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発声方法

ファルセットとヘッドボイスの違いについて【日本と海外で考え方が違う?】

更新日:

今回は、ファルセットとヘッドボイスの区別について。

 

特に、この『ヘッドボイス』という言葉の意味が大きく3パターンあります。

  1. ファルセット=ヘッドボイス
  2. ファルセット=息漏れが多い裏声、ヘッドボイス=芯のある裏声
  3. ファルセット=裏声、ヘッドボイス=頭方向へ響く地声、もしくは裏声ではない発声

これらが、多くの人を混乱させる要因になっています。

 

歌の流派や考え方によって意味が変わってしまう言葉だと言えるので、自分が一番しっくりくるものを選びましょう。

ファルセットとヘッドボイスの定義の違い

①『ファルセット=ヘッドボイス』という考え方

まず、「ファルセット(falsetto)」はイタリアのクラシック音楽において『裏声』を指す言葉です(より厳密には、男性の裏声のみを指す言葉だったとされています)。

 

つまり、ファルセットとは元々イタリア語ということ。

 

そして、イタリアの音楽理論や歌唱技術が英語圏に伝わる以前、英語では「ヘッドボイス(head voice)」が裏声を指す言葉として使われていたと考えられています。

  • チェストボイス=chest voice=声・胸に響く声=地声
  • ヘッドボイス=head voice=声・頭に響く声=裏声

というようにその声の特徴を表した言葉ですね。

 

つまり、イタリア語をそのまま英語に変換するのなら、

  • 『ファルセット=ヘッドボイス』

となります。

 

おそらく、元々の意味を考えるとこれが正解だと言えるでしょうが、現在はここから意味が派生しています。

 

②『ファルセット=息っぽい裏声』『ヘッドボイス=芯がある裏声』という考え方

海外でも一定数いるとは思いますが、特に日本で多いパターンだと考えられます。

 

一般的に、

  • ファルセットは『息漏れが多い裏声』
  • ヘッドボイスは『芯のある裏声』

という表現で語られることが多いです。

 

特に深く考える必要もなく、息っぽい裏声であればファルセットで、しっかりと鳴っている裏声であればヘッドボイスということです。

 

しかし、先ほど述べたように、元々ファルセットは裏声、ヘッドボイスも裏声を意味する言葉なので、何かがこじれてしまったと考えるべきでしょう。

 

例えば、

  1. 同じ意味の言葉は要らないから、二つに分けた
  2. 人から人へと上手く伝わらなかった
  3. 言語を翻訳する時に誤解が生じた

などのことによって、意味が変わってしまったと考えられます。

 

クラシック音楽が歌の主流だった時代に、世界中の人が本場のイタリアから学んだことによって、ファルセットという言葉が世界中に根付いたのは良いものの、それによって色々な概念が生まれてしまったということですね。

 

現在のようにインターネットがない時代であれば、これは仕方のないことです(*インターネットがある現在でさえ、情報は正しく伝わらないだろ。というツッコミは置いておいて)。

 

とにかく、何らかのねじれによって「ファルセットは息漏れの多い裏声」「ヘッドボイスは芯のあるくっきりとした裏声」という意味になったと考えられます。

 

これはこれで定義としては何も問題はないのですが、個人的には、この区分の必要性はあまり感じません

 

なぜなら、これは声の種類を区分しているものではなく、発声の表現方法を区分しているものだからです

裏声という声の種類における『息漏れ・芯』を区分しているに過ぎないので、わざわざ名前をつける必要性があるでしょうか?

 

そのまま「息っぽい裏声」「くっきりとした裏声」でも特に問題ないですよね。

 

もちろん、名前をつけてもいいですが、この区分で考えるのなら『息漏れの多い地声』『芯のある地声』にも名前が必要になるでしょうから、単純に面倒くさいのです。

  • 息漏れの多い地声=??
  • 芯のある地声=??
  • 息漏れの多い裏声=ファルセット
  • 芯のある裏声=ヘッドボイス

何だかややこしくなるだけですね。

 

シンガーのジェシー・Jさんによるチェストボイスとヘッドボイスの説明(再生位置*4:55〜)↓

このヘッドボイスは息漏れ漏れの発声なので、先ほどの『ファルセット=ヘッドボイス』の意味として使っていると考えれるのですが、ここで大事なのは「シンガーは声をそこまで複雑に考えていない」ということです。

 

「声の種類は地声・裏声、以上。」くらいの感覚でも何も問題はないのです。

 

③『ヘッドボイス=頭に響く地声』という考え方

これは日本ではなかなか普及していない考え方ですが、海外ではある程度主流になっているのではないかと考えられます。

 

例えば、英語で「headvoice  falsetto difference」と検索すると、出てくる海外のサイト↓

While falsetto and head voice have been used interchangeably in the past, falsetto is understood to be a breathy version of high notes and head voice produces a richer and more balanced tone on the high pitches in a singer’s voice. Falsetto and head voice are two different modes for singing the same notes in the upper registers of the voice.

Singing with a full head voice (also called “singing with a mix” or “middle voice) is simply when you sing in your head voice register without going breathy.

Put another way, head voice is just a balanced or “flow phonation” at the top part of the voice, or head voice range.

This means that Falsetto and Head Voice are simply two different ways of approaching the same note.

One breathy (falsetto) and one with a balanced tone (“mix” or head voice).

引用元:Head Voice vs Falsetto: What’s the Difference?

訳)ファルセットとヘッドボイスは以前は同じ意味で使用されていましたが、ファルセットは高音の息っぽい発声であると理解されており、ヘッドボイスは声の高いピッチでより豊かでバランスの取れたトーンを生み出します。

ファルセットとヘッドボイスは、声の高音域で同じ音符を歌うための2つの異なるモードです

完全なヘッドボイスで歌うこと(「ミックスで歌う」または「ミドルボイス」とも呼ばれます)は、息っぽさのないヘッドボイスの声区で歌うときです。別の言い方をすると、ヘッドボイスはただ、声の上部、つまり頭の声の範囲のバランスの取れた「発声」です。ファルセットとヘッドボイスは、同じ音程にアプローチするための2つの異なる方法ということです。

1つは息っぽい発声(ファルセット)で、もう1つはバランスの取れたトーン(「ミックス」またはヘッドボイス)です。//

 

一見すると、芯のある裏声を指しているようにも思えますが違います。

 

このサイトの例では、これが『ヘッドボイス』(”Money on My Mind〜”*0:54〜)↓

少なくとも裏声ではないですね。

 

これも(”Somebody to Love〜〜”1:35〜)↓

 

(“Let it Be”の“be” *1:32〜)↓

どれも日本だと地声(もしくは、ミックスボイス・ミドルボイス)と言われそうな感じです。

これを言うと、『地声・ミックスボイス・ミドルボイス問題』が始まってしまうのですが、長くなるのでここでは触れません(*気になる方は『ミックスボイスについて』の記事にて)。

 

少なくとも裏声ではないということは確かですね。

 

しかし、どうやらこれが『ヘッドボイス』のようです。

 

このサイトだとこれはファルセットとしています。(1:13〜)↓

確かに、裏声ですね。 日本だとこういうものがヘッドボイス(芯のある裏声)になるでしょうから、やはりヘッドボイスというのは裏声から切り離された考え方のようです。

 

つまり、

  • 胸方向へ響く地声=チェストボイス

ならば、

  • 頭方向へ響く地声=ヘッドボイス

地声系の発声における共鳴の感覚の方向性を指しているということですね。

 

例えば、地声で低音域を出すと、下方向へ出す感じになり胸によく響く感覚がします。ところが、地声のまま音階を上げていくと、高音域になった時にはおでこ辺りの方向性へ出しているような感覚になると思います。

 

そうすると、地声であっても中高音域に差し掛かった時に『チェスト(胸)』とは感じられなくなりますね。そして、言葉の意味を深く考えすぎると、しっくりこなくなるのです。

なので、地声の頭に響く発声(=中高音域)をヘッドボイスと呼ぶことにしたのでしょう。

 

先ほどの引用の翻訳にも、「もともとファルセットとヘッドボイスは同じ意味の言葉として使われていた」とありますが、おそらく、

  • 裏声を意味する言葉は二つ要らないので、ファルセットを裏声とする
  • 余った「ヘッドボイス(頭声)」という言葉は「チェストボイス(胸声)」との対比によって共鳴位置を表す言葉になっていった

という流れだろうと思います。

 

日本でも「地声と裏声」ではなく、「表声と裏声」にした方がわかりやすいとする考え方があるように、言葉の意味や対比を綺麗に整理したという感じでしょう。

 

しかし、この考え方であれば

  • 胸に響く地声=チェストボイス
  • 頭に響く地声=ヘッドボイス
  • 胸に響く裏声=??
  • 頭に響く裏声=??

というように裏声側も考える必要がありそうですけどね。

 

裏声は、胸に響くのが難しく、基本的に頭に響くのでわざわざ共鳴位置を分ける必要性はないという感じでしょうか。

 

もしくは、

  • 胸に響く地声=モーダルレジスターのチェストボイス
  • 頭に響く地声=モーダルレジスターのヘッドボイス
  • 胸に響く裏声=ファルセットレジスターのチェストボイス
  • 頭に響く裏声=ファルセットレジスターのヘッドボイス

という風に声区を表す言葉は別にあって、チェスト・ヘッドはあくまでも共鳴位置のみを指す言葉として使われるというパターンもあるでしょう(*モーダルレジスターは地声の正式名称)。

 

なんにせよ、日本で主流となっている考え方とは大きく違うようです。

 

もちろん、グーグルの検索上位に出てきているものが正しいとは限りませんが、上位に出てきているものは多くの人に影響を与えているはずです。

 

現に日本で「ファルセット ヘッドボイス 違い」で調べると

  • ヘッドボイス=芯のある裏声

で出てくることが多いですし、その定義が多くの人の概念に影響を与えていることでしょう。

 

しかし、海外では

  • ヘッドボイス=裏声ではない頭方向への芯のある発声=地声orミックスボイス

というニュアンスで指導されていることもあるのですね。

 

まとめると

ファルセットとヘッドボイスの考え方は、

  1. 【同じ意味】:ファルセット=ヘッドボイス
  2. 【声質の違い】:ファルセット=息漏れが多い裏声、ヘッドボイス=芯のある裏声
  3. 【全く違う意味】ファルセット=裏声、ヘッドボイス=頭方向へ響く地声、もしくは裏声ではない発声

という3パターンに分かれる。

 

個人的には、②③はややこしいので、①で考えるのがスッキリするのですが、これは正解も不正解もないので、自分がしっくりくるものを選んでおけば良いと思います。

 

ただ、「ヘッドボイス」という言葉を使うとき、自分の認識と相手の認識が違う可能性があるという点は注意しておきましょう。

 

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