「歌うときに喉が締まる」「喉締めが治らない」という悩みを抱えている人も多いと思います。
今回は、そんな喉締めの原因と改善方法についての内容です。
歌うときに喉が締まる原因と改善策
歌うときに喉が締まる理由は主に
- 声変わり(変声期)
- 声帯の能力不足
- 苦手な発音がある
- 癖になっている
- 何らかの発声障害を抱えている
という5つの理由が考えられます。
それぞれ詳しく掘り下げます。
①声変わりが原因で喉が締まる
声変わりの時期は、声帯が大きく変化している最中なので、『声が不安定な時期』です。
一般的には、12〜18歳くらいの時期が一番当てはまりやすいでしょうが、時期には個人差があるので一概には言えません。
この時期は、声帯の変化に合わせて声に関する様々な問題が起こりやすく、当然「喉が締まりやすくなる」という問題を抱える人もいます。
原因は「声帯の変化・成長」にあるので、ある意味仕方のないこととも言えるでしょう。
改善策
もしこれが原因であるのなら、「声変わりが終わるのを待つ」というのがベストな改善策になるでしょう。
こればかりは、トレーニングでは手の打ちようがないので、我慢が必要です。
②声帯の能力不足
声帯の能力が低い場合、喉締め発声が起こります。
具体的には、主に
- 『声量』を出す能力が低いとき
- 『高音』を出す能力が低いとき
に喉が締まります。
それぞれ掘り下げます。
⑴『声量』が原因で喉が締まる
これは、現状の自分の能力を超えた声量を出そうと喉が締まるということです。
まず、声帯というのは息という風によって細かくなびく弁です。この弁が絶妙に閉じ、その細かい振動により音が鳴ります。
そして、声量を大きくするときというのは基本的に「息を強く吐く」という行動を取ります。
もし、この息が強すぎたらどうなるか?
声帯が息の圧力に耐えられずに、綺麗に振動させられなくなります。声帯を綺麗に閉じた状態を維持できないのですね。
実際には、声帯がこんな風に押し負けることはないのですが、こういう事態が起こりかけます。
この”起こりかける”というのが、喉締め原因です。
人は自分の制御できる範囲を超えた声量(声帯が支えきれない息の量)になった場合、それでも声帯をしっかりと閉じていよう(綺麗な声を維持しよう)とします。
この時、声帯をコントロールする力は目一杯使っているので、もう声帯だけで息を支えられる余力はありません。なので、喉全体を使って締めようとする(=声帯が息を支えられるようにする)のです。
これが、声量によって喉が締まる理由になります。
声量を大きく出そうとする→息の量を多く吐く→声帯が息を支えられない→喉全体を使って声帯を支えようとする=喉が締まる
という流れです。
実はもう一つ、
この”息の強さを支える”とき、『仮声帯』という部分が働くこともあります。
この仮声帯も、声帯の息を支えようとする役割があり、大声を出した時に声が『ガラガラ・ゴロゴロ』鳴る正体はこの仮声帯の働きです。
主に、怒鳴り声やがなり声、張り上げ発声などで鳴ることが多いでしょう。
がなり声や張り上げ発声は、喉締め発声とは少し方向性が違うので、ここでは省略します。
改善策
声帯が息の圧力をある程度支えられるようになれば、大きな声量を出しても喉は締まりにくくなります。
とは言え、どんな人にも声量の限界はありますので、あくまで個々の声量の限界範囲内において鍛えるということを頭に入れておきましょう。
声量のトレーニングの軸は
- 息の力そのもの
- 息と声帯の連動性のトレーニング
という二つです。
両方大事なのですが、喉締めに関しては特に「息と声帯の連動性」=『声帯が息の力を上手く活かす能力』が重要になってくるのでここを抑えておきましょう。
トレーニング方法は『ドッグブレス』がおすすめです。
このトレーニングは、声量のトレーニングにもなりますし、息を支える声帯の力を向上させるトレーニングにもなります。
-
息に声を乗せる【”息の重要性”と声帯との連動性について】
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⑵『高音』が原因で喉が締まる
これは、自分の能力を超えた『高音』を出すときに喉が締まるということです。
声を高くするための主な動きは、4つあり、
- 声帯を伸ばす(*メイン)
- 喉や声帯を締める
- 息を強める
- 裏声にする
です。
このうち「声帯を伸ばす」という動きが、高音発声における主役です。
もし、この声帯を伸ばす能力が低い場合、当然高音は出せないことになります↓
伸びる能力が足りないので、これ以上「伸ばす」という選択肢はない。
この状態でより高音を出そうとすると、残された選択肢は先ほどの4つの中から、
- 喉や声帯を締める
- 息を強める
- 裏声にする(*除外)
になるわけですが、裏声にするというのは今回のテーマに沿っていないので、除外します。
そうすると、残りは2択になります。
喉や声帯を締める
限界以上の高音を出そうとすると喉が締まる、というのは多くの人が経験したことがあることでしょう。
声帯がこれ以上スムーズに伸ばせないという状態で、高音を出そうとすると喉周りが(勝手に)締まってきます。人間に備わった本能の力というか、そういう仕組みになっているのですね。
なので、この声帯を伸ばせる能力が不足していると、高音で喉が締まってしまうということです。
ただ、どんなに鍛えられたシンガーでも音程をどんどん上げていけば、いつかはこれが起こります。人間は無限に高音を出せるわけではないので。
なので、鍛えられる範囲までは喉締めが起こらない発声が作れる、ということになります。
息を強める
また、もう一つ残された選択肢は「息を強める」ですが、そうなると先ほどの声量の項目と同じお話になります。
息の力が強くなりすぎると、結局「喉が締まる」もしくは「がなり声になる」。
改善策
息を強めるに関しては、先ほどと同じです。
声帯を伸ばす能力を向上させる方法に関しては、色々な方法があります。
高音における喉締め発声を改善するためには、まず脱力促進系のボイストレーニングが有効だと考えられます。
例えば、
などは、高音発声時の脱力を促すのに効果的です。
シンプルに『声帯の柔軟性(声帯コントロール)を向上させるトレーニング』もいいでしょう。
大事なのは声帯を伸ばす能力なので、この部分をコツコツと鍛えればいいのですね。
また、高音が喉締めの原因である場合、
- 一度『喉締めにならない音域』まで戻って、その発声状態の音域をゆっくりコツコツと広げる
という考え方がおすすめです。
おそらく、高音が原因で喉が締まるのであれば、必ず喉締めにならない音域帯が存在するはずなので、”その音域帯の発声状態を維持したままゆっくりと音域を広げる”練習をするというのが、誰でもわかりやすく解決できる方法だと思います。
しかし、こういう練習方法は地道・つまらない・大変・効果が短期間でわかりにくい、など人が嫌うデメリットを多く抱えています。
なので、楽な道や一気にジャンプできる道を探してしまいますが、結局コツコツとした練習に勝るものはないでしょう。
-
地声の高音域を広げる方法【結局、地道なトレーニングが一番いい】
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③苦手な発音がある
これは、発音によって喉が締まってしまうということです。
例えば、
- 「イ」や「ウ」の母音だけ喉が締まる
- 「ナ行」だけ喉が締まる
- 「ン」の発音だけ喉が締まる
などなど、特定の発音だけ喉が締まってしまうということです。
これは、能力不足、歯並びや口の作りの問題、舌の作りの問題など様々な問題によって起こります。
改善策
この場合の改善策は、
- 苦手な発音を克服する
- 発音の仕方を変える
という二つになるでしょう。
具体的な症状は、人によって違うでしょうから、はっきりとしたことは言えませんが、基本的には苦手な発音をひたすらに繰り返すというのが一つのトレーニング方法になります。
外国語のトレーニングのように、たくさん練習すれば発音できるようになるのと同じイメージです。
しかし、体の作りの問題でどうしてもその発音で締まる、ある特定の音階とある発音が組み合わさると締まる、などの場合はあるでしょう。その場合、発音そのものを少し工夫する必要があります。
例えば、「い」で喉が締まるなら、「いぇ」っぽくする。などのように、喉が締まらない方向へ少し変えるのですね。日頃の会話ではおかしいかもしれませんが、歌においては、意外と多くのシンガーがこれをやっていたりします。
④癖になっている
これは、喉を締めるという動作が、歌う時の喉や声帯に染み付いていてるということです。
つまり、癖になっていて、なかなか別の動きができない状態ということです。
見方を変えれば「能力不足」とも言えるかもしれませんが、あくまで「癖」と捉えた方がいい場合もあります。
特に、日本人は喉を締める癖がつきやすい傾向にあります。なぜなら、日本語は喉を締めるような特性を持つ言語だからです。
例えば、「私は音楽が好きだ」と日本語でゆっくり発音してみると、「私は*音楽が*好きだ*」のように*の部分で喉や声帯を締めて、息の流れをせき止めるようなブレーキの効いた声帯の使い方をするのがわかると思います。
このように、日本語は音節や語尾で喉を締める特性があるので、それによって喉を締める癖がつきやすいということですね。
多くの人は、普段の会話で喉を締めているつもりなんて全くないでしょうが、それはつまり、癖になっている(=無意識にできる動作)と言えますね。
このような普段の会話にける声帯の使い方の影響が、歌に出てしまっている人もいるでしょう。
もちろん、言語の特性に関係なく喉締めは癖になりますので、癖がついている以上は抜いていくしかないですね。
改善策
癖は、体に染み付いたものなので、少しづつ抜いていくことになります。
基本的には、喉を締めないように強く意識して声を出す練習をひだすらに繰り返し、良い癖に塗り替えていくというものになるでしょう。
また、『上を向いて声を出す』というのも良いです。
上を向くと、喉の全面が伸びて、喉を締めにくくなります。つまり、無理やり喉が締まらない状況を作れるので、これによって喉締めの癖を抜いていくということです。
⑤何らかの発声障害を抱えている
上記までの内容に当てはまらない場合は、何らかの発声障害を抱えている場合があります。
もし、喉締めがいつまでも解消しない場合は、一度病院や声のクリニックなどに診てもらった方がいいでしょう。
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