今回は「歌声が楽器のように聴こえる人は結局、”倍音が多い”」という内容です。
倍音についてはこちらでごちゃごちゃ書いているのでここでは省略します。
声を楽器化させている人は倍音が多い
歌声が楽器のように鳴る人は
- 美しい倍音
- 心地よい倍音
- 通る倍音
が多いということが言えると思います。
当たり前と言えば、当たり前ですね。
例えば、安物のアコギと高級アコギの音色の差は素材の共鳴差が生み出す『倍音の差』ですね。どんな高級ギターでも弦は安物、つまり同じ条件です(まぁ、エリクサーは少し高い)。
例えば、楽器でも歌でもレコーディングするときは、『倍音を付加する』EQやコンプに通してより良い音色を作ります。
つまり、
- いい音色は倍音が多い。
なので、
- いい歌声とは倍音が多い歌声
と考えられます。
世界中を魅了するシンガー達も、とにかく倍音が多い
例をあげればキリがないのですが、いくつか事例で見ていきましょう↓
倍音が多い声は楽器が鳴っているかのような心地よさを生み出します。
歌声そのものの音色が非常に綺麗ですね。
ちなみに後ほど少し触れますが、倍音が多い発声というのは結果的にピッチ感が抜群に良くなるので、このように美しいアカペラをスラスラ歌えると考えられる。
この方の倍音は特有ですよね。
ザラッとしたような、ガラッとしたような独特な鳴りの倍音を多く含むので、個性的な楽器と化しています。
ザラついたエッジーな楽器(声)ですね。
若くしてグラミー賞も受賞している天才中の天才。
この人の歌声は息系の倍音成分を多く含む非常に特徴的な音色です。
エアリーな楽器(声)。
このように成分は人それぞれ個性や違いはありますが、
- 声が楽器化しているシンガーは倍音がとにかく多いのが特徴
です。
ここで勘違いしてはいけないのは、
- 『声量が大きい』とかではなく、『倍音が多い』
んです。
声量と倍音は必ずしも比例しません。
先ほどのジェイコブコリアーさんの歌声はいい例ですよね。
倍音が多い発声はささやくようにして、ものすごく通るんです。
あくまで
- 声の倍音を増やすことに焦点を当てる
ことが声の楽器化への道でしょう。
倍音から逆算する
- 声が楽器化している=倍音が多い
- 声が楽器化している=歌が上手い
であれば、
- 倍音が多い=歌が上手い
と言えますし、
- 『倍音を多くすれば歌が上手くなる』
とも言えるわけです。
普通に考えると、
- 歌が上手くなるための練習をする→倍音が増える
ですが、
- 倍音を増やそうとする→歌が上手くなる
と逆の順番で考えてもいいのでは?
個人的に思うのですが、歌が上手い人と歌が苦手な人の倍音にはこのような特徴があると思います↓
このように歌が上手い人は倍音を保ったまま美しく低音域から高音域まで発声します。
歌が苦手な人は上記の図のように『倍音を多く保てる(魅力的に鳴らせる)範囲が非常に狭い』と考えるのが正解かと個人的には思っています。
基本的に歌が苦手な人は”音程をコントロールするため”に倍音を消失してしまう(犠牲にしてしまう)のです。
でも、どんな人にも倍音を多く保てる位置は存在するはずです(おそらく一番楽な音程。普段話すくらいの音程)。
ここで、
『音程をコントロールするために』という考え方が非常に大事で、結局これって声帯が柔軟じゃないんです。
つまり、考え方として
- 声帯が柔軟じゃない→音程を楽にコントロールできない→頑張って音程をコントロールする→倍音が消失してしまう
という感じでしょう。
歌が上手い人は、
- 声帯が柔軟→音程を楽にコントロールできる→倍音を保ったまま音階をコントロールできる
ということですね。
ということは逆算して、
- 倍音を保った発声の範囲を広げようとする→声帯の柔軟性が身につく→歌が上手くなる
と考えることもできます。
つまり、『まずは自分の発声の最も倍音が保てる位置を見つけて、それを維持したまま押し広げようとする練習こそ美しい発声を鍛えることにつながる』と考えられます。
こういう風に考えることもある意味理にかなっているかと思います。
特に、カラオケで歌が上手くなりたいという人(=手っ取り早く、楽に高音まで歌いたい)ではなく、ガチで歌が上手くなりたい(=声を楽器のように鳴らしたい)人はこういう風に考えた方がいいと思います。
でも、これって大変で地道なんですよ。
かなり”コツコツ”と慎重に開発することになると思います。
このコツコツはすごく重要。
少しでも変なところ(倍音が少ない発声)に入ったら、アウトです。
その先にいい音色はないわけですから。
だから、最初のうちはその都度録音しながらとかの工夫が必要になるでしょう。
でも大抵の人はなかなかコツコツとなんてやってられないんです。
当たり前ですよね。
誰だって、すぐに結果が出る方がいいんですもん。
そして結果的に、即効性のある(しかない)練習やゴリ押しで練習して頑張った先に最終的にたどり着くのが『高い声は出せるけどなんだか魅力的ではない(倍音の少ない)発声』。
しかも、その先にいい音色(倍音の多い発声)はないわけで、、、どん詰まりなんです。
もちろん決して無駄にはならないとは思いますが、限りなく最初からやり直す(前提をひっくり返す)ことになる可能性が高い。
ちなみに倍音が少ない発声って音色の心地よさの面の問題はもちろんですが、
- 『細かいピッチ感』に大きな影響がある
んです。
つまり、
- 倍音が多い発声の人はピッチ感すごくいい
- 倍音が少ない発声の人は細かい部分でピッチ感が良くない
ということです。
簡単に掘り下げると、「倍音が多い→必然的に声帯の柔軟性がある発声→ピッチがいい」みたいな感じです。
もっと掘り下げると、「整数次倍音・非整数次倍音」とピッチの関係性の観点に行き着くと思っているのですが、長くなるのでこの話はまた今度書きます(たぶん)。笑
とにかく、
- 『ピッチがいいからピッチがいい』んじゃなく、『発声の質がいい(倍音が多い)からピッチがいい』
んですね。
まとめ
結局、何が言いたかったのかというと、
- 声を楽器化させるには倍音が重要
- 発声の質=倍音を考えることこそ、歌が上手くなる道
- 倍音を保てる部分を見つけて、そこを拡張すればいいのでは?
ということでした。
まぁ結局これは
- 息の流動性と声帯が完全にリンクした美しい発声
を目指すということでもありますね↓
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