今回は、腹から声を出せないという問題についての内容です。
大きな声が出せない、しっかりとした声量で歌えないという時に、よく「腹から声を出しなさい」と言われます。しかし、声量が出せない人は、「いくら腹から声を出そうとしても出せない!」となってしまうことが多いでしょう。
これは、お腹の意識や声の出し方が悪いわけではなく、声帯の能力不足が原因だと考えられます。なので、腹から声を出せないという時は、声帯自体をトレーニングしていかなければいけないと考えられます。
腹から声を出せないのは、声帯の能力不足
『腹から声を出そうと意識しても、しっかりと大きな声が出ない』という場合、声帯の能力不足が原因になる可能性が高いです。
もちろん、
- 声変わり
- 喉や声帯の不調
- 大きな声を出しにくい声質(*個性)
などの場合もあるので、一概には言えない部分もありますが、基本的には、声帯の能力不足が原因と考えていいでしょう。
後ほど触れますが、より具体的には、息と声帯の連動性に欠けていることが原因になるでしょう。
なので、腹から声が出せるようになるには、声帯部分を鍛えなければいけないのですね。
「腹から声を出す」とは
そもそも「腹から声を出す」という言葉が、感覚的な言葉であることが少し問題なので、この言葉を整理しておきます。
まず、「腹から声を出す」を簡単に言い換えると、
- お腹が動くくらいの息の勢いのついた声を出す
と言えるでしょう。
例えば、声は出さなくてもいいので、強い勢いで息を「ハッハッ!!」「フッフッ!!」と吐くと、お腹がしっかりと動き、お腹から息が出てきているような感覚になると思います。
このお腹の動きは「横隔膜」の動きで、横隔膜が肺の空気の出し入れの役割を担っているので、息を思いっきり吸ったり吐いたりすると、お腹がベコベコと動くのですね。
つまり、思いっきり息を吐いた声というのは、お腹をしっかりと使ったような感覚になるので、『腹から声を出す』という言葉になったのでしょう。
「腹から声を出せ」とは、ある意味「息を思いっきり吐いた声を出せ」とも言えるわけです。
腹から声を出せる人・出せない人
腹から声を出せる人と出せない人の違いは、
- 息の力を声帯が活かせるかどうか
です。
例えば、先ほどのように強い勢いで息だけを「ハッハッ!!」と吐くことは、意外と多くの人ができるはずです。もちろん、息を吐く能力にも個人差がありますが、瞬間的に勢いよく「ハッ !」と吐いたときの息の力は、人によってそこまで大きく差が出るものではありません。
ところが、その息の勢いのままそこに声を乗せると、
- そのまま楽に大きな声を出せる人
- 声に何らかの問題が生じたり、苦しくなったりする人
に分かれるでしょう。
つまり、息の段階に問題があるのではなく、声帯部分がその息を活かせていないことが問題なのですね。
これが『息と声帯の連動性』です。
この能力の有無が、腹から声を出せる人と出せない人を分けているので、お互いにその気持ちがわからないでしょう。
この連動性は、ほぼ無意識の能力なので、ある人もない人もその能力を意識できないことが多いのですね。
例えば、息と声帯の連動性がある人は、腹から声を出そうとすれば(強い息の勢いをつければ)、声帯部分は特に何も意識しなくとも勝手にしっかりとした声が出ます。だからこそ、「腹から声を出す」という簡単な感覚になってしまうのです。
そして、息と声帯の連動性がない人は、「腹から声を出しなさい」と言われても、そこに連動する声帯を持っていないので、その感覚を理解できないのですね。
逆に言えば、連動性が足りていないと理解しておけば、「連動性を鍛えればいい」となります。
腹から声を出すトレーニング
腹から声を出すトレーニングは、息と声帯の連動性を少しづつ上げていくトレーニングになります。
具体的なトレーニング方法は、
- 楽な状態で「ハッハッハッハッ!」と、弱い息からだんだんと息を強くしながら声を出していきます。
- だんだん強くしていくと、楽に声が出せなくなり、声に何らかの問題が出てくると思います。この問題が出始める部分が現状の能力の限界点。
- この限界点手前〜限界点付近の発声をひたすらに繰り返す。
- これによって、限界点を少しづつズラしていく。
という感じです。
ポイントは、ほんの少しでも問題が出始める部分からコツコツと鍛えて、その部分を問題ない状態にしていくことです。
もちろん、思いっきり息の勢いをつけた声で練習してもいいのですが、無理をすると続かない上、喉にも悪いので、コツコツと一歩づつ連動性を上げていくのがオススメです。
ただ、すぐに効果が出るものではないので、焦らず長期的にレベルアップしていく必要があります。
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