今回は「ミドルボイス」ついての内容です。
ミドルボイスは、様々な意味・定義で使われる言葉であり、人によって定義がバラバラです。つまり明確な定義がありません。
おそらく『ミドル』という言葉の曖昧さ、中間的なニュアンスのせいで様々な解釈に分かれてしまったと考えられます。
しかも、「もともとこういう意味として使われていた」というような語源も辿れない言葉で、ボイトレの教育用語として広まっていったものなので、「これが本来の意味」「本当はこうだ」とも言えないのです。
なのでミドルボイスを考えるときは、主な定義のパターンを徹底的に抜き出して、その中から自分似合う考え方を見つけるしかありません。もしくは、考えるだけ無駄な言葉だとするのもいいかもしれません。
それも含めて、パターンは以下の通りです↓
- 中音域帯の発声全般
- 中音域帯の「地声」
- 中音域帯の「裏声」
- 響きの位置が中間になる「地声」
- 響きの位置が中間になる「裏声」
- 響きの位置が中間になる発声全般
- 「地声」とも「裏声」とも言えない中間的な音色の発声
- 「なし」とする
それぞれ正解・不正解はありませんので、自分が納得できる考え方を選ぶのがいいでしょう。
目次
①「中音域帯の発声全般」を指す場合

この場合、「ミドルボイス」は音域帯を示すような言葉で、単に中音域全般の発声を指します。
「ミドル(Middle)」というのは「中間」を指す言葉で、
- ロー(Low)→低い
- ミドル(Middle)→中くらい
- ハイ(High)→高い
のように使われます。
「ハイトーンボイス」という言葉が単なる高い声を指すように、「ミドルボイス」という言葉を中間くらいの音域の声を指す言葉として使うということです。
「地声」とか「裏声」のような声区の区分があるわけではなく、単に「中音域」という意味で使われます。どこからどこまでが「中間」とするのかに決まりはなく、人それぞれの感覚的な主観によって決まることになるでしょう。
②中音域帯の『地声』を指す場合

これは先ほどの「地声のみバージョン」ということです。つまり、裏声を含まない中音域がミドルボイスになるということ。
③中音域帯の『裏声』を指す場合

先ほどの中音域帯の「裏声のみ」を指すということです。
④「響きの位置が中間になる地声」を指す場合

これは響きの位置が中間になる地声を表しているということです。
響きの位置が中間というのは、どういうことか?
例えば、チェストボイス(地声)は「Chest(胸)」という言葉通り、胸に共鳴する音を特徴として持っており、その名前がつけられています。
同様に、ヘッドボイス(裏声)は頭に共鳴する音を特徴として持っており、その名前がつけられています。

注意
チェストボイス=地声、ヘッドボイス=裏声、という言葉の解釈もまた、一つの解釈に過ぎません。特にヘッドボイスは3つほど解釈があり、この考え方は少し古い考え寄りです。ただ、ここで全部掘り下げると長くなってしまうのと、「ミドルボイス」という言葉の誕生時にはこういう考え方も多かったのではないかと考えられるので、そのまま話を進めます。
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ファルセットとヘッドボイスの意味の違い|実は3つの解釈パターンがある
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これらの言葉は、それぞれの声の特徴を端的に表したものであって、厳密には「胸に響く」「頭に響く」が必ずしも成立するとは限りません。
地声であっても高音域を出すと、「頭に響く」あるいは「頭と胸の中間あたりに響く」という感覚を覚えることがあります。
自分の地声の最低音から最高音まで「あーー⤴︎」と上げていくと、響きの位置が徐々に上に移動していくのを感じることができるはずです。

この中高音に入って行った時、声の種類としてはチェストボイス(地声)に分類されるものの、発声感覚としては、チェストボイス(胸の声)とは言いにくくなるはずです。

その部分を「ミドルボイス(胸と頭の中間に響く声)」という言葉を用いることで、上手く分類したということでしょう。
『「チェスト」ではなく「ミドル」に響く地声の発声』=『地声の中高音域の発声』ということですね。
⑤「響きの位置が中間になる裏声」を指す場合

これは、先ほどと同じ理屈の裏声バージョンです。
裏声を出す時は、基本的に頭に響きやすくなりますが、低い音域の裏声の場合は、響きの位置が中間的な位置になることがあります。

そのため、先ほどと同じように「ヘッド」という言葉で表現するにはしっくりこなくなります。
なので、「ヘッドボイス(頭に響く裏声)」と「ミドルボイス(頭に響かない裏声)」と考えるということです。
⑥「響きの位置が中間になる発声全般」を指す場合

これは、先ほどの「響きの位置が中間になる地声」と「響きの位置が中間になる裏声」の両方を含めてミドルボイスと呼ぶ、もしくはあまり声の種類を考えずに中間的な響きの位置の発声を指すということです。
これも先ほどのリンク先『ファルセットとヘッドボイスの違いについて』の記事内に詳しく書いていますが、もともと「チェストボイス」も「ヘッドボイス」も響きの位置のみを表していた言葉です。
つまり、
- チェストボイス=胸に響く声
- ヘッドボイス=頭に響く声
というように共鳴位置のみを指す言葉でした。
ここに中間の響きを指す『ミドルボイス』という言葉が入ったのでしょう。
⑦「地声とも裏声とも言えない中間的な音色の発声」を指す場合
地声なのか、裏声なのか、どちらかわからないような音色の発声を意味するということです。
一般的には『ミックスボイス』と呼ばれることが多いのかもしれません。
しかし、この定義は一つ問題があります。それは、地声と裏声の間には声区がないことです。
”声区”とは声帯の機能区分のことで、「声帯の振動パターン」「一連のピッチ」「音の種類」によって区分されたものです。
現代では
- ボーカルフライ
- モーダル(地声)
- ファルセット(裏声)
- ホイッスル
の4つに分類されており、それ以上の区分はありません。

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声区の種類について【歌においてどう考えるのがベストか】
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ということは、地声と裏声の間のどれだけ中間的な音色の発声だとしても、声区としては地声か裏声のどちらかに属することになります。
であれば、「地声とも裏声とも言えない中間的な音色の発声」という定義は、定義できないものを定義していることになり、結果的に曖昧でよく分からないものになってしまいます。
ミックスボイスについては詳しくはこちらにまとめています↓
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ミックスボイスとは|声区として存在するの?定義と考え方を徹底解説
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⑧「なし」とする場合
これは「ミドルボイス」という概念を考えないという考え方です。
先ほどのように、地声と裏声の中間の声の種類というものが存在しないのなら、そのことについて考えなくていいわけです。


結果的に、歌において声の種類で考えるべきものは「地声」と「裏声」のみになります。そう考えても、何も損をしないのです。
歌が上手くなりたいという目標を持っている人にとっては、「〇〇ボイス」などの声の名前を複雑に考えれば考えるほど良くない方向へ向かうことが多いです。なぜなら、迷走しやすくなるから。
どう考えるのがベストか
これは人によって流派や考え方が違うので一概に述べることはできませんが、『ミドルボイス』というものを
- ”声区”として考えるのか
- ”発声表現”として考えるのか
で整理すればいいと思われます。
”声区”として考えるのなら「なし」として問題ないかと
これは先ほども述べたように
- ボーカルフライ
- モーダル(地声)
- ファルセット(裏声)
- ホイッスル
という4つの声区しかないので、「ミドルボイス」を声区として考える必要性はないというか、そこに声区を見つけようとしても見つからないはず。
よって”声区”で考えれば、ミドルボイスはないものとして考えるのがベストだろうと、個人的には考えます。
”発声表現”として考えるのなら
”発声表現”として考える場合、『それが何を指しているのか』を自分の中で明確にしておくことが重要です。
自分の中でのしっくりくる定義があるのなら、それを大切にしていればいいと思います。
ただし、人それぞれ定義が違うので、「他人からそれを教えてもらう場合」「他人にそれを語る場合」には注意が必要です。
