この記事は
- フェイクとアドリブの概要について
- フェイク・アドリブに必要な能力は『コードに乗る力』
- 練習方法について
という内容です。
『フェイク』とは
フェイクとは
- 楽曲の原型の音程やリズムを崩すこと
で、原曲に対してフェイク(fake=偽物)という意味の言葉です。
簡単に言えば「原曲に対して若干の変化を加えること」です。
本来はそういうニュアンスの言葉なのですが、フェイクは一般的に次の意味でも使われることもあります。
- スキャットと言われるような歌詞がない部分を適当な言葉で歌うこと
- 「メリスマ・ラン」と呼ばれるような細かいピッチ変動
など。
おそらく、これを「フェイク」という認識の人も多いのでは?↓
これは厳密には「メリスマ」「ラン」などの呼ばれ方をしているテクニックです。
厳密な定義で言うと、こういうものがフェイクと言うのか言わないのかは本来は”場面による”はずです。
原曲とは別のことをしているのなら「フェイク」ですし、原曲通りならば「フェイクではない」というのが正確なところでしょう。
言葉の定義は使い人次第なのでどう使ってもいいとは思いますが、ここでは本来の「フェイク(fake:偽物)」という意味で話を進めたいと思います。
音程を素早く動かす技法に関してはこちら
『アドリブ』とは
歌におけるアドリブとは
- 即興で歌うこと。
です。
これも言葉のニュアンスが広く音楽では割となんでもアドリブに入ってしまうような気がします。
例えば、
- 音程を変えたり
- リズムを変えたり
- フレージングを変えたり
- 歌詞を変えたり
- メロディーのないところにメロディーを加えたり
と結構広い定義のものと言えるでしょう。
アドリブは本来『決まっていない部分を即興で自由に』という意味です。
つまり、予定調和でないことがアドリブになります。
フェイクとアドリブの違いは”変え具合の差”?
アドリブとフェイクは『原曲を変える・崩す』という意味ではすごく似ていますが、
- 原曲をほんのり崩す場合が『フェイク』
- 原曲を大胆に大幅に崩す場合が『アドリブ』
という使われ方をすることが多いです。
おそらくこれは「偽物」と「即興」という言葉のニュアンスからそういう感覚になるのでしょう。
- 「偽物」=本物に似ているが違う=ほんのり崩す
- 「即興」=予定調和でない=大胆に崩す
というようなニュアンスになるのでしょう。
なので原曲の変え具合がフェイクとアドリブの差とも言えるのかもしれません。
フェイクやアドリブに必要なものは『コード感』
フェイクやアドリブができる人というのは
- 『コード感』が体に染み付いている人
です。
*ここでの『コード感』とは楽曲のコード進行(和音)に乗る力。コードに合わせて歌う能力。スケール感と言ってもいいと思います。
このコード感があるとフェイクやアドリブができると考えることができる。
コード感
例えば、Cのコードをピアノで鳴らしているとして、「さぁこれに合わせて歌詞はなんでもいいので曲を作ってください」と言われると、コード感のある人は即興でメロディーをつけて歌うことができます。
その際、人によって選択する音階やリズムは様々です。これが歌の作曲の原理であり、個性が出るところですね。
こんなイメージ(実際に即興でセッションしている)↓
適当な言葉で歌っているのがわかると思います。
この『コード感』というものは具体的にはCの構成音「ド・ミ・ソ」の音をコードを聴くだけで辿り・歌う能力ですね。(実際にはド・ミ・ソ以外の音でも歌っていい音はあるのですが、ここでは簡単に考えます。)
これはコード感がしっかりと身についている人ならできることですし、コード感がない人にはできないことでしょう。
つまりフェイクやアドリブは「この感覚を歌の中で使って瞬間的に作曲しているようなもの」です。
- 音程を変化させるのは音程を即興で瞬間的に作曲しているようなもの
- 歌のないところで「Wow~」だったりを入れるのも、即興で瞬間的に作曲しているようなもの
と言えるでしょう。
作曲しているとは言っても、頭の中で「音程はこう行って、こう行って」と考えているわけではなく、半分くらい無意識というか自然と音楽に乗ろう・調和しようとした結果として生まれるものでもあるとも言えるのかもしれません。
(再生位置*3:12〜即興のスキャット)↓
コード感とはある意味、『音楽と調和する力』『音楽に乗る力』です。
多くの人が自転車に乗る時に「右足を出して、左足を出して、ハンドルはこう。」みたいなことを考えないのと同じように、コード感も理屈の先にある『染み付いた無意識の感覚』みたいなものでしょう。
コードに乗れる人は無意識に乗れるが、乗れない人は訓練が必要になるのですね。
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フェイクやアドリブのやり方・練習方法
フェイクやアドリブの練習方法は大きく二つあります。
- とにかく真似する
- コード感を鍛える
です。
①とにかく真似する
「いきなり適当だな」と思うかもしれませんが、結局これが大事かと。
とにかく目標のシンガーがしているフェイクやアドリブを真似すると
- 『そのシンガーの感覚を体で覚える』
ことにつながります。
これはかなり重要なことだと思います。
とにかくその人のスキルをなぞって真似をすることで、自分に染み込ませていきます。
- 『理屈の前にとにかく真似して練習』
これも結構大事です。
色々なシンガーのフェイクやアドリブを研究して真似してみるのがベスト。
②コード感を鍛える
コード感を身につけるには二つの方法があるかと。
- 全く知らない曲やインストに合わせて適当に歌う
- ピアノやギターなどのコードを鳴らす楽器を練習する・弾く
この二つがいいと考えられます。
知らない曲に合わせて歌う
自分がメロディーも何も知らない曲や歌の入っていないインスト曲などに合わせて適当に歌ってみるという練習はコード感を鍛えるのに役立ちます。
知らない曲に合わせて、歌詞は適当、もしくは無くていいですし、メロディーも自分の好きなように歌います。
最初のうちは全く歌にできないかもしれませんが、ずっと続けていくと自然と音楽に合わせた歌が歌えるようになってきます。
聞こえてくる音楽に乗れるようになってくるのですね。
その感覚こそ『コード感(覚)』です。
楽器を練習する
コード感を身につけるには『楽器を練習する』というのがおすすめです。これ以上にコード感が身につく方法はないはず、と考えられるほどにいい方法です。
と言うのもやはりたくさんのコードについて学ぶことができるし、それを自分で鳴らして音を聴くという作業ができるからです。自分の力でコードを表現・体感できるのでコード感が身につきます。
そもそも多くのシンガーは(普段はボーカルに専念している人であっても)弾き語り程度は楽器が演奏できる人がほとんどです。
それくらい楽器の練習がコード感・歌唱力そのものに大きな影響を与えるのは間違いないでしょう。
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楽器が弾けると歌が上手くなりやすい【楽器と歌唱力の関係性について】
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