今回は、「プロのシンガーはボイトレしない人もいる」「ボイトレしなくても歌が上手い人」というテーマについて掘り下げていきます。
目次
「ボイトレしない」と語るプロの歌手は意外といる
まず、『ボイトレ』というものをどこで線引きするかという問題があるのですが、ここでは
- 「歌う」以外の歌うためにするトレーニング
- 具体的には『特殊な発音や発声での練習・スケール練習』などのこと
とします。
おそらく多くの人は、こういう意識で『ボイトレ』という言葉を使っているはずです。
そうすると、一概には言えないのは大前提ですが、プロのシンガーはこの『ボイトレ』という行動をあまり取らない、もしくは取ったことがないなど、ボイトレらしいボイトレはしないと語る人は多いです↓
「歌声は歌って作るのが一番いい、試合で覚えていくみたいなところがある」。
核心をついたような言葉ですが、似たようなことを語るシンガーは他にも多くいますね。
なぜ、このようなボイトレしない人がいるのかというと、
- 歌うことはボイトレを内包しているから
- 才能に溢れている(元々の能力が高い)から
- ボイトレの『プラス面』と『マイナス面』をしっかりと理解している
という理由が考えられます。
①歌うことはボイトレを内包しているから
ボイトレは”歌が上手くなるためのもの”、つまり
- 発声能力を向上させるため
- ピッチやリズムなどの音楽的感性を向上させるため
にするものであれば、結局それは『歌う』という行動でもトレーニングになるわけです。
要は
- ボイトレっぽいボイトレをしなくても、歌を歌うこと自体がボイトレになる
ということ。
先ほどもありました「歌声は歌って作る」というやつですね。
なので、「何かトレーニングをしているのか?」と尋ねられると、「特に何もしてない(ボイトレのようなことはしていない)」という回答になるのでしょう。
②才能に溢れている【元々の能力が高い】
当たり前ですが、特別なボイトレなんてしたことがない歌が上手い人は、ボイトレする必要性を感じません。
つまり、
その上手くなった過程において、”ボイトレらしいボイトレ”というものが存在しなかったとしたら、その必要性を感じないですから、ボイトレしない人がいて当然ということです。
人はこれを『才能』と呼ぶでしょうが、才能にも必ず理由(原因)があるはず。
そもそも、生まれた瞬間から歌が上手い人なんて存在しないです。
『小さい頃から歌が上手い人』にも必ず理由がありますし、『気がついたら歌が上手くなっていた人』にも必ず理由があります。
どんな人にも『上手くなった過程』が存在するということですね。
能力は、
- 『能力』=『経験値』×『成長速度』
という方程式によって決まるものなので、”そこに他の人とは違う何かがある”と考えるのが普通でしょう。
よく「気がついたら歌が上手かった」「何もしていないけど歌が上手かった」という人がいますが、これは本人も意識していない日常の行動(声の使い方など)の積み重ねによって生まれるのが面白いところです。
例えば、子供の頃から毎日のようにひたすら外で遊んでいた人が、スポーツをやってみたらすぐに上手くなった。のように何気ない日々の行動がある能力に繋がっていくことはよくあります。
歌でも、子供の頃から叫びまくっていた。剣道をやっていて毎日かけ声でシャウトしていた。などのような人は、「気がついたら歌が上手かった」というようなことが起こりやすいかもしれません。
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歌が上手い人は生まれつきなのか【小さい頃から歌が上手い理由】
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③ボイトレの『プラス面』と『マイナス面』を理解している
ボイトレは、スポーツで言えば”筋トレ”のようなものです。
例えばスポーツでは、サッカーと野球では必要な筋肉が違う、マラソンと100メートル走では必要な筋肉が違う、などのように『役に立つ筋トレ』『役に立たない筋トレ』が存在します。
また、同じ競技の中でも個人差(骨格など)によって、それは変わってくるでしょう。
これと同じように
ボイトレも「個人差・体の違い」「ジャンルの違い」「何を目指すのか」などなど、考慮すべき点の数だけ「役に立つボイトレ」「役に立たないボイトレ」が生まれると考えられます。
それら全ては”人によって変動する”ので、難しい問題でもあります。
「役に立たない。無駄だった。」ならまだしも、「マイナス効果になった。」ということも普通にあるのが、怖いところです。
全てのボイトレが100発100中で歌の成長に役立つものであれば、いくら歌が上手い天才シンガーでも色々なボイトレをし続けると思います。
ところが、そうしないのは「役立つものもあるが、役立たないものもある」「やり過ぎはよくない」「成長するどころかマイナスになることもある」などの面を理解しているからでしょう。
そして、こういう面を理解しやすいのは『歌が上手い人たち』だと考えられます。
すでに上手いからこそ、
- 「この練習は本質的には役に立たないな」
- 「逆に悪くなってるな」
- 「自分には合わないな」
などがすぐにわかるのですね。
ある程度の境地にいるからこそ、この判断がしやすい。
しかし、歌が苦手な人は”成長過程にいるという意識が強い”ので、
- 「効果が出ないのは、やり方がおかしいのか。」
- 「努力が足りないから、もっと頑張らないと。」
- 「これとそれとあれを、全部やらないと。」
のように、練習を捨てる判断をするのが難しい。
勘違いしてはいけないのですが、ボイトレなんてやる価値がないと言っているわけではなく、ボイトレは難しいということです。
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ボイトレの難しさについて:「ボイトレしても意味がない」と語られる理由
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全てのシンガーがボイトレしないわけではない
ここまでは「ボイトレをしない人」の理由を述べてきましたが、ボイトレをするシンガーもたくさんいます。
色々やってますね。
結局、『必要だから”しない”』という選択肢を取る人もいれば『必要だから”する”』という選択肢を取る人もいるということですね。
人はそれぞれ体(喉)が違いますし、歌のスタイルも違いますから、その人に合ったものがあるということでしょう。
なので、「ボイトレはした方がいい」「ボイトレはしない方がいい」という単純な二択にはならないというのが、ボイトレを考える上で最も重要なポイントなのかもしれません。