今回は換声点についてのお話です。
地声から裏声へと声区が移行する音階のことを『換声点』と言います。
よく「換声点をなくす」「換声点を克服する」などという使われ方をしていますね。この換声点をスムーズに移行できれば歌える音域は格段に広がります。
今回はそんな換声点について。
「換声点」とは
換声点とは
- 声区が切り替わる音の地点(音階)のこと
- 主に地声から裏声の切り替わる点のこと
を指します。
また声区とは『地声やファルセットなどの声の種類ごとにある音域帯のこと』ですね。
そしてその発声方法(声帯の使い方)が切り替わる点を『換声点』というのですね。
厳密に言えば、換声点は「なくす」ものではないですし、「克服する」ものでもないですね。
言葉のニュアンスはさておき、その実質的な意味は「換声点を滑らかに移行する」という意味で使われています。
ここでは細かいことは気にせず、「滑らかに移行する」という意味で一般的に使われるように「なくす」「克服する」と使うことにします。
*逆にこの換声点付近を上手くコントロールできないことによって、地声から裏声に急激に変化したりしてしまうことを『換声点ショック』と言ったりします。
換声点は「点」じゃない
実は換声点は一点(一音)ではないです。
先ほどはわかりやすくぶつ切りな図を作ったのですが、実際はこんな感じになるはずです。
もっと正確に言うと
- 『決まった固有の点(音階)ではない』
ということです。
換声点と言いつつ、切り替わる地点は『この音だ』言い切れるものではないということです。
大体この音~この音の間くらいで切り替わるなくらいの範囲があり、その範囲の中で切り替える音を換声点と言います。
本来は使い方的に正しいのは「自分の換声点はこの音!」と示すものではなく、譜面上で「ここが換声点!」と示すものの方が本来のニュアンスに近いはずです。
これを頭に入れておくのは非常に重要です。
なぜなら、
換声点に悩んでいる人は
- 「これを点として考えてしまっている」
もしくは
- 「これを点にしかできない」
という状態であることが考えられるからです。
実際には地声域と裏声域はかなりの割合で重なっていますし、そうなることが理想的です。
最適な換声点は人によって違う
当然ながら最適な換声点は男女で違いますし、個人の持っている音域によって違います。
持っている音域(声帯)が違えば、切り替わる地点も当然違います。
性別の違いによるのはもちろんですが、個人個人持っている声帯が違うので人それぞれに換声点があると言えます。
これがよく自分に合うキーに合わせて方ががいいと言う最大の理由の一つですね。
換声点のズレ、すなわち声区がズレるのでキー設定が重要なのです。
つまり最適な声区の範囲はそれぞれに決まっていてそれにあった換声点があるのですね。
これはあくまで目安の話ですが、
自分の声の最低音あたりから
- 1~1.5オクターブ目くらいに最も楽で自然な換声点(ポップスではあまり使わない)
- 1.5~2オクターブ目くらいに歌唱上最適な換声点(無理のない発声方法に多い)
- 2~2.5オクターブ目くらいに切り替えるべき(限界の)換声点(ロックシンガーに多い)
があると考えられます。
あくまで目安のお話で、個人差はあるでしょう。
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『自分の持っている声帯の音域』と『魅力的な音域』の関係性について
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換声点をなくすための考え方
換声点を乗り越えるためのミックスボイスではない
換声点を上手く乗り越えられない・上手くファルセットに切り替えられない状態の時に
- 『ミックスボイスで間を埋めよう』
みたいな教えがありますね。
つまり換声点をミックスボイスで乗り越えるみたいな言い方で教えられます。
このような考え方は個人的には良くないと思っています。
単純に地声と裏声の間が空いてしまっている人は
- 地声の鍛え不足
- 裏声の鍛え不足
のどちらか、もしくは両方だと考えられます。
まぁそもそも”ミックスボイスとは何?”という部分が世界的に解決してないので、どうしようもないのですが、声区そのものは地声と裏声で完結すると考えておいたほうがお得だと思います。
例えば、「ミックスボイスの換声点がガラガラする」「換声点付近のミックスボイスが弱い」などの悩みの問題は大抵の場合”そのミックスボイスと思い込んでいる発声そのもの”が『悪い発声』であることがほとんどなのかもしれません。
「ミックスボイスの換声点が〜」と悩んでいる方はこちらを読んでみてください。
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ミックスボイスの声量を上げる方法
続きを見る
つまり地声と裏声の範囲が広ければいい
つまり地声・裏声の声区の範囲が広ければ換声点をスムーズに乗り越えられるのですね。
なので考え方としては「地声」「裏声」の音域を広げるような考え方になります。
地声であれば高音域方向へ、裏声であれば低音域方向へ広げていくような感じのイメージがいいです。
そもそも換声点に悩む人の多くは変声期?
これはあくまで予想でしかないのですが、
- 換声点に悩んでいる人の多くは変声期中、もしくは変声期が完全に終了していない人が多いのではないか
と思っています。
先ほども少し書きましたが、変声期中は地声と裏声が離れてしまったり、裏声が全然上手く出せなかったり、換声点付近が上手く切り替えられずにガラガラ鳴る、などと言った症状が普通に起こるでしょう。
声帯が大きく変化している最中なので仕方のないことです。
この場合、
- 変声期が終わるのを待つ
というのが実は最善の策だったりもするでしょう。
換声点を克服するトレーニング
基本的な方針をまとめると
- 地声の高音域を鍛える
- 裏声の低音域を鍛える
- 地声と裏声をつなげる
というのが換声点をスムーズに移行するための手順ですね。
手順とは言っても全部同時に進行していくような形がいいです。
地声を鍛えつつ、裏声を鍛えつつ、つなげる練習という感じですね。
地声を鍛える
地声の高音域を鍛えるベストな方法は『コツコツと一歩づつ開発すること』です。
結局これに勝るトレーニングはないのかもしれません。
詳しいトレーニング方法はこちらに書いているので、ぜひ参考にしてみてください。
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地声の高音域を広げる方法【結局、地道なトレーニングが一番いい】
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裏声を鍛える
裏声は主に低音域を鍛えていく方向性になります。
ただ、そもそも換声点の切り替えがうまくできない人は裏声全般が苦手な人が多いです。
ほぼこれが原因でしょう。
つまり裏声をしっかりと開発して裏声の範囲を広げることが換声点においても非常に重要な要素というわけです。
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裏声(ファルセット)の音域を広げるトレーニング方法について
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地声と裏声を切り替える
地声と裏声の開発ももちろん重要ですが、実際に切り替える動きをトレーニングすることが最も理にかなっています。
だって綺麗に切り替えるのが目的なのですから、切り替える練習をするのがベストでしょう。
地声と裏声をとにかく連続して切り替えるトレーニングをします。
音程はなんでもいいので、とにかくたくさん連続して切り替える練習をすることで綺麗に切り替える能力だけでなく、両方の声区が開発されていきます。
実際に切り替えるという能力と声区の開発を同時に行えるので、連続的に切り替える練習は非常にいい練習です。
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『地声と裏声の交互切り替えトレーニング』で輪状甲状筋を鍛える
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