今回は歌における「シャウト」についての内容です。
シャウトはジャンルを問わず使われますが、主にファンク・ロック・ハードロック・メタルなどの音楽ジャンルで多く使われることが多い歌唱方法です。
使いこなせれば、歌にスパイスを加えることができます。
シャウトについての概要
シャウト(shout)とは「叫ぶ」「大声で歌う」という意味の言葉で、歌においても
大声・叫び声のような発声方法
という意味になります。
厳密な定義があるわけでもないので、「大声」「叫び声」のような発声であればシャウトと呼べます。
シャウトは、仮声帯を考える必要性がある
まず「普通の声」と「叫び声」は何が違うのか、『人は何を持って”叫び声”と認識しているのか』という部分を整理しておきます。
「普通の声」と「叫び声」の差は『仮声帯(かせいたい)が働くか、働かないか』の差だと言えます。
この仮声帯は「怒鳴り声」「唸り声」などを出すときに鳴っている『ゴロゴロ』『ガリガリ』した音を鳴らす部分です。思いっきり咳払いをすると、鳴らしやすいと思います。
仮声帯は、強い息の力を声帯にかけたときに声帯を支えるように働くので、感情が高ぶり強い息を吐く「叫び声・怒鳴り声」などには、ゴロゴロした音が混じっているのですね。
この仮声帯についての詳細は『がなり声・仮声帯発声について』の記事にまとめているので、ここでは省略します。
つまり、
- 普通の声=声帯の鳴り
- シャウト=声帯の鳴り+仮声帯の鳴り
という風に整理できます。
ということは、この仮声帯を上手くコントロールできるようになれば、シャウトをコントロールできるということになります。
ただし、シャウトはいくつかの種類に分けることができるので、その点を整理しておく必要があります。
シャウトの種類
シャウトは
- 声区(地声か裏声か)
- 仮声帯が働く度合い
という二つの項目によって分類できます。
一つ目は、声の種類は地声なのか、裏声なのかということですね。
二つ目は、仮声帯がどれくらいの強さで働くのかということです。この度合いが強まれば強まるほどに『デスボイス』と呼ばれるものに近づいていきます。
つまり、考えられるパターンとして、
- 地声+仮声帯『弱』=地声のシャウト
- 地声+仮声帯『強』=グロウル(中低音)・ガテラル(超低音)
- 裏声+仮声帯『弱』=裏声のシャウト
- 裏声+仮声帯『強』=スクリーム
このように分類できます(*流派によって違うことがある)。
ただし、『グロウル』『ガテラル』『スクリーム』に関しては、仮声帯をメインに発声しているので、地声・裏声という声区の区分がかなり曖昧になります。
なので、地声や裏声をあまり考えずに仮声帯発声の『超低音(ガテラル)』『低中音(グロウル)』『高音(スクリーム)』という風に考えてもいいと思います。
地声シャウト↓
仮声帯をしっかりと働かせているので、ガラガラ・ゴロゴロとした音色になっています。
「がなり声」とも言えるでしょうが、「叫び声」でもあります。
裏声シャウト↓
仮声帯がほんのりと使われています。
実はシャウトは、裏声になりやすいという特性もあります。
例えば、ジェットコースターでの「キャーー!!」、ライブ会場での「フォオオ!!」などは裏声であることが大半です。
これは、体が興奮・緊張状態にあると裏声になりやすいという理由と、強い息を思いっきり吐いた声を出すと、声帯がその息を支えようとして自然と高い声を出す状態を作るという理由からです。
なので、多くの人がイメージするシャウトは、この裏声シャウトであることが多いかもしれません。
低音の仮声帯発声(グロウルが低中音、ガテラルが超低音と呼ばれますが、おそらくこれはガテラルになるかと)↓
仮声帯を上手くコントロールして仮声帯がメインで鳴っているので、このような音色になります。
日常で仮声帯が働く時は、基本的に怒鳴り声や叫び声などのような感情が高ぶった声なので、その仮声帯だけで発せられた声に人間は、『地獄』や『死』のようなイメージを感じるから『デスボイス』と呼ばれるのかもしれませんね。
低中音域であれば、息の勢いもそこまで必要ではなく叫び声感を感じにくくなりますが、一応シャウトの仲間だと言えるでしょう。
高音の仮声帯発声「スクリーム」↓
仮声帯を鳴らす度合いを強めた状態で、かつ高音を発します。
こちらは強い息の勢いが必要になります。
シャウト系の発声の仕方
練習する前に、大前提理解しておかなければいけないのが、
- シャウトは喉の健康を害する可能性がある(*個人差がある)
ということです。
こればかりは人によって違います。全く問題ない人もいれば、大きく喉にダメージを受ける人や、声帯が弱くそもそもシャウトに向いていない声質を持っている人もいます。
シャウトだけが歌の全てではないので、「自分の喉に悪影響を及ぼしている」「自分には向いていない」という時には、きっぱりと諦めましょう。
ここでは大きく3つ
- 地声のシャウト
- 裏声のシャウト
- デスボイス
に分けて掘り下げます。
①地声のシャウト
地声でのシャウトです。ただ、地声で叫べばいいだけなので発声自体は簡単です。
地声系シャウトのやり方
まずは地声で楽に「あーー」と発します。
そのままの喉の状態を意識したまま、心の制御を外して息を思いっきり吐いた声を出します。そうすると、ガラガラ・ゴロゴロと声が割れるはずです。
これが地声のシャウトですね。
音量を気にせず心のリミッターを外せば、多くの人は出せると思います。
あとはいかに上手く使いこなすかですが、これは喉の使い方の慣れの問題です。とにかく慣れるしかないので、何度も練習して使いこなせるようになりましょう。
②裏声のシャウト
裏声のシャウトは裏声の状態で叫びます。地声のシャウトに比べると、高い音域のシャウトになります。
裏声系のシャウト
こちらも出し方というほどのものはなく、『裏声の状態で思いっきり息を吐く』というだけです。
ジェットコースターに乗っている意識で、甲高く思いっきり叫びましょう。
裏声の場合、自然と仮声帯が働きにくいこともあるので、ある程度仮声帯を働かせる意識が必要な場合があるかもしれません。
強い息を吐くほどに高音になりますので、裏声のシャウトはかなり高い音になります。超高音の領域まで行くと、それは『ホイッスルボイス』と呼ばれたりするかもしれません。
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ホイッスルボイスについての研究【構音型と気流型の2種類ある】
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③デスボイス
先ほども述べたように、デスボイスは基本的に
『仮声帯』を主体にした発声
です。
で、その仮声帯を主体とした発声の
- 超低音(ガテラル)
- 低中音(グロウル)
- 高音(スクリーム)
があるのですね。
まずは基本的な仮声帯発声を練習しましょう。楽な音域で仮声帯発声をすると、グロウルになる可能性が高いです。
グロウルのやり方
- まずは咳する真似をします。「ゴホッ!ゴホッ!」
- 次にその咳をしながら同時に声を出します。「ゴロロロ!ゴロロロ!」。今鳴った部分が仮声帯です。
- その仮声帯を「ゴロゴロ」鳴らす感覚を掴んだら、その部分・成分をたくさん使って発声してみてください。
- 慣れてきたら、最終的にその部分だけを使って声を作ります。
おそらく、これでできるはず。
楽な音域の仮声帯発声ができるようになったら、ガテラル(超低音の仮声帯発声)はそのまま思い切り低音にします。喉仏を思い切り下げると、低音にできます。
スクリーム(高音の仮声帯発声)は、仮声帯発声をした状態で思いっきり息の力をかけるとできるはず。
ただ、これは何度も練習が必要になるでしょう。