今回は『自分の持っている声帯とその最適な音域について』です。
人は持っている声帯によって声区の範囲と最適な音域帯がそれぞれ違います。そしてその声区毎に魅力的な音階がある程度決まっています。
今回はそんな声区と最適な音域についてのお話です。
人は大体3オクターブくらいの音域のポテンシャルを持っている
歌に使えるかどうかは置いておいて、
人の声は最低音から最高音まで大体2.5〜3オクターブくらいは出せる
と言われています。
「え?無理でしょ!?」と感じる人と「まぁいけるか」と感じる人など様々でしょうが、大体2,5~3オクターブくらいなのです(もちろん、多少の個人差はあります)。
4オクターブとか出せる人も普通にいるので、3オクターブくらいはなんら不思議ではないですね。
人が原始人くらいだった頃は嘘か本当かみんな5オクターブくらい出せたとか言われていますね。
3オクターブもあれば十分
現状出せるか出せないかではなく、その声帯に秘められた本来の力が3オクターブくらいです。
ここから
- 歌に使いやすい音域が1~1,5オクターブくらい
になります。
なので、多くの楽曲が1オクターブ~1,5オクターブくらいの音域の枠で歌われることが多いですね。
本来の力が3オクターブあれば理論上は全く問題なく歌えますし、むしろ有り余っています。
とは言え有り余るくらいがちょうどいいですし、持っている限界いっぱい使うのも音楽としては微妙ですね。
なのでそういう点でも大抵の楽曲は1オクターブ~1,5オクターブくらいの範囲に収まるのでしょう。
声区ごとに魅力的に鳴らせる音域は決まっている
3オクターブの中で魅力的に鳴らせる音階はそれぞれにあります。
このような『音階と魅力の関係性』のグラフになるはずです。(*あくまで簡略化していますし、個人差もあります。)
これは”基本的には”誰しもがそうであるはずです。
基本的に、
この枠から外れると魅力的にはならないので、プロのシンガーはこれに合わせて自分のキーを設定していますし、作曲しています。
なので大体1〜1,5オクターブの楽曲になるのでしょう。
この魅力度合いから大きく外れるとどんなに上手いシンガーでも魅力的には聴こえないでしょう(もちろん一部の例外はいますね)。
例外
例外というより
- 魅力の価値観は音楽性によって変化
します。
例えばクラシック音楽で良しとされる発声はヘビメタでは魅力的ではないでしょう。逆にヘビメタの発声をクラシックでしていたらダメですよね。
つまり音楽の方向性次第で魅力は変わるので例外的なものは当然あるということです。
ここでの『魅力』とは
僕が考えている魅力とは最適という意味のニュアンスが強いです。
本来持っているものをそのまま最大限活かしたものが理想というか、あるべき形に従って(逆らわず)磨いたものがその人にとって最も魅力的という考えです。
魅力的な音階は持っている声帯によって違う
魅力的な音域は『その人が持っている声帯』に依存します。
つまり
「声帯の違い」が
- 「最適な声の方向性の違い(≒共鳴の違い)」
- 「最適な声区の範囲の違い」
を生むので、それが魅力的な音階の違いになるのです。
最適な声の方向性の違い
わかりやすく声が低い男性と声が高い女性で比較してみましょう。
この両者がmid1Cくらいの音を出すと声の方向性はこんな感じになるでしょう。
このように男性は特に違和感なくまっすぐな方向性で声を発することができるでしょうが、女性はものすごく下の方向へ出そうとするはずですし、人によっては出せないでしょう。
逆にこの両者がhiCくらいの音を出すと
このような方向性になると思います。
これがある音に対する声帯と声の方向性の関係です。
この声の方向は意識である程度いじる(共鳴のコントロール)ことはもちろんできるのですが、音域・声区ごとに最適な範囲というものがあって極度に声の方向性を変えることは難しいでしょう。
この声が当たる方向性の最適な範囲は持っている声帯と音階によって決まるということがわかると思います。
つまり持っている声帯によって魅力的な音域は決まっていると言えますね。
最適な声区の範囲の違い
実は声帯によって、
『一番最適な換声点は決まっていて、それは持っている声帯の音域に従うことが多い』
と考えられます。
どういうことかと言うと、
- 低い声帯を持っている人は最適な換声点が低い
- 高い声帯を持っている人は最適な換声点が高い
ということです。
これは男女の声帯の違いを考えればわかりますね。
このように”最適な”換声点は男女でズレるのは当たり前ですし、性別だけでなく人それぞれに違います。
声区の目安
換声点は先ほどの自然な最低音から、
・1〜1.5オクターブ目くらいに最も楽で自然な換声点(ポップスではあまり使わない)
・1.5〜2オクターブ目くらいに歌唱上最適な換声点(無理のない発声スタイル)
・2〜2.5オクターブ目くらいに切り替えるべき(限界の)換声点(ロックな発声スタイル)
があると考えています。
もちろん大まかな目安で必ず個人差はあります。
ここで、結構面白い話だと思うのですが、
- このオクターブ目安の幅は低い声帯ほど広く、高い声帯ほど狭い
と感じています。
あくまで個人的な研究の中での肌感覚ですが。
どういうことか?
例えば、
自然な最低音lowEの男性(低いタイプ*幅1.5オクターブ)なら、
- mid2Aくらいで、何も力を入れないと裏声に切り替わる
- mid2Eくらいまで地声で、それ以降を裏声に切り替えることでバランスよく歌える
- hiAくらいでまで地声でガツンと出せばロック感が出る
みたいな感じでしょう。
例えば、
自然な最低音mid1Eの男性(高いタイプ*幅1オクターブ)なら、
- mid2Eくらいで、何も力を入れないと裏声に切り替わる
- hiAくらいまで地声で、それ以降を裏声に切り替えることでバランスよく歌える
- hiEくらいでまで地声でガツンと出せばロック感が出る
みたいな感じでしょう。
このように低い声帯ほど音域そのものは広く、高い声帯ほど音域そのものは狭い傾向になることが多いということです。
これは子供の声の音域は狭くて、大人の声の音域は広いことからもわかりますし、女性は音域が狭くて男性は音域が広いことからもわかりますね(あくまで”音域の広さ”に焦点を当てた場合の話。)
もしくは”ニーズ”的な面でもそうなるのかもしれません。
これもあくまで目安や傾向のお話で、個人差のあるものです。
この魅力度合いからはみ出すとどうなる?
この魅力からはみ出すような発声(例えば、無理な高音ミックスボイスなど)は基本的に「最適ではない」ので、魅力度にかける可能性が高いですし、喉を壊す可能性があります。
ココがポイント
ここで言う「喉を壊す」とは、怪我のように急に何かが壊れて思い通りの発声できなくなることだけではなく、ゆっくりと少しづつ気づかないくらいのペースで発声を不自由にしていくことも含みます。
何かが急にバキッと壊れた方がいくらか幸せですね。
喉のダメージは気づかなくらいにゆっくりと進行し、気付いた時には「あれ?なんか声が出しにくい」みたいになる可能性も十分あります(そっちの方が多いかも?)。
衰え?
いや、これも「喉が壊れる」と同じようなものだと考えています。
「気づかないくらいゆっくりと壊れる」のです。
まぁこれはあくまで可能性の話であって、壊れない人や保っている人もいます。
でもはみ出した発声をしている人で成長している人は非常に少ないと思います。
一流のシンガー達もこれを大事にしているような気がします。
例えば、最近、山下達郎さんと木村拓哉さんのお話で非常に興味深い話がありました。
木村いわく、ライブを観終えた山下さんから「木村くんの声って、かわいい声しているんだね。でもロックが好きだから、どうしてもハイトーンにいきたいのかもしれないけど、木村くんの声はバリトンなんだよ、うん。やるべき!」とアドバイスされたそう。 引用元『exciteニュース』
このように一流のシンガーって自分の声帯はもちろん、他人の声帯を見抜く力にも長けているのでしょうし、この言葉の裏には『自分の声帯に従うべきだ』という言葉が含まれていることでしょう。
自分の声帯の音域を確かめる
人の話し声の音域
一般的な成人の”話し声”の平均は
- 男性が lowF#〜mid1Cくらい
- 女性がmid2A#〜mid2Eくらい
と言われています(これも調査によって微妙に変わってきます)。
あくまでこれは平均の値なので、実際にはテンションや雰囲気など場面場面でもっと広い音域で話しているでしょう。
僕は声帯の音域を考えるとき、
- 『話す時の音程の底(最低音)』
にいつも注目しています。
*出せる最低音ではなく、話す時の自然に出てくる最低音です(おそらくこれがその人の自然な最低音)。
この話す時の音程の最低音が、
- 男性は lowE〜mid1Eくらい
- 女性は midF#〜mid2F#くらい
個人によってざっくりこれくらい差があると感じています(もちろん、これをはみ出す人も普通にいます)。
つまり同じ性別でもすごく低い人とすごく高い人では1オクターブ近く差があることになります。
とにかく、自分が自然に出せる最低音を基準に考えるといいでしょう。
とは言えわかりにくいという場合には、アーティストが普通に話しているインタビュー動画などと一緒に”何も意識せず”話してみると確かめやすいと思います。
似た声帯を持っている場合は『無理なく自然と』同じような音程になるでしょう。
で、同じような話し声の音程になる人は自分と近い声帯を持っているはずなので、その人の歌は同じように歌いやすい可能性が高いという風に考えられるわけです。