歌唱力アップ

ボイトレ初心者は何から始めるべきなのか

投稿日:2021年3月31日 更新日:

今回は「初心者から歌の練習を始めるのなら何から始めたらいいのか」というテーマについて。

こういうテーマは極論を言ってしまうと『正解の道は人それぞれ違うので自分で見つけるしかない、以上。』となってしまいますし、これはある意味では真理でしょう。

ただそれだとつまらないので、個人的に考える「こういうステップが理にかなっているのではないか」というものを考えました。

 

そうすると初心者のうちは間違った方向性へ進まないことという一点がものすごく重要で、そこさえ気を配ればその他はそんなに難しく考える必要性はないのだろうと思います。

 

なぜ間違った方向へ進まないことが重要かは説明するまでもないかもしれませんが、特に喉(声)は良くも悪くも変化が遅いという点がポイントです。これによって例えば「悪い発声・変な発声」を身につけた場合にそれを抜くのにもかなりの時間を費やしてしまいます。

だからこそ、間違った方向性へ進まないことに最大限の注意を払って練習すべきでしょう。そしてそのポイントを押さえた上でどう練習してくのかという内容です。

歌の初心者は何から始めるべきなのか

流れとしては

  1. 歌の能力の2つの軸を頭に入れておく
  2. 歌をたくさん「なぞる」
  3. 声をたくさん録音する
  4. 声区をしっかりと認識する
  5. 基礎のボイトレをする

というステップで練習に取り組むことで大きな失敗もなく効率よく成長できると考えられます。

①歌の能力の2つの軸を頭に入れておく

これは「ふーん」くらいの感覚で難しく考えなくていいのですが、

  • 歌唱力=「音楽的感性」×「発声能力」

ということをまずは頭に入れておきましょう。

歌の能力はこの二つによって決まります。

音楽的感性とは「音の音階・リズムなどを識別し、どんな音を出すかを判断する能力」。発声能力は「声の音程や声質などを操る能力」です。

 

簡単に言えば、

  • 音楽的感性は『脳』の能力
  • 発声能力は『体』の能力

という感じで、スポーツで言う『頭脳』と『身体能力』みたいなものですね。

 

つまり、歌が上手くなるということは『音楽的感性』と『発声能力』の二つを高めていくことになります。

 

ここからそれぞれ細分化して、音楽的感性は

このように枝分かれしていきますし、発声能力は

発声能力

このような項目に分かれていきますが、難しいことは抜きにして「この二つが大事なんだ」と考えておくだけで成長の仕方が随分と変わると思いますので、ぼんやりと頭に入れておきましょう。

②歌をたくさん「なぞる」

まずは歌をお手本と一緒に”なぞる”練習が一番いいと考えられます。

  • 「なぞる」とはプロのシンガーの音源に合わせて一緒に歌う

ということです。

 

この「なぞる」という行動は能力を効率良く高められる練習方法だと考えられます。

例えば、子供の頃誰もが文字を書く練習をしたと思いますが、最初はお手本を「なぞる」練習から始めましたよね。そして、だんだんなぞらずにかけるようになっていく。

同じように歌も最初はなぞることでお手本に引っ張られるような形で歌全体の能力を高めていくことができるでしょう。

 

なので、まずは「歌をなぞる」ことがいい練習になるでしょう。

【重要】現状の自分の能力でも歌える音域の曲を練習する

ここで一つ間違った方向性へ行かないための最も重要なポイントが練習する選曲』です。

曲は『今の自分の音域でも無理なく歌える歌』を練習したほうがいいでしょう。

 

つまり、今の自分にとって

  • 音程がきつい曲の練習はしない
  • 無理な発声が必要になる曲は選ばない

ということになります。

普段の話し声と変わらないくらいの音程の曲で全く問題ないです。

 

なぜこれが重要なのかというと、いきなり音程に無理がある曲の練習をすると間違った方向性へ行く可能性がかなり高まると考えられるからです(*もちろん可能性のお話なので絶対ではないですが)。

 

例えば、音程に無理がある曲を練習しようとすると頭の中が「高い声・高音」でいっぱいになってしまい、結果的に他の重要な要素に気が回らなくなるでしょう。

この意識の差が成長の仕方に大きさ差を生むと考えられます。

 

歌は『質』が基礎、『幅』が応用です。「高音」は『幅』に当たるので、高音のことばかり考えている練習はいきなり応用に取り組んでいるようなものなのですね。

つまり、基礎をしっかりと身につけるために最初のうちは高音を捨てておいたほうがいいということです。

 

まずは『”未来の自分”が歌えるようになりたい音域の曲』ではなく『”今の自分”が歌える音域の曲』を練習することが大事

そしてたくさん歌いこんで『その音域の曲は自分のものにした。極めた。』と言えるくらいまで練習するといいと思います。

 

そうすると必然的に次の音域に進める状態になっているでしょう。そうして次の曲、次の曲と一歩づつステップアップして行くとだんだん音域の広い曲も歌えるようになっていきます。

 

『基礎を身につけて応用に行く=質を高めて幅をつける』という感じです。

*ただし、人それぞれ最適な音域というのはある程度決まっているのでどこまでも無限に音域が伸びて行くわけではありません。人それぞれに適正の音域があります。

 

一つ問題点

ここで一つ問題になるのが「ものすごい声が低くて歌える歌がない」「音域が低すぎる」という人です。「今の自分の音域ではなぞれる曲がない」という場合もあるでしょう。

この場合は結構大変ですが、方針は変えずに工夫して乗り越えるのがベストかと。

 

例えば、

  • 男性なら女性シンガーのオクターブ下を歌う
  • 女性なら声の高い男性の曲を歌う
  • 曲のキーをアプリなどで変えてしまう

などの方法があります。

 

ただ、ここまですると歌の楽しさが減りそうというか、制限ばかりで歌が楽しくなくなってしまう恐れもあるのですが、そればかりは何とも言えません。普通は歌いたい歌を練習したいものですよね。

ただ、ボイトレ教室などに通っても大体まず”選曲”を矯正されるので、あとは自分の心の持ちよう次第になるかと思います。

③声をたくさん録音する

自分の歌声を録音して、聴く』という行動は初心者は特に必須です。これはスマホの録音で十分です。

 

録音がいい理由は

  • 自分の歌声を客観的に聴くことができる
  • マイク乗りがいい声を身につけやすくなる
  • 「自分に聞こえる自分の声」と「現実の自分の声」の認識の誤差を修正すること

です。

 

特に最後のポイントが歌を歌う上ですごく重要だと考えられます。

自分に聞こえる自分の声と本当の自分の声との誤差を小さくする

おそらく多くの人は普通に生活していれば自然とこの二つの認識にズレが生まれています。

なので、初めて自分の声の録音を聞いた時「これが自分の声!?気持ち悪い」とショックを受けたことがある人も多いはず。

 

これ自体は誰しもが通る道ですが、この誤差が大きいままでいては歌の練習が上手くいかないでしょう。

 

なぜなら誤差が大きければ、自分はいい声を出しているつもりでも悪い声を出しているなんてことも起こりうるからですね。

聞こえ方のズレが大きければ上手く歌うのは難しい

この状態では自分で行う修正すらいい方向に向かうとは限らなくなるわけです(*一般的に音痴と言われる状態もこれが原因で起こると考えられています)。

 

なので『自分の声の録音に違和感を感じない状態』になることが大切ということ。

もちろん人間なので違和感や誤差は0にはならないのですが、自分の声の録音を聴いても「まぁいつもの自分の声だな」というくらいの感覚が必要になるでしょう。

 

自分の声を聴くのが嫌で苦痛な人もいるでしょうが、逆に嫌な人ほど聴くべきということになります。「自分の声が気持ち悪い。嫌だ。」と思う人ほど誤差が大きいということですから。

 

そして、この感覚の誤差を修正するには録音した自分の声をひたすらに聴くことが一番良い。

何度も自分の声の録音を聞いていれば、慣れて自分の歌声に違和感を感じなくなります。

脳がズレを的確に認識する

とにかく自分の歌声の録音を繰り返し聞くは歌にとってメリットしかないので、初心者のうちはとにかく嫌でもたくさん録音して聴くことが重要だと考えられます。

④声区をしっかりと認識する

『声区』というのは声のモード切り替えのことで、一般的に言う

  1. 地声
  2. 裏声

のことです。

まずはこの二つをしっかりと認識しましょう。

 

「自分の地声はコレ、自分の裏声はコレ」という感じで理解するだけというシンプルなもので、すでにできている人も多いかもしれませんが意外と大事です。

*裏声は最初出せない人がいるので、その場合はまず「出せない」ということを自覚するだけでいいと思います。練習すれば出せるようになるでしょう。詳しくは『裏声の出し方について』。

 

ここで問題なのが、世の中には「〜ボイス」という名称がついた言葉がたくさんあります。

特に『ミックスボイス』。おそらく初心者でも耳にすることはあると思うのですが、こういうものはまずは考えなくていいと思います。

色々な声区の言葉がありますが、とりあえず「地声」と「裏声」で考えておけば損をすることはないでしょうから。むしろ色々な言葉に惑わされるくらいなら得になります。

 

もちろん追求してもいいのですが、「人によって言ってることがバラバラだ。わけわからん。」と行き詰まったときは『地声と裏声だけ考えておけばいい』という言葉を思い出してください。

 

⑤基礎のボイトレをする

ここで言う『ボイトレ』とは「歌う」以外の”ボイトレらしいボイトレ”のことです。

ボイトレは基本的に歌っているうちに出てきた課題に対して部分的に効率よく鍛えるためにするものだと考えておけばいいでしょう。

 

スポーツに例えるのなら「歌う」は「実戦練習」、「ボイトレ」は「筋トレ」のようなイメージです。

 

課題は人それぞれになるのでここでは具体的なものは言えないのですが、スポーツで言う「ランニング」のようにどんな人にも基本プラスになるような基礎トレーニングのようなものは歌においてもあります。

  1. 息のトレーニング
  2. スケール練習

がそういう基礎トレーニングに当たると言えるでしょう。なので、これらに取り組んでおけば基本的に歌にとってプラスになります。

⑴息のトレーニング

歌の基礎として重要なのが「呼吸」「息継ぎ」「ブレスコントロール」です。

 

おそらく「歌において最も重要なものは何か?」という問いに対するシンガーたちの回答率が一番高いだろうと考えられるのが『』だと考えられます。もちろん、統計を取った訳ではないのではっきりと明言することはできませんが。

 

歌うという行動は普段の会話などと比較すると、大量の息を循環させる作業になります。つまり、たくさんの息を上手くコントロールできる能力が必要になるということですね。

そして、初心者ですから当然この能力はない人がほとんどでしょう。

 

なので、これを鍛えることは基礎トレーニングになるということですね。

 

また息のトレーニングに関しては間違った方向性へ行くこともほとんどないと考えられます。大きくプラスになるかは別として、少なくともマイナスに働くことはそうそうないだろうと考えられます。そういう点でも初心者にオススメですね。

⑵スケール練習

初心者のうちはスケール練習が大きな効果を発揮すると考えられます(*もちろん、プロでもやっています)。

『スケール練習』とはピアノの音階(「ドレミファソ〜♪」)などに合わせて「あああああ〜♪」などと歌う練習です。

 

発音や音階はトレーニング方法によって様々ですが、特殊な発音などを繰り返すことで鍛えたい部分へ集中的なトレーニングができますし、何より『音感』『リズム感』の向上につながります。

とにかく正確な音階(ピアノの音)に合わせて発声するというトレーニングは歌の成長に最適ですので、困ったときはとりあえずスケール練習をやっておきましょう。決して無駄にはならないはず。

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初心者が考えるべき注意点

歌の練習においてはいくつか気をつけるべき点があると考えられます。

注意すべき点は

  1. 無理をしない(声変わりの時期は特に)
  2. 練習は長期的な視点を持つこと
  3. 自分の喉(声)と向き合うこと

という3つ。

①無理をしない(声変わりの時期は特に)

喉や声帯は繊細なものなので、初心者のうちは特に『無理をしすぎないこと』『ハードなトレーニングをしすぎないこと』を心がけることが大切です。

 

スポーツなどにおける体と同じように、喉や声の耐久力も徐々についてくるのでいきなり無理をしないようにしましょう。

 

また、声変わり中や声変わりが完全に終わっていない場合より一層気をつけて練習しましょう。

「初心者」であればこの時期に当てはまる場合もあるでしょうが、この時期は声が大きく変化している最中なのでとにかく無理をしないことが重要かと。場合によっては声変わりが終わるまで何もしない方がいいということもあるでしょう。

②練習は長期的な視点を持つこと

歌はスポーツみたいなものなので「練習すればすぐに上手くなる」というものではないですね。

成長には長い時間が必要です。コツコツと練習を繰り返すうちに少しづつ成長していくものなので、「すぐに効果が出るもの」だと考えると上手くいかないことが多いでしょう。

 

さらに声・喉は中身が目に見えない上に、わかりやすい筋肉痛や疲労感もないので成長実感を感じにくいです。

たくさん練習した翌日や翌々日はいつもより声が出にくいなどのことも起こるので、練習が上手くいっているのかどうか不安になったりもすることもあります。

 

こういうことがあるので、ボイトレは正しい道を行っているのに途中でやめてしまったり、間違った方向性に進んでしまったりということが非常に多いと考えられます。

 

こればかりはどうしようもないことなので『長期的な視点で考える』『いかに我慢できるか』ということが重要になるでしょう。

③自分の喉(声)と向き合うこと

当たり前ですが、喉や声帯の形は人それぞれ違います。骨格・あご・歯・舌なども人それぞれ違います。

要するに完全に全く同じ声を持った人はいないということです(*「似た声」というのはありますが)。

 

これは言い換えると、『持って生まれた楽器(声)の性質は人それぞれ』という意味です。

さらに言い換えると、『トレーニングさえすればどんな歌声にでもなれるというわけではないので、自分の声に合った鍛え方が必要』とも言えます。

 

なので、誰しも『自分の喉(声)と向き合うこと』が必要になるでしょう。

 

特に自分の声帯の

に関しては歌に大きな影響を及ぼすものなので、この二つに関しては自分がどんなタイプなのか考える必要があるかと。

まとめ

おさらいしておくと練習の流れは

  1. 歌の能力の2つの軸を理解する
  2. 歌をたくさん「なぞる」(*選曲に注意
  3. 声を録音する
  4. 声区をしっかりと認識する
  5. 基礎のボイトレをする

という感じです。結構シンプルですが初心者のうちはこれでOKなのではないかと思います。

 

また注意点として

  1. 無理をしない(声変わりの時期は特に)
  2. 練習は長期的な視点を持つこと
  3. 自分の喉(声)と向き合うこと

も忘れずに。

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