今回は、歌における「フレージング」や「歌い回し」と言われるようなものについての内容です。
特にこれは、
- その人の”歌い方”
みたいなものを考える上で、欠かせないものだと考えられます。
目次
歌における「フレージング」や「歌い回し」について
フレージングの本来の意味は「旋律を区切ること」ですが、歌においては、
- そのフレーズ(歌)をどのように歌うのか
というような意味合いで使われることがあるので、ここでもそのようにして使います。
「歌い回し」と同じような意味合いでしょう。
「フレージング」は、歌の個性を作る
例えば、「同じ歌」を色々な歌手が歌うと、ある程度原曲通りに歌ってもそれぞれ違った印象の歌になると思います。
なので、「〇〇さんの歌い方、△△さんの歌い方」のように言われますね。
特に、個性的な人ほど顕著に個性が出ます。
ここで、歌い方の個性を決めるのは、
- 『名前がついているようなテクニック』
- 『単純なフレージング』
の二つの要素があることを考えておくべきでしょう。
もちろん、この二つの要素は完全に分離しているわけではないのですが、今回は「名前のついているテクニック」をある程度切り離して考えます。
テクニックもその人の歌い方を決める要素であることは間違いないのですが、これは多くの人が認知しやすいポイントだと思います。
認知しやすいからこそ名前がつくのですね。
しかし、実は名前もついていないような『単純なフレージング・歌い回し』も”歌い方の個性”が出やすい部分だと思います。
「単純なフレージング」は、大枠2種類の方向性
フレージングは、大きく分類すれば二つの方向性で考えることができると思います。
- 直線的フレージング
- 曲線的フレージング
という二つの方向性です。
もちろん、いろいろなパターンの組み合わせが存在しますが、大枠この二つの方向性を考えるとわかりやすいと思います。
まずは聴いた方が早いです(全てがそうだというわけではなく、あくまで傾向としての例です)。
直線的フレージング↓
アタック(出だし)が強く、リリース(語尾)はあまり繋げずに素早く収束するようなスタイル。
曲線的フレージング↓
音がグライド(ポルタメント)するようなフレージング。
アタックが緩やかで、リリース部分が流れるようにアタックへ繋がるスタイル。
お二方とも、異なる印象の歌い回しだと思います。
どちらが良いとか悪いとかは一切なく、あくまで『旋律(メロディー)の表現の違い』です。
- 直線的フレージングは『ピアノ的』
- 曲線的フレージングは『ヴァイオリン的』
な旋律のイメージです。
何がこの違いを作っているのかというと、
- 音の出だし(アタック)
- 音の語尾(リリース)
の二つで、この二つの連続が歌い回しの印象に大きな影響を与えます。
大枠でこの「直線的」か「曲線的」かを考えると、あとは
- 「スピード」
- 「強弱」
の組み合わせの問題になります。
歌い回し・フレージングの個性は「出だし」と「語尾」で決まる
楽器などでは、音を構築する要素はADSR(「アタック・ディケイ・サスティーン・リリース」)と言ったりしますが、歌の場合はシンプルに「出だし」「語尾」という考えでいいと思います。
厳密にはその真ん中は存在するのですが、これはピッチの核の部分。今回はそこまで気にしないことにします。
【音の出だし】
音の出だしは、
- 「早い」か「遅い」か
- 「強い」か「弱い」か
の組み合わせが、主な指標でしょう。
あくまでもざっくりとした印象ですが、
- 早い+強い=鋭い
- 早い+弱い=軽やか
- 遅い+強い=膨らみ
- 遅い+弱い=ゆるい
というようなイメージになるでしょう。
【音の語尾】
音の「語尾」は
- 「切る」か「伸ばす」か
でしょう。
ここで大事なのが、
- 「出だし」と「語尾」は常に連続して繰り返していて、両方とも密接に関わっているということ
です。
つまり、この一音一音の連続的な「アタック」と「リリース」、「出だし」と「語尾」の繰り返しによる音の選択こそが、『フレージング・歌い回し』の個性と言えそうです。
これを考えると、歌い方の印象が決まる
あくまでもざっくりとしたイメージですが、「出だし」と「語尾」の作り方で、このような歌い方の印象になると思います。
- 鋭い+切る=『ハキハキ』
- 鋭い+伸ばす=『壮大・伸びやか』
- 軽やか+切る=『リズミカル』
- 軽やか+伸ばす=『スムーズ』
- 膨らみ+切る=『弾み・躍動感』
- 膨らみ+伸ばす=『ねっとり』
- ゆるい+切る=『ふんわり』
- ゆるい+伸ばす=『なめらか』
あくまで一例というか、一般的に言われそうな表現ですがこんな感じでしょう。
もちろん、これで全てが決まるわけではないのですが、これが歌い方の印象を決める一つの要因になります。
つまり、
- 「出だし」と「語尾」をどう歌うか
を考えることが、歌い方の個性を作るポイントの一つでしょう。
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