今回はよくある「自分の歌声が気持ち悪い」という問題についての研究考察です。
この問題は「気持ち悪い」という言葉を
- 違和感を感じる(=感覚的な気持ち悪さ)
- 変な発声になっている(=「いい声ではない」という意味の気持ち悪さ)
という二つで分けて考えなければいけないでしょう。
つまり、原因としては
- 耳(脳)が自分の本当の声に慣れていない
- 発声が悪い
という二つになるでしょう。
もちろん両方の問題を抱えていることもあるでしょうが、分けて考えると上手く整理できるはずです。
①耳(脳)が自分の本当の声に慣れていない
人間は体の構造上、自分だけは『自分の本当の声』を聞くことができません。
これは骨伝導による自分の内側からの音(骨導音)が聞こえているからですね。ちなみに耳の外側から聞こえる音は「気導音」と言われます。
つまり、『自分がいつも聞いている自分の声』と『自分の本当の声』の認識がズレているので、それによって違和感を覚えて気持ち悪さを感じるということになります。
例えば、カラオケなどに行ったときに自分の歌声に大きな違和感を感じる機会は多いでしょう。これはスピーカーから『自分の本当の声』が自分に向かって飛んでくるので、普段の感覚との誤差を感じやすくなるからなのですね。
つまりこれは
- 『慣れ』の問題
- ズレを脳がしっかりと認識しているかどうかの問題
と言えるでしょう。
ということは慣れてしまえば気持ち悪くなくなります。
自分の本当の声に慣れるには「録音」を繰り返す
とにかくたくさん『自分の声を録音して聞く』というのを繰り返すと、自分の声のズレがだんだんと修正されていきます。
最初は大きな違和感を感じるでしょうし「自分の声が聞きたくない」と思うこともあるでしょうが、何度も繰り返すうちに「まぁ自分の声だな」という感じになりほとんどなんとも思わなくなるでしょう。
この『自分の声に違和感をほとんど感じなくなること』は歌において意外と大事で、『歌が上手くなりやすい人は自分の声の認識のズレが小さい』という特徴もあります。
②発声が悪い
これは違和感があるのではなく、本当に「気持ち悪い声」になっているということですね。
気持ち悪い声がどんなものかというのは人によって感じ方は違うでしょうから一概には言えませんが、少なくとも「いい音色ではない」ということでしょう。
これは発声を改善していくというのが解決策になるでしょうが、これもまた人それぞれにどんな状態なのか違うでしょうから一概に「コレ!」という答えを出すことはできません。
- 喉が締まっている→『喉締め発声の原因と改善』
- 舌に力が入っている→『舌根を柔らかくするトレーニング』
- 声帯自体が力んでいる
- 声帯の動きに変な癖がついている・間違った発声をしている
- もともと持っている声帯の個性(音域・声質)を活かせていない
- なんらかの発声障害を抱えている
などなど色々な原因が考えられます。
なので、まずは自分がどんな問題によって気持ち悪い発声になっているかをしっかりと分析することが解決への道になるでしょう。分析さえできればトレーニングによって解決することができるはず。
トレーニングしているのに気持ち悪い発声になる場合
もしたくさんトレーニングしているにも関わらず気持ち悪い発声が改善しない場合は、決断するのは苦しいですが『振り出しに戻る』が一番の解決策になったりします。
おそらくその発声は根本から何か問題があり、それが『変な癖・悪い癖』となって体に染み付いてしまっている状態でしょう。土台が悪い状態なのでトレーニングしても改善できないのですね。
つまり、こういう場合は
- 『一度全てを捨て去って、最初から自分の発声を作り直す』
というのが遠回りなようで近道になる可能性が高いです。
「”歌声が”気持ち悪い」ということは話し声には問題がないでしょうから、まずは話し声くらいの発声をしっかりとコントロールできるようにして「気持ち悪くない歌声」を作りましょう。そして、その発声の範囲を少しづつ広げていくという流れでトレーニングしていくと改善できるでしょう。