今回は「張り上げ発声」についての内容です。
「声を張り上げる」の本来の意味は、声を強く大きく出すことです。
言葉としては、それ以上の意味はないのですが、歌においては少し悪いニュアンスの意味として使われることが多いでしょう。
例えば、
- どこか無理やり押し切るような発声
- 苦しそうに大きな声を出す発声
- 声が大きく割れていて聞きづらい発声
などを指すことが多いと思います。
こういう悪いニュアンスの「張り上げ発声」の原因と対策についてです。
張り上げ発声の原因
張り上げの原因は『直接的原因』と『間接的原因』に分けて考えると上手く整理できます。
まず、張り上げ発声の直接的な原因は
- 必要以上に強い呼気を使って発声しようとすること
です。
つまり簡単に言えば、息を強く押し過ぎることで「張り上げ」という状態になるということ。
例えば、普通の楽な発声では、声帯が息の力を上手く制御して声を鳴らしています。

ここで、息の力だけが強くなりすぎると、その圧力を支えられなくなり、声帯は押し負けてしまい上手く振動できなくなることがイメージできると思います。

ただし、実際には声を出し続けようとする限り、このように声帯が単純に押し負けて発声できなくなるわけではありません。
人間の体は、声を出し続けようと意識すれば、声帯や喉周りを緊張させてでも声を維持しようと動きます。

この緊張によって生み出されるのが「硬い音色」「聞き辛い音色」「張り上げたような音色」ということです。
なので、この無駄な緊張がない状態になれば張り上げ発声は改善するとも言えるのですが、そのためには「なぜ必要以上に息で押してしまうのか?」という間接的要因の部分を解決しなければいけません。
間接的原因は、
- 高い声を出す能力不足
- 声量を出す能力不足
- 癖やコンディションの問題
という3つ。
この3つが、改善しなければいけない根本の部分になると考えられます。
①高い声を出す能力不足
高い声を出す能力が不足すると、息で押してしまいやすいということです。
まず、声を高くするためには声帯を上手く調整する能力が必要です。
しかし、高音を出すための調整が上手くできない状態で、さらに高い声を出そうとすると、息を強く押してしまいやすくなります。そして、その過剰な息に対応するために、喉周りにも余計な力が入りやすくなります。
つまり、能力以上の高い声を出そうとして、強い息を吐くことによって張り上げ発声になっているということです。
なのでこの場合、「高い声を出す能力」をコツコツと鍛えていくことが、張り上げ発声の改善策になります。ただし、一気に伸びる能力でもないので、地道なトレーニングが必要です。
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②声量を出す能力不足
自分の現状の能力以上の声量を出そうとすると、張り上げ発声になります。
理屈は先ほどの高音と似たような感じで、
- 声量を限界まで上げようとして、息を強く吐く
- 声帯が息の圧力に耐えられないので、喉周りが緊張して硬い声になる
という流れです。
声量には、主に次の3つが関係しています。
- 息の力
- 声帯が息を支える能力
- 共鳴
張り上げになりやすい場合は、②声帯の使い方と③共鳴の使い方を改善することで、必要以上に息を押さなくても声量を出せるようになると考えられます。
まずは『声帯が息を支える能力』を鍛えるといいでしょう。これは、声帯が息の力をスムーズに音に変換する能力(声帯を効率よく振動させ、必要な音圧を生み出す能力)とも言えますが、この能力はある意味「声帯の慣れ」みたいなところもあるので、少しずつ大きな声量に慣らしていくようなトレーニングがおすすめです。
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また、リップロールやストローを使ったトレーニングは、声帯にかかる過剰な呼気圧を抑えながら発声する感覚を身につけやすいです。
『共鳴』に関しては、後回しでもいいと思います。というのも、声帯の能力が高まれば共鳴は自然と簡単にコントロールでき、声帯の能力が低ければ共鳴をいくらトレーニングしてもなかなか上手くいかないので、声帯側から考えた方が得策です。
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③癖やコンディションの問題
これは、「普段から息で押す癖がある」などの癖によって張り上げ発声が生み出されているということ。また、喉や声帯などの体のコンディションによって張り上げ発声になってしまうということです。
癖の場合は、癖を抜く。コンディションの問題の場合は、まずは問題がおさまるまで待つということが大事です。
声を強く出すこと自体は悪くない
これまで「張り上げ発声」の原因や改善策を述べてきましたが、あくまでも無理に押し切るような悪いニュアンスの「張り上げ発声」についてです。
例えば、ハードロックなどの激しいジャンルでは、明らかに無理に押し切るような発声であっても、それが良い味となる場合もあるかもしれません。
また、張り上げ感はあるけど、不快感のない発声という場合もあるでしょう。
この
- 良い張り上げ(力強い声)
- 悪い張り上げ(聞き苦しい声)
の線引きを上手くしながら改善・トレーニングすることが大切です。
