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歌の雑学・研究・考察

『声帯のタイプ』と『魅力的な音域』の関係性について

投稿日:2019年12月9日 更新日:

今回は、『声帯のタイプとその最適な音域について』です。

人は持っている声帯によって、声区の範囲と最適な音域帯がそれぞれ違い、その声区毎に魅力的な音階がある程度決まっていると考えられます。

つまり、自分の声帯のタイプと向き合うことは、歌の魅力に直結するだろうという研究考察です。

人は大体3オクターブくらいの音域のポテンシャルを持っている

歌に使うかどうかは置いておいて、

人の声は最低音から最高音まで2〜3オクターブくらいは出せる

と言われています。

 

つまり、誰しも大体2~3オクターブくらいは出せる力を秘めているということ。

もちろん個人差はありますし、男女差もあります。音域だけに関して言えば、男性の方が広くなる傾向です。

また、声が高い男性は女性寄りの範囲、声が低い女性は男性寄りの範囲になりやすいと考えられます。

つまり、『低い声帯ほど”範囲そのもの”は広がりやすい』という傾向にあります(*あくまで傾向)。

 

世界には女性でも4オクターブ以上出せる人もいますし、男性の中には6オクターブくらい出せる人もいます↓

なので、3オクターブくらいは実はそこまで不思議ではないのですね。

人が原始人くらいだった頃は、嘘か本当かみんな5オクターブくらい出せたとか。

 

2〜3オクターブもあれば十分

現状出せるか出せないかではなく、その声帯に秘められた本来の力が2〜3オクターブくらいです。

 

このうち

  • 歌に使いやすい音域が1~1,5オクターブくらい

になります。

 

なので、多くの楽曲が1オクターブ~1,5オクターブくらいの音域の枠で歌われることが多いのですね。

 

声区ごとに魅力的に鳴らせる音域は、決まっている

2〜3オクターブの中で魅力的に鳴らせる音階は、ある程度決まっています。

このような『音階と魅力の関係性』のグラフになるはずです(*個人差はある)。

 

もちろん、現状このような状態の方もいるでしょうが↓

ポテンシャルとしては、誰もが先ほどの図のようになると考えられます。

 

基本的に、

プロのシンガーはこれに合わせて自分のキーを設定していますし、作曲しているでしょう。

 

なので、大体の曲は1〜1,5オクターブの楽曲になるということですね。

基本的には、この一番美味しい部分をたくさん使います(*もちろんジャンル差や個人差はある)。

 

個々の『声帯のタイプ』と『音域』の関係

簡単に表現すると、

  • 男性の「低い声帯」「普通の声帯」「高い声帯」
  • 女性の「低い声帯」「普通の声帯」「高い声帯」

と性別ごとに3タイプの音域の声帯に分けられます。

 

クラシックではこれを

  • 男・低い→『バス』
  • 男・普通→『バリトン』
  • 男・高い→『テノール』
  • 女・低い→『アルト』
  • 女・普通→『メゾソプラノ』
  • 女・高い→『ソプラノ』

このように呼んでいますね(*もっと細かく分ける場合もあります)。

 

ポップスではあまり使われない言葉ではありますが、この声帯音域の区分はポップスにももちろん適応できます。

 

声帯タイプによって魅力的な音域が変わる

『それぞれの声帯のタイプが「高い音」や「低い音」を出したときにどんな音色になるのか』というのは、こちらの動画がすごくわかりやすくまとめられています↓

このように、声帯のタイプによって音階ごとの「音色の魅力度」や「頑張り具合」などが変わってきます

 

当然、

  • 低い声帯ほど低い音が得意
  • 高い声帯ほど高い音が得意

ということになります。

 

これは先ほどの、『誰もが持っているポテンシャルの2〜3オクターブの範囲』がズレるからですね。

大きな区分で6タイプに分かれていますが、『厳密に細かく区分すれば個人個人違うとも言えることでしょう。

 

一番美味しい音域の位置(歌のキー)も違う

当然ながら、先ほどの1〜1.5オクターブの一番美味しい部分も持っている声帯に沿っています。

これによって、「地声のガツンと出す高音の最高の鳴りの音(いわゆる「当たりの音」)」などの音階も、人それぞれ違います。

例えば、バスボーカルは「mid2E」、テノールボーカルは「hiB」などのように、当たりの音がズレます(*あくまで例)。

 

よく「自分に合ったキーで歌いなさい」と言われるのはこれが理由ですね。

 

換声点の最適な位置も人によって違う

換声点(地声から裏声に切り替える音階)の最適な位置も、この声帯のタイプによってある程度決まってきます。

 

もちろん、換声点は一点ではなく地声と裏声が重なっている範囲の分だけ作れるのですが、「この辺りで切り替えるのがちょうどいい」というポイントはある程度決まっていて、それが声帯のタイプに従っているということです。

当然低い声帯ほど低い音階で裏声に切り替え、高い声帯ほど高い音階で切り替えるのが最適ということになる。

 

当然個人差はあります。換声点について詳しくはこちらにて↓

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換声点がガラガラする・かすれる問題と対策トレーニングについて

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最適な共鳴のポイント・声の方向性も違う

これはわかりやすく、

  1. 声が低い男性(バス)
  2. 声が高い女性(ソプラノ)

で比較してみましょう。

 

この両者がmid1Cくらいの音を出すと、声の方向性はこんな感じになるでしょう。

このように、男性は特に違和感なくまっすぐな方向性で声を発することができるでしょうが、女性はものすごく下の方向へ出そうとするはずですし、出せないこともあるでしょう。

この場合女性は、声帯を緩めよう(低くする)としているから声を下に当てようとする(喉仏を下げようとする)のですね。

 

ここで逆にこの両者がhiCくらいの音を出すと、

このような方向性になると思います。

この場合、男性は声帯を引っ張ろう(高くしよう)とし、喉仏が上がり、場合によっては裏声になり声が上や頭の後ろに響くような感覚になるでしょうし、出せないこともあるでしょう。

女性にとってはそこまで高い音ではないので、地声で気持ちよくおでこ辺りの方向性へ声が飛んでいくような感じになるのですね。

 

これが声帯と声の方向性の関係です。

この声の方向は、意識である程度いじる(共鳴をコントロールする)ことはもちろんできるのですが、人それぞれ音域・声区ごとに”最適な範囲”というものがあって、極度に声の方向性を変えることは難しいでしょう。

 

つまり、声が当たる方向性の最適な範囲は持っている声帯と音階によってある程度決まるということがわかると思います。

例えば、最低音がlowEで3オクターブの音域を持つ人ならこんなイメージ↓

また、声の方向性は声区の出しやすさなどとも関連してきます↓

先ほどの、各声帯のタイプの比較動画もこれを踏まえて見直すと、よりわかりやすいかもしれません。

 

”基本的には”自分の声帯のタイプには逆らえない

ここで、大事なのが基本的には『自分の声帯のタイプに従うべき』だということでしょう。

 

もちろん、『例外』というものも様々な要因によって生み出されることはあるのですが、基本的には自分の声帯のタイプに合わせて歌うべきですし、プロシンガーの多くはこれに逆らっていないことがほとんどです。

 

「努力でどうにかならないのか?」と考えるでしょうが、

「なぜ何百年も続くオペラなどのクラシック声楽が、声帯の音域タイプを区分けしているのか?」

というところがある意味答えだと思います。

 

自分の声帯に逆らうとどうなるのか?

わかりやすく言えば、

自分の声帯に従っている人に勝てない(魅力度で劣る)

と言えるのでしょう。

”必ず”ではないですが、やはり基本的には自分の個性を活かした方がいい。

 

例えば、

  1. 「低い声帯のシンガー」が、高い声帯のシンガーの音域帯に適した曲を歌う
  2. 「高い声帯のシンガー」が、高い声帯のシンガーの音域帯に適した曲を歌う

として、その他の能力が全て同じレベルだとすると、後者の方が魅力的になるのは明らかですね。

 

当然、逆に低音の歌を歌うと立場が逆転します。

つまり、持っている声帯に逆らうと、基本的には『逆らっていない人には勝てない=魅力的にはならない』と考えることができます。

 

さらに、長期的視点で考えると、逆らう側は少しづつ無理な負荷を蓄積し続けることになり、ゆっくりと蝕むように声が劣化する可能性が高くなると考えられます。

 

なので、プロのシンガーたちは「自分の声帯に従う」ということを大事にしているように思います。

 

例外はある

基本的には「逆らえない」と考えるべきでしょうが、様々な要因で『逆らった方が魅力的な人』という場合もあるでしょう。

 

というより、正確には

  • 逆らっているように見える人

でしょう。

 

ハードロックやメタルなどのジャンルは、このパターンに当てはまるシンガーも多いかもしれません。

 

例えば、『一見低めな声帯を持っているように思えるが、何らかの要因が重なり高い音域の方が得意な喉のような人はいるでしょう↓

「一定の法則に当てはまらない」というパターンは確かに存在します。

しかし、それは

自分の声帯に逆らっているように見えるが、実はそれが”従っている”=その人にとってはそれが最適』という特殊な例

と考えるべきかと。

 

なので、大抵は「あの人があんなに低い声帯を持っているのだから、自分もあの人くらいの高音は出せるはずだ」と真似をすると、痛い目を見る可能性の方が高いのかもしれません。

 

個人的な研究範囲では、このパターンに当てはまる人は、「特に努力することなく最初からそれができた」「自分にとってはそれが一番よかった」、というようなことを語っていることが多いです。

 

【先ほどの動画の抜粋(表現のニュアンスは少し変えています)】

  • 福山さん「昔から高いんですか?」
  • 稲葉さん「まぁそうですね。声帯の形で大概は決まっていると思う」「響きの点で、歌で低いところは使わない
  • 福山さん「実際に使える一番高いところはE(mid2E)までなんですよ。」
  • 稲葉さん「高けりゃいいってもんでもないので。その人の一番響くところがいい。」

 

福山さんも羨ましがってはいますが、両者とも『自分の声帯に従っている』ことがわかりますし、『自分の声帯に従うことを大切にしている』ことがわかりますね。

  • 基本的には『自分の声帯に従う』方が魅力的
  • 例外的に『自分の声帯に逆らう』方が魅力的(一般的には「逆らっている」ように見えるが、それが本人には「従っている」になる)

本質的には、どちらも自分の声帯を活かしているのですね。

 

このように例外的な見方ができる場合はあるので、「自分がどうなのか?」というのは考えるべきでしょう。

 

自分の声帯の音域を確かめる

自分の声が高いのか低いのかは自然な最低音に注目

日本人の一般的な成人の”話し声”の平均音は、

  • 男性が lowF#〜mid1Cくらい
  • 女性がmid2A#〜mid2Eくらい

と言われています(調査によって様々な誤差があります。特に女性は海外だとmid1E〜mid2Cくらいと、日本と差があります。声帯が違うというよりも、日本女性特有の話し方の違いが大きいとされます。)

 

あくまでこれは”平均の値”なので、実際にはテンションや雰囲気など、場面場面でもっと広い音域で話しているでしょう。

 

個人的には、声帯の音域のタイプを考えるとき、

  • 自然な最低音

に注目するといいのではないかと考えています。

*この自然な最低音とは「音になるかならないかくらいのギリギリの最低音」「無理に出した最低音」ではなく、楽にしっかりと声にできる範囲での最低音」くらいが目安です。

 

そうすると、この自然な最低音は、

  • 男性は lowB〜mid1Bくらい
  • 女性は mid1B〜mid2Bくらい

個人によってざっくりこれくらい差が出ると思われます(*もちろん、男女とも両端は少ないでしょうが、これをはみ出す人も普通にいるでしょう。あくまでも一般的な目安です)。

 

つまり、同じ性別でもすごく低い人とすごく高い人では、1オクターブ近く差があることもあります。

 

あくまで目安ですが、

こんな感じになるかと考えられます。厳密には個人個人違うのであくまで参考程度に

 

自分の声がわかりにくいという場合には、アーティストが普通に話しているインタビュー動画などと一緒に、”音程を真似しようとせずに”話してみると確かめやすいと思います。

 

似た声帯を持っている場合は、『無理なく自然と』同じような音程になるでしょう。

で、同じような話し声の音程になる人は自分と近い声帯を持っているはずなので、その人の歌は同じように歌いやすい可能性が高いという風に考えられるわけです。

*ただし、『似ているタイプの可能性が高い』だけで、全く同じことはほぼないのでその点は注意です。

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自分の2〜3オクターブは、これを基準に考える

この自然な最低音を基準に、大体2〜3オクターブで考えると上手くいくでしょう。

地声はこんな風に考えるといいかと(*単位はオクターブ)↓

 

裏声はこんな感じのイメージ↓

裏声は普段使わない分だけ苦手な人も多いでしょうが、しっかりと鍛えるとこのようなイメージになると思います。

 

こんな感じで自分の2〜3オクターブを考えると、自分の歌声がどこまで歌えるのかという目安になります。ただし、あくまでも目安なので、厳密には個人個人違うということはお忘れなく。

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