CHAGE&ASKAと言えば、日本のみならずアジアを中心に世界中の人を魅了しているアーティストですね。日本の音楽史に残るような名曲を生み出しています。
なんと言ってもASKAさんの歌声は唯一無二で最高レベルの歌唱力・スーパーボーカリストです。
あの歌声に魅了されている方も多いのではないでしょうか。
今回はそんなCHAGE&ASKAのASKAさんの歌声について書いていきたい思います。
どういう声質・声の出し方か
話し声・地声の音域は低めの音域で、ハスキー系の声質
話し声・地声の音域は低め〜やや低めくらいの音域です。
もちろん年代によっても話し声の音域が大きく変わっており、若い頃は普通くらいの音域の声帯であったように思います。
声質はハスキー気味というか少し枯れているような特殊な声質です。
こちらも歳を重ねるにつれてどんどんその傾向が強くなっているのですが、昔の話し声を聞いてもカラッとしたハスキーな成分を持っているという印象を受けます。
声帯の鳴り方が特殊なハスキー系の声質です。
歌声は強く滑らかな中高音発声
チェストボイス低中音域は地声。
鳴り系の声質から息系の声質まで使い分けています。
基本的にはこの地声域は、ASKAさんの声の中では比較的息がながれやすく、さらりとしたテイストで歌うことが多いです(もちろん楽曲による)。
息が綺麗に流れるので、澄んだ倍音も乗っています。
ここからミドル域へと移行した時に違う種類の倍音を乗せるのがASKAさんの歌声の特徴です。
小室哲哉さんはASKAさんの歌声を「国宝級の倍音」と言ったそうです。
決して言い過ぎではないくらいの倍音が鳴っていますね。
基本的に息が流れる発声は「息の倍音:非整数次倍音」声帯の鳴りが強い発声は「鳴りの倍音:整数次倍音」が強くなります。
その倍音の豊かさと倍音の振り幅は圧倒的です。
ちなみに上の動画のみんな大好き5:55〜の倍音についてですが、確かに倍音を一番感じやすいポイントではあります。
ただ、多くの人が感じているのはストリングスの倍音だと思います。
「このとき何が起きているのか。なぜ倍音を感じやすいのか。」と言うとそれは、ASKAさんとストリングスが同じ音階を鳴らしているからだと考えられます。
簡単に説明します。
- ASKAさんが『A・B』という倍音
- ストリングスが『B・C』という倍音
を持っているとします(例えばです)。
両者が同時に演奏すれば重なり合って『A・B・C』という倍音の音になります。
この時全く同じ音階を鳴らしているので両方に共通する『B』の倍音成分は完全に一致して全く同じ音の成分になり、ASKAさんの声ともストリングスの音ともわからなくなります。
結果的に『A・C』いや「C&A」の倍音が際立ち、ASKAさん側を主体にして聴くと『低音と高音が両方出ているような二重の倍音』に聴こえるのですね。
つまり、聴こえているのはストリングスの倍音ですが、音程が”完全に”一致しているからこそASKAさんの声の倍音のように聴こえるのです。
なんだか残念に感じるかもしれませんが、一つ言わせて頂くと、ASKAさんの声の倍音は最初から最後までずっと凄まじいです。
ミドルレンジ
中高音域(≒ミックスボイス)。
声帯を綺麗にコントロールした滑らかで太くて強いミックスボイスです。
声帯がやや閉鎖的・固定的に働きつつも喉をしっかりと開いていて太い声を保っています。
また、息の圧力を強くかけることで、信じられないくらいの強い発声・声量を出すこともありますね。
声帯を強振させるような発声はベルティングボイスとも言えると思います(4:45〜)。
なんか凄すぎて笑っちゃうんですよね。僕だけでしょうか?笑
ちなみに「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」などでもよく使っていますが、5:35〜の発声はファルセットをベースに強く息の圧力をかけてシャウト気味に鳴らすような発声でしょう。
ファルセット
高音域はファルセット。
そこまで聞ける楽曲が多くはないのですが、非常に綺麗な鳴りのファルセットを使いこなしています。
切り替えも非常に美しい。
1:50〜くらいから歌です。綺麗なファルセット↓
ASKAさんの歌い方
共鳴や音色
ASKAさんは上下の共鳴幅が非常に広いです。
特に上方向へも下方向へも共鳴を自在にコントロールして、織り交ぜるような表現方法です。
ビブラート
ビブラートは綺麗でかつ深いのが特徴的です。
低音でも高音でも綺麗にかかるビブラートが歌声の魅力を倍増させているように感じます。
ロングトーンや音のブレーキもかなりバリエーションがあり、メリハリがあり聴く人を飽きさせない歌唱ですね。
フレージング・歌い回し・歌唱力
音程は流れるように、ダイナミクス(声量差)はしぼんだり膨らんだりするような歌い方です。
最大の特徴は
- 流れるようなフレージング(母音の流れ)
- ダイナミクスのつけ方(音の大小)
が特徴的な歌い方を生んでいます。
特にダイナミクスは地声からミックスボイス、低音から高音域に行くときに声量差が膨らむように大きくなることで生み出されています。
その声の移行を滑らかにつなぐことで流れるようなフレージングを実現させているように感じます。
この滑らかさを生み出しているもう一つの要因は母音を綺麗につなげている(=声帯の鳴りをつなげている)からでしょう。
また、リズムも拍の裏を縫うような歌い方(このリズムの取り方も滑らかさを感じさせるもの)です(ちなみにチャゲさんは後ろにズラすようなリズムの取り方ですね)。
ASKAさんの歌い方は例えるなら”水の流れ”のようです。
どういう練習をすればASKAさんのように歌えるか
ASKAさんのように歌うには多くの音楽的な要素が必要です。
その分多くの練習や訓練が必要です。
しかし、要点を絞れば近づく近道になります。
ASKAさんのように歌うポイント
ポイント
強く太い中高音発声を身につける
上方向へも下方向へも共鳴させる
綺麗なビブラートを身につける
この3つが重要です。
では練習法を紹介します。
強く太い中高音発声を身につけるには
ASKAさんのミドルは
- 強い
- 太い
- 綺麗
が揃っているような発声です。
こういう中高音発声を身につけるのは非常に大変でしょう。
強い高音トレーニング
強い中高音発声を身につけるには
がおすすめです。
グッグトレーニングは太い音色の中高音発声。
「ネイ」「ヤイ」トレーニングは強い鳴りの中高音発声のトレーニングにおすすめです。
とにかく音域を広げるトレーニングは焦らずコツコツと積み上げていくことが重要でしょう。
共鳴をしっかりと作る
ASKAさんは
- 上方向への共鳴(鼻腔や軟口蓋)
- 下方向への共鳴(咽頭共鳴)
を綺麗にコントロールしています。
共鳴のトレーニング
共鳴のトレーニングは
- ハミング練習(上方向)
- 咽頭共鳴のトレーニング(下方向)
で鍛えましょう。
共鳴は声を当てる方向性を意識するだけでも変化します。
上下両方を意識するのは難しいですが、織り交ぜるような意識を持つことが大事だと考えられます。
深いビブラートを身につけるには
ASKAさんの大きな特徴の一つに深いビブラートがあります。
特に強い高音域のビブラートを身につける必要があります。
『強い高音域のビブラートはどうやって作るのか?』と考えられるでしょうが、
これは基本的に
- 高音域を自在に操る
- ビブラートができる
の二つが揃えばいいのですね。
その他シンガーの歌声解説はこちら