換声点は「地声」と「裏声」が密接に関係するので、多くの悩みや問題点が生まれます。時には「ミックスボイス」なんてワードも出てきたりして、本当に厄介ですね(*この問題は根深い)。
今回は、そんな「換声点」についてまとめた内容です。
目次
「換声点」とは
換声点とは
- 声区が切り替わる音階のこと
- 主に地声から裏声へと切り替わる点のこと
を指します。
*ちなみに、よく「喚声点」と誤表記されたりしますが、正しくは「換声点」。喚く(わめく)声の点ではなく、換わる(かわる)声の点ですね。
『声区』とは、簡単に言えば『声帯の使い方の区分のこと』で、
- 地声(声帯筋が働く発声)
- 裏声(声帯筋が働かない発声)
の種類の声区(発声のメカニズム)があります。
詳しくは『声が裏返る仕組みについて』の記事にて詳しくまとめているので、ここでは省略します。
つまり、この声帯のモードが切り替わる点(音階)を『換声点』というのですね。
わかりやすい換声点の例↓
ヨーデルはこの「換声点」に焦点を当てるような歌唱方法です。
スポッと抜けたポイント(2:56〜)が換声点です↓
換声点は「一点」ではない
先ほどはわかりやすくぶつ切りな図を作ったのですが、実際は地声と裏声の音域は鍛えれば大きく重なります。
なので、換声点はたくさん作れるということになります。
つまり、
- 『固定された点(音階)ではない』
ということです。
人によっては「(現状)一点しか作れない」という人もいるでしょうが、声帯の柔軟性がある人ほど換声点のポイントを多数作れる、つまり色々な音階で地声と裏声を自由に切り替えることができるでしょう。
声帯が柔軟な人は、1オクターブくらいは余裕で換声点を作れるはず。
最適な換声点は人それぞれ違う
「換声点はたくさん作れる」とは言っても、
- その人にとって自然な(=最適な・魅力的な)換声点の音階はある程度決まっている
ので、その最適なポイント周辺を「換声点」と表現する場合も多いでしょう。
この”最適な換声点”は、個人の持っている声帯の音域によって違います。
このように男女の大きな違いはもちろん、同じ性別であっても換声点は高い人も低い人もいます。
基本的に声が低い人は低い位置にあり、声が高い人は高い位置にあります。
また、この”最適な換声点”は「鍛えれば好きな位置に動かせる」というものでもなく、ある意味生まれながらに決まっている(*声変わり終了時点で決まる)ものとも言えるでしょう。『最適な』なので。
そして、これが『自分に合うキーで歌いなさい』と言われる最大の理由とも言えるでしょう。
-
声帯の『音域タイプ』について【魅力的な音域帯は人それぞれ決まっている】
続きを見る
なぜ換声点はガラガラしたり、かすれたりするのか
換声点の問題で特に多いだろう「ガラガラ」「かすれる」という問題に先に触れておきます。
深い原因は色々なところに枝分かれしていくと考えられるので、全ての人にマッチする答えを述べることはできませんが、根本的に何が起こっているのかというと、
- 声帯が完全な地声にも裏声にも行けないどっちつかずな状態にある
と考えられます。
なので「ガラガラ」もしくは「カサカサ」しているのですね。
冒頭の方で少し触れましたが、これは「声帯筋(地声)」と「声帯靭帯・上皮(裏声)」の問題です。
ちょっとややこしいので、ここでは簡単に
- 地声を『肉』の打ち合いで鳴らす発声
- 裏声を『皮』の打ち合いで鳴らす発声
と考えましょう。
このように考えます。
そうすると、
- 綺麗な地声は『肉・肉・肉・肉♬』
- 綺麗な裏声は『皮・皮・皮・皮♬』
と高速で声帯が振動します。
「肉」と「皮」のイメージが掴めない人はこちらで(赤の部分が「肉」、オレンジの部分が「皮」)↓
で、換声点付近が不安定な人が地声から裏声に切り替えようとすると、
- 『皮・肉・皮・肉♬』→『ガラガラ』。中途半端に不規則に「肉」が混じる音がノイズになる。
- 『うす皮・うす皮・うす皮・うす皮♬』→『カサカサ・かすれ』。皮が綺麗に鳴らせなくて息漏れしたスカスカな音になる。
こんな感じの問題が起こると考えられます。
つまり、その換声点付近の音階を純粋な『肉』or『皮』で鳴らせない状態になっているということです。
ということは単純に考えると、換声点をどちらかで綺麗に鳴らせるようにトレーニングしていけばいいだけのお話ですね。
ただ、厳密には「どちらか」だけでは不完全で、両方とも綺麗に鳴らせる音域が重なっていくように鍛えると換声点を綺麗に切り替えられるようになる場合がほとんどでしょう。
換声点トレーニング
換声点の問題は人それぞれ色々あるでしょうが、換声点を攻略する基本的な方針は
- 地声の高音域を鍛える
- 裏声の低音域を鍛える
- 地声と裏声をつなげる
という3つになるでしょう。
声区がしっかりと重なっていくイメージです。
①地声を鍛える
地声の高音域を鍛えるベストな方法は、『コツコツと一歩づつ開発すること』です。
換声点付近は特にゴリ押すのではなく、丁寧に鍛えていく方が最終的には得をするはず。
詳しいトレーニング方法はこちらに書いているので、ぜひ参考にしてみてください。
-
地声の高音域を広げる方法【結局、地道なトレーニングが一番いい】
続きを見る
②裏声を鍛える
裏声は主に低音域を鍛えていく方向性になるでしょうが、そもそも換声点の切り替えがうまくできない人は裏声全般が苦手な人が多いでしょう。
なので、裏声全般を鍛えるつもりでトレーニングするのがお得でしょう。
裏声を鍛えるトレーニングはこちらの記事にまとめています。
-
裏声(ファルセット)の音域を広げるトレーニング方法について
続きを見る
③地声と裏声を交互に切り替える
地声と裏声の開発ももちろん重要ですが、実際に切り替える動きをトレーニングすることが最も理にかなっています。
『地声と裏声を連続して切り替えるトレーニング』をします。詳しくはリンク先にまとめていますが、名前の通り単に切り替えるトレーニングです。
最初は間が空いていても、継続していくうちに間が狭くなってくるでしょう。
また、この切り替えをなめらかにするのにおすすめなのが『リップロール』です。
リップロールをしながら地声から裏声までを行ったり来たりすることで換声点付近のバランスを整える補助になるでしょう。
とにかくたくさん連続して切り替える練習をすることで綺麗に切り替える能力だけでなく、両方の声区が開発されていくでしょうから一石二鳥です。
換声点は「なくす?」「綺麗に切り替える?」
「換声点」における大事なポイントだと思うのですが、『換声点の考え方は音楽のジャンルによって違う』と考えられます。
特に、
- マイクを使わない「クラシック」
- マイクを使う「ポップス」
この二つは「換声点をなくす」「換声点を克服する」などの意味合いが、全く違ってくるだろうと思われます。
「換声点をなくす」とは、
- クラシックは文字通り「切り替わるポイントがわからないように消す」
- ポップスは「自在に綺麗に切り替えられるようになる」
という意味合いになるでしょう。
クラシック系は、換声点が完全に消えて切り替わるポイントを認識できないようにすることが良しとされる↓
ポップスは、基本的に明確に切り替わる点が認識できるような発声をする↓
このようにジャンルによって換声点の考え方が大きく違ってきます(*もちろん傾向のお話で全てではない)。
発声の仕方が全然違うので、
- 切り替わる点が完全にわからないようにするのか
- わかりやすく自在に切り替えるのか
自分が目指すところに合った換声点の考え方をすることが重要でしょう。
換声点に関しての悩みや問題点
換声点に関する悩みや問題点は、人それぞれ違うでしょうから全ては網羅はできませんが、当てはまることが多そうなものを3つピックアップします。
- ミックスボイス問題
- 変声期問題
- そもそも裏声が正しくない問題
①換声点とミックスボイスの問題
換声点を上手く乗り越えられない・上手くファルセットに切り替えられない状態の時に、
- 『ミックスボイスで間を埋めよう』
と言われたりします。
つまり、「換声点をミックスボイスで乗り越える」という意味合いですね。
このような考え方は個人的にはあまり良くないと思っています。
これはこれまでの内容でもわかると思いますが、『地声と裏声の音域は(少なくとも鍛えれば)大きく重なる』からです。
鍛えなくてもそうなっている人もたくさんいるはず。周りの人・友人・家族など探せば普通いると思います。
なので、「ミックスボイスを身につけなければいけない」という固定概念はもったいない。
このミックスボイス問題はかなり複雑なのでここでは省略しますが、もしすでに「ミックスボイスの換声点がガラガラする」「換声点付近のミックスボイスが弱い・声量がない」などのように「ミックスボイスが〜」という悩みを抱えている場合は、『ミックスボイスの悩み』に関しての記事に解決策をまとめています。
②換声点に悩む人の多くは変声期?
おそらく、換声点に悩んでいる人の多くは変声期中、もしくは変声期が完全に終了していない人が多いのではないかと思われます。
変声期中は
- いわゆる「換声点ショック」と呼ばれるような、不自然な裏返りと音飛びが起こる
- 地声と裏声が大きく離れてしまう
- 裏声が全然上手く出せなくなる
- 換声点付近が上手く切り替えられずに、ガラガラ鳴る
など様々な症状が起こるでしょう。
声帯が大きく変化している最中なのでこれは仕方のないことですし、いくらトレーニングしてもどうしようもないこともあるでしょう。
この場合、変声期が綺麗に終わるのを待つというのが、実は最善の策だったりもするのかもしれません。
③そもそも裏声が正しくない問題
換声点の問題は「地声」と「裏声」の問題ですよね。
で、多くの人は普段使っている地声は上手く使えるでしょうから、地声に特別大きな問題を抱えている人は少ない。
ところが裏声は、人によって大きく差が出ます。
しかも、裏声の能力の差だけならまだしも「その人が裏声と思い込んでいる発声そのもの」が正しくない場合が結構あります。
正しい裏声が出せない人は意外といるので、「換声点が〜」という問題が非常にややこしく複雑になります。
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正しい裏声について【犬ファルセットと猫ファルセット】