今回は『鼻歌・ハミング』についての内容です。
このトレーニングは声の抜けを良くしたい、共鳴のコントロールを身に付けたいという方にオススメです。
ハミングは歌唱力アップにもつながる良いトレーニングです。
目次
『ハミング』とは
ハミングとは
- 鼻歌のこと
- 口を閉じて歌うこと
です。
*ただし、鼻歌とは「鼻にかかった小声で歌う歌」「口を閉じたまま小声で歌う歌」という2種類の意味合いがあり、前者のように口を閉じなくても鼻歌という場合もあるので、その場合はハミングと鼻歌は違う意味になります。
ハミングは、歌の中での表現としても使われます↓
歌におけるハミングとは、単純に口を閉じて声や息を鼻に抜くようにして歌うことで、定義についてはこれ以上何も言うことはないのですが、ボイストレーニングにおいては色々と疑問が浮かんできますね。
疑問
- 正しいハミングのやり方は?
- ただ単に口を閉じればいいの?
- 舌の位置は?
- アゴの状態は?
- どこに響いていれば正解なのか?
といった疑問が浮かんでくる人もいるはずです。
ハミングのやり方は、大きく二つのやり方に分類できると考えられます。
2種類のハミング練習のやり方
ハミング練習方法は大きく分けて2種類、
- 『M』の発音のハミング
- 『N』の発音のハミング
があります。
①ハミング『M』の発音
一つ目のハミングが、「M」の発音のハミングです。『M』つまり「マミムメモ」行の発音をする直前の状態です。
「M」の発音、具体的には
- 口を閉じる
- アゴと歯はリラックスした状態
- 舌は自然な位置
- 口の中にある程度の空間ができる
というのが、この「M」のハミングでの発声です。
この『M』の発音でのハミングの効果は、
- 鼻腔への響きを身につけること
- 口腔(口の中)や上アゴへの響きを身につけること
です。
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発声における3種類の共鳴について
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この「M」の発音が、鼻腔と上アゴへの響きを2分して均等に響かせます。
つまり、『M』のハミングは「鼻腔」と「口腔」の両方の響きのトレーニングになると言うことです。
おそらく、唇と鼻の両方がビリビリと振動するはずです。両方のビリビリを保つように発声するのが、コツです(*このビリビリの感覚は、人それぞれの違いもあるので、自分に最適なものを見つけてください)。
声の方向性のイメージは、真上〜斜め上前くらいの方向性になると思います。
ハミング『N』の発音
もう一つのハミングが、『N』の発音でのハミングです。『N』つまり「ナニヌネノ」行の発音をする直前の状態です。
「N」の発音、具体的には
- 口は閉じる
- 歯やアゴはリラックス
- 舌を上アゴにつける
- 口の中の空間はほとんどない
という風になります。
先ほどの「M」の発音のハミングとは、『舌の位置』と『それによる口の中の空間』に大きな違いがあります。
この『N』の発音でのハミングの効果は、口の中の空間を無くしてしまうので、鼻腔への響きを身につけることに特化している、ということになります。
この「N」の発音は嫌でも鼻腔に響きがいきますので、鼻腔に特化したトレーニングになる、ということです。
唇はビリビリせずに、鼻のみがビリビリと振動するように発声するといいでしょう(*こちらも、各自最適な感覚を掴むことが大事です)。
声の方向性としては真上〜やや斜め後ろくらいの方向性になると思います。
やり方がわかったら、具体的にどんな練習をするか
目的に応じて使い分けるといいと思います。
- 鼻腔と口腔の両方へのバランスのある響きの練習をしたいなら『M』ハミング
- 鼻腔に特化した響きの練習がしたいなら『N』ハミング
という感じでしょうか。
自分の状況に合わせてトレーニングを使い分けましょう。どちらがしっくりくるか、などで決めてもいいと思います。
練習方法は、
- とりあえず単音をハミングで練習してみる
- スケールや音源に合わせてハミングで発声練習
- 普通の歌を丸々ハミングで歌ってみる
などなど、色々工夫してみましょう。
練習音源に困っている方はこちらで↓
ハミングの派生系トレーニング「フン」トレーニング
これは
- 『ハミング+ドッグブレス』というトレーニング
で「共鳴+息の流れの強化」トレーニングです。
しっかりと効果を両立できるので、個人的にはいい組み合わせのトレーニングだと思っています。
「フン」という文字の表記で書いていますが、実際は「ん+h」という感じの音になります。
ハミングの『N』の発音のまま息の勢いをつけるようなニュアンスです。
やり方
- 口を閉じます
- 『N』の発音状態を作ります
- そのまま声と一緒の鼻から息を吐きます
- 鋭く勢いよく「フン!」
- 慣れてきたら連続で「フン!フン!フン!フン!」と繰り返します
鼻で笑う感じというか、鼻にティッシュを詰めている状態から飛ばすようなイメージで声を出すトレーニングです。
極端に思いっきりする必要はないのですが、ある程度「フン!」と勢いよく発するのがおすすめです。
これによって
- 鼻腔共鳴の強化
- 息の強化
- 息と声の連動の強化
などハミング+息のトレーニングになるでしょう。
ハミング練習の効果
ハミングのトレーニング効果として考えられるものは大きく3つ
- 声帯のコントロール能力を効果的に高める
- 発声の質が良くなる
- 鼻腔・口腔など上方向への響きが身につく
というものが考えられます。
注意点
ボイトレには必ず個人差があります。全ての人に同じ効果があるとは限らないのでその点は注意です。
①声帯のコントロール能力を効果的に高める
ハミングは、声帯のコントロール能力を効果的に高めることができると考えられます。
声帯のコントロール能力とは、主に音程や声質をコントロールする能力のことを指しますが、それ以外も考えられるので、声全般に関わる声帯の能力と考えておきましょう。
なぜ鍛えられるのか?
普通に歌っている時は、知らず知らずのうちに口の開きの力やアゴの力や喉の力を借りて発声していますが、ハミングをしている時は、他の部位の力を借りにくいため、声帯部分を鍛えるアプローチがかかりやすいと考えられるからです。
例えば、歌いながら口を大きく開けたり、あまり開けなかったりすると、音階が微妙に変化します。これは、口の開き具合が音色や音階に影響を与えるためです。
また、特定の音を発声する際、例えば「あ」は出せるが「い」は出せないといった状況があるのは、声帯が発音に手助けしたり邪魔をしたりするためです。
つまり、歌を歌うときは、声帯だけではなく、他の部分も協力して発声しているということです。
ハミングはこの”手助け”を無くす
ハミングしている状態は口を閉じた状態であるため、あごなどの他の部位を動かすことができず、発音による声帯への手助けがほとんどない状態になります。
そのため、声帯部分のみの力で声をコントロールしなければならず、結果的に、声帯を鍛えるトレーニングになるということです。
②発声の質が良くなる
「ハミング」は、発声の質を改善するためにも有効な練習方法です。
理屈は先ほどと同じく、「他の部位に頼らずに声帯部分に集中できる」という理由が一つ。
もう一つが「良い発声を測る物差しになる」という理由です。
ハミングで「良い発声」を確かめる
良い発声ができている時というのは、そのまま口を閉じても問題がない(ほぼ変化がない)ことが多いです。
例えば、普通の発声からハミングに「あーーンーーあーーンーー」と繋げると、問題なく移行でき、良い音色のままです。
しかし、発声が良くない場合は、ハミングに移行すると何らかの問題が出ることが多いです。上手く移行できなかったり、音色が大きく悪化したり、喉が締まったりと、口を閉じることで問題が浮き彫りになりやすいです。
つまり、
- ハミングに問題なく移行できる発声=「良い発声」
- ハミングに移行すると何らかの問題が生まれる発声=「悪い発声」
のように良い発声の”物差し”として使えるということです。
(*ただし、必ずしもそうなるとは限りません。)
よって、ハミングは発声の質が良くなるためのトレーニングとして役立つのですね。
注意点
ハミングによる発声では、自分の耳で聴いた音色と実際の音色が異なることがあります。
これは、口を閉じることで自分の内側から聴こえる自分の声(骨導音)が強く聞こえ、自分自身が都合よく解釈しやすくなるためです。
普通の発声では、音が外側に飛び、外側からも自分の声が聴こえますが、ハミングでは外側からの音がある程度遮断されるため、内側から聴こえる割合が増えます。
結果的に、本当はいい音色のハミングではないのに、いい音色が出せていると思い込んで、そのまま誤ったハミングの練習を続けてしまう危険性があります。
よくあるのが、弱々しい声の練習を続けてしまうことですね。
こういう問題を回避するためには、ハミングを録音していい音色の聴こえ方を確認したり、ハミングを解いてみたりすることが重要です。
③鼻腔・口腔など上方向への響きが身につく
これは先ほどの「2種類のハミング練習のやり方」の章にも述べていますが、
- 上方向への響き(鼻腔や口腔)が身につく
- 響きのコントロールを身につける
ということです。
大事なことなのですが、響きのトレーニングは共鳴空間が物理的に広く成長するというトレーニングではありません。
あくまで『自分の骨格における共鳴を最大化させる』『上手くコントロールできるようになる』という類のトレーニングです。
いきなり上手くコントロールできるようにはなりませんが、コツコツと継続していくことでコントロールできるようになってきます。
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