歌の雑学・研究・考察

”マイク乗りのいい歌声”についての研究

投稿日:2021年6月25日 更新日:

今回は「空間の鳴り」と「マイク乗り」という観点から「マイクに乗る発声」という部分を突き詰めていきたいと思います。

マイク乗りを考える上で、

  • 「空間の鳴り」と「マイク乗り」は別物である

という感覚が重要になってくるでしょう。

これは歌の質はもちろんのこと、歌の練習のやり方・歌の成長の仕方にまで関わってくる内容だと思われます。

「空間の鳴り」と「マイク乗り」

①『空間の鳴り』とは、『マイクを通さない歌声の鳴り方・反響のこと』です。

”マイクを通さない”という条件であれば、部屋はもちろんのこと大きなホールでの響き方も含めます。

 

②『マイク乗り』とは『声がどれだけマイクに入るか・通るかということ』です。

つまり、マイクという”音声をデータ化する機械”に対してどれだけ受け入れられる声を出しているか、という部分がマイク乗りです。

この二つは反比例の関係性になることがある

必ずしもそうであるとは限らないのですが、

  • この二つは反比例しやすい関係性にある

と考えられます。

 

空間の鳴りを求める

『空間の鳴り』を求めるということは、声を壁(ホール)に反響させることが目的です。

壁に反響させるには”純粋な声量が大きい声”が必要になります。

 

つまり、『とにかく大きな音(声量)の発声を求めること』が正解の道です(*もちろん音色の美しさを保つのは前提のお話)。

その結果としてクラシックは「共鳴を最大化させる」「整数次倍音中心の発声」という歌唱方法になっているのですね↓

マイク乗りを求める

『マイク乗り』を求めるということは、”マイクという機械に対して音が入りやすい声”が必要になります

つまり、『マイクに通る音色の発声を求めること』が正解の道です。

極端な話、マイクがなければ全然声量(音量)がない発声でも、マイクにすごく通る声であればいいのですね。

 

ここで、「壁に反響するほどの大きな声量の方がマイクに通るんじゃないの?」という疑問を持つ人もいると思います。

実はこれは『そうでもない』。

特にコテコテのクラシック発声になればなるほどマイクに通らない。

 

「通らない」というより、「声量(音量・音圧)が大きすぎて音像全体を捉えきれずにマイクで捉えられる音は魅力的でなくなる」と言った方が正しいのかもしれません。

 

だからこそクラシック発声の人は一風変わったマイクを使っていることが多い↓

集音範囲がすごく広いマイクを使っています。

こういうマイクでないとその歌声の魅力を最大限捉えられないのですね。

ポップス志向の人は「マイク乗り」を意識しなければいけない

ここからがこの記事の本題とも言えるのですが、

  • 「空間の鳴り」と「マイク乗り」は違うということを意識しないと、自分の求めているものが手に入りにくい

です。

クラシックの人はそうでもないと考えられるのですが、特にポップスの人はこれを頭に入れておかないとコケる可能性があるのかもしれません。

 

わかりやすい例で言えば、

  • ポップスの発声を目指している人が、マイクを使わない「ボイトレ」や「歌の練習」をひたすらにやり続けて、空間(部屋など)で聴こえる歌声はいい感じになったとします。ところが、いざマイクを通して歌ってみたら、自分の歌声を聴いてびっくり、全然イメージと違う、全然魅力的じゃない。

みたいなことが起こりうる可能性があるということです。

熱心に練習して『マイクに乗らない発声』ができ上がるのですね。

 

これって意外と起こりがちな問題だろうと思います。

空間(部屋)に響き渡るようないい感じに聴こえる発声がマイクに通る発声であるとは限らないのですね。

 

ちなみになぜクラシックの人はコケる可能性が低いと考えられるかと言うと、『クラシック志向の人はわざわざマイクを使って練習をしないから』『練習方法と目的がマッチしているから』です。

そしておそらく、ポップス志向の人が常にマイクを使って練習しているかと言ったらそうでもないことがほとんどでしょう。むしろマイクを使わないで練習している時間の方が多いのかもしれません。

 

もちろん、『「マイクに通りやすい発声」がマイクを通さなければどんな音色になるのか』という感覚を掴んだり、常にそれを意識できている場合は、マイクを通さない練習も普通に成立するでしょう。

もしくは意識していなくても偶然にそれができている人も普通にいるはずです。

 

ただし、それができていなかった場合、知らず知らず「空間の鳴り」を求める方へと行ってしまい、いつの間にかマイクに通らない発声が出来上がるのかもしれません。

マイク乗りの感覚を掴むのは「録音」もいい

普通はいつもマイクを使って練習できるわけでもないでしょうし、マイクに通る発声の感覚もなかなか掴めないでしょう。

そういう場合は

  • 自分の歌声を録音すること

が解決策になるでしょう。これはスマホなどの録音で十分。

 

そもそも録音も音を録っているのは「マイク」です。

ということは『綺麗に録音に乗る声≒マイクに乗る声』と言い換えることができるわけです(*もちろんケースバイケースで例外はある)。

マイクに乗る声はどんな声か?

マイクの乗る声が「具体的に空間(部屋)でどんな鳴りをするのか」という部分がわかると、より方向性を間違わずに済みますし、それが結果的に『質のいい発声』へとつながるでしょう。

 

以下の動画の比較が「マイクに乗る発声が空間でどんな鳴りをしているか」の例としてわかりやすいと思います。

マイクなし・空間(部屋)の鳴り↓

マイクあり・マイク乗り↓

マイクなし・空間(部屋)の鳴り↓

マイクあり・マイク乗り↓

 

これらを見てどう思うかという感想は人それぞれ違うとは思いますが、

  1. 「音量自体がクラシックのようにものすごい大きいわけではない」「意外と静か」→音質の焦点は口元にある
  2. 「音色の性質がマイクに通りやすい発声をしている」→息の流動性のある発声

というイメージを持つことが大切でしょう。

①マイク乗りの”音質の焦点”は口元

マイク乗りを意識する場合、最も良く聴こえる音質の焦点”を口元に合わせなければいけない

つまり、ポップスは口元付近に発声の焦点がある↓

 

スクリーンショット 2020-10-11 21.31.56

 

逆にクラシックは空間に反響させるほどの声量が必要になるため、遠い位置に”音質の焦点”がある

スクリーンショット 2020-10-11 21.45.55

 

ものすごい声量で音の焦点が遠くにあることがわかりますね。

 

つまり、「マイク乗り」を意識するには『口元の音質に焦点を合わせる』ということが一つのポイントでしょう。

②マイクに通りやすい音色の性質

これはこちらの記事↓

綺麗な歌声の出し方についての研究【ポップス向け】

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にも書いているのですが、

  • マイクに通る声は『息がしっかりと流れる声』『息の流動性のある発声』

と言ってしまってもいいと思います。

他にも色々な要因は考えられるのですが、とにかく息の流動性のある発声はマイクによく通る発声を求める上で一番に抑えるべきポイントでしょう。

 

息の流れがしっかりとある発声は、音量そのものはそこまで大きくなくても非常によく通る美しい音色の発声となります。

話し声と歌声の違いの最大のポイントは「息の流れ」とも言えるかと↓

ポップスの声量はマイク乗りの先にある

「ポップスは口元の音質が大事で”空間の鳴り”を必要としないって言ってるけど、空間の鳴りがすごいシンガーもいるよ」「マイクなしでもすごい声量のポップスシンガーはいるよ」と考える人もいるでしょう。

 

もちろんいます!

ただ、そういうシンガーは

  • 前提条件が『マイク乗りのある発声』で、その発声の音量を最大化させている

と考えるべきなのでしょう。

マイクに乗る発声の性質のまま声量を出すとんでもないシンガーはいます↓

あくまでも『ベースはマイクへ乗りやすい発声の性質は維持したまま』というところが大事なポイントかと。

 

クラシックはやはり”音色の性質”が根本から違いますし、もっともっと声量を求めることになる。

 

ジャンル・目的によって「空間の鳴り」と「マイク乗り」を意識しなければいけないということですね。

ちなみにこの発声の性質の違いは「整数字倍音」「非整数字倍音」という部分と密接に関係があるところでしょう。

「整数次倍音」と「非整数次倍音」から”発声の型”を考える

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