたくさん歌い込む
などのような違いです。
この場合、高確率で後者が正解ルートです。
②栄養面と回復力の差
例えば、同じ時間量・同じ練習内容であっても人によって成長スピードには差が生まれます。これは、栄養面(食事)と回復力(睡眠などの質)の差によって生まれると考えられます。
栄養状態や睡眠の質などが良い人ほどよく成長し、悪い人ほど成長が鈍ってしまうでしょう。
スポーツでは、食事・睡眠は練習と同じくらい重要視されていますが、歌も全く同じことが言えます。
特に、食事は差がつきやすい部分です。歌の成長において食事の重要性が語られることは少ないですが、歌も体を使うものなので影響はかなり大きいと考えられます。
③生まれ持った能力の差
人間には、どうしても遺伝子レベルでの差というものも存在します。
例えば、食事や練習などすべての条件が同じであっても、成長が全く同じにはなりません。
しかし、これはそこまで大きな差が生まれるものではないでしょう。「練習」「栄養」「睡眠」の差の方が成長に与える影響は大きいと考えられるので、気にする必要はないでしょう。
仮に遺伝子の差が大きかったとしても、それを気にしたところでどうにもなりません。
③現状の実力
これは『スタート地点の違い』です。
先ほども述べたように、「最初から(気がついたら)ある程度のレベルにいた」ということはあります。
そういう人たちと最初は全く歌の能力がなかった人とを比べれば、ゴールまでにかかる時間に差が生まれるのも当然です。
④目指す実力
これは、『どこまで上手くなりたいか』という目標地点の差のお話です。
例えば、
- カラオケで上手く歌えるようになりたい
- プロのように上手く歌えるようになりたい
では、同じ「上手く歌えるようになりたい」ですが、目標の高さが違いますね。
つまり、「どれくらいで上手くなる?」「どれくらいで効果がある?」などは、「上手くなる」「効果」の定義が人それぞれに違うので、厳密に述べることはできません。
-
歌の成長を加速させる地味に大事な4つの重要項目について
続きを見る