この記事は
前半は歌の基礎練習のやり方について。後半は歌における「基礎」と「応用」の考え方についての内容です。
目次
歌の基礎練習のやり方
早速ですが、歌の基礎練習は
- スケール練習【音程・リズム】
- 息を鍛える【発声の質】
- 現状の自分の音域でも歌える曲を、ひたすらに歌い込む【総合力】
という3つの軸で取り組むといいと考えられます。
①スケール練習
「スケール練習」とは、ピアノの音階に合わせて「あああ〜♪」などと歌うような練習のことです。
イメージ↓
こういうトレーニングをコツコツと長期的に継続すると、かなりの基礎力つきます。
スケール練習は色々な発音でやることによって、発声能力が鍛えられることはもちろんですが、特に「音感」「リズム感」の基礎力を鍛えるのには最適です。
初心者に良いのは当然ですが、プロのシンガーも基礎力を維持する(整える)ためにやっていたりするので、スケール練習はどんな人にも良いトレーニングと言えます。
スケール練習の発音は、
- 好きな発音
- 苦手な発音
- 何かの能力を高めるために役立つ発音
など、お好みで。
音階に関しては、
- まずは、自分が難なく出せる音階でピアノに合わせて色々なスケールをやってみる。出しにくい音階や出せない音階は後回しにする。
- 難なく出せる音階を継続的にトレーニングしつつ、出しにくい音階にも少しづつ挑戦していき、コントロールできる領域を広げていく
というような流れで取り組むといいでしょう。
後ほど、詳しく述べますが、無理な音域にいきなり取り組むのはデメリットが大きいので、焦らずコツコツと進むのがおすすめです。
スケール練習に関して、より詳しくはこちらの記事にまとめています。
-
スケール練習で歌の基礎力を鍛える【スケール練習の重要性について】
続きを見る
②息を鍛える
息の力・コントロールを鍛えることは、基礎として重要だと考えられます。
偉大なシンガー達も”重要なテクニック”として、「まずは息」と語る人も多いです。
声は、「息」「声帯」「共鳴」「発音」という4つの要素によって作られています。
そして息は、歌の出発点・原動力なのでとても重要ということです。
多くの人は、普段の会話量で必要な息の循環はできるのですが、歌にはそれ以上にたくさんの息の循環が必要になるので、息のコントロール能力が必要になるのですね。
こういう点で、息の強化が重要なのですね。
また、息の能力は『発声の質』を良くするためにも大きな役割があります。そういう点でも、息を鍛える必要はあります。
「息を鍛える」とは、具体的には
という4つの能力を鍛える必要があります。
息と発声の基礎トレーニングとしてのおすすめは、「ドッグブレス」です。
これもコツコツと続けると、だんだんと成果が出てくるでしょう。
③現状の音域でも歌える曲を歌い込む
おそらく、これが最も幅広く効率のいい基礎トレーニングになると考えられるのですが、
- 『現状の自分の音域でも”無理なく楽に歌える音域”の曲を歌い込んで極めること』
です。
言い換えると、『「音域」を思いっきり捨てて、その他に集中すること』とも言えます。
これは「音域」が応用に当たるのはもちろんのこと、音域を気にすることで基礎の成長を妨げる可能性が高いからです。
例えば、今の自分に無理がある音域の曲を練習すると、頭の中が音域のことでいっぱいになってしまいます。
「あのフレーズの高音をどう歌うか」ばかりに集中してしまい、結果的に他の大事なことへの意識が薄れてしまうのですね。
さらに、基礎ができていない状態で無理がある曲を練習し続けると、なんとかして高音を出そうとするため「変な発声」「間違った発声」を身につける可能性が高まります。
一度「変な発声」を身につけてしまうと、歌の基礎の成長を妨げ歌全体の成長が鈍ってしまいます。
さらに、その「変な発声」が染み付いて癖になってしまうと、元に戻すのにも時間がかかるでしょう。
もちろん、あくまでも可能性の話で『悪い結果を生まなければ、どんな曲を練習してもいい』とも言えます。
しかし、
高音のことなんて考えなくていい状態を作れば、必然的に歌の『音程』『リズム』『発声の質』としっかりと向き合う余裕が生まれるので、結果的に歌の基礎力を総合的に向上させやすくなることは間違いないでしょう。
子供の頃から歌を歌っている人が、歌が上手になりやすい理由もこれですね(*子供は声が高いので、音域のことをあまり気にしない)。
歌いこんでいくうちに少しづつ音域が広がってくるでしょうから、曲の音域やキーはその都度ゆっくりとステップアップして広げていくのがベストでしょう。
もし、「声が低すぎて自分の現状の能力で歌える音域の曲がない」という場合は無理矢理作りましょう。
- 「性別の違うシンガーの曲をオクターブ上or下で歌う」
- 「キーを変える」
などで対応しましょう。
歌の「基礎」と「応用」の考え方を整理する
先に基礎トレーニングの内容について述べましたが、なぜ上記3つのことが歌の基礎を鍛えることにつながるのかというのは、「歌の基礎と応用をどう考えるか」「何が基礎になるのか」という部分に繋がります。
- 基礎とは”歌の3要素”に対しての、「質」「精度」「正確性」
- 応用とは”歌の3要素”に対しての、「幅」「速度」「変化」「組み合わせ」
のように考えると、上手く整理できると考えられます。
①歌における”基礎”とは
歌の”基礎”は、歌の3要素に対しての「質」「精度」「正確性」と言えるでしょう。
まず、歌の3要素は「①音程」「②リズム」「③音色の質」です。
この3つが揃うと、『歌』になるのですね。
つまり、歌が上手いというのは、
- 「音程」を合わせるのが上手い
- 「リズム」合わせるのが上手い
- 「音色の質」が良い
のいずれか、もしくは全てを満たす状態ということになりますね。
ということは、
- 「音程」を合わせる能力を高める
- 「リズム」を合わせる能力を高める
- 「発声の質」を良くする
というように、歌の3要素に対する「質・精度・正確性」を向上させることが歌の基礎になると言えます。
この「質・精度・正確性」という部分は、『応用』に感じることもあるかもしれませんが、歌はこれらが『基礎』になるということが、ある意味厄介なところなのかもしれません(*基礎と応用を間違えやすいということ)。
”歌”というものを成立させるために必要な3つの要素であり、この3つの色を濃くしていくようなイメージが基礎練習と考えるといいと思います。
前半で紹介した、
- スケール練習【①音程・②リズム】
- 息を鍛える【③発声の質】
- 現状の自分の音域でも歌える曲をひたすらに歌い込む【総合力(①②③)】
の3つも、この歌の3要素をベースにしています。
そして、『応用は基礎の上に成り立つものであり、基礎を飛ばした応用では土台がグラグラになる』ということも頭に入れておくべきでしょう。
これは、歌に限らず多くの事柄において同じようなことが言えるはず。
②歌における”応用”とは
歌の”応用”は、歌の3要素に対する「幅」「速度」「変化」「組み合わせ」で考えるといいでしょう。
例えば、基礎を保ちながら発声できる
- 「音域」の幅
- 「声量」の幅
- 「音程」や「リズム」を切り替える速度
- 「発声の質」の幅や変化
- それらすべての組み合わせによる技能=テクニック
などが応用に当たるでしょう。
応用の極みのイメージ↓
応用とは、言い換えれば『基礎の幅・速度・変化・組み合わせ』などのように表現することができます。
基礎が成り立った上でのものということです。
おそらく、歌において多くの人にとって魅力的に映るのは「高音」や「声量」でしょう。これらは「応用」であるにも関わらず、真っ先に取り組みたくなる項目でもあるのですね。
しかし、先ほど言ったように『基礎を飛ばした応用では土台がグラグラになる』可能性があります。
例えば、
- 基礎がしっかりとできていないのに「高音」のトレーニングをひたすらやり続けたことで、高い声が出るだけの変な発声を身につけた。
- 基礎がしっかりとできていないのに「大声」のトレーニングをひたすら続けたことで、うるさいだけの変な発声を身につけた。
などのようなことが起こる可能性が考えられます。
もちろん、可能性のお話なので、100%そうなるとは限りませんが、やはり順序を守って練習していく方がいいでしょう。
”基礎”を飛ばしてもいい場合もある
基礎を飛ばしてもいい場合、もしくは飛ばした方がいい場合も存在すると考えられます。
それは、
- 「手っ取り早くカラオケで歌えるようになりたい」
- 「なんとか苦手なカラオケを乗り切れるようになりたい」
など『できるだけ早い時間・少ない努力で短期的に大きく成長したい場合』です。
言い換えると、「気軽に歌を楽しみたい人」という感じです。
こういう場合、真っ先に応用の練習に取り組んだ方がニーズを捉えられる可能性は高いかもしれません。
なぜか?
これは、「基礎」は時間がかかるからです。
基礎を『良い土台』とするには、じっくりと積み上げる時間が必要ですし、それ相応のトレーニング量が必要です。
ところが、手っ取り早くカラオケで普通に歌えるくらいの技術を身に付けたい、そこまで努力せずにカラオケを楽しめるくらいになりたい、という人にとってはそれらは重すぎるのですね。
結果的に、基礎をチョコチョコやっているだけでは時間も練習量も足りないので、「あまり効果がない」「ほとんど成長できない」ということになってしまいます。
そうなるくらいであれば、応用のトレーニングに真っ先に取り組んだ方が、ニーズを捉えられるでしょう。
プロのように真剣に歌が取り組みたい人は、基礎から徹底的に取り組むのがオススメですが、娯楽的に楽しみたい人は一気に応用のトレーニングをした方がいい場合もあるということを頭に入れておきましょう(*本格派も娯楽派も優劣はありません)。
まとめ
歌の基礎練習は、
- スケール練習【音程・リズム】
- 息を鍛える【発声の質】
- 現状の自分の音域でも歌える曲をひたすらに歌い込む【総合力】
という3つに取り組むといい考えられます。
これによって『音程』『リズム』『発声の質』という歌の3要素を上手く鍛えられるでしょう。
また歌の「基礎」と「応用」を考える場合、
- 基礎とは”歌の3要素”に対しての「質」「精度」「正確性」
- 応用とは”歌の3要素”に対しての「幅」「速度」「変化」「組み合わせ」
という風に考えると上手く整理できます。
基礎と応用を整理し、基本的には基礎から固めていくことで長期的にしっかりと歌を成長させることができるでしょう。しかし、短期的な成長を求めるのなら基礎を飛ばしたほうがいい場合もあります。