今回は「初心者から歌の練習を始めるのなら何から始めたらいいのか」というテーマについて。
こういうテーマは極論を言ってしまうと、『正解の道は人それぞれ違うので自分で見つけるしかない、以上。』となってしまいますし、これはある意味では真理でしょう。
ただ、それだとつまらないので、個人的に考える「こういうステップが理にかなっているのではないか」というものを考えてみました。
目次
歌の初心者は何から始めるべきなのか
流れとしては、
- 声変わり(変声期)を考慮する
- 自分の声のタイプを認識する
- 耳の誤差を小さくする
- 「地声」と「裏声」をしっかりと認識する
- 今の自分に歌える歌をたくさん「なぞる」
- 基礎のボイトレをする
というステップで練習に取り組むことで、大きな失敗もなく効率よく成長できると考えられます。
①声変わり(変声期)を考慮する
まずは、自分が声変わりの「前」「最中」「終了後」のどれになるかを考慮しておきましょう。
というのも声変わりは、歌の練習において無視できない重要なものだからです。
特に『初心者』であれば声変わり中の人もいるでしょうが、この時期のボイトレは無理せず慎重にやらなければいけません。
声変わり前
一般的に、〜12歳前後まで。
子供の声帯は音域が高いので、音域に苦労することがなく、歌の基礎を伸ばしやすいので上手くなりやすいと考えられます。もちろん、子供のうちは何でも成長が早いという面もあります。
ただ、声が後々どう変化していくかはわからない状態なので、方向性を絞りすぎないように注意が必要です。
声変わり中
一般的には、12歳〜18歳くらいの期間。
ただし、早く終わる人・遅く終わる人、変化が大きい人・変化が小さい人、などかなり個人差があります。
*一般的に女性の方が声変わりの終了が早く、男性の方が遅い。
声変わり中というのは、「声帯が大きく変化している最中」です。変化の最中なので、子供の頃から歌が上手い人でも声が出しにくくなったり、上手く歌えなくなったりします。
- 声が不安定になる・声がかすれる
- 裏声が出なくなる・逆に裏返りやすくなる
- 出せていた高い声が出なくなる
- 音程をコントロールしにくくなる
など色々な問題が生まれます。
これは声変わりが原因なので、仕方のないことだと言えるでしょう。
そして、この時期はボイトレの仕方にも気をつけなければいけません。
簡単に言えば、「変化を受け入れ、無理をしない」ということが大事になるでしょう。
特に「音域(*特に地声)」に関しては、我慢が必要です。
例えば、声変わりは基本的に「声が低くなっていく」ものです。男性は変化がかなり大きい人もいますし、女性も小さいですが変化はしています。
この低くなっている最中に、音域を無理に広げようとしても音域が中々伸びません。
伸びないだけならまだいいのですが、この変化中に音域を無理に広げようとすると、変な発声や間違った発声を身につけてしまうなどの問題も生まれやすいです。
最悪の場合、「声変わりが終わるまで何もしないほうがよかった」なんてことにもなりかねません。
なので、この時期のボイトレは「自分は変化の最中である」ということを意識して、無理のない範囲でトレーニングに取り組みましょう。
声変わり後
一般的に、18歳頃〜が目安。もちろん、個人差がありますので、もっと早い人も遅い人もいるでしょう。
この時期から、特に何も気にせずにトレーニングしても大丈夫になるでしょう。
「声の個性」が完成しているという点では、本格的なトレーニングを開始するのはこの時期からが一番良いとも言えるのかもしれませんね(*この「声の個性」というのが次の項目に繋がります)。
②自分の声のタイプを認識する
自分の『声のタイプ(どんな声帯なのか)』をしっかりと認識することが重要です。
*声変わり前や声変わり中の人は声のタイプが確定していないので、この項目は声変わりが終わってからになります。
ざっくりでもいいので、「自分はどんな声帯を持っているのか」ということを頭に入れておくのと、頭に入れておかないのでは、成長に大きな差が生まれます。
歌声の最適解は人それぞれに違うので、自分の声帯としっかりと向き合う必要があるのですね。
とは言え、最初はそこまで難しく考える必要はなく、
- 音域のタイプ
- 声質のタイプ
をざっくりと意識しておくだけでいいでしょう。
音域のタイプ
高い声を持っているか、低い声を持っているか、普通くらいか。ということです。
これを測るときは、『自然な最低音』に着目するとわかりやすいです。
自然な最低音とは、「限界の最低音」「頑張って無理に出した最低音」「音になるかならないかくらいの最低音」ではなく、『楽な状態で、しっかりと音にできる最低音』です。
- ある程度大きな声量が出せる範囲の最低音
- 喉に全く力を入れずに、低めに「はぁ」と大きくため息をついた時の音階
などが目安です。
そうすると、この自然な最低音によって、声帯のタイプの大まかな目安がわかります。
*これらはあくまでも目安なので、必ずそうなるものではないです。当然、この目安をはみ出す人もいるでしょう。
クラシックでは、それぞれ『バス・バリトン・テノール・アルト・メゾソプラノ・ソプラノ』という風に呼ばれます。
基本的には、『声が低い人→低音域が得意』『声が高い人→高音域が得意』のように、声帯のタイプで音域が決まってきます。もちろん、そうならない例外的なパターンもあるのですが、それはあくまでも例外として考えた方がいいでしょう。
例えば、声が低い男性がいくら練習しても声が高い女性のように歌うことはできませんし、その逆もできません(*音域的にできたとして、クオリティが落ちる)。
つまり、個々の声帯によって得意・不得意、できること・できないことがあるということはある程度受け入れなければいけません。
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『声帯のタイプ』と『魅力的な音域』の関係性について
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声質のタイプ
どんな声質を持っているのか?ということです。
これはまずは、普段の話し声から考えましょう。
声質は大まかに分類すると、
- 息っぽい声質
- 鳴りやすい声質(芯のある声質)
- ハスキーボイス(カサカサ型)
- ハスキーボイス(ガラガラ型)
という4つのタイプに分類できます。
もちろん、中間的な「普通」というタイプや、どこにも属さない「例外」のタイプの人もいるでしょう。
あくまでも普段の話し声なので、歌声がどうなるかというのはまた話が別になりますが、話し声と歌声は同じ声帯を使うものなので密接に関係しているとは言えます。
なので、自分がどんな声質を持っているのか?というところを頭に入れておく必要があります。
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歌における声質のタイプについての研究
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③耳の誤差を小さくする
「自分で聞いている自分の声」と「本当の自分の声(他人が聞いている声)」の誤差を小さくしておくことが大事ということです。
何を言っているかわかりにくいでしょうが、簡単に言えば、
- 自分の声の録音を聞いたとき、あまり違和感を感じない状態を作っておく
ということです。
まず、多くの人が理解していることでしょうが「自分で聞いている自分の声」と「他人が聞いている自分の声」は違います。
自分に聞こえる自分の声は、骨伝導によって内耳に直接聞こえる音(骨導音)が混じっているからですね。
骨導音は自分にしか聞こえない音なので、「自分が聞いている自分の声」と「他人が聞いている自分の声」には誤差が生じるということになります。
これが原因で、自分の声の録音を聞いた時、「これが自分の声?気持ち悪い。」という違和感を感じるのですね。
ここで一つ問題なのが、大きな違和感を感じているというのは「自分に聞こえる自分の声」と「本当の自分の声」の認識が大きくズレているということになります。
そして、このズレは歌において、大きな問題を生み出します。
- 音程が合っているつもりでも、実際には合っていない
- 自分ではいい声を出しているつもりでも、実際にはいい声ではない
などのように、自分の認識と実際に起こっていることがズレてしまいます。
なので、「自分が聞いている自分の声」と「本当の自分の声」の誤差をしっかりと認識し、自分の声の録音を聞いても違和感をほとんど感じない状態になる必要があるのですね。
これが、耳の誤差を小さくするということです。
*初心者の人は、ほとんどが誤差の大きい状態でしょうし、これはある意味普通のことです。しかし、初心者でも誤差が小さく違和感をほとんど感じない人も時々いるはず。そういう人は、特に問題はないので、この項目は飛ばしても大丈夫でしょう。
違和感を感じない状態になる方法は、そのままですが『自分の声を録音して聞くことを繰り返す』です。
話し声でもいいですし、歌声でもいいので、「自分の出した声」に対して録音がどう聞こえるか?という部分を意識していると、だんだん違和感を感じなくなり、いつの間にかなんとも思わなくなるでしょう。
おそらく、脳が誤差をしっかりと認識するからだと考えられます。
*個人差があるので一概には言えませんが、毎日5分間でもこれをすると、早い人は1ヶ月くらいでこの状態を作れるでしょう。
ここで大事なのは、あくまでも「誤差の修正」「認識のズレを小さくする」ということなので、歌が上手いかどうか、良い声かどうかはこの段階では気にしなくていいのです。
良いものを良い、悪いものを悪いと感じられる状態を作ることが大事ということ。
自分の本当の声にショックを受ける場合もあるかもしれませんが、ショックを受けておいた方が断然いいのですね。
自分の声を正確に把握しているのと、していないのとでは、その後の成長速度に大きな差が生まれるでしょう。
歌の成長速度に関わるからこそ、初心者のうちからやっておきたいことだと言えるのですね。
④「地声」と「裏声」をしっかりと認識する
歌の練習を始めると、色々な「声の名前」を目にすると思いますが、まずは難しいことは考えずに、
- 地声
- 裏声
の二つだけをしっかりと認識しておきましょう。
この二つは最低限しっかりと理解しておくべきものになります。
とは言え、多くの人が日常的に使う言葉ですし、そう難しく考える必要はなく、「自分の地声はコレ、自分の裏声はコレ」と理解するだけです。
すでにできている人も多いかもしれません。
*裏声は最初出せない人もいるので、その場合はまず「出せない」ということを自覚するだけでいいと思います。練習すれば出せるようになるでしょう。詳しくは『裏声の出し方について』。
とにかく、この「地声」と「裏声」という声の区分を理解し、区別して出せるようになることが大切です。もちろん、声の質や精度は後々鍛えていくものなので、そこは全く気にしなくて問題ないでしょう。
またあ、これをしておくと、プロの歌声などを聞いた時にも、「ここは地声から裏声に切り替えている」「ここは裏声だけで歌っている」などがわかるようになるというメリットもあります。
これは意外と大事で、結果的に自分のトレーニングに活かされます。
〇〇ボイス問題
「チェストボイス」「ミックスボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」「ホイッスルボイス」「ベルティングボイス」・・・などなど、世の中には「〜ボイス」と名称がついた言葉がたくさんあります。
そういう名称を見るたびに、意味を調べることになるでしょうが、厄介なことに時代や、歌の流派によって言葉の意味が違うことが結構あります。
その結果、初心者は「何が正しいのかわからない」と迷ってしまうことになりますが、この迷っている状態が一番良くないです。
なので、初心者のうちは色々な「〇〇ボイス」のことは、考えずに「地声」と「裏声」だけを考えておいた方がいいと思います。色々な言葉に惑わされるくらいなら、その方がお得になるでしょう。
何より、「〇〇ボイス」などの名称を知らなくても特に問題ないことは、多くのシンガー達の発言からもわかることでしょう。
あとミックスボイスことよくわかっていないのでミックスボイスという単語を見る度にミックスジュースが頭に過ぎります
— Ado (@ado1024imokenp) July 12, 2020
もちろん、そういう名称を追求したい人は、追求して全く問題ないです。
ただ、「人によって言ってることがバラバラだ。わけわからん。」と迷いだした時は『地声と裏声だけ考えておけば損はない』という言葉を思い出してください。
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声区の種類について【歌においてどう考えるのがベストか】
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⑤今の自分に歌える歌をたくさん「なぞる」
歌が上手くなるためのトレーニングは、色々なボイトレ、特殊な発声練習などが思い浮かぶかもしれませんが、まず一番大事なのは「歌うこと」です。
歌う以上の歌の練習はないので、まずはたくさん歌う練習をする必要があります。
そして、初心者は歌を”なぞる”練習が一番いいと考えられます。
「なぞる」とは、プロのシンガーの音源に合わせて一緒に歌うということです。
この「なぞる」という行動は、能力を効率良く高められる練習方法だと考えられます。
例えば、子供の頃誰もが文字を書く練習をしたと思いますが、最初はお手本を「なぞる」練習から始めましたよね。そして、だんだんなぞらずにかけるようになっていく。
同じように、歌も最初はなぞる練習をして、お手本に引っ張られるような形で練習することで、色々な基礎力が高まっていくと考えられます。
知識はいらないのか?
「何の知識も必要ないのか?」と思う人もいるでしょう。
確かに、知識がないよりはあった方が良いと言えますが、歌を「なぞる」過程で、様々な疑問が浮かんでくることがあります。そのタイミングで必要な知識を身につけることができると思います。
また、体験のない知識を身につけるよりも、実際に体験してから知識を身につける方が効果的だとも考えられます。
つまり、『習うより慣れよ』ということですね。
しかし、なぞる練習には2つの注意点があります。
⑴自分の声が聞こえにくい状態でなぞるのは避けるべき
密閉型のイヤホンやヘッドホンを使って、お手本を両耳で聞きながら歌うなど、自分の声が聞こえにくい状態でなぞると、お手本の声に引っ張られて自分の声を良く出せているように感じてしまうことがあります。
つまり、実際には上手く歌えていないのに、上手く歌えていると勘違いしてしまっている状態です。
勘違いしていてもいつかは気づくことなので、大きな問題というわけではないのですが、最初から気をつけておくに越したことはありません。
スピーカーで聴きながら歌う、イヤホンを片耳だけにする、イヤホンをゆるく耳にはめるなど、自分の声が聞こえやすい状態でなぞることが望ましいです。
⑵今の自分の音域に合った曲を選ぶ
なぞる練習をする選曲は、歌の成長を左右する重要なポイントになります。
そして、自分の現在の音域で無理なく歌える曲を選ぶことが大事です。
つまり、「高音が出ない」「音程がきつい」「苦しい」といった曲は、”現在の自分”には適していないということです。
もちろん、この方法は「楽しくない」と感じる人もいるでしょう。しかし、我慢して今の自分の音域に合った曲を選ぶことで、練習効率が飛躍的に高まると考えられます。
なぜ、音域に無理がない曲?
音域に無理がある曲は、そもそも「なぞれない」ということが一番なのですが、無理のある曲を練習することで基礎が疎かになる上、誤った方向へ進んでしまう可能性が高まるためです。
高音に苦戦していると、頭の中が「高い声・高音」でいっぱいになってしまい、他の重要な要素に気が回らなくなってしまう可能性が高まります。
結果として、「変な癖のある声を身につけてしまう」などの失敗が起こりやすくなるため、初心者の方は無理のある高音の練習を避け、基礎的な音域での練習に専念することが大切です。
歌は『質』が基礎であり、『幅』が応用に当たるため、高音という『幅』にばかりこだわって練習すると、音程や発声の基礎が固まらず、本来身につけるべき『質』が疎かになってしまうということです。
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なので、初心者の場合は基礎を大切にして、段階的にスキルを積み上げることが重要だと考えられます。
まずは、今の自分でも歌える音域の曲を練習して、慣れてきたら徐々に次のレベルの曲に挑戦し、少しずつ能力を高めていくことで、だんだんと音域の広い曲も歌えるようになっていくでしょう(*もちろん、音域には人ぞれぞれ限界のラインがあります)。
問題点
一つ問題となるのは、声が極端に低い場合や音域が極端に狭い場合です。「今の自分の音域では歌える曲が見つからない」ということもよくあります。
おそらく、しっかりと探せば見つからないことはないとも思いますが、そこに時間をかけるのもめんどくさいですね。
こういった場合、工夫するしかないでしょう。
例えば、
- 自分が歌える音域だけを歌い、歌えない部分は一旦諦める
- 男性なら女性シンガーの曲のオクターブ下を歌う
- 女性なら声の高い男性の曲を歌う
- 曲のキーをアプリなどで変える
などの方法があります。
ただし、こうした方法は制限が多く、歌の楽しみを減少させるものとも言えるかもしれません。
そういう点では絶対的に良い方法とは言えないのですが、しっかりと段階を踏んだ歌の成長をするためには、仕方のないことなのかもしれません。
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⑥基礎のボイトレをする
ここで言う『ボイトレ』とは、「歌う」以外の”ボイトレらしいボイトレ”のことです。
ピアノの音に合わせたスケール練習、特殊な発音を使ってトレーニング、息や横隔膜のトレーニングなどなど。
ボイトレは、基本的に歌っているうちに出てきた課題に対して部分的に効率よく鍛えるためにするものだと考えておけばいいでしょう。
スポーツに例えるのなら「歌う」は「実戦練習」、「ボイトレ」は「筋トレ」のようなイメージです。
ただ、何かの課題を解決するためだけではなく、基礎のトレーニングになるようなものもあります。スポーツで言う「ランニング」のようなイメージですね。
それが、
- 息のトレーニング
- スケール練習
になると考えられます。
なので、これらを基礎のトレーニングとして取り組んでおけば、基本的に歌にとってプラスになるでしょう。
⑴息のトレーニング
歌の基礎として重要なのが「呼吸」「息継ぎ」「ブレスコントロール」です。
おそらく、「歌において最も重要なものは何か?」という問いに対するシンガーたちの回答率が、一番高いだろうと考えられるのが、『息』です(*もちろん、統計を取った訳ではないのではっきりと明言することはできませんが)。
歌うという行動は普段の会話などと比較すると、大量の息を循環させる作業になります。つまり、たくさんの息を上手くコントロールできる能力が必要になるということですね。
そして、初心者ですから当然この能力はない人がほとんどでしょう。
なので、これを鍛えることは基礎トレーニングになるということですね。
また、息のトレーニングに関しては、間違った方向性へ行くことがほとんどなく、失敗のないトレーニングだと考えられます。そういう点でも、初心者にオススメしやすいものです。
息のトレーニングは、人によって向き不向きがあるというのは大前提ですが、まずは『ドッグブレス』から始めるのが一番いいのではないかと思います。
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⑵スケール練習
初心者のうちは、スケール練習が大きな効果を発揮すると考えられます(*もちろん、プロでもやっています)。
『スケール練習』とはピアノの音階(「ドレミファソ〜♪」)などに合わせて「あああああ〜♪」などと歌う練習です。
スケール練習は、特殊な発音などを繰り返すことで、鍛えたい部分への集中的なトレーニングができるという面もありますが、何より『音感』『リズム感』という基礎力の向上につながります。
正確な音階(ピアノの音)に合わせて発声するというのは、歌の成長に最適なのですね。
なので、困った時はスケール練習をしておけば、決して無駄にはならないでしょう。初心者のうちは発音は何でもOKですし、難しく考えず「ピアノの音に合わせる練習」くらいで考えておけばいいと思います。
一つ注意点として、ここでも無理な「音域」は捨てておきましょう。音域を広げるためにもスケール練習は使われるので、そういう点では多少無理をしてもいいのですが、特に最初のうちは無理しないことを心がけておく方がいいでしょう。
トレーニング音源に困っている方は、こちらも活用してみてください。
これまでの流れをまとめると、
- 声変わりを考慮する
- 自分の声のタイプを認識する
- 耳の誤差を小さくする
- 「地声」と「裏声」をしっかりと認識する
- 今の自分に歌える音域の歌をたくさんなぞる
- 基礎のボイトレをする
というような流れです。
①②③④が下準備で、⑤⑥が実質的にやることですね。
やることが少ないように感じるかもしれませんが、初心者のうちは『⑤歌をなぞる』『⑥基礎のボイトレ』で十分でしょう。
何なら基礎のボイトレは無しで、とにかくたくさん歌っているだけでも大きな問題ないとは思います。ただ、基礎のボイトレをやることで、効果的に基礎を固めやすいというだけです。
たくさん歌っているうちに、歌をなぞるのに飽きてきて自分だけで歌いたくなったり、自分の課題などが見えてきたりとするでしょう。
そうなると、初心者とは言えない領域になっていると思います。
そして、そこから「課題を解決するために何をすべきか?」という部分を考えていけばいいでしょう。
歌の能力は大きな軸がある
「課題を解決するために何をすべきか?」という部分を考えるときに、歌の能力の軸を考えることになります。
歌の能力は「①音楽的感性」と「②発声能力」という二つの軸があり、
- 歌唱力=「音楽的感性」×「発声能力」
のように表現できます。
音楽的感性とは「音の音階・リズムなどを識別し、どんな音を出すかを判断する能力」。発声能力は「声の音程や声質などを操る能力」です。
簡単に言えば、
- 音楽的感性は『脳』の能力
- 発声能力は『体』の能力
という感じで、スポーツで言う『頭脳』と『身体能力』みたいなものですね。
つまり、歌が上手くなるということは『音楽的感性』と『発声能力』の二つを高めていくことになります。
ここからそれぞれ細分化すると、音楽的感性は
このように枝分かれしていき、さらにそれぞれを細かく考えていくことになります。
発声能力は、
このような項目に分かれていきます。
ただ、初心者のうちは頭が混乱してしまいますので、「自分は初心者を脱した」という段階にきてから考えるといいのかもしれません。
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歌に必要な能力を紐解く【音楽的感性×発声能力】
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