今回は『R&Bの歌い方』というものについての研究考察です。
ただし、大前提として、
- シンガーは一人一人に個性がある
- 音楽のジャンルに対して、必ずこう歌わなければいけないというものはない
ということを踏まえた上で、『R&Bにはこういう傾向があるのでは?』というものを考えます。
もう一つ、ここで厄介なのは「そもそもR&Bとは?」というところです。
そもそも「R&B」という言葉は、ブラックミュージック(黒人の音楽)の総称を指すものとして生まれたとされています。つまり、黒人がやっている音楽そのものを指した言葉なのですね。
そこからだんだんと意味が変化し、
- 1940〜1950年代にジャズやブルースなどをもとにして、それをよりリズミカルにして生まれた音楽を指す
- 1960〜1970年代に起源となったR&Bが進化した『ソウル』や『ファンク』のことを指す
- 1980年代以降さらに進化し『コンテンポラリーR&B』と言われるような、洗練された現代的な音楽のことを指す
というような流れがあります。
おそらく、どれも正解と言えるのでしょうから、厄介なのですね。
ただし、現在において、一般的には「R&B」と言った場合、おそらく『③コンテンポラリー(現代的な)R&B』を指すことが多いのではないかと思います。
なので、ここでのR&Bは『現代的なR&B』として、その歌い方の傾向を掘り下げていきます。
R&Bの歌い方
R&Bらしい歌い方は、
- リズムの歯切れがいい
- 素早い音階の変化(メリスマ・ラン)をよく使う
- ファルセット(裏声)をよく使う
というものが考えられます。
もちろんあくまでも”傾向”ではありますが、これらのいずれか、もしくは全てがあるとR&Bらしさが出ます。
①リズムの歯切れがいい
R&Bの歌い方の特徴として、リズムの歯切れがいいという点が挙げられるでしょう。
音を全く繋げないというわけではないのですが、しっかりと歯切れよく音を切るようなフレージングが多い傾向にあります。
このようにリズムをしっかりと感じるような歯切れの良い歌い方が一つの特徴です。
しかし、おそらく英語圏のR&Bシンガーたちは、そこまで「区切る」とか「短くしよう」という強い意識は持っていないのではないかと思われます。
そもそも、英語そのものが日本語と比較すると音の歯切れもいいですし、単にリズムにしっかりと乗ろうするだけでもかなり歯切れが良くなるでしょう。
日本語は母音言語なので、音が繋がりやすいという特徴があります。
なので、日本語でR&Bらしさを表現しようとすると、かなり歯切れが良い歌い方に感じるでしょう。
ある意味「リズム重視」のスタイルとも言えます。
②素早い音階の変化(メリスマ・ラン)
「メリスマ」や「ラン(run)」と呼ばれる音階を高速で動かすテクニックを多く使うと、R&Bらしさが強く出ます。
このテクニックが、最もR&Bらしさを生み出すと言っても過言ではないかもしれません。
0:03〜、0:34〜、0:51〜など他多数↓
0:01〜、0:09〜↓
このように音階を素早く動かすテクニックが「メリスマ」や「ラン」と呼ばれます。
日本語では、「こぶし」と呼ばれるものに近いですね。
もちろん、絶対になくてはならないというものではないですが、多くのR&Bシンガーがこれを使うため、R&Bらしさの象徴のようなものになっています。
しかし、かなり高難易度のテクニックなので、ほとんどの人は練習しないとできるようにならないでしょう。
身につけるとすごくカッコいいですが、身につけるまでが大変なテクニックです。
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歌の超高等テクニック『メリスマ』【連続的な高速の音階変化】
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③ファルセット(裏声)をよく使う
R&Bシンガーは、ロックシンガーのように高音発声時に地声で張り上げたり、シャウトのような激しい発声を使うことはあまりありません。
もちろん、そういう発声も使わないことはないのですが、高音域ではファルセット(裏声)を使うことが多いです。
熱唱するというよりも、綺麗に歌い上げる楽曲も多いので、ファルセットを使う方が映える傾向にあるのでしょう。
楽曲やシンガーによっては、ほとんどがファルセットだけで歌うということもありますね。
なので、ファルセットを使うとR&Bらしさが出ると言えるでしょう。
ただし、世界的に2010年代くらいからは、どんなジャンルでも裏声をたくさん使うシンガーが増加していると考えられるので、特別『R&B=裏声をよく使う』という印象は薄れてきているのかもしれません。
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裏声(ファルセット)の音域を広げるトレーニング方法について
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まとめ
R&Bらしい歌い方をするには、
- リズムの歯切れをよくする
- 素早い音階の変化(メリスマ・ラン)をよく使う
- ファルセットをよく使う
ということを意識すればいいのではないかと思います。
もちろん、冒頭で述べたように音楽の歌い方や表現に決まりはないので、縛られすぎないようにすることも大事なのかもしれません。