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歌の雑学・研究・考察

洋楽っぽい歌い方・発声についての研究

投稿日:2021年7月1日 更新日:

今回は『洋楽っぽい歌い方や発声方法』についての研究です。

 

ただ、『洋楽っぽい』とは言っても「何を持って洋楽とするか」「洋楽もジャンルや時代によって様々である」などということを考えれば、”洋楽らしさ”という概念を明確に定義するのは正直難しいです。

 

最終的には、「洋楽らしさなんて存在しない」とか、「型にはめること自体が間違いかもしれない」などという極論にたどり着くとは思いますが、そうなると話が終わってしますので、個人的に思う「洋楽らしい発声」という部分で話を進めたいと思います。

洋楽っぽさのある歌唱スタイル

個人的には「洋楽っぽい歌い方の日本人シンガー」ってこんな感じなのですが、みなさんはどうでしょう?

三浦大知さん・Takaさん・清水翔太さん↓

全ての人にとってそうではないでしょうが、おそらくこういう歌唱スタイルが一般的に「洋楽っぽい歌い方」と言われると思います。

 

これだけでも特徴は掴めるのですが、こういう「洋楽っぽさ」を紐解くときは、逆にコテコテの日本らしい歌唱スタイル(歌謡・演歌など)の特徴を頭に入れておくと一層いいと考えられます↓

別にどちらが良いとか悪いとかは一切なく、両方とも素晴らしい歌唱方法なのですが、「洋楽らしい歌い方」と「日本らしい歌い方」は異なるポイントがありますね。

 

おそらくみなさんもそれぞれに何か思ったことがあるでしょうし、その全てが正解だと思います。

 

個人的には「洋楽らしい歌い方」と「日本らしい歌い方」は、

  1. 子音の強弱
  2. 母音の流れ・動き

に着目するといいのではないかと考えられます。

 

そうすると、

洋楽らしい歌い方は

  1. 子音の強弱【強い・音の出だしが鋭い】
  2. 母音の流れ・動き【直線的で歯切れが良い・リズミカル】

 

日本らしい歌い方は

  1. 子音の強弱【弱い・音の出だしが緩やか】
  2. 母音の流れ・動き【曲線的で旋律が流れる・メロディアス】

という風に考えることができます。

子音の強弱【英語は子音が強い】

これは「英語圏のシンガーが、慣れていない日本語を歌った場合にどうなるのか?」というのを研究するのがわかりやすい(*再生位置)↓

 

歌っているのはフレディ・マーキュリーですが、これを聴いて「日本人が歌っているな」と思う人は少ないと思います。

 

細かい発音などいろいろあるでしょうが、ざっくり言えば

  • 「子音が強すぎるから」「子音がハキハキしすぎるから」日本人っぽく感じない

と言えるでしょう。

 

子音とは言い換えれば、「歯・舌・唇・息などで作る音」です。

英語はこういう子音を強調し、母音に対してたくさんの子音が出てくる”子音言語です。

つまり、『音の歯切れの良い言語』。

 

日本語と比べて、音の出だし(アタック)のアクセントが強くなる傾向にある

 

これはあくまでイメージのお話ですが、瞬間的な時間を切り取ったときに、

  • 英語は子音が先、母音が後というイメージ
  • 日本語は母音が先、子音が後というイメージ

です。

 

例えば、「か」と発音するときに、

  • 英語は「K→あ」=子音に母音を乗せる
  • 日本語は「あ→K」=母音に子音を乗せる

という感じです(*もちろん、両方ともほぼ同時に行われる動作なのですが、刹那の瞬間を切り取ったときに、こういうイメージや意識をするといいのではないかというお話です)。

 

母音の流れ【日本語は母音をつなげるのが得意】

お経、和歌、歌舞伎、民謡、演歌などなど、日本に由来するものの多くは「母音を長くつなげる」のが特徴です↓

 

日本語は英語と違い、一つ一つの言葉に必ず母音がつく”母音言語です。

つまり、『音がつながりやすい(流れやすい)言語』。

 

母音とは言い換えれば「声帯の鳴り」です。

つまり、日本らしい歌い方とは「母音をつなげる」=「声帯の鳴りをつなげる」=「音を流れるようにつなげる」とも言えるわけです。

 

例えば、先ほどのクイーンの『Teo Torriatte(手をとりあって)』という歌ですが、サビのフレーズは、

  • 「てをっ とりあって」

とリズミカルに切っていますが、日本的に考えると

  • 「てを〜〜とりあって」

とつなげて歌いたいと思う人が多いはずです。

 

このように、

  • 日本語は母音を繋げたがる→メロディーが曲線的(メロディアス・旋律的)
  • 英語は母音を区切りたがる→メロディーが直線的(リズミカル)

になる傾向が生まれます。

言語の特性が歌い方に繋がる

つまり、言語の「母音の特性」と「子音の特性」を考慮すると、

  • 日本人は音をゆったりと流れるように繋ぐ歌唱方法が得意
  • 英語圏の人は音を素早く動かしリズミカルに切るような歌唱方法が得意

になる傾向にあると考えられる。

 

よって、演歌や民謡など日本由来の歌唱方法は、日本人に最適な歌唱方法と言えるでしょうし、英語圏由来のジャンルの歌唱方法は、英語圏の人に最適な歌唱方法と言えるものも多いでしょう。

言語によって得意不得意が出る

日頃話している言語の特性によって得意不得意が変わるのですね(*もちろん、あくまでも傾向であって訓練すればなんとでもなるはず)。

 

洋楽らしい発声は「出だし」と「語尾」を意識

上記のような『母音と子音の関係性』を『音の出だしと語尾の関係性』に変換すると、

  • 洋楽っぽさは出だしが鋭く、語尾が収束する
  • 日本っぽさは出だしが緩やかで、語尾が伸びる(つながる)

という風にも考えることができます(*もちろん全てのフレーズがそうではなく、あくまで傾向)。

 

図にするとこんな感じです↓

  • 洋楽っぽい歌い方は、アタック(出だし)が鋭くて、語尾は素早く収束させる。
  • 日本らしい歌い方は、アタックは緩やかで、語尾は流れるようにつなげる。

このように「出だし」と「語尾」に着目すると、かなり”らしさ”が出ると思います。

 

つまり、洋楽らしい歌い方は、

  1. 子音を強く発する=音のアタックを鋭くする
  2. 母音を繋げすぎない=ピッチの流れを作りすぎずに直線的にとる。音の区切りやリズムを大切にして、メロディーに重視しすぎない(*メロディーを捨てるわけではなく、「重視しすぎない」というバランスが大事)

というのが大きなポイントでしょう。

「出だし」と「語尾」と「歌い方」の関係性については、こちらの記事にもまとめています↓

関連
歌い方の個性を決める『フレージング・歌い回し』について

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洋楽(英語)らしい声帯の使い方・発声方法

同じ声帯なので、日本人でも外国人でも大きな視点で見れば、声帯の使い方は同じなのですが、やはり細かい部分で違いが出ると考えられます。

 

これは言葉で表現するのが難しいのですが、英語は日本語と比較して、

  • ”声帯自体”にあまり力が入っていない
  • 声帯(母音)の鳴らし方が省エネ(*鳴ってないわけじゃない)

などのように考えることができると思います。

 

わかりやすく言うと、英語は『エッジボイス』の延長線上で話すような声帯の使い方。つまり、会話中にエッジボイスのようなカラカラした音がたくさん含まれることが多い↓

このように、英語はエッジボイスが話している最中でもカラカラと鳴ることが非常に多いですが、日本語の会話ではあまり見られません。

この場合のエッジボイスは、『声帯を最小振動数で鳴らしている=不完全な母音』と捉えられるので、母音が重視される日本語では、なかなか見られない現象だと考えられます(*全くないわけではない)。

 

つまり、

  • 『声帯自体にあまり力が入っていない』=母音を日本語ほどはっきりと形成しようとしない=『エッジボイスの延長線上で、声を出しているように感じる』

これが、英語圏の声帯の使い方のポイント。

 

英語圏の人って、声帯をリラックスさせて使っているような印象です。逆に日本語は、声帯を硬く使っている(*もちろん、硬く使っているという意識や自覚はない)。

声帯の使い方の違い

英語の鳴らし方は、『声帯を最小限で使う』『声帯(母音)を省エネして使う』『声帯や喉回りにあまり力を入れない(声帯を開放弦的に使う)ようなニュアンス』で、これらが日本人からすると、

  • 気だるそうな声帯の使い方
  • 浅い喉の使い方(音色の深みを全く作らない・声帯をさらけ出すようなニュアンス)

ように思えることもあると思います(*人によって印象はさまざまだと思います)。

 

例えば、こういう歌い方(声帯の使い方)は、気だるそうな印象を受けるはず↓

こういう「すごく浅い音色(喉回りに全く力が入っていない)」で「声帯の鳴らし方がエッジボイスの延長にある(省エネ化された母音)」という歌い方も洋楽っぽさの一つでしょう。

 

この『省エネ化された母音』とは「鳴りが弱い」というわけではなく、「少ない労力で鳴り(母音)を生み出している」ということです。

 

もちろん、日本人でも同じような声帯の使い方をすると同じ感じになる↓

 

このように『エッジボイス』の延長線上で鳴らすような声帯の使い方というのも、洋楽らしさの一つのポイントでしょう。

*注意点ですが、喉を締めるようなエッジボイスではなく、あくまで声帯を最小振動数で鳴らすような声帯に力の入っていないエッジボイスです。

 

ただ、こういう”声帯の使い方自体”は日本で誰もが知っているシンガーもしていますし、最近増えているような気もするので、もはや「洋楽らしい」とは言えないのかもしれません↓

この声帯の使い方・歌唱方法は個人的には、

  • 声帯をさらけ出す・吐き出すような発声方法(*あくまでイメージ)
  • 声帯位置から音の発射地点(口)を近づけるような発声方法
  • 喉仏の位置を深くしようとせずなるべく浅く保つ(咽頭共鳴をなるべく作らない)

というような認識です。

これに関して詳しくは、こちらの記事にもまとめています。

関連
気だるい歌い方・エッジボイスっぽい発声方法についての研究

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洋楽らしいテクニック【メリスマ】

特に洋楽固有のテクニックというものは存在しないというのは大前提ですが、日本では少ないが洋楽シンガーがよく使うテクニックと言えば、やはり『メリスマ』や『ラン』などと呼ばれる音程を高速で変化させるテクニックでしょう↓

人によっては、「フェイク」などと言うこともあると思います。

おそらく多くの人の「洋楽っぽい歌い方」の中には、このテクニックのイメージがあると思います。それくらい多く使われるテクニックの一つです。

 

もちろん日本で全く使われないかと言えばそうでもないですし、「こぶし」の仲間と言えるとも思います。

とにかく、このメリスマを身につけることも「洋楽っぽさ」のための重要な要素の一つであることは間違いないでしょう。

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