今回は『ハイトーンについて』がテーマです。
この記事は
- ハイトーンボイスについて
- ハイトーンボイスの発声方法について
- その危険性は無視できない
- 出し方・練習方法について
という内容です。
目次
ハイトーンボイスとは
『ハイトーンボイス』とは直訳すれば
- 「高い声」のこと
です。
地声・裏声(ファルセット)などの声区にかかわらず、高い音であればハイトーンボイスと呼べるでしょう。
厳密にどこからどこまでハイトーンと呼べるかは個人の感覚次第ということになると思います。
ただ、おそらく世間的な感覚としては、
- 『地声の超高音(orミックスボイスの超高音)』
を指す言葉として使われることが多いのではないかと思われます。
こんな感じのイメージ(*再生位置〜)↓
というのも裏声の超高音はハイトーンボイスというよりも「ホイッスルボイス」と呼ばれることが多いです↓
”ハイトーンボイス”でも意味上は間違いではないのですが、裏声の高音には「ホイッスルボイス」という別名があるので、結果的に地声のような音色の超高音を「ハイトーンボイス」と呼ぶことの方が多いような気もします。
これは個人個人の感覚や価値観によって変わる問題なのでなんとも言えませんが、ここでは地声の超高音を”ハイトーンボイス”として話を進めたいと思います。
裏声の超高音
ハイトーンボイスの発声方法について
シンプルに『地声の超高音』という考え方で問題はないと思うのですが、超高音を生み出すためにある特徴があると思われます。
それは
- 声帯に強い息の圧力がかかっている
- 喉や声帯に一定の”固定・締まり”がある
という二つです。
①声帯に強い息の圧力がかかっている
声帯に強い息の圧力がかかっているとは、声帯部分の圧力が高い状態のことです↓
- 「息の力が強い」
- 「声帯がしっかり閉じている」
という二つの条件が満たされているということですね。
逆に息がいくら強くても声帯がしっかりと閉じていなければ圧力は弱いということになります↓
声帯がしっかりと息の力を支えている状態(=圧力が高い状態)を保つ必要があるのですね。
②喉や声帯に一定の”固定・締まり”がある
これはあえてわかりやすく悪い言い方をすれば「喉が締まっている状態」ということです。
ただし、
声帯がコントロールできなくて喉周りの力に頼る『余計な力』(=喉締め発声)ではなく、声帯をコントロールできる上で喉周りの力に頼る『必要な力』(=コントロールされた喉締め発声)という感じのイメージを持つといいでしょう。
なぜこれが必要なのかというと、「”地声の超高音”だから」。
通常声帯は「伸びる」という動きをメインにして音程を上げています。
この「伸びる」動きに一定の限界がきた場合、声帯はこれ以上伸びることができません。
このようにある程度声帯を自然な状態のまま「伸びる」動きをメインにしていくと、誰しも一定の限界があります。
基本的にはここで諦めることになるのですが、「もしこれ以上高音にするのならどうするか」。
これを考えると、
- 息を強める(おそらくすでに使っているもののはずなので×)
- 裏声にする(条件外×)
- 喉を締める
という風に必然的に「喉を締める」になるのですね。
「なぜ締まると高音になるのか」というと、声帯が固まることで振動数がより高速になるからですね。
試しに何も力を入れずに「あーー」と発して、そのまま喉だけを締めると音色はどうあれ高音になるはずです。
理屈で考えればこんな感じですが、難しく考えずとも人間は限界以上の高音を出そうとすると自然に喉が締まっていくようになっています。
頭で考えるよりも先に体が勝手にこれを実行しているのですね。
また、実際には声帯の伸びがピタッと止まるわけではないので『締まりながら伸びる』というのが正確でしょう。
「締まる」のは音程を上げる以外にも、地声のままにしておくという面もあります。
これに関しては「声が裏返る仕組み」についてのお話になるのでここでは省略します。
とにかく「喉を締める」「声帯を固める」ことで通常の限界を超えた高音発声を作り上げる。
「音色の質」とのバランスを取る
「喉を締める」という動きは基本的にはあまりいいものではありません。
その理由は
- 音色の質が悪くなるから
と言えるでしょう。
基本的にどんな人でも喉が締まれば締まるほど「音色の質」を失っていくことになるでしょう。
なので、『喉の締まり・固定』による得られる「高音」と失う「音色の質」を上手く天秤にかけながら、最適なポイントを考慮する必要があるでしょう。
ハイトーンボイスの危険性について
出し方の練習をする前にこんなこと言うのは、やる気が削がれるかもしれませんが、大事なことなので言っておきます。
『超高音の地声orミックスボイスの乱用はかなり高い確率で喉を壊すもの』
だと考えられるということです(*あくまで確率論)。
この「喉が壊れる」というのはバキッと怪我のように急に壊れるリスクが上がるというのももちろん含まれるのですが、それよりもジワジワとゆっくりむしばむように壊れていく方が多いと考えられます。
悲しいことに
多くのハイトーンボイス使いが、5~10年でその発声の質や魅力に大きな変化(悪化)が現れやすい。普通のシンガーと比べるとその傾向が強くなりやすくなると考えられます。
ただし、『もともと高めの声帯を持っている人』『高めが得意な特殊な声帯を持っている人』はおそらくそこまで無理してるうちに入らないので壊れにくい傾向があるように思います。
とにかく、ハイトーンボイスをたくさん使うシンガーでかつ質を長年維持できているシンガーはそう多くはないでしょう。世界でも日本でも。
もちろん、質を維持しているシンガーもいるので必ず悪くなるとは言えません。あくまで「そのリスクを負う確率」の話です。
個人的には偉大なシンガーたちがケアを怠ったとは思っていません。
むしろケアの面でもトップクラスのはずです。
そんな人がケアしてもなお、どうにもならないこともあるのだと思います。
ハイトーンボイスは出せるようになった時がその質のピークで、以降使えば使うほど喉を悪化させるリスクのある発声だということを頭に入れておきましょう。
しかし、
多くの人は「カラオケで出したい」くらいでしょうから、それくらいなら何とか大丈夫だとは思います。
*保証はできません。
少しやる気が削がれたかもしれませんが、『自分ならいけるはずだ。先のことなんてどうでもいい。今を生きているんだ。』というハードロックな方々は練習方法をどうぞ。笑
ハイトーンボイスの出し方・練習方法
①エッジボイスからのアプローチ
アプローチ方法は『エッジボイスの発声状態から閉鎖感をそのままに強い息の圧力をかけて声にする』というのがオススメ。
まずはやや強めにエッジボイスの発声状態を作ります。「あ”あ”あ”あ”」。
次にそのエッジボイスの状態を維持したまま、息だけをどんどん強くしていきます。
これにより声帯にかかる息の圧力は強くなりますが、声帯はなるべくエッジボイスの状態を保ち多くの息をせき止めるようにします。
ギリギリまで耐えながら息をどんどん強くしてくと、そのうち声帯が耐えられずに声が出始めると思います。
そのまま出力を上げると、かなり強い鳴りでかつ高めの発声になっているはず。
現状かなり苦しい発声でしょうし、場合によっては強い高音だがベチャッとしているなどの問題が生まれるかもしれませんが、これが『ハイトーンボイスを生み出す”種”』です。
おそらく、そのままいきなりコントロールできる人はいないでしょうから、この種の発声を練習し、自分でいいバランスのポイントを見つけていくといいでしょう。
この開発は最初のうちは多少の無理矢理感が必要になるかもしれません(危険性の面は頭に入れておきましょう)。
②「ネイ」「ヤイ」でほぐす
喉に力が入り過ぎてしまう、「締まり」と「音色の質」のバランスがうまく取れない、という状態になっているでしょうから「ネイ」「ヤイ」トレーニングでほぐしていくのがオススメです。
このトレーニングは強い鳴り・高音を維持しながら『あごの力み』『喉の力み』を取り除くのにオススメです。
ハイトーンボイスである限り「完全に何も力を入れずに出る」という状態にはならないでしょうが、コントロールできるようになるためには『いかに余計な力みを排除し、必要な力みだけを使うか』というところでしょう。