今回は「歌声が細い」「歌うときに細い声になってしまう」という問題のテーマです。
声の太さ・細さというものは、喉の作りも大きく関係している問題でもあります。ただし、それがいい音色であれば音色の印象の問題であり、その二つに本質的な優劣はありません。
しかし、歌においては『いい音色ではない』というニュアンスを含んだ「細い声」というものがあります。
『か細い歌声・弱々しい歌声・線のような歌声』などになってしまうことで悩んでいる人もいるかと思われます。
これがなぜ起こるのかについての研究考察です。
歌声が細くなってしまう原因
歌声が細くなってしまう原因は
- 咽頭腔が狭くなっている(=喉仏が上がっている)
- 声帯が器用に硬くなっている
- 息の勢いが足りていない
という3つのどれか、もしくは全てが重なっていると考えられます。
⑴咽頭腔が狭くなっている(=喉仏が上がっている)
声の太さというものは、ほとんど『咽頭腔の広さ』によって決まります。
この空間が広い人ほど声が太くなり、この空間が狭い人ほど声は細くなります。
この空間の”自然な状態での大きさ”は、骨格によって決まるものでもあるので、それによって「声が太い人」「声が細い人」のような個人差が生まれます。
例えば、身長が大きい人の声が太いことが多いのはこの空間が大きいからですし、赤ちゃんの声が細いのはこの空間が狭いからですね。
骨格は変えられないですが、この咽頭腔はある程度操作することができます。これは喉仏を上げると狭くなり、喉仏を下げると広くなります。
つまり、
- 喉仏が上がると声が細くなる
- 喉仏が下がると声が太くなる
ということになります。
なので、何らかの原因によって歌うときに喉仏が上がってしまうと声が細くなってしまうのですね。
対策としては、喉仏を下げるトレーニングをすることで基本的にはある程度解決できると思われますが、『何が原因で喉仏が上がっているか』によっても変わってくるので、一概には言えません。
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⑵声帯が器用に硬くなっている
これは『声帯に力が入っているので声が細くなってしまう』ということです。
「器用に」という言葉をつけているのがこの問題の大事なところで、この「器用に」というのは
- 感覚としてはあまり力が入っている感じはしないのに、無意識に微妙に声帯が力んでいる
という意味です。
これの問題点は「自覚なく力んでいる」ということ。
例えば、日本語は英語と比較するとかなり声帯を硬く使う言語です。なので、日本人と英語圏の人では日本人の方が声帯が硬い人が多い傾向にあるようです。
ですが、ほとんどの人には「声帯を硬く使っている」という自覚はないはず。生まれながらの言語であり『当たり前』になっているので、自覚がないのですね。
同じように、歌うとき声帯を硬く使うのが癖になっていて、しかも力が入っているという自覚があまりない状態になっていると細い声になります。感覚的には喉に力を入れていなくても、声帯が器用に硬直している状態ということです。
声帯が器用に硬直すると、声帯の振動が硬く小さいものになるので、やや金属的だが弱々しいというような音色になり、それが『細い』という印象を生み出すのだと考えられます。
解決策
人によるとは思いますが、おそらく注意深く自分の感覚と向き合えば『若干声帯に力が入っている』というような感じを掴めると思います。
これは一種の癖なので、この癖をゆっくりと抜いていく必要があります。
まずは、何も意識せずに楽な状態で大きなため息を声と一緒に「はぁ!」と出すと、声帯に力が入っていない声になるでしょう。
この感覚の声を色々な音階や声量でコントロールできるように、ゆっくりと拡張していく作業になります。
大事なのは『細い声をどうにかしようとするのではなく、細くならない声を広げていく』という意識をもつことです。
⑶息の勢いが足りていない
これは、発声時の息を吐く量が足りていないということです。
息の力が足りなければ声帯はか細い振動しかできないので、当然細い声になってしまいます。
例えば、何も意識ぜずに「あーーー」と発声しそのまま息だけを絞っていくと「あ”あ”ぁ・・」とエッジボイスのようになっていくと思います。エッジボイスは「太い音」か「細い音」かで言えば「細い音」になります。
『歌』というものは、普通に話すときと比較すれば発声時に大量の息を使います。なので、普段話すときを同じくらいの息の出力で歌おうとすると、細い声になってしまいます。
解決策としては、『息を鍛える』というところになるでしょう。
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まとめ
【原因】
- 咽頭腔が狭くなっている: 喉仏が上がっている、骨格が小さい
- 声帯が器用に硬くなっている: 無意識に力が入っている、癖になっている、日本語の影響かも
- 息の勢いが足りていない: 発声時の息が弱い
【解決策】
- 咽頭腔を広げる: 喉仏を下げるトレーニングをする
- 声帯を柔らかく使う: リラックスして歌う、ため息に合わせた発声で力む癖を抜いていく
- 息を鍛える
それぞれを解決することで、”自分の持っている喉”の範囲内での「太い声」を作れるはずです。
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