今回は、歌における「声帯コントロール」の鍛え方について。
歌において、声帯は主に「伸縮」と「開閉」の動きをします。
特に、「伸縮」の動きは音程に大きく影響するため、この部分を鍛えることが、声帯の柔軟性を高める上で重要です。
目次
声帯コントロールとは『どこ』をコントロールする?
歌において把握しておくべき声帯の動きは
- 声帯が伸びる・縮む
- 声帯が開く・閉じる
という二つ。
以下の動画でイメージしやすく説明されています(再生位置:声帯の開閉・声帯の伸縮)↓
すごく簡単に言ってしまえば、『声帯の伸縮や開閉をどれだけ上手くコントロールできるか』が、声をコントロールする能力とも言えます。
もちろん、実際には非常に複雑な要素が絡み合っていますが、軸となるのは伸縮と開閉の二つと考えても問題ないでしょう。
まずは、この二つの動きを簡単に頭に入れておきましょう。
①伸縮する動き
歌において重要な筋肉とされるのは、
- 声帯を伸ばす(伸展)→輪状甲状筋
- 声帯を縮める(収縮・緊張)→甲状披裂筋
という2つの筋肉。
声帯は伸縮する動きをするために、この2つの筋肉の働きが必要となります。
甲状披裂筋は声帯自体が縮むと考えていいのですが、輪状甲状筋に関しては声帯自体が伸びるというよりも、この筋肉によって間接的に声帯が引き伸ばされるという感じです。
ここではそれぞれの筋肉自体を掘り下げたいわけではないので、詳しくは掘り下げませんが、歌における音程の高低を決めるため、声帯コントロールにおいて最も重要な筋肉です。
なので、声帯の柔軟性を鍛えるということは、これらを鍛えるということになるのですね。
特に、「伸びる(輪状甲状筋)」動きの重要性は高く、これを鍛えることは歌にとって大きなプラスとなります。
詳細については、以下のリンクで解説しています。
-
声の音程を調節する仕組みについて【声帯伸展と声帯収縮】
続きを見る
②開閉する動き
声帯が開閉は、音が鳴る度合いを変化させます。
開けば開くほど声は息っぽくなっていき、最終的に吐息になります。
閉じれば閉じるほど声はしっかりと鳴っていき、最終的にはエッジボイスのようになるでしょう。
この開いたり閉じたりする動きは、様々な筋肉が作用していますが、あまり複雑に考えても歌にとっては特にプラスはないでしょう。
なので、シンプルに「開く・閉じる動きがある」と考えておきましょう。
そして、この開閉の動きを鍛えることも、声帯コントロールを鍛えることになります。
声帯の開閉について、詳しくはこちらにて↓
-
芯のある声を作るのは「声門閉鎖」
続きを見る
声帯の柔軟性を高めるトレーニング
声帯の動きをざっくりと理解したところで、声帯の柔軟性を高めるためのトレーニングに入っていきます。
ただし、前提として「歌うことでしか身につけられない部分もある」ということを頭に入れておきましょう。このトレーニングは、スポーツでいう「筋トレ」や「ストレッチ」のような補助的イメージで取り組むといいと思います。
トレーニング方法として、以下の4つがあります。
- 音程差トレーニング
- 母音差トレーニング
- 声帯の開閉トレーニング
- 上記3つを組み合わせたトレーニング
これらのトレーニングで、声帯の柔軟性の向上が期待できます。
①音程差トレーニング
「輪状甲状筋」「甲状披裂筋」を大きく使うことで、音の高低に関する声帯の柔軟性を高めるのが目的です。
やり方
「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の母音で低い音と高い音を交互に切り替えます。
- 『あーー(低い音)アーー(高い音)あーー(低い音)アーー(高い音)』
と発声します。
全ての母音で同じように
- 『いーーイーーいーーイーー・・・・』
- 『うーーウーーうーーウーー・・・・』
と交互に発声します。
最初はやりやすく無理のない音階から始めてみてください。
切り替えるだけでなく、ゆったりと滑らかに繋げるのもいいです。
- 『あ⤴︎ーーーーあ⤵︎ーーーー』
のように。
慣れてきたら音の幅を広げたり、声区を変えて「地声」と「裏声」を交互に発声してみたりするのもいいです。
- 『あーー(地声)アーー(裏声)あーー(地声)』
のように。
-
地声と裏声の切り替えトレーニングで声区をつなげる
続きを見る
音の高低を繰り返すことは、声帯を伸ばしたり縮めたりしていることになります。したがって、音程差トレーニングは、声帯の動きや柔軟性を鍛えるために役立ちます。
トレーニングイメージ(*再生位置)↓
声帯が伸びたり縮んだりしているのをイメージしながらトレーニングするといいでしょう。
また、短期間で成果が出るものではないので、長期的にコツコツと取り組んで行くことが大事です。
②『母音差トレーニング』
『母音差トレーニング』は、歌で使用する母音の動きが普段の会話で使用する動きよりも大きいため、それに対応できるような声帯の柔軟性を養うことを目的としています。
日本語の母音「アイウエオ」は、口や喉周辺の形がそれぞれ異なるため、声帯の動きも微妙に変化します。この母音の差を利用して、より細かい声帯の柔軟性を高めることができます。
いくつか例を紹介します。
「アオ」トレーニング
- 「アオアオアオアオ」
と連続で交互に発声するトレーニングです。
口は縦方向の開きを意識しながら「ア」(横に開く)「オ」(横に閉じる)というニュアンスを意識です。
「ウイ」トレーニング
- 「ウイウイウイウイ」
口は縦の閉じを意識しながら「ウ」(横に閉じる)「イ」(横に開く)というニュアンスを意識です。
「オエ」トレーニング
- 「オエオエオエオエ」
口は「オ」(縦に開く横に閉じる)「エ」(縦に開く横に開く)というニュアンスを意識です。
もちろん、これ以外の組み合わせでもOKです。先ほどの動画は「イア」でしたね。
全てのトレーニングにおいて、母音を明確に発音することが重要です。トレーニングを行ってみると、意外な組み合わせや苦手な箇所が見つかるかもしれません。
負荷はそれほど大きくありませんが、声帯の柔軟性を高めるためには有効なトレーニングと言えます。さらに、これらのトレーニングは表情筋にも効果があり、一石二鳥です。
③声帯の開閉トレーニング
「声帯の開閉トレーニング」は、息っぽい声からしっかりと鳴らす声までのコントロールを鍛えることが目的です。
このトレーニングは、声帯の開閉のコントロールが苦手な人にはオススメです。声帯の開閉をコントロールすることで、より多様な声の表現が可能になります。
やり方
声帯が開いた状態からだんだんと閉じていくというトレーニングです。
「声を出さずに息を吐いた状態」から「エッジボイス」までをゆっくりとつなげるように声を出します。
- 『はーー(息)はぁーー(息っぽい声)あーー(普通くらい)あ”ーー(強めな鳴り)あ”あ”あ”(エッジボイス)』
と発声を変化させていきます。
そして、これと逆方向で『閉じた状態からだんだん開いていくというトレーニング』『両方を繋げる』というパターンでもOKです。
④ ⑴〜⑶を組み合わせる
上記までの3つのトレーニング
- 音程差をつけるトレーニング
- 母音差をつけるトレーニング
- 声帯の開閉トレーニング
を組み合わせたトレーニングをするということです。
自分が苦手なものや、効果が出たものを組み合わせるなどして自分好みに練習方法を工夫してみてください。