今回は『鼻歌・ハミング』についての内容です。
このトレーニングは声の抜けを良くしたい、共鳴のコントロールを身に付けたいという方にオススメ。
ハミングは歌唱力アップにもつながる良いトレーニングです。
目次
『ハミング』とは
ハミングとは
- 鼻歌のこと
- 口を閉じて歌うこと
です。
*ただし、鼻歌とは「鼻にかかった小声で歌う歌」「口を閉じたまま小声で歌う歌」という2つの意味合いがあり、前者のように口を閉じなくても鼻歌という場合もあるので、その場合はハミングと鼻歌は違う意味になります。
ハミングは歌の中での表現としても使われます↓
一般的に歌におけるハミングはこのように口を閉じて声を鼻に抜くようにして歌うことを指します。
これをボイトレとして活用するときには具体的に2つのやり方があるのですが、それに関しては後半で。
ハミング練習の効果
ハミングの効果として考えられるものは大きく3つ
- 声帯のコントロール能力を効果的に高める
- 発声の質が良くなる
- 鼻腔・口腔など上方向への響きが身につく
というものが考えられます。
注意点
ボイトレには必ず個人差があります。全ての人に同じ効果があるとは限らないのでその点は注意です。
①声帯のコントロール能力を効果的に高める
声帯のコントロール能力とは簡単に言えば「音程」「声質」などのコントロール能力ということですが、細かく考えると色々なことが言えますので、ざっくりと『声帯のコントロール』としておきます。
ハミングはこれを効果的に高めやすいと考えられます。
なぜ鍛えられるのか?
- ハミングしている時は他の部位の力を借りにくいので声帯部分を鍛えるアプローチがかかりやすいから
と言えるでしょう。
これは「ハミングをしている時」と「普通に歌っている時」の”声帯の状態の差”を考えるとわかると思います。普通に歌っている時というのは知らず知らずのうちに口の開きの力やアゴの力や喉の力を借りて発声していると言えます。
例えば、
口をものすごく開くだけであまり開けない状態に比べて音階が少し高くなったりしますが、これは口の開きが音色や音階に影響を与えているということですね。
また、『このhiCの音「あ」の発音なら出せるのに「い」の発音では出せない』みたいなことがあるのは発音が声帯の手助け(あるいは邪魔)をしているからです。
つまり、発音しながら歌っているということは声帯じゃない部分の動きも使っている動作なのですね。
ハミングはこの”手助け”を無くす
ハミングしている状態は口を閉じた状態であごなどを動かすことができずに、ほとんど声帯と声帯周りの動きだけになります。
つまり発音による声帯への手助けがほとんどない状態。
手助けがないということは
- 『声帯部分のみの力で声をコントロールしなければいけない』=『その部分が鍛えられやすい』
と考えられます。
つまり、普通に歌うよりも声帯だけにアプローチしやすいトレーニングという点で『声帯コントロールが向上しやすいトレーニング』と言えるでしょう。
②発声の質が良くなる
「ハミング」は発声の質を良くするためにもよく使われる練習方法です。
先ほどと同じような理屈になるのですが、
- ハミングが上手くできる発声=余計な力に頼らない発声=良い発声
と考えやすいからです(*必ずではない)。
ハミングで「良い発声」を確かめる
例えば、ほとんどの場合
- ハミングで”綺麗に通っている声”はハミングを外しても(口を開けても)いい音色が鳴っている
と言えます。
口を閉じてもいい音色が鳴っているのですから、口を開いた瞬間に音色が悪くなることなんてありえないわけです。基本的には口を閉じている方が”重り”ですから。
なので、
ハミングで(他の部位の補助を外して)いい音色が出せるようになるように練習することで、普通に歌うときの発声の質の向上につながると考えられるということ。
よって、ハミングは
- 発声の質を確かめる
- 発声の質をよくする
- 正しい発声を身につける
ためのトレーニングとして役立つと言われているのですね。
注意点
ハミングは自分の耳では『音色の良し悪しを勘違いしやすい発声』でもあるということだけ頭に入れておくべきでしょう。
要するにハミングをしているとき「いい音色を出せているつもり」だが現実は「全然いい音色ではない」場合があるということです。
なぜこれが起こるのかというと
- 口を閉じることで、自分の内側から聞こえる自分の声(骨導音)が強く聴こえてしまうから。そして、これにより自分の声を都合よく解釈してしまいやすいから
です。
普通の発声時は声を出すと音が外側に飛んで外側からも自分の声が聞こえますが、ハミングによって外側からの音をある程度遮断されるので、内側から聞こえる割合が増えます。
これによって、本当はいい音色のハミングではないのに、都合よくいい音色のハミングだと解釈してしまうことで間違ったハミングの練習を続けてしまう恐れがあります。
口を閉じてしまったことで、発声の良し悪しの判断が鈍ってしまうのですね。
これはハミングを録音していい音色の聴こえ方を確かめたり、ハミングをその都度解いてみたりすることで防ぐことができるでしょう。
③鼻腔・口腔など上方向への響きが身につく
これは次の章「2種類のハミング練習のやり方」にて詳しく説明しますが、結論だけ述べておくと、
- 上方向への響き(鼻腔や口腔)が身につく
ということです。
大事なことなのですが、響きのトレーニングは共鳴空間を広くするトレーニングではありません。
あくまで『持っている共鳴を最大化させる』『上手くコントロールできるようになる』というトレーニング効果です。
2種類のハミング練習のやり方
ハミング練習方法は大きく分けて2種類、
- 『M』の発音のハミング
- 『N』の発音のハミング
があります。
①ハミング『M』の発音
一つ目のハミングが「M」の発音のハミングです。
『M』つまり「マミムメモ」行の発音をする直前の状態です。
「M」の発音、具体的には
- 口を閉じる
- アゴと歯はリラックスした状態
- 舌は自然な位置
- 口の中にある程度の空間ができる
というのがこの「M」のハミングでの発声ですね。
この『M』の発音でのハミングの効果は、
- 鼻腔への響きを身につけること
- 口腔(口の中)や上アゴへの響きを身につけること
です。
この「M」の発音が鼻腔と上アゴへの響きを2分して均等に響かせます。
つまり、『M』のハミングは「鼻腔」と「口腔」の両方の響きのトレーニングになると言うことです。
おそらく唇と鼻の両方がビリビリと振動するはずなので、その感覚を保つように発声するのがおすすめです。
声の方向性のイメージは真上〜斜め上前くらいの方向性になると思います。
ハミング『N』の発音
もう一つのハミングが『N』の発音でのハミングです。
『N』つまり「ナニヌネノ」行の発音をする直前の状態です。
「N」の発音、具体的には
- 口は閉じる
- 歯やアゴはリラックス
- 舌を上アゴにつける
- 口の中の空間はほとんどない
という風になります。
先ほどの「M」の発音のハミングとは『舌の位置』と『それによる口の中の空間』に大きな違いがあります。
この『N』の発音でのハミングの効果は、
- 口の中の空間を無くしてしまうので、鼻腔への響きを身につけることに特化している
ということ。
この「N」の発音は嫌でも鼻腔に響きがいきますので、鼻腔に特化したトレーニングになる。
鼻のみがビリビリと振動するはず。
声の方向性としては真上〜やや斜め後ろくらいの方向性になると思います。
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やり方がわかったら、具体的にどんな練習をするか
目的に応じて使い分けるといいと思います。
- 鼻腔と口腔の両方へのバランスのある響きの練習をしたいなら『M』ハミング
- 鼻腔に特化した響きの練習がしたいなら『N』ハミング
という感じでしょうか。
自分の状況に合わせてトレーニングを使い分けましょう。
練習方法は自分で色々工夫していいと思います。
- とりあえず単音をハミングで練習してみる
- スケールや音源に合わせてハミングで発声練習
- 普通の歌を丸々ハミングで歌ってみる
などなど。
練習音源に困っている方はこちらで↓
ハミングの派生系トレーニング「フン」トレーニング
これは
- 『ハミング+ドッグブレス』という感じのトレーニング
「共鳴+息の流れ」トレーニングです。
「フン」という文字の表記で書いていますが、実際は「ん+h」という感じの音になります。
ハミングの『N』の発音のまま息の勢いをつけるようなニュアンスです。
やり方
- 口を閉じます
- 『N』の発音状態を作ります
- そのまま声と一緒の鼻から息を吐きます
- 鋭く勢いよく「フン!」
- 慣れてきたら連続で「フン!フン!フン!フン!」と繰り返します
鼻で笑う感じというか、鼻にティッシュを詰めている状態から鼻で飛ばすような感じで声を出すトレーニングです。
極端に思いっきりする必要はないのですが、ある程度「フン!」と勢いよく発するのがおすすめです。
これによって
- 鼻腔共鳴の強化
- 息の強化
- 息と声の連動の強化
などハミング+息のトレーニングになるでしょう。
その他ボイトレはこちら