今回は歌のテクニック「こぶし」についてです。
この記事は
- こぶしとは
- こぶしは3種類くらいに分類できる
- こぶしとビブラートの違い
- 良いこぶしとは
- こぶしの出し方・練習方法
という内容です。
「こぶし」とは
歌における「こぶし」とは
瞬間的に音程を動かすテクニックのこと
歌のフレーズの中に小さな節(ふし)を作るので小節(こぶし)という名称になっています。
具体的にはこちら(*再生位置あたり、音を瞬間的に動かして「うーーぅ〜ーーぅ〜ーー」のようになっているのわかると思います。)↓
このようなフレーズの中に「節」を作っているのが「こぶし」です。
こぶしの種類
「こぶし」と言われるテクニックには大枠3つくらいに分類できるのではないかと考えられます。
- 一つの声区を使うこぶし(通常のこぶし)
- 二つの声区を使うこぶし(一瞬裏声に入れるこぶし)
- 「メリスマ」と呼ばれる高速音階変化
この3つです。
一つの声区
これは先ほどの動画のように『一つの声区を使うこぶし』です。
普通のこぶしと言えるでしょう。
二つの声区
次に『二つの声区を使うこぶし』です。主に島唄や民謡で使われるようなこぶしです↓
音程を瞬間的に動かした先の声区を『裏声(ファルセット)』にするという高レベルなこぶしです。
瞬間的に音程と一緒に声の種類(声区)を切り替えるテクニック。地声と裏声の切り替えがかなり上手くないとできないスキルです。
メリスマ
3つ目が『メリスマ、リフ&ラン、ランなどと呼ばれる高速音階変化』です。これもこぶしの仲間と言えるでしょう↓
簡単に言えば『高速で音程を変化させること』です。「こぶしを連続的に行う」みたいなイメージです。日本だと「フェイク」と呼ばれたりもしますね。
洋楽シンガーがよく使うテクニック。
メリスマについては別記事に詳しくまとめているので、以降省略します。
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歌の超高等テクニック『メリスマ』【連続的な高速の音階変化】
続きを見る
「こぶし」と「ビブラート」の違い
こぶしの練習をする前に「こぶし」と「ビブラート」の違いについて整理しておきましょう。
ビブラートはある音に対して連続的な音の波(上下)を作り出すことです。
ビブラートは上下合わせて半音程度揺らし続けるテクニック。
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ビブラートの原理とやり方・練習方法について
続きを見る
こぶしは瞬間的な音の階段(上下)を作り出すこと。
この例では半音上がってますが、こぶしの音階は特に決まりはありません。
コード進行内にある音ならなんでもいいでしょう。
あえて関連づけて考えるのであれば、こぶしのイメージは「歌のフレーズの中で瞬間的に大きなビブラートをかける」感じです(あくまでイメージ)。
ビブラートは
- 「あ〜〜〜〜〜」
ですが、
こぶしは
- 「あーー〜ーー」
という感じ。
こぶしの出し方・練習方法
- 一つの声区を使うこぶし「普通のこぶし」
- 二つの声区を使うこぶし「裏返すこぶし」
この2つの練習方法についてです。
普通のこぶしの練習方法
まずはこぶしの基礎、簡単な出し方です。
練習方法
- ピアノを用意します
- どんな音でも良いので出しやすい音をピアノと一緒に出します(ここでは ド にします。)
- 「ドーー」に合わせて「あーー」と発声します
- 次にピアノで「ドーード#ドーー」と一瞬だけ半音上げてすぐに戻します
- これに合わせて声を出します(「あーーああーー」で練習します。)
- この時、なるべく音程の切り替えを素早く(瞬間的に)するように練習します
- これをひたすら練習します
- これだけでも瞬間的に音程を切り替えて戻すことができれば綺麗なこぶし的な表現になります。
- 「ドーード#シドーー」と半音下の階段も追加してレベルをあげます。
半音差なら練習を繰り返すうちにできるようになってくると思います。
この練習では半音差で練習していますが、なんの音で練習しても大丈夫です。
どんどん音階差を広げてもいいと思います。
裏返すこぶしの練習方法
地声から一瞬だけ裏声に入れてまた地声に戻すこぶしです。
これは練習方法の考え方は簡単でしょうが、かなりの声帯コントロールがないとできないでしょう。
これができる条件は二つ
- 正しい裏声が出せること
- 地声と裏声の切り替えが超スムーズにできること
これはとにかく地声と裏声を切り替える練習あるのみ。
やり方がどうこうではなく「瞬間的に裏声に切り替える」。ただそれだけでしょう。
「こぶし」を上手く極めるために
重要なのが
「こぶし」とは瞬間的な音の動きなので、その前後は直線的なピッチを辿らないと「こぶし」を綺麗に表現できないと言うことですね。
例えば、深いビブラートのど真ん中に「こぶし」を生み出すことはできないと言うことです(厳密にはできますが、こぶしとして映える表現にならないでしょう)。
そして、ピッチ感が正確であればあるほど”小さな節が活きる”とも考えられます。
さらに、そのこぶしを入れる時間が短ければ短い(音程を切り替えるスピードが速い)ほどに音楽的にかっこいいこぶしになる。
つまり、こぶしの押さえるべきポイントは
- 前後の直線的なピッチ
- 正確なピッチ感
- ピッチを切り替えるスピード
というところでしょう。
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歌のピッチを鍛える方法について【4つの区分で考える】
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