発声方法

「ミックスボイスとは?」についての研究・考察

投稿日:2018年5月24日 更新日:

この記事は『ミックスボイスとは?』というテーマについて深く研究・考察した記事です。

ミックスボイスとは

その言葉の曖昧さゆえに多くの語り口があり世界的に明確な定義づけのされていない言葉ですが、主に

  1. 地声から裏声にスムーズに移行するための発声方法
  2. 裏声ではない発声で高音域を出す発声方法

を指す言葉です。現在は②の意味合いで使われることが多いのかもしれません。

またミックスボイスと同じ意味合いとして、『ミドルボイス』と呼ばれることもあります。

 

  1. 地声=胸声=チェストボイス(Chest)
  2. 中声=ミックスボイス/ミドルボイス(Mixed/Middle)
  3. 裏声=頭声=ファルセット/ヘッドボイス(Falsetto/Head)

このような声区の区分の真ん中の部分を指す言葉として『ミックスボイス』という言葉が使われるのが一般的です。

 

語源・由来

『ミックスボイス』という言葉の由来はフランス語を英語に変換した時に生まれたものとされています。

原語はフランス語のヴォワ・ミクスト(voix mixte)であり、英語の mixed voice もその訳語のようである。

引用元: Wikipedia『ミックスボイス』

このフランス語のヴォワ・ミクスト(voix mixte)というのは『声区融合(地声から裏声までを滑らかに移行すること)』という意味なので、それを訳した英語のミックスボイス(mixed voice )も『声区融合』という意味になるのが本来は正しいのでしょうし、元々はそういう使い方の言葉だったのかもしれませんね。

 

現在では、「滑らかに移行している」という意味合いよりも「高い声を出す発声方法」として語られることが多いと考えられます。

ミックスボイスは曖昧なものである

「なぜミックスボイスが曖昧なのか?」この理由は明白でしょう。

声区として明確に定義ができないからです。

 

簡単に言えば、「ここからここまでが〜」と範囲を決める時の「ここ」の場所をはっきりと示すことができないと考えられます。

特に「ここから」の部分。

 

地声・裏声はできる

地声と裏声ははっきりとそれができるんです。

  • 地声=声帯筋(甲状披裂筋)が働く発声
  • 裏声=声帯筋(甲状披裂筋)が働かない発声

と明確に線が引けるのですね。

このように声帯の機能区分として、地声と裏声ははっきりとした定義付けができます。

しかし、ミックスボイスはそれができない。仮にものすごい高音の地声であってもそれが地声である限り、声区上は「地声」と分類されるでしょう。

 

となると「ミックスボイスという明確な声区は存在しない」というお話になるのですが、この問題は根深い。

そもそも、ミックスボイスという言葉自体語り口が多すぎるんです。

 

全ての人が同じ意味・認識での”ミックスボイスという概念”を持っていないので単純に”存在する・存在しない”という言葉で処理しにくい』ものでしょう。

 

ミックスボイスはどう考えるのがお得か?

思い当たる節がある人も多いと思うのですが、

  • ミックスボイスとは『プロほど語らず、一般人ほど語る傾向にある不思議な言葉』

だと思いませんか?

プロのシンガーが「ミックスボイスが〜」と語っている場面ってほとんど見ませんよね。語られる場面の多くは一般の中でしょう。

 

実はこれがある意味『ミックスボイスの正体の核心をついた答え』だと考えられます。

 

つまり、「ミックスボイス」という言葉はプロほど認識しにくく、一般人ほど認識しやすい。

もしくは『ミックスボイスはプロほど存在せず、一般人ほど存在しやすいもの』とも言えるのかもしれません。

このカラクリについては長くなってしまうので、こちらにまとめています↓

ミックスボイスの存在について【なぜプロほど語らず、一般人ほど語るのか】

続きを見る

 

なので、

ミックスボイスとは『地声の中高音』くらいで考えておくのが一番お得でしょう。

「あるか・ないか」「何が正解なのか」ではなく、「どう考えるのがお得か?」です。

 

おそらく多くの人にとってのミックスボイスとは「裏声ではない高音」でしょうから、もしミックスボイスを定義付けするのであれば

  • 『自然な換声点以上の音域の地声による高音発声』

としか言えないのではないかと考えています(*換声点・・・地声から裏声に切り替わる音域帯)。

 

そもそもミックスボイスは「どうすれば地声のような高音を出せるのか?」という疑問に対する答えとして、「ミックスボイスを身につけましょう」という風に語られるものでしょう。

これが結構厄介で、よーく考えると論点が微妙にすり替わっているような感じがしませんか?

 

例えば、

  • 「速く走るためには?」→「〇〇走法を身につけましょう」
  • 「ホームランを打つためには?」→「〇〇打法を身につけましょう」

に近いニュアンスだと思います。これって正解ですか?

 

「ミックスボイスを身につけなければいけない」と言われると熱心な人ほどミックスボイス迷宮に突入します。

  • ミックスボイスとは何か?
  • どうすれば身につけられるのか?
  • 出し方は?感覚は?何が正解なのか?
  • ミックスボイスっぽいのができたけど、か細い。太くならない。強くならない。

と迷宮に入り込み長い間抜け出せないかもしれません。

これって結局損ですよね。

 

「どうすれば地声のような高音を出せるか?という疑問の答えは実はその疑問の中にあると考える方がいいというか、その方が最終的にお得だと思います。

もしミックスボイス迷宮に入り込んでいる場合は、こちらも読んでみてください↓

ミックスボイスの声量が小さい原因とその解決策について

続きを見る

 

ミックスボイスの声帯の形や状態

「ミックスボイス」という明確な定義付けのできる発声状態は存在しない』というのはさておき、地声のような音色の高音発声は普通に存在します。

そもそもそれが「地声」だろうが、「ミックスボイス」だろうがどうでもよくて、

  • 『地声のような高音発声』をどう出すか

という部分が重要でしょう。

 

声帯は人体なので筋肉や神経などと同様にまだまだ研究の余地が残されている分野です。

論文や文献を参考にこの記事を書いていますが、ここからは「ふーん。」くらいでお楽しみいただくのがいいと思います。

ここからはミックスボイスを「地声の高音」という意味合いで表現します。

地声と裏声の声帯の状態の違いをざっくりと理解しておくべき

先ほどの少し触れましたが、ミックスボイス(地声の高音)を理解するには地声と裏声の声帯の状態の違いをしっかりと理解しておかなければいけないでしょう。

 

地声と裏声の違い

声帯はこのように左右のひだが打ち合って振動します(正確にはベルヌーイというものですが、難しいので打ち合うと考えても損はないでしょう)。

 

この声帯の断面をクローズアップすると

 

このようになっています。

細かい名前はどうでもよくて声帯筋(=甲状披裂筋)という『肉』があり、それ以外は『皮』みたいなものだと考えていいと思います。

 

そうするとこのように分けられます。

この二つの『肉』と『皮』のうち、『肉』の打ち合いが地声

「皮』だけが打ち合うのが、裏声です。

これを断面で見ると、

このようになっています。

わかりやすい(*再生位置)↓

 

これが、先ほどの

  • 地声と裏声の明確な差(定義)

です。

 

つまり

地声のように聞こえるには『肉』が必要であり、肉をなくせば『皮』だけになり裏声になるということです。

「地声から裏声」と「地声からミックスボイス(地声の高音)」の声帯の動き

地声→裏声

声帯は基本的に伸びることで音を高くします。

このように声帯が伸びれば伸びるほどに音が高くなっていきます。

これが輪状甲状筋による声帯の伸展です。

 

そのまま声帯を伸ばして音を高くすると、やがて声帯筋が働かなくなります。

声が裏返る仕組みや原因について

続きを見る

地声→ミックス(地声の高音)

ミックスボイスはこの「裏返る段階」に入っても地声のような状態を保つ。

声帯が伸びるにも関わらず声帯筋を保つ動きをするので、ミックスボイス(地声の高音)になるのですね。

というか見かけ上はほとんど地声、、、であればそれは地声じゃないのか?その通りです。笑

だから「地声の高音」なんです。

 

つまり

  • 裏声は『声帯が伸びるので声帯筋が働かなくなる高音発声』
  • ミックスボイス(地声の高音)は『声帯が伸びるのに声帯筋が働く高音発声』

です。

 

ということは声帯が「伸びる力」をそのままに「収縮・緊張する力」によって地声の状態(声帯筋が働く状態)を維持しなければいけないとも考えられます。

 

理屈的にはこうなのですが、感覚としてはただの地声の高音ですし、特に何か特殊な動きをしようとしてこの状態になるわけではないでしょう。

ただ、地声の高音を出そうとして地声の高音になります。

 

ただ、世間的に語られるミックスボイスの中にはあまり良くない状態のことをミックスボイスと言ったりしていることもあると思われます↓

これによって、高い声は出るが魅力的ではない音色の発声になります。

個人的には世間で言うミックスボイスってこれのことを言っていることが多いのではないかと思うのです。

これについても先ほどの「ミックスボイスの存在について」の記事にまとめていますので、ここでは省略します。

 

ちなみに

  • 伸びる力は声帯を開く作用
  • 縮む力は声帯を閉じる作用

に連結していると考えられています。

 

 

縦の動きが結果として左右への力にも直接ではないですが、間接的に関係しているのですね。

ミックスボイスの発声原理

ここまででミックスボイスを可能にするには

『本来、高音域では働かなくなる声帯筋(甲状披裂筋)を高音域で働かせることが必要』

ということはイメージできたと思います。

 

「じゃあ、それをどうやって働かせるの?」というところが一番大事ですよね。

2種類の縦方向の収縮

実は声帯筋を働かせるこの縦方向の収縮の力。

まだ解明されていないことも多いらしいのですが、縦方向の収縮のうち『外側』と『内側』と『さらに内側』を分けて考えなければいけないのです。

青い部分(『一番外側』)は無視してください。

オレンジと赤の2種類が『内側』と『さらに内側』です。

簡単に言うと地声で使う『肉』の部分をさらに2分割したものです。

 

内側・さらに内側などの表現がすごくややこしいので、

  1. オレンジ(2番目に内側)→外側
  2. 赤(1番内側)→内側

と表現します。

わかりにくかったらごめんなさい。

 

ここで重要なのが、

大抵の人はオレンジライン(外側)は収縮させることができるが、赤ライン(内側)を単体で収縮させることができるかは人による(声帯の柔軟性による)と考えられています。

 

つまり基本的にオレンジライン(外側)は誰もが使っていて、オレンジライン(外側)の動きにくっついて赤ライン(内側)も動いている人が多いということ。

しかし、声帯を上手く動かせる人は赤ライン(内側)だけを上手く動かせるというのです。

つまり

  • 声帯コントロールが苦手な人はオレンジと赤が同じ動きをする
  • 声帯コントロールに長けている人は赤だけを独立して動かせる

と考えられています。

 

これにより声帯を伸ばしても地声の状態を維持できる(裏声にならない)のですね。

 

 

このように

『高音域で赤ライン(声帯筋)を使えるようになること=ミックスボイス(地声の高音)の発声原理』

と考えられています。

 

以下の引用(原文ママ)は大体同じことを言ってるはずです。

低音域から中音域においては、前筋・後筋による伸展作用がそこまで強くありません。声帯は内筋と声帯筋(低音においては外側も)が全体で振動を起こします。しかし、音域が段々と高くなり、伸展作用が強くなると、声帯は外側から裏声モードに変化し、振動停止をし始めます。すると、ある高さのところで、内筋全体が裏声モードになり、振動停止状態になります。残されるは「声帯筋部分」のみ。

このとき、声帯筋が「内筋に依存しなければ機能できない状態」だと、結果、内筋とともに裏声モードになり振動ができなくなります。しかし、「独立して機能することができる状態」だと、声帯筋は内筋が裏声モードに侵食後も独自で振動のが可能となります。この状態で発せられる声こそ、高音域のミドルボイスとなります。

引用元:ボイス・リビルディング発声理論『声帯筋の働き』より

胸声は甲状被裂筋により声帯が収縮し、厚く閉じた状態で発せられる。

頭声は輪状甲状筋により声帯が薄く伸展され声帯の縁の靭帯が振動する。

中声においてこの甲状被裂筋と輪状甲状筋を仲介し、胸声と頭声の融合を可能にするのが甲状被裂筋の内側にある声帯筋である。声帯筋はその構造から緊張を自由に変えることができ、そのことによって胸声、頭声の橋渡し、あるいは、胸声を多く含んだ中声、頭声を多く含んだ中声等の様々な音色コントロールに対応することができるのである。

引用元:『声楽発声のメカニズム』より

 

つまり、この内側声帯筋が働いている状態であればどこまでも地声のような高音を発することができる理屈です。

それが『良い発声』であるかどうかはまた別の話ですが。

ミックスボイスを出すためのアプローチ

ミックスボイス(地声の高音)を出すため必要な条件は

  • 高音域で『声帯筋を働かせる』
  • 特に『内側の声帯筋』が重要

でしたね。

 

大きく分けると二つの考え方ができると思います。

  1. 『内側声帯筋』が独立して働くように開発する
  2. 外側からの力を借りて声帯筋を働かせてしまう(無理矢理?)

という二つの考えです。

1.内側声帯筋が独立して働くように開発する

理屈的には高音発声をするとき(声帯伸展するとき)に『内側の声帯筋』が綺麗に独立して働くように開発するというイメージです。

この内側の声帯筋の動きそのものを知覚・認識するのはかなり難しいと思います。

多分ほぼ全ての人は認識できないと思います。

 

例えば、

歩いているときに「あー、前膝十字靭帯がしっかり動いてるわぁ」みたいな認識ができないのと同じです。

 

なので、高音域で声帯筋を働かせることができる人(声帯の柔軟性がある人)は

  • 地声のように高音を出そう
  • 裏声にしないで高音を出そう

などの意識のみで出していると考えるべきかと。

意識すれば勝手に働くものとも言えるでしょう。

 

なので、「内側声帯筋を働かせるぞ〜!」と思って働かせることができる人はおらず、内側の声帯筋が独立して働くかどうかは結果論なのだと思われます。

 

つまり、

『地声のような高音を出そうとした結果として内側の声帯筋が働いている』

のですね。

 

じゃあ、『どうやって開発する・鍛えるのか』というと、結局出せる範囲の地声をコツコツと一歩づつ鍛えていくことしかないと考えられます。声帯が伸びるのに声帯筋が働くという状態をコツコツと開発していくのが一番でしょう↓

地声の高音域を広げる方法【結局、地道なトレーニングが一番いい】

続きを見る

2.外側からの力を借りて声帯筋を働かせてしまう

声帯コントロールが上手い人は内側の力を上手く使うことができると考えられていますが、外側の力を使っても声帯筋を働かすことができるはずです。

 

これは比較的誰でもできやすいと思いますし、人によっては地声の高音を出そうとするとそうなってしまうという人も多いのかもしれません。

いわゆる『喉締め』という状態です。

このように外側から締めてしまって声帯筋を働かせるという考え方です。

なんだか無理やり感もありますが、先ほどよりも意識・感覚的に捉えやすくわかりやすいと思います。

 

しかし、これだといわゆる『喉締め発声』です。

これは、

  • 地声のまま高音に登ろうとする=声帯筋を働かせたまま高音に登ろうとする
  • しかし、声帯をこれ以上伸ばせない・内側の声帯筋を独立して上手く使えない=声帯の外側の力を使って声帯筋を無理やり働かせる=喉締め発声になる

と考えられます。

 

つまり、声帯筋を働かせるため(地声の音色にするため)に声帯周りの力を使ってしまう(使わざるをえない)のですね。

こういうものは基本的には悪いものとされています。魅力的でないダメな発声も多いでしょう。

しかし、一概にダメを決めつけることができないこともあります。

 

なぜならその周りから力を借りている度合いは場合によるからです。

  • 喉締めは力を借りすぎている状態は流石にダメなことが多い?
  • 中くらいだとどうなのか?
  • ではほんの少し借りている状態はどうなのか?

など様々な状態が考えられると思います。

これは人によって違うので、一概に決めつけることはできないですね。

 

声帯の柔軟性があるシンガーがさらに外側の力を借りることで、とんでもないハイトーンボイスを生み出すこともありますからね。

ハイトーンボイスの出し方について

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